Todos los capítulos de 愛する妻が置き手紙一つ置いて家出をしました。~初恋を拗らせた旦那様は妻を取り戻したい~: Capítulo 71 - Capítulo 80

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第70話 私も、イアンと同じよ

  きれいに眉を上げたオリヴィア。 イアンはそんなオリヴィアを見つめ──これは夢ではないか、と思った。 イアンはオリヴィアに「愛の告白」をし慣れているものの、言われ慣れてはいない。なんせ、一度たりともオリヴィアから、イアンの告白への答えを貰った事がないからだ。それでも毎日欠かさず伝えていたのは、オリヴィアへの気持ちを信じてもらう為でもある。 虚勢を張って「好きになって貰わなくても構わない」と思っていたものの、奥底では「あわよくば好きになって欲しい」という感情に蓋をして過ごしてきた。そんな男がいざ、オリヴィアから好意を示されると──頭の中がバグった。「あ……アイスクリーム? アップルパイ? 足湯? アイスティー、アーモンド……アーモンド! 五文字だ! アルコール! 五文字!」 イアンは枕を抱いた腕に力を込めた。枕が当初の原型を留めていなくて、オリヴィアはつい枕に視線を向けてしまう。しかし、突然イアンが『あ』のつく単語を大声で連呼したので、ギョッとしてイアンに視線を戻した。「アーモンド! アルコール!」 何故だかすっきりした表情を浮かべるイアンにオリヴィアはただただ呆れ、自分の心の温度が下がって行くのが分かる。 自分を見るオリヴィアの目が徐々に据わって行く事にイアンは知る由もなく「アーモンド」「アルコール」をひたすら連呼していた。「いい加減にして! イアンは毎朝毎晩、私にアーモンドとかアルコールとか言わないでしょ!」 オリヴィアは勢いづけてイアンが腕に抱いていた枕を奪った。イアンは咄嗟の行動に動けず下半身を隠していた枕が取り上げられてしまう。今度はオリヴィアの腕の中へ収まった枕を恨ましそうに目で追った。「私を揶揄っているの?」「か、揶揄ってなんて……ただ、本当にあの言葉なのか信じられなくて」「私を信じないの?」 拗ねた口調で返されてイアンは首を横に振った。 いつだって、オリヴィアを信じている。オリヴィアが言う事は絶対で、彼女が自分に「死」を求めるよ
last updateÚltima actualización : 2026-08-30
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第71話 告白は夫婦になった日に

  そんなオリヴィアの仕草を見て、イアンは自分の胸が彼女を想う気持ちで溢れそうになる。この感情を抑えきれずに、隣りに座るオリヴィアを押し倒したい衝動に駆られるも、彼は崩れそうな理性を精神力で抑え込んだ。もし、この場で感情に呑まれて襲えば、折角俺の事を好きになってくれたのに、嫌われてしまうではないか。 「オリヴィアが俺を好いてくれた」という喜びはイアンの胸だけではなく下半身にも今まで以上の熱を送る事になる。そのせいで、勃ち過ぎて痛みが生じてきて、パンッパンに勃起し、トラウザーズで圧迫されてもいるから余計に痛い。勃起を隠していた枕は今オリヴィアが大事そうに抱き締めているせいで、これを隠す術がない。──考えた末、イアンは足を組んで前屈みになる。オリヴィアの目に映り込まないようにした。結果、太腿で圧迫する羽目になるので痛みが余計に増量するのだが、オリヴィアの恥ずかしそうな姿を目にしたお陰で痛みは半減、そして勃起は増量……。 オリヴィアはイアンが不自然にも足を組んだ事を気にも留めなかった。ただ、結婚記念日に密かに立てた計画がこのような形でバレてしまったことが想像以上に恥ずかしいものだと、いまさら羞恥心が襲ってくる。あんなにヒントを与えたのに答えられなかったイアンを見て呆れていたさっきまでの自分が嘘のように感じた。「オリヴィア」 名前を呼ばれイアンを見ると、彼はオリヴィアを真っ直ぐに見つめていた。さっきまでの間抜けだった表情とは一転して真摯だ。「俺への言葉を、今言って貰うことは出来ないのか?」「ダメ!」 抱いていた枕をイアンの膝へ戻し、顔の前で大きなバツを作る。 その交差した腕から残念そうに項垂れる黒髪の男が居た。  イアンは下半身の熱はまず置いといて──オリヴィアの口から「愛してる」という言葉を聞き出したい、という思いに駆られた。そうして訊ねてみると、顔前でバツを作られてしまう。そんな仕草は子供っぽいのだが、愛しくて堪らない。  「はっきりと言葉で言ってくれないと俺は鈍感だから分からない」「その言葉は結婚記念日の朝に言うって決めてい
last updateÚltima actualización : 2026-08-31
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第72話 イアンとの子供が欲しい

 「ロアソル侯爵家の結婚記念パーティか」 ジェシカの実家──ロアソル侯爵は邸の庭で定期的にお茶会を開催する。 お茶会はジェシカの兄ウィリアム侯爵とその夫人が親しい人間だけを集めて開催されるもので、人数は十人程度の小規模なものだった。お茶会というよりも、井戸端会議の延長のようなもので、お茶を飲みながら世間話をする、というだけの気軽なものである。招待された貴族達は階級関係なく、ただロアソル侯爵家の当主が信頼している人間が呼ばれていて、終始穏やかな空気に包まれている。 スェミス大国に知り合いがいない姪っ子のオリヴィアを心配して、ウィリアムは定期的にお茶会にオリヴィアを招待して、人と喋る機会を与えていた。 いつもはオリヴィアだけしか招待されなかったが、二カ月前のお茶会というより記念パーティに今年はイアンも招待される。どうやら今年はロアソル侯爵夫妻が結婚三十周年を迎えるようで、夫婦揃っての招待を受けたのだった。 「子供たちもその中に居て……イアン、遊んであげたでしょう?」 開かれたパーティには、招待された夫婦の子供達も参加可能で彼らは娘や息子達を連れてきていた。家に置いて来なかったのは、ロアソル侯爵が、たとえ階級が低くとも信頼に値する人間だけをこの場に招待しているからだ。これに招待された人間は、階級は低くともこの国にとって信用に値する人物で、また、階級が低いとしても何かしらの事業に成功しているような者もいた。そこへ幼い子供をつれてきて、家同士の繋がりを持つ為に「うちの子供を婚約者にどうだ?」と親同士が行うのだ。親の身元がはっきりとしているのだから、これ以上にない子供の結婚相手を見繕う良い場所だった。 ──それは親の都合で子供たちにとって知ったこっちゃない。 子供たちは大人の集まりとなるパーティに早々と飽きてしまい、ロアソル侯爵家の庭にある大きな木の下で集まっていた。──そこにはオリヴィア以外の人間と喋る事に気疲れをして一休みしていたイアンが居た。 陸軍軍人の頃よりも雰囲気が柔らかくなったイアンは、最初は体躯の大きさに驚かれるものの、慣れてくれば子供達は遊具感覚でイアンによじ登って
last updateÚltima actualización : 2026-08-31
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第73話 イアンに抱かれるの、嫌じゃない

  そんな想いが、オリヴィアの胸にストンと落ちてきた。(あんなに、男性が怖いって、思っていたのに) 初恋だった人を私は今も想い続けていたんだわ……彼の子供が欲しい、と思えるくらい私は彼を愛している。「イアンと私の子供が欲しいって思って、その時初めてイアンへの気持ちに気が付いたの」 温かく穏やかな空気は、イアンが誓った騎士の誓いからでも、プロポーズの言葉からでもない。彼自身から与えられていた。「イアンの想いに応えなきゃと思って計画を立てたのよ」とイアンの顔を下から覗き込む──オリヴィアはパチクリと瞬きを繰り返した。 イアンの顔がリンゴのように真っ赤だったからだ。「お、俺とオリヴィアの子供……? ってつまり、その」「……?」「俺との子供が欲しい、って、その、あの、えと、あと、その」 どもるイアンの言葉をオリヴィアは理解しようと整理するも──オリヴィアは自分の発言の意味に時間差で気付いて顔を赤く染めた。「イアンと私の子供」ってつまり、二人は睦事をせねば子供はできない。 オリヴィアの発言は、イアンに対して「子作りしましょう」と誘っているようなものだった。 イアンはまさか、好きになった理由を訊ねて「イアンと私の子供が欲しい」なんぞ言われると思っていなかったから、頭ではなく下半身がパンクしそうだった。(いや、これ……ちょっと漏れ……てはいないが、このまま放置していたらまずい)  イアンはオリヴィアを組み敷いて、ナイトウエアを破り彼女の乳房にしゃぶりつく、といった妄想が頭の中で繰り広げられそうになって頭を勢い良く振った。──このまま、この場所にいたらまずい。(風呂へ行って、風呂場で抜いてきた方が良いぞこれ) 長年右手が友達だったイアンには簡単な作業だ。ただ、今日に限っては一回で済むのかどうか、頭を悩ませる事になりそうだが……。
last updateÚltima actualización : 2026-08-31
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74話 私が純潔じゃないから?

 「わたし、イアンと同じ黒髪の赤ちゃんが欲しい!」 想いをそうぶちまけて、ハタッと気付く。隣にイアンが居ない。「あら……?」と視線を足元に落とした先に、枕を腹に抱き締めて床に蹲った彼が居た。 「お腹痛いの? 大丈夫?」「……だいじょう」 最後まで言わずに掠れた声で、苦しそうに言葉を吐いたイアンにオリヴィアは思わず手を伸ばしたが、イアンは右手を上げてそれを制止した。「風呂へ行ってくる……」「抱かれても嫌悪感を感じない」だけではなく「イアンと同じ黒髪の赤ちゃんが欲しい」と度ストレートにオリヴィアから告白され、イアンはもう限界だった。今まで築き上げてきた理性が少し突けばガラガラと崩れそうだ。肉体と精神を鍛えて生きてきた自分が、倒されてしまう──我が妻、オリヴィアに。(悪気が一切ない……なお質が悪い──……そんなオリヴィアも好きだ)  オリヴィアは頭に思い浮かんだ言葉をそのまま声にだしただけだ。しかし、その発言は童貞のイアンにとって刺激が強すぎた。 (オリヴィアが俺の事を好いてくれて、結婚記念日に告白をしてくれるのは心の底から嬉しい。しかし、当日は今以上に苦戦を強いられる筈だ……オリヴィアの声で、『愛してる』なんて言われたら、俺は……い……生きていられるか……?)   ヨロヨロと立ち上がったイアンをオリヴィアは支えようと立ち上がったものの、イアンから「大丈夫だ」と拒否をされた。その口調は強く、オリヴィアはグッと下唇を引っ込めた。「全然大丈夫そうに見えないわ」「熱湯をかぶれば、落ち着くよ」 イアンは弱々しく笑みを浮かべた。 枕を抱き締めたまま、前屈みで立つ彼は、オリヴィアの目から見ても体調が悪そうだ。額に汗が浮かび、呼吸が荒い。堪える
last updateÚltima actualización : 2026-08-31
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75話 ずっと君に触れたかった

  自分の傷をイアンにオリヴィアは吐き捨てた。途端に、両肩を掴まれてオリヴィアはよろけてしまう。「オリヴィア! 自分で自分を貶めるような言葉を吐くな!」 ボトッ枕が床に落ちる。 正面から両肩を掴まれて、向かい合う体勢になり、切れ長の金色の目に戒められるように見下されて、オリヴィアは消え入りそうな声で「ごめんなさい」とイアンに謝罪した。 「でも、だって……イアンは具合が悪いのにお風呂へ入ろうとするんだもん。ゆっくり横になったらいいでしょう? 湯船で溺れるかもしれないし、心配だから……」「俺は簡単に溺れたりしないから。それから、俺は健康で実際元気なんだ」「嘘よ。額に汗を搔いているし震えているわ。横になって、休んだ方が良いわ。お医者さんだって呼んであげる。それを断るのって、私と居たくないからって思っちゃうもの」 目の前のイアンが苦し気に息を吐く。 彫りが深い顔立ちは自分にはない作りだ。そんな彫刻のような造形を悩まし気に歪めて俯いた。それに釣られてオリヴィアも視線を下に向ける──男の身体の中央で視線は止まった。 その正体がなんなのか……だからイアンは枕を抱き締めていたのかと合点がいった。 その主張から視線を外す事が出来ず、オリヴィアは言葉を発せずにいた。「オリヴィア。俺は君を愛している」 愛の告白は、いつも聞いている声よりも掠れているからなのか低く、やたらと耳の奥に残るような気がした。「知っているわ」とオリヴィアは呟いた。イアンは小さく首を横に振る。──俺の感情は君が知るほんの一部だ。「ただ、好きな訳じゃない。ずっと、君に触れたいって思っていた」 ゆっくりと語るイアンの告白は、いつもイアンの口から語られる「愛している」という言葉に隠された、心の奥底で隠し通してきたものだった。  「アンがオリヴィアの髪を梳くのが羨ましかった。どんな理由があれば、君の髪に触れられるのか。その髪にキスをしたいって長い間思ってい
last updateÚltima actualización : 2026-09-01
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76話 枕じゃなくて私を抱き締めて

 「じゃあ……俺は風呂へ行って熱い湯船へ浸かってくるから」 オリヴィアの肩から手を離し、床に捨てた枕をイアンは手に取った。また同じように胸に抱く。 「枕も持っていくの?」 枕を手放さないイアンに疑問をぶつけると「今の俺には必須アイテムなんだ……」とギュッと力強く抱き締めた。 フト、初めて同じベッドに寝た夜をオリヴィアは思い出した。二人の間に枕を入れられたのだ。『ぎゅって、抱き締めてもらえないわ』 と文句を言うと、彼は困ったように目尻を下げて、『今日だけだから。突然の事で何も準備してないんだ』 納得はしなかったけど……切羽詰まった感じがして渋々承諾した。(あれは……隠していたのね) 合点がいってオリヴィアは情けなく前屈みで背中を向けた男が愛しくて堪らなくなる。『男とはそういう生き物です』 そうアンが言った。 イアンもそうだった。でも、彼はそれを行動に移さなかった。私を傷付けたくないから。私に嫌われたくなくて、彼の父親のようになりたくなかったから。 私を傷付けない男を、愛さない理由なんて、どこにもないわ──……。 初めて出会った頃と、イアンは全く変わらない。(でももし……イアンが私を襲っていたとしても) イアンへの気持ちは──変わったのかしら? その答えは──……。 「イアン」 とオリヴィアは名を呼ぶ。 イアンはオリヴィアから名前を呼ばれて無視をする訳にはいかない。ゆっくりと振り向いてオリヴィアを瞳に映すと、イアンは息を飲んだ。 「枕じゃなくて──私を抱き締めて欲しいの」 両手を広げ、穏やかに微笑む姿は聖母のようだ。「私を抱き締めてくれないの?」 唇を尖らせて、首を傾げる
last updateÚltima actualización : 2026-09-02
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77話 嫌じゃなかったから

  「んっ、んはっ、んんっ」  呼吸が苦しくなってオリヴィアは息を吸い込む為に口を開けたら、イアンは顔の角度を変えた。勢いが良かったせいか歯がガチっと当たり痛みが生じた。イアンの口から呻き声が漏れたが、口付が止む事はなかった。ただ、舌が労るように歯列をゆっくりと舐める。それから隙間を割って入り分厚い舌で歯の裏をなぞり、彼女の咥内をいっぱいにした。それは中を探るような動きで口内を蹂躙する。歯の裏、上顎、下顎をくるりと蠢いていた舌は、オリヴィアの薄い小さな舌を見つけて、彼女の舌を絡め取った。 反射的に舌を引っ込めてしまうが、イアンの舌はまるで逃がさないというように、すぐにオリヴィアの舌を捕らえては舌を絡め、吸ってくる。 水滴を交えた淫靡な音が耳に入り、口の端に流れる水滴がこの音は二人の唾液の音だとオリヴィアは気が付いた。もう、どちらの唾液か分からないものが口の端を流れている。オリヴィアの口の中に溜まった二人の混ざった唾液をイアンから吸われて、ゴクゴクという飲み込む音とぴちゃぴちゃと淫らな音が響いた。「ふっ、んっ、ふぁっ、んぁっ」  イアンの骨ばった指で耳の輪郭を確かめるように撫でられて、ゾワゾワと背中が粟立つ。イアンから支えられているものの、キスを受ける為に背伸びしていて足がガクガクと震えていて立っていられるのがやっとだ。それに、イアンとのキスでずっと上を向いているから首も痛むし、顎が疲れてきた。 舌がヌルリと抜けて唇が解放され、呼吸が楽になる。肩で息をしていると、腰に回された腕が彼女の尻を持ち上げて、そのまま背中からベッドに投げられる。 乱暴に投げられる事はなく、イアンはオリヴィアの後頭部と腰を支えてベッドに仰向けに押し倒した為、彼女に痛みは生じなかった。 ギシッと軋む音が部屋の中に響く。「イアン……」 オリヴィアは片膝だけベッドに乗せ、身を乗り出している男の名前を呼んだ。 不安気に名前を呼んでしまった為か、目の前のイアンは申し訳なさそうな……母親に怒られた子供のような表情になる。
last updateÚltima actualización : 2026-09-03
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78話 キスと、その続き

   まだイアンの唇の感触が残る自分の下唇に触れ、オリヴィアはカァッと頬を染めた。 そう……嫌じゃなかった。息苦しさや背伸びをして脚や首は痛い、って感情はあったけど、彼とこのままで居たいと思える程、悪い感情なんて一切湧かなかったのだ。「え、あ、う」 言葉を探しているのか、口をパクパクさせながら目を右往左往させて慌てているイアンを見てオリヴィアはクスッと小さく笑った。「もう、してくれないの……?」「何を……?」 そう訊ねたイアンの顔をオリヴィアはじっと見る。言われた言葉の意味を分かっているのかいないのか──すっとぼけて言ってはいないかと思ったが、本当に分からないようでポカンとしていた。「キスと、その……つ、つ」 最後まで言わせるのか、とイアンを睨むも──やっぱり怒られ中の子供……アンにしょっちゅう叱られていた私の黒い飼い犬に見えてしまって、怒りよりも愛しさが勝ってしまった。「キスと、その続き……よ! つ、つづき、ってその、ギュッて私を抱き締めて、その、あの」(彼は言わなきゃ伝わらないタイプなのね) 曖昧な言葉は伝わらない。 そう思ってキスだけじゃなく、その後の行為を許す、と言おうとしても直接的な言葉を言える訳がなかった。「わ、たしに言わせないで」 熱くなった顔を覆って視界からイアンを遮断する。そう暫くしていると、ベッドがグンと沈む感じがしたかと思うと、腰と後頭部が宙に浮いた。 大きな掌に後頭部と腰を持ち上げられ、上からギュッと抱き締められている。自分より遥かに大きな体躯と熱い体温はひどく心地良かった。 耳朶に唇を押し当てられて、息が当たる。それが擽ったさだけではなく、腰に伝わってゾクゾクした。「良いのか?」 そう訊ねられる。 ここまで言って「やっぱりダメ」と言ったら、彼はどん
last updateÚltima actualización : 2026-09-04
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79話 知らなかった触れ方

  耳元で愛称を囁かれ──ヌルリとした湿った何かが耳の孔に侵入してきてオリヴィアは声を上げた。 左耳に侵入したと思った舌は、味見をしただけのようですぐに耳孔から出て行って耳の内側に移動する。舌先で丁寧になぞられて輪郭を辿るように上から順に動いていって、耳朶に唇が近付くと、甘噛みするように食まれて、チューと吸われる。 擽ったいのに、ゾクゾクした感覚が全身を走り鼻にかかった声をオリヴィアは漏らした。「イアっ……! んっ、あぁっ……んぁっ」 耳を舐められているだけなのに、どうして甘えたような声が出てしまうのか分からず、イアンを抱き締める腕に力が入る。ギュッと抱き締めると、耳に息が当たってイアンの口角が上がったような気がした。 耳朶への愛撫が終わってゆっくりと舌先がそこから離れて行く。少しずつ迫ってくるような這う動きは焦らされている気がした。耳の縁、軟骨、耳朶とゆっくりと舌先が順番通りに何度も往復する。耳の中央に向かうような動きなのになぞるだけ。耳朶も一度吸っただけで今は唇が耳に触れる事はなかった。最初に耳孔へ触れられた時の刺激が蘇ってきた。(もどかしい……) でも、それを声にするのは恥ずかしいし、おかしな気がする。 耳にイアンの吐息が当たり、それさえも背筋がゾクゾクして身を捩った。すると、腰を抱いたイアンの腕に力が入る。息苦しさを覚えるものの、オリヴィアの身体にイアンの熱を感じて自分を求めている事が伝わってくる。そんな彼に「苦しい」と言えずにオリヴィアは押し黙った。ただ、今までイアンを見てきて自分を好きなんだろうな、という感情が分かってはいたけど、こうやって熱を感じると全身から「愛されている」と分かって純粋に嬉しさが込み上げてくるのだ。「──んぁ! あっ、んっ」 オリヴィアは嬌声を上げた。イアンの舌が耳孔を舐めたからだ。 どうやらそれを期待していたようで、イアンが触れている腰からゾクゾクと甘い電流のようなものが走った。ひっきりなしに声が出てしまって、オリヴィアは堪えるように下唇を噛んだ──
last updateÚltima actualización : 2026-09-05
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