All Chapters of 豪華客船で棄てられた社長令嬢の私が、海を統べる剛腕御曹司(幼馴染)に溺愛されています: Chapter 41 - Chapter 50

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第41話 夢現は祝福の予感

足を取られるように、私は微睡みに引かれていってしまった。 けれど暗かった世界が急に晴れ渡って、青色の海の前と砂浜が広がる。 私以外、誰もいない。一人ぼっちの砂浜。 「香織」 慎太郎の声がして振り返る。 スーツからアロハシャツに着替えた彼が、純白の皿を持って佇んでいた。 「おかしいな。さっきまでいた海と、全然違う」 いきなりバカンスにテレポートしてしまったようで、混乱してしまっている。 辺りを見渡すが、延々と続く砂浜と陸地の方にはポツンと家があるだけ。 「さっき?」 「うん。故郷に帰ってたはずなのに」 眠ってしまっていたからだろうか。 夢かうつつか、分からなくなってしまってる。 でも、慎太郎と二人きりになれたのは嬉しかった。 「寝ぼけてるところも可愛いね」 そう言って頭を撫でて、私の隣に座る。 「今日の海はどう?」 「どうって?」 「いつもここから見て、帰ったら教えてくれるじゃん?」 私は言葉が詰まってしまった。 やっぱりここは―― 「笑ってる? もしかして悲しんでるのかな」 「・・・・・・ちょっと、分からないかも」 慎太郎が訝る。 「熱でもある?」 「ないと、思うけど」 身体は軽いし、頭もスッキリしてる。 不安そうな表情をする慎太郎。 けれど遠くから響いた2つの声に、彼は振り返る。 「お母さん」 私は目を見開いて、その方へ目をやった。 それが砂浜で見た最後の記憶。 夢だということを思わせるような、そんな出来事だった―― 毒を盛られた? 僕の街で? 必死にアクセルを踏む心に、そんな疑心が宿る。 綱島グループを継いでからというもの。 興味のない女性達から言い寄られ、時には血が流れることもあった。 だから僕が香織といる事をよく思わない人間がいることも知っている。 誰だ・・・・・・誰がやった。 診療所の横に車を止めた僕はキーを抜くことも忘れて香織を連れ出す。 「綱島さん! キーキー!」 フネシュキーの声にも振り向かない。 医者の女が出てくると、火の付けていないタバコをすぐに戻し、 「奥へ運んで」 踵を返して香織を運んでいった。 「僕がいながら、こんなことに」 診察室の前で、僕は祈りながら悔
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第42話 二人の証

瞼を開くと、目に映るのは清潔感のある白い天井。 繋がれた点滴の管。他に医療機器はない。 「目が覚めた?」 私に微笑むのは慎太郎。 (さっきまで砂浜にいたのよね?) 暗くなって飛んだと思ったら、アレは夢だったらしい。 「ごめんなさい。仕事に戻らないとだよね」 「あぁ無理しないで良いよ」 起き上がろうとする私をその剛腕が優しく寝かせた。 でも中途半端なのは良くない。 「後は僕がやっておくから」 「でも」 「今の香織は休むことが仕事」 「休むことが?」 私は首を傾げる。 時にそういう言葉を掛ける人はいるけど、慎太郎が言うと何か含みがあるように思えてしまう。 「うん。だって香織のお腹には赤ちゃんがいるんだもん」 無邪気そうに言った。 しばらく私は目をぱちくりとさせて、 「・・・・・・本当?」 「うん」 「えっと、私と慎太郎の?」 「勿論」 それしかないのに、思わず聞いてしまう。 ふと、私の顔が赤くなっていくのが分かった。 「性別は分からないけど、しばらくは安静にしておくのが良いだろうね」 慎太郎は諭すように言う。 だけど――私はベットから身体を起こした。 「私、もう少しだけ頑張る」 「頑張る?」 「海上レストランの支配人だって、まだちゃんと務められてないのだもの。それに」 「それに?」 「純から・・・・・・一条から会社を取り戻す為には、もう少し頑張らないとだから」 真っ直ぐな瞳で慎太郎に告げる。 会社を取り戻す。その道筋は遠くて明確じゃないけれど、 「まずはレストランのデザインをキチンと決めないとだから」 点滴の針を外して、ベッドから立ち上がる。 「もう少し、寝ていた方が良い」 計ったように、医者が扉を開けた。 その口元には白い棒・・・・・・慎太郎がふぅと安堵の息をつく。 「流石に、妊婦の前では吸わんよ」 と、呑気に話す。 「香織を診てくれた沓見先生」 「くつみって、水に日って書く」 「よく分かるね。初診の人には読めないって言われる」 と笑いながら言った。 そして抜かれた点滴の針を一瞥すると、 「まぁ、二時間でそれだけピンピンしてるなら良いか」 「ありがとうございます。診ていただいて」
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第43話 裏と表の胎動

香織が妊娠した・・・・・・?! 都内の高級マンションの一室。 俺はスマホを床に落とした。 「腹の中に綱島との子供」 ハラワタが煮えくり返りそうだった。 俺が愛した女なのに。 俺が先に手を付けた女なのに。 あの野郎・・・・・・。 「へぇ・・・・・・日野内が子供をねぇ」 羽海の声がしてさっとスマホの画面を隠す。 「勝手に見るなよ!」 「いいじゃなぁい。それより、好きな人に子供が出来たってさ。純はどうするの?」 「・・・・・・決まってるだろ。香織は俺に必要だった。だから連れ返すだけだ」 「正気? 既成事実が出来てるのに?」 「・・・・・・俺との子供だ。そう決まってる」 そうだ。あいつとは身体の関係もあった。 だからきっと俺の。 「有り得ない。だったらもっと早くつわりが来てなくって?」 羽海は無慈悲に、不気味な笑みで言う。 認めたくない現実から目を背けていても仕方がない。 俺はどうしたら香織を取り戻せるか、頭を捻る。 腹にいる赤ん坊が俺との子供だったと証明させるか? 医者に金を握らせれば、鑑定結果だって作り出せる。 だが、相手はあの綱島だ。頭が切れる上、背後にある力が何か分からない。 「どうすりゃ良いんだよ!」 力任せに椅子を蹴り飛ばした。 ふざけるな・・・・・・無事に産ませて。 「そうか」 思いかげず頭に過った妙案。 「気づいた?」 「産ませなければ良いのか」 俺も羽海も、顔を見合わせて微笑む。 まだ子供は腹の中だ。 堕としたとて、殺したことにはならない。 そこに俺が子供を作れば―― 「俺の子供になる」 「そう。だから、香織を連れ戻すために、必要な人間を連れてきたわよ」 そう言って、羽海は部屋の扉を開く。 「大曲 小町。お前、拘留されたはずじゃ」 「釈放してあげたの」 「話は聞きました。私も協力させてください」 どうやって出したかは敢えて聞かない。 すると小町は見取り図を出して、俺に向く。 「これで、慎太郎様を取り返せるんですよね?」 羽海から何か含まされてるとは思っていた。 だが、こいつも利用できる。 あの野郎のどこが良いのか分からないが、 「あぁ」 怪訝な表情に俺は頷いた。 一夜
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第44話 罪悪感と殺意のミキサー

顔を見る間もなく、声の男は私の手を取った。 「こちらに居られたのですね!」 ブンブンと振る彼に、私が困っていると、 「すまない君。香織が困っている」 「す、すいません。でもご無事で!」 慎太郎が私を抱き寄せて、男から引き離す。 守るように私を背に置いた。 「先代社長の元で働かせていただいた間宮です」 「間宮さん?」 お父さんと働いてたって言うと・・・・・・。 「はい! 入社した時に、いろいろ教わって」 「あぁ!」 小槌をつく。 地元の工場で基板を担当していた人だ。 間宮と初めて会ったときは新入社員。 その顔つきは見違えるように変わっていて、気がつかなかった。 「彼は?」 「工場の社員さんよ。心配ない」 怪訝だった慎太郎の顔が和らいだ。 「突き返すような言い方をしてすまない」 「いいえ! 先代からいろいろ聞いてます。お会いになりましたか?」 私は首を振った。 「心配されていますよ。それに、あなたに会いたいって人もいて」 会いたい人? 父には会わないと決めていたし、街の人が知っていればいずれ伝わると思っていた。 (私の決意だって、分かってくれるよね) 祈りのような思いは声には出さない。 父じゃなかったら、一体誰なんだろう。 慎太郎と顔を見合わせていると、彼の後ろから壮年の男が出てくる。 「一条 孝三と申します」 恐怖が背筋を伝って、一瞬固まって・・・・・・。 今度は私から慎太郎の背に隠れてしまう。 「大丈夫だよ香織」 「え?」 「この人は僕たちの味方だよ」 「でも一条って」 慎太郎の言うことでさえも、とても信じられない。 (私を大海原に捨てた人の一族なのよ) すると一条 孝三は前触れもなく、額を地面につけた。 「愚息の愚行をお詫びしたい」 伺うように様子を見守る人。 チラリと見て通り過ぎる人。 修羅場を目撃したように驚く人。 疎らだった駅の来訪者の視線を釘付けにしている。 「この通りだ。申し訳なかった」 「・・・・・・顔を上げてください」 静かに私は告げる。 「上げられません。愚息の行為を許してくれとは申しません。ですが」 この人が謝る必要なんて一切ない。 血が繋がっているとは
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第45話 隠れた情熱と蠢く陰謀

香織には何でもお見通しなんだ。 隠していたはずの憎しみが出ていた。 一条 純・・・・・・いいや、一条家の人間にか。 口では味方だと伝えたけれど、この人があいつの親だと思うと問い詰めたくなってしまう。 一体、どういう教育をしたら、あんなクズが生まれるのかを。 「後は僕にお任せください。貴方は、身を隠していた方が良い」 「え?」 「言い方が悪いかもしれないが、貴方は今の一条家を御せない。 そう言って、香織を彼から遠ざけた。 傷つける者は何人たりとも許さない。 愛している。心の底から。 香織がいない人生なんて考えられないくらいに。 だから僕は、どんなことをしても香織を守りたい。 それを叶えるには、世界から敵を消せばいいとさえ考えている。 香織は―― 「もしかして、殺そうとしてないよね」 不安とも、恐怖とも取れる表情に僕は迷ってしまった。 僕は、一条とその協力者を消そうとしている。 世界から香織の敵を消そうとしてるのだ。 好きな人と、安全を脅かされずに過ごす権利はあるはずだから。 だけど、彼女はそれを望んでいない。 消しても良いのだろうか、と。 これを伝えてしまったら、香織に嫌われないだろうかと。 ・・・・・・分からない。 沈黙が数瞬過ぎた後、僕は止まった。 「少し寄り道しても良い?」 「うん。良いけど・・・・・・」 ホームへ向かおうとした折に、僕は尋ねた。 フネシュキーはデザインしたい気持ちとついてきたい気持ちで悶々としていたけど。 「すまないな。もう少し付き合ってくれ」 と、帰る方面とは逆の新幹線に乗り込んだ。 香織の周りを嗅ぐ奴らから、まずは身を隠さなければならないからだ。 すると香織は寝てしまい、フネシュキーも船を漕いでいる。 そんな様子を見て、 「着いたら起こすよ」 そう言って彼も眠りに誘う。 二人とも安心しきって眠っているのを見守って、 「細道」 「御用でしょうか。慎太郎様」 僕は呼んだ。 一つ後ろの席からは、車を預けに行っていた細道が顔を覗かせる。 「始末を」 「了解です」 まるでスパイ映画のワンシーンだ。 彼の背中がデッキに消えていくのを見て、僕は香織を肩に寄せる。 「ごめん香織。
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第46話 慎太郎の奥深くの過去

慎太郎と寄り道をした後、 「フネシュキー様からデザイン案が届いております」 本社に届いた一通の封筒。 細道から受け取った私が開ける。 あの豪奢なデザインに砂浜と青い海を表現したカーペット。 「素敵・・・・・・」 「どれどれ」 思わず漏らした感激。 慎太郎も後ろから覗く。 「・・・・・・あの街の海岸だ」 「えぇ。夕焼けに照るあの海だわ」 きっとここを訪れる人たちも、自分の中に眠る思い出に浸れる。 私はそれを慎太郎に渡して、 「絶対、成功させないとね」 慎太郎を抱きしめて、耳元で言う。 「私、頑張るから」 誓いの言葉のように囁く。 けれど慎太郎は少し間を置いて、 「香織のお腹には赤ちゃんがいる。しばらくは、僕に任せて欲しい」 「・・・・・・そうね」 気遣いってくれるのは嬉しかった。 でも、頼りっぱなしで不安にもなる。 (慎太郎の仕事を手伝えないのが寂しい) 「だから、しばらく香織のお仕事は午前中だけ。細道が家まで送ってくれるから」 「ありがとう」 微笑んで、私はデスクについた。 ふと、お腹に触れて思う。 子供ができるなんて想像もしてなかった。 純は消極的で、身体の関係はあっても避妊はしっかりしていた。 父親になりたくない思いが強かった。 でも慎太郎はどうなんだろう。 彼は父親になりたいのか。 見つめていると、視線に気づいたのか。 「なんだい?」 不思議そうに尋ねてくる。 「ううん。なんでもない」 私はパソコンの画面に戻って、お昼までの仕事をなんなくこなした。 帰りの車。 慎太郎といることが当たり前になってしまったからか、横に誰もいないと違和感がある。 独りぼっちの帰り道。いいえ、正確には細道が運転してくれているのだから、一人ではないのか。 「ねぇ細道」 「なんでしょう?」 「慎太郎にはいつから仕えてるの?」 いつもべったりの慎太郎が居なくて、退屈を感じた。 ふと気になって、細道との馴れ初めが気になってしまったのだ。 「25歳の時からです。これでも、私はかなり歳を食っていまして」 「前は何をしていて?」 慎太郎が望む物を、まるでエスパーみたいに用意できて、飛行機も操縦してしまう人だ。
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第47話 香織の慟哭

(慎太郎と細道が戦場で?) 聞き間違えかと思ったけれど、 「私は、武装勢力の一人として戦っていたんです。そのときに、慎太郎様と出会った」 「じゃあ細道って名前は?」 「与えられたものです。戸籍や家も、全て慎太郎様が私にと。私の出身はサマリアの貧しい街でした。だから、武器を取って海賊行為を行ったり、誰かの依頼で戦うことしかできなかった」 ハンドルを握る手がギシリと鳴る。 「辛い過去だったんですね」 「えぇ。出会ったのは、銃撃戦の最中です。紆余曲折あって私と仲間は捕まり、下士官だったあの人の尋問を受けました」 「殺し合いをしていたってことですか?」 「えぇ。でも誰も死ななかった。いや、殺さなかったというのが正しいでしょう。あの人は優しかったから」 にわかには信じられない話だと、私は思う。 でもバックミラー越しに見る細道の目が涙ぐんでいたのを見て、 (真実なんだ) でなければ、涙なんて到底流せない。 「正直に貧しいサマリアの事情を話しました。慎太郎様は軍を辞め、実家の水産会社に入り、私を雇ったんです」 そこからの話は私もよく知ってる。 一代で日本トップの企業に登りつめ、今や誰もがその影響力に跪く。 でも、一番は、 「ありがとう」 「え?」 「辛いのに、話してくれて」 だって慎太郎が本当は優しい人だって、気づけたのだもの。 杞憂だったのだ。 あの顔は、優しいから出てくるものだって分かったのだから。 マンションに着き、 「色んな話、聞かせてください」 「かしこまりました。それでは」 涙が引いた瞳が横切って行く。 「さっ、やりましょう」 エレベーターを上がり、部屋に入る。 「おかえなさいませ香織様。ランチのご用意ができております。ディナーは魚とお肉、どちらにいたしましょうか?」 北島に鞄を預けた折、私は言う。 「ディナーの用意は大丈夫。今日は、私がやります」 「香織様が?」 「えぇ。ちょっと料理がしたくなったの。下ごしらえとかしちゃったかしら?」 「いえいえこれからでございますから!」 準備してたら申し訳ないと思ったけど、 「何をお作りになられますか? 買い物、これからなので」 「ありがとう。そしたら――」 むしろ進んで手伝
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第48話 消えた令嬢の亡霊

香織は今頃、のんびりしてくれてるのかな。 夕方のオフィスビルで、コーヒーを片手に仕事を続けながら、僕は思う。 これからの午後は、香織がいない日がしばらく続くのか・・・・・・。 寂しいけれど、香織とお腹の子の事を考えたら致し方ない。 しかし、ぽっかりと心に空いた穴が、僕の仕事の邪魔をした。 パソコンを打つ手が度々止まり、役員達の話も右から左へ流れてしまう。 今日の会議の内容も高梨君がまとめてくれてなかったら、完全に抜けてしまっていた。 ロスした気分がどうやら蔓延っている。 デスクの電話が鳴ったことにも、気づくのが少し遅れてしまうほどに。 「社長。警備部の美濃部さんがお見えです」 「通してくれ」 受付の社員に告げられ、僕はネクタイを締め直した。 「最上階ともなると階段は堪えますぜ」 美濃部が社長室に入るや言う。 スーツを着ていても筋肉は漏れていて、鍛え上げられた肉体という凶器を隠せていない。 「エレベーターを使えば良いじゃないか?」 「性に合わないんすよ。閉鎖空間に密集するのが」 「分からないでもないけど・・・・・・本題へ入ろう」 ギシリと皮のソファーが鳴り、互いに腰を据える。 「近頃、東京の港の辺りが騒がしい」 「報告にあった奴だな。税関でキチンと止められていたんだろう?」 「流石に戦車を日本へ持ち込もうなんてのは無茶が過ぎたようですよ。しかし、これは囮だった」 「囮?」 「衝撃的な出来事が、小さな事件にベールを掛ける。実は別の港から少量の武器と弾薬が流れ込んだ」 僕は目を眇めた。 警察や税関じゃないから関係ない、と言いたいところだけど。 美濃部が出したリストを見やると、 「ライフルにハンドガン。日本なら、巨大銀行も襲えるな」 「あぁ・・・・・・それを手引きしたのが」 「田沢湖 羽海。やはり、この情報に間違いないな」 「真っ黒に根拠ができたわけですか」 一条グループと平行して、彼の横にいた『田沢湖 羽海』の事も調べ上げさせていた。 時には法も犯してだ。 分かったのは、あの顔に隠された裏の顔。 「某国の反政府テロリスト。それ以前は、もう潰れた『田沢湖グループ』のご令嬢とはね」 名前だけは、父親の代から聞いていた。 どんな顛末を辿
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第49話 約束を守るために

薬品で眠らされてしまったのか。 頭がほんやりとして微睡んでいる。 目出し帽を被った怪しい男たちが部屋に押し掛けてきて、そのまま―― 顔を確認するためか、頭の麻袋を取った時、起き上がろうとする私を男達は押さえつけた。 日本語じゃない、聞き馴染みのない言語の乱暴な声。 (この人達・・・・・・普通じゃ無い) 連れて行かれる場所がどこであれど、私の運命はなんとなく察しができた。 怖い・・・・・・。誰か助けて。 打ち上げられた魚のように、私は必死にもがいた。 一瞬、窓から顔を覗かせたとき、すれ違う車の運転手と目があった。 「細道・・・・・・?」 向こうもこちらに気づいたのか、目を見開いてこおちらを見やる。 振り切ろうと、私が入れられた車も速度を増す。 夕陽も落ちた宵闇。 ヘッドライトから隠れては、捉えてを繰り返す。 攫った男達も焦りで苛立ちを見せ始め、怒声で言葉を交わす。 そして細道の車がピタリと背中に張り付いた。 これで助かる・・・・・・! そう思った矢先、男の一人が屋根を開けた。 その手に持っているのは、 (巨大な筒・・・・・・いいえアレは!?) 私が手を伸ばした瞬間、その筒が眩い光を放つ。 そして殆ど間もなく、足元にガラスの雨が降り注いだ。 「酷い・・・・・・」 まさか・・・・・・そんなまさか。 細道の車にロケットランチャーを撃ち込むなんて。 憂さ晴らしができたのか、男達はその炎を見ながら高笑いを上げている。 (・・・・・・こんな酷いことをして) あの炎の中じゃ、多分助からない。 私の頬に涙が通う。 縛られた腕と脚に力が入り、声なき声で私は叫んだ。 この人でなし共と。 車は止まり、私は再び麻袋を被せられる。 ハイウェイを走る車の騒音。 僅かに聞こえる波の音と潮の香り。 そして建物に入ると、古びた鉄と油の香りが充満している。 (海沿いの工場?) 助けを呼ぶために感覚を研ぎ澄ませていたが、それは無意味になった。 麻袋が取られた時、そこがどこなのか。 そして誰が、なんの目的で連れてきたのかを知ってしまったからだ。 この人が・・・・・・私をっ! 細道をっ! 香織が攫われた。 美濃部の報告と全てが繋がる。 攫うため
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第50話 扉を蹴破った先

「よぉ香織」 麻袋が取られる。 鋼鉄の階段をゆっくりと下りてくるのは 「純っ!」 私の元恋人の一条 純だ。 内装のデザインを決めるコンペ以来。 あのとき、一条に戻れと戯言を言っていた。 もしや、その恨みでこの騒動を? 「自分の何してるか、分かってるの?!」 「勿論だ。お前を取り戻す為には、少し強引でもやらなくちゃならなかった」 その口調はまるで仕方なしというようだ。 でも、人の命を奪うなんて間違ってる。 私が立ち上がろうとすると、連れてきた男たちが押さえつけようとした。 「お前たちは下がれ!」 不意の一言に私まで驚いてしまう。 男達の力が弱まり、私は震える足で立ち上がった。 「もう止めて! 何が目的なの?!」 「お前ならよく分かってると思うんだがな。綱島からお前を取り戻す。それだけだ」 自分から捨てたくせに、と私は内心思う。 しかしそう語った純はその気持ちを代弁するかのように錠剤の袋を取った。 「なにそれ?」 「これか?」 不敵に笑い、彼はゆっくりと近づいてくる。 私は逃げようとするが、足が竦んで尻餅をついてしまった。 「メフィーゴパック。お前の腹にいる穢れた血を洗い流すための奴だよ」 「待って・・・・・・嫌!」 私と慎太郎の証が壊されてしまう。 這うように逃げるが、彼は笑って私の腕を鷲掴みにした。 「奴の前で飲ませてやる。今の俺の力には、あいつだって為す術がないからな。誰も助けにこない」 何かの悪い夢だ。 現実を前にしても、そう思いたい私がいた。 私は工場の一角の密室に連れ込まれる。 「お前を使って綱島を呼び出す。そしたら、こいつで」 と、純は鋭い眼光で拳銃を輝かせながら言った。 (お願い・・・・・・来ないで慎太郎) 縋るように私は祈った。 どんなに力が強くても、武器には到底敵わない。 私はどうなっても良い。どうか慎太郎だけでも生きて欲しい。 大切な人が目の前で死んでしまうのは見たくない。 けれど、その心の声が届くことはなかった。 じっと冷たい鉄の床の上で蹲る。 なんで、こんなことになってしまったんだろう。 私がもっと純に気を遣ってあげれば良かったのか。 それともあの海で助からなければ良かった
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