All Chapters of 追いかけないで旦那様 〜奥様はお仕事中だよ!〜: Chapter 61 - Chapter 62

62 Chapters

恋の始まる日 ジョバンニ編①

これは、マフィアでありながら日本のサブカルチャーをこよなく愛する男、ジョバンニの物語である。ある土曜日の朝早く、ジョバンニはシャドーストライプの入ったダークカラーなスーツをピシッと着込んで、ボルサリーノを粋にキメ、イカす靴を履いて、すっかり正統派マフィアスタイルで出かけようとしていた。仲間たちがこれを見て囃し立てる。『なんだ、ジョバンニ、デートか?』ジョバンニは至極真面目な顔でこれに答えた。『いや、フィールドワークだ』『なんの』『もちろん、ニンジャの』『お前は……時々意味不明だな』ジョバンニのルームメイトであるルカが補足に入る。『あー、ジョバンニのやつ、今はニンジャにハマっててさ、毎晩ネットで、歴史に詳しい人とやりとりしてるんだよ』ジョバンニが誇らしげに頷く。『スィ、"オシショーサン"。フィクションの忍者にも、歴史の忍者にも詳しいセンセイ』なるほど、つまり、オフ会である。『どんな人だよ、オシショーサンって』『知らない、けれどイメージはある』ジョバンニは、うっとりと目を細めて、オシショーサンの姿を幻の中に思い浮かべる。『オシショーサンは博識、質問すると丁寧な長文回答をくれる。ネットの文章は礼儀正しくて古風。忍者の血を引く老師みたいな人』『なぜそう思った』『名前、オシショーサン、“千葉の滝夜叉丸”』『なるほど……?』それはネットでの通り名であって、多分本名には掠ってもいないと思うのだが……だが、ジョバンニの勘違いは止まらない。『オシショーサンはきっと年上の方、ならばこちらも、礼儀を尽くした格好でお会いせねば』『そうか、まあ、頑張れよ』待ち合わせ場所は半蔵門駅改札口。駅名を見ただけで、もう、ジョバンニ大興奮。『ハンゾー! ハットリハンゾー! ニンジャキング!』だがすぐに、敬愛するオシショーサンにみっともない姿を見せるわけにはいかないと、キリッと表情を引き締め直す。『礼儀とワビサビ、ニホンのココロ』ボルサリーノをちょいと整えて辺りを見回せば、ちょうど改札を通る一人のご老人が。『マンマミーア! 想像した通り、オシショーサン、老師!』その老人は長い白髪を後ろでキュッと一つに結んで、顎にはこれまた真っ白な山羊髭をフッサアと生やした——ありていに言えばカンフー映画に出てくる“老師”みたいな風体をしている。実はジョバ
Read more

恋の始まる日 ジョバンニ編②

二人が最初に向かったのは、もちろん半蔵門。早速あやめが講義を始める。「ここが半蔵門、半蔵率いる伊賀同心組の屋敷がこの近くにあり、彼らが警備を担当したというのがその名の由来だと言われています」「ハンゾー、シッテル! ハットリハンゾー! ブンシンノジュツ!」「実際の忍者は分身しません」「じゃあ、ヘンゲ!」「私自身もオタクなので創作物の中の忍者を否定するつもりはありませんが、実際の忍者と創作の忍者は別物です。物理法則や常識を凌駕するような術は、創作物の中だけの話です」「ホンモノニンジャ、ヨワイ?」「弱くはありませんね、彼らがこの門の警護を任され、家康公からの信頼を得ていたのは、有事の際に彼の身を守ることができるプロ集団だったからです」「ケービイン! タタカったことあります、シオリ、ツヨい」「そのシオリさんという方のことは存じ上げないのですが、まあ、そうですね、情報戦に強いエリート警備員だと思えばいいです、普段は城下で情報収集や、諜報を行い、陰ながら江戸の平和を守っていたわけですよ」「おう、キリコさん!」「その方のことも存じ上げないのですが、まあ、なんとなく把握しました。ネットで言ってましたものね、“ニンジャを見た”って」「スィ、ニンジャはいまもイル」「その話は後ほど、その前に、この半蔵門の説明をしますね。ここは江戸城の裏門、正確には“搦手門”というのですが、有事の際には城内からこの門を使って脱出して、こっち、見えます、ここ?」あやめが指さしたのは甲州街道。今ではなんの変哲もない道である。「この甲州街道を通って甲府城まで家康公を無事に送り届ける、そのために伊賀衆がここに配置されていたと言われています。簡単にいうと江戸城のバックドアの門番ですね」「セキュリティ、シオリさんとオナジ」「そうなんですね。さて、それはさておき、今日はこの甲州街道を辿って、半蔵ゆかりの地を巡りますよ」甲州街道を並んで歩きながら、あやめは解説を続ける。「創作物では“服部半蔵”が本名であるかのように語られていますが、今話しているのは服部半蔵正就、つまり“3代目服部半蔵”のことなんですよ」「サンダイメ? ハンゾー、いっぱいいた?」「いっぱいはいませんけど、正就はお父さんから“服部半蔵”の名前をついだんですよね、つまり個人名じゃなくて役職名みたいな感覚でしょうか
Read more
PREV
1234567
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status