偽装死計画まで残り3日、みやびは身の回りの始末を始めた。――祐市からおくられたプレゼントを段ボール箱に……なんてことはしない。なにしろ爽介に「死ぬ間際まで普段通りの生活を」と言われているのだから。カウントダウン1日目――みやびはVIP病室で暇を持て余していた。暇ついでにベッドから降りて腕立て伏せなどしてみる。「1238……1239……1240……」その時、病室のドアがノックされ、貴理子が入って来た。「何をしてるの、あなたは建前上、怪我人なんだけど?」「そ、そうなんだけど、“普段通り”に過ごせって言われたから……」「そうだった、この子の“普段通り”ってこれだった……」みやびは爽やかな笑顔で汗を拭っている。「それで、姉さんは何しにここへ?」「そうね、本題を言うわね、あなた一度、普通の男と付き合ってみなさい」この言葉に“規格外の女”みやびは困惑する。「祐市さんだって普通の男よ」「あれは普通じゃない!」「ええ~」「ということで、お姉ちゃんが“普通”の男を連れて来たから。入ってらっしゃい、佐藤!」そう言われて病室に入って来たのは、頭の先からつま先まで“普通”な男だった。身長は170センチそこそこ、現代男性としては高すぎず低すぎず。ルックスはそこそこ整ってはいるが、目を引くほどのハンサムではなく、記憶に残るほどのブサイクでもなく。白衣を着ているから医者なのはわかるが、インナーは普通のスクラブであり、医者としてはあまりに“普通”すぎる服装。何より普通なのは……「佐藤一郎です」「名前が普通! 下妻さんとか潮来さんがくると思ってた!」「あの、僕ら高校の時の同級生なんですが、僕のこと覚えていますか?」「関係性が普通! しかもぼんやりと記憶にあるあたり、親しすぎず遠すぎずの、普通の同級生!」貴理子がニヤリと笑う。「ふふふ、一生を添い遂げるような現実的な関係には、あなたが好きな恋愛小説みたいなドラマチックは必須ではないのよ!」フィクションみたいにドラマチックで派手なトキメキは、結婚という日常的な愛には不要――これが貴理子の持論である。貴理子自身は天才的な外科医であり、霞ヶ浦警備保障の特殊部門に所属するという非凡な身でありながら、その夫は非常に平凡な人物である。大学の頃から付き合っている地味で堅実な男、医療系企業の中堅社員とし
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