慎太郎は微笑んでいない。 人質を取られているのだから、笑っている場合でないことは分かる。 でも彼は、どんな場面でも笑顔を絶やさなかった。 それが今はない。 非道を憎む人の顔だ。 カタンとゆっくり足を踏んで、私たちに近づいてくる。 「お、おい! 動くなって言ってるだろ! 何してる! 早くこいつを」 「外の連中なら、僕が始末した」 淡々と言う慎太郎に、私たちは驚かされてしまう。 (あんな怖い連中を一人で?) 信じがたいけど、純の声に応じず、銃声がしないのが何よりの証拠だった。 「それに僕は、武器を持ってない」 「う、嘘だ!」 「なら確かめてみるか? あぁそうか。一条にはそんな度胸も、度量もなかったな」 「う、うるせぇ!」 純が慎太郎に銃を向ける。 「止めてっ!」 しかし彼は、それを遠くへ捨て、私を乱暴に突き放した。 「苦しめて、殺してやる! お前なんか!」 憎悪に塗れた瞳で語っていた。 「いつもいつも! 俺の邪魔ばかりしやがって! どいつもこいつも!」 そして拳が慎太郎に向く。 でも、それを見透かしていたように慎太郎は純を一撃で吹き飛ばした。 「君は、本当に単純だ」 私は唖然としてしまった。 あの剛腕から放たれたのは、大砲か何かかと思ってしまうほどに。 「大丈夫かい?」 「え、えぇ。なんともない」 慎太郎は安心させるように微笑み、私へ手を差し伸べてくれた。 凄い怖い思いをしたけど、 「助けに、来てくれたの?」 「僕だけじゃないよ。美濃部や細道が」 と、私は慎太郎に顔を近づけて、 「細道?! 細道はどうなって!」 慌てて聞いた。 しかし彼は一瞬、黙り込んで目を泳がせる。 「・・・・・・細道は、病院に運ばれて治療を受けてる。安心して」 言い聞かせるように私を抱きしめた。 それでも、必死に誤魔化そうとしているのが伝わってきてしまう。 彼だって人間なんだと、改めて思えてしまう。 「さっここから脱出しよう」 「う、うん」 慎太郎の手を取り、私は工場の出口へ向かった。 外へ出ると、工場の入り口の看板に目が入った。 「大曲造船・・・・・・」 「ここを提供したのは、あの大曲 小町だよ」 やっぱりと、納得が
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