修は有言実行の男だった。その日の夜、さっそく昴のもとを訪れた。 昴の怒りも、この数日でいくらか収まってはいた。しかし父親としての面子もあり、自分から許しを与えるわけにはいかない。そこへ修が絶好の口実を運んできたため、渡りに船とばかりにこう告げた。 「修くんが直々にお越しくださったのです。今回の件は、これで不問としましょう」 だが、修はすぐには席を立たなかった。 数秒の沈黙のあと、言葉を慎重に選ぶように口を開く。 「一つ、お聞きしたいことがあります。澪は……その、何か体に問題を抱えているのでしょうか」 書類をめくっていた昴の手が止まった。 ゆっくりと顔を上げ、鋭い視線を修へ向ける。 「なぜ、それを知っているのですか」 修の喉が小さく上下した。 さっき澪に無理やりキスをし、パニック発作を起こさせてしまったなどとは、口が裂けても言えない。 修は視線を逸らし、曖昧に言葉を濁した。 「ええと……偶然、気づきまして。彼女、身体に触れられることに異常なくらい敏感なんです。少し触れただけでも、ひどく取り乱していました」 昴は眉をひそめたまま、何も答えなかった。 実のところ、澪にそんな症状があることなど、彼自身も初めて知ったのだ。 だが二人は知る由もなかった。 このとき綾音が廊下に立ち、書斎で交わされた会話を一言一句逃さず盗み聞きしていたことを。 ――身体的な接触に異常なほど過敏。 
最後更新 : 2026-07-26 閱讀更多