ダイニングが、一瞬にして静まり返った。 真っ先に反応したのは深雪だった。 「昴、それはさすがに……」 深雪は口を開き、事の重大さを指摘して、もう少し慎重に話し合うべきだと言いかけた。 だが、昴はとうに早苗の方を向き、これまでに見たこともないほど優しい目で彼女に問いかけていた。 「早苗くん、君はそれで構わないかい?」 早苗は勢いよく顔を上げた。昴と深雪を交互に見比べ、その顔には深い戸惑いと恐れが浮かんでいる。 「わ、私は……当たり前のことをしただけです。私のような者が、そんな……分不相応です……」 「ふさわしいかどうかは、俺が決めることだ」 昴の断固とした口調は、傍らにいる深雪の顔色がいかに蒼白であるかを、残酷なまでに際立たせていた。 それはまるで、「お前の口を挟む余地はない」と突きつけているかのようだった。 「早苗お姉様。お父様がそうおっしゃっているんですもの、お受けになってくださいな」 綾音は早苗の腕に自らの腕を絡ませ、優しく微笑みかけた。 「これから私たちは家族になるんですもの。ほら、一度『お父様』って呼んでみてくださいな」 早苗は唇を噛み締め、しばらくためらった後、消え入るような声で呼んだ。 「……お父様」 その姿を見つめ、昴の口元の柔らかな弧が、さらに深くなる。 彼は手を伸ばし、早苗の髪を優しく撫でた。
Dernière mise à jour : 2026-08-15 Read More