彼は枕に背を預け、天井を見上げながら、感情を押し殺すように淡々と続けた。 「涼真は違った。宿題を見てくれたり、病院へ連れて行ってくれたりして、一番つらい時期を一緒に過ごしてくれた。叔父っていうより、頼れる近所のお兄さんって感じだったな……」 澪は黙って耳を傾けていた。 何か言葉をかけようとしたが、喉が塞がったように声が出ない。 彼女の認識では、子どもを愛する親なら、親子関係をそこまでこじらせるはずがないと思っていた。 自分のことを振り返れば、家は貧しかったけれど、養母の歩美はいつも優しく接してくれた。 幼い頃から育ててくれた祖母の奈津子に至っては、実の血を分けた家族と変わらない絆があった。 しかし、鷹斗の口から語られたのは、まったく別の現実だった。 母親は必死に努力しているはずなのに、親子の間には決して越えられない壁がそびえている――そんな現実だった。 「お母さんのこと、恨んでる?」 澪は、消え入りそうな声で尋ねた。 鷹斗は二秒ほど黙り込み、それからゆっくりと首を横に振った。 「恨んでないよ。でも、親しいとも言えないな。命をくれて、飯を食わせてくれたことには感謝してる。 だけど、あの人は自分自身を『日の目を見ない過去』として生きることを選び、私までその『過去』の一部にしてしまった。 私があちこちでバイトしてたのはさ、あの人に一日でも長く仕事を休んでほしかったし、愛想笑いを減らしてほしかったからなんだ。 でも、あの人は受け取ってくれなくて、毎回その金を突き返しては『大学のために貯金しろ』って言う。&n
最後更新 : 2026-08-05 閱讀更多