深夜、九条家の書斎。 修の目の前のデスクには、三つのファイルが整然と並べられていた。 数日間にわたる調査を経て、九条家の調査部門が望月鷹斗に関する第一次報告書を提出してきたのだ。 報告書A:某私立大学MBA夜間コース学籍照会結果――『該当者なし』。 修の口元がわずかにつり上がる。 学歴詐称。やはりあいつは詐欺師だったか。 報告書B:望月鷹斗。母子家庭。母親は望月葵、四十三歳。職業記録では某クラブ勤務のホステス。 修の瞳がわずかに細くなる。 母子家庭、水商売の母、貧しい生い立ち――彼が思い描いていた「詐欺師像」に、寸分違わず当てはまっていた。 報告書C:身元調査。望月鷹斗の戸籍異動、出生証明書、小学校から高校までの学籍には異常なし。しかし十九歳から現在まで、経歴に明らかな空白期間が存在する。正式な就労記録は確認できず、三か月前にヒマワリ森沢へ介護士のアルバイトとして勤務を始めるまでの足取りは不明。 修は三つの報告書を机に叩きつけ、目の前に立つ調査部門の責任者へ言い放った。 「詐欺師だ。間違いなく詐欺師だよ。学歴を偽り、経歴は不明、母親は夜の街のホステス。そのうえ高級介護士を装って身寄りのない老人に近づいている。これが詐欺師じゃなかったら何なんだ」 責任者は眉を寄せた。 「坊ちゃん、現時点では彼が詐欺行為を行ったという具体的な証拠は確認できておりません。被害届もなく、金銭トラブルもなく、苦情の記録すらありません。学歴や家庭環境だけで詐欺師と断定するのは難しいかと」 修は鼻で笑った。 一語一語を噛み潰すように言う。
最後更新 : 2026-07-21 閱讀更多