甘く啜り泣くような旋律が響く中、エレベーターの扉が開いた。『これは一体、どういう状況だ?』彼は若い。だが将来のトップ候補として既に頭角をあらわしはじめている有能で冷徹な男だ。男たちは黙って道を開けた。その先にいるのは、数人のマフィアに押さえつけられた哀れなジョバンニ。『|裏切り者《トラディトーレ》か』ジョバンニは頭の先からつま先まで染み込む怯えに身を震わせながら、額を床に擦り付ける。『裏切りなんかじゃない、レンジャーロッソはみんなの味方! つまり俺たちの味方でもあるんだ!』『ジョバンニ、お前には言ってなかったな、オレは日本育ちだ』『つ、つまり……?』『これはヒーローショーってやつだろ、俺らは悪役、奴らはヒーロー……敵だ』キョースケは突然、なんの躊躇いもなく銃を抜いた。その銃口がジョバンニの眉間に押しつけられる。『選べ、命乞いか、死か』『くうっ……だが、それでも、トートイを捨てるなんて、オレには!』あまりにガチの悪役すぎて、“会場のみんな”はドン引きだ。「うわーん、怖いよぉ」「レッド、早くやっつけて~!」爽介は史緒里にこそっと小声で囁いた。「こんなところでなんの躊躇いもなく銃を出すとは……やばいな、どの作戦で行く?」しかし史緒里は、俯いたまま肩を小刻みに震わせて答えない。「しーちゃん、ねえ、聞いてる?」突然、史緒里が膝をついて天に向かって両手を突き上げた。大袈裟すぎるほどの歓喜のポーズだ。「ブッッッラビッシオ! マフィアですよ、マフィア! 恋愛小説では稀によく見るけれど真っ当に生きていたら生涯出会わない職業ナンバーワン! しかも、この状況で銃を抜いちゃう傍若無人さが恋愛小説的! 若くてイケメンなのに要職についているっていう設定もまさに! 最高です!」史緒里は目をカッピラいて、ハンサムな“若きカポ”をじっくりと鑑賞し始めた。「ああっ、いいですね、ビジュアルは百点満点! “動画を見たら1話無料”でよく出てくるアレにそのまんま出演できそうな、ゴッリゴリの恋愛小説マフィアですっ!」爽介が史緒里の袖を引く。「おい、しーちゃん? おーい?」「こほん、ああ、えっと、作戦でしたっけ」「そう、作戦だ、まずはちびっこの安全を確保したい」マフィアと史緒里たちを中心に、“ヒーローショー”を楽しむ親子連れで完全な人垣ができている
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