終わりという言葉がシャンデリアに照らされ、海原のクルーズ船はざわめきという荒波に揺られる。「私とは終わりって、どうしてなの純?!」「はぁ・・・・・・お前も察しが悪いな。お前よりイイ女が見つかったからに決まってるだろ」 『一条 純』がため息交じりに言う。 なぜなの。真っ先に脳裏を過ったのはそんな問い。「お前の親父の権力には世話になったよ。だが、それも今日までだ。散々、家族をコキ使って金稼ぎしやがって」 今日まで? 初めて見る彼の一面に驚きながらも、その含みのある言葉に引っ掛かる。「あらぁ? この子、何のことか分からないみたいよぉ純」「やっぱお前を捨てて正解だったわ。なぁ羽海こんなんじゃ一条グループでコピー係すらできないぜ」「やだぁお荷物ぅ。あっ純、その腕時計」「あぁこいつか」 ちらりと見せたのは金の腕時計。「お前とペアの時計。もうゴミみたいなもんだからな」「ゴミって……それ記念日に買った……」 純はツカツカ歩いていくとホールの扉をバンッと開く。 見せびらかすように腕時計を外してニヤリとほほ笑む。 ハッと息を呑んだ瞬間、海へ投げ捨てる。 羽海のキャハハハという高笑いが聞こえると、耳元で囁く。「純ってば、あなたとの思い出捨てちゃったね」 体の震えが止まらない。気づけば頬を暖かい涙が伝う。「うっわぁ泣いてるぅ。ねっ見て見て純」「もう泣くくらいしか取り柄がないからなこいつ」 二人の嘲笑いがホール中に響き渡り、哀れみの目線が至るところから向けられている。「あー笑った笑った」「おいおい羽海。まだ楽しみはこれからだろう?」「そうだった! ほらあのモニター見て」 指を指す方向には大型モニターに映るのは日野内グループの株の値動き。 一直線に下へと伸びていく。 私のスマホが鳴り、 「大変だ香織! うちの株が暴落しておる!」 狙ったようなタイミング。 純の方へ向き直ると二人はキスをしながらこちらを横目に、また嘲笑う。「残念だったな香織。お前はもう、大企業のご令嬢様じゃなくなった」 私は手にしたスマホを折れんばかりに握りしめる。 確証はないけれど、でも間違いはない。「あらこわぁい。野犬がこちらを睨んでおりますわぁ! 純さん助けて」「あぁ。おいコンシェルジュ! 今すぐこいつを海へ放り出せ!」
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