All Chapters of 五角関係が世界を滅ぼす!? 恋愛経験ゼロの私、エセ占い師になって恋愛を正す!: Chapter 111 - Chapter 120

121 Chapters

110話 ミシェルって感じ

 職員室に向かう途中でライオネル殿下とは合流できた。「……あ、ライオネル殿下。よいところに」「……ミシェル?」「はい? そうですが?」 まさか髪型変えただけで認識できないとかないよね? 視線が合わない。私の視線の少し上を見ている。髪が違うから凝視してるみたいだ。「痣、消えたのか?」 思いもよらない言葉に、目を瞬いた。額を見ていたのか、アウレリア様のお化粧すごい。いくつかいただいてしまったし、今後使うのも良いかもしれない。 それにしてもライオネル殿下に会ってから痣は髪で隠してたから、知ってるとは思わなかった。昔会った時に見せてたのかしら?「痣のこと、知ってたんですね?」「ああ……昔は隠してなかったからな」 そっか、そうよね。だからジュリアナ様に痣のことを言われたんだもの。昔の私は痣のこと隠してなかったのね。「あの痣がミシェルって感じがしてたから、残念だ」 ぽろっと目から涙が零れた。 あれ? なんでだろう? 「トラウマの痣がなくなって良かったって言うべきじゃないんですか?」って返すべきでしょ。 でも、ライオネル殿下の言葉はしっくりときて胸から離れない。「わ、悪いっ! お前にとってトラウマなのに……!」 私の涙を見て、ライオネルが慌てて謝る。トラウマだから泣いている……わけじゃない。でも、理由がわからない。きっと忘れた記憶の中の何かなのだと、それだけ理解する。私が感じてる感情は、嬉しい、温かいであって、トラウマの暗く、恐いとは矛盾するから。 ライオネル殿下から時折香る懐かしい匂いが鼻先をかすめた。ハンカチで涙を拭われたのだと気づいて顔をあげる。「ちがいますよ、髪型を変えたのに褒めてもくれないんで泣いてたんです。えーんえーん」 自分でもよくわからない気持ちを口にすることはできなくて、茶化して泣き真似をする。目から涙はもう出ていなかった。助かった。「おまえっ……」
last updateLast Updated : 2026-08-08
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111話 色はお前が選んだのか?

「どうですか? アウレリア様やケイティとお揃いなんですよ」 ふふんと口端を上げて自慢しておく。二人とお揃いなのだから、可愛くないわけがない。ちゃんと今度は言わせてあげる。「~~似合っている……」 真っ赤にして顔を背けられる。反応が激しすぎやしませんか? 可愛すぎたのかしら、私。まあ、あざとく下から見ましたけど? 訝し気な目を向けると、咳払いをしてライオネル殿下は言葉を続けた。「……色はお前が選んだのか?」「色ですか? 色はアウレリア様が選んでくださいました。私に似合うっていってくださって」「……そうか」 色が気になっていたようだ。たしかにライオネル殿下の目と同じ色だけど。 目と同じ色で思いだす。生誕祭の時に舞踏会の知識は叩きこまれた。それがいま、思いだされた。舞踏会では伴侶や婚約者の色を纏うとかなんとか。髪の色とか目の色とかは定番で、小説の舞踏会の場面でも読んだ気がする。生誕祭ではそういうものだと思っていたけど、舞踏会でもなんでもないのに身に着けてるのって……。 あれ? もしかしてそういうこと? 気が付いてこっちが恥ずかしくなってくる。 これは、話題を変えるしかないっ。「そ、そうだ! 私、ライオネル殿下のお手伝いをしに来たんです。書類を配って歩いてるとかで」「ああ、それでひとりで……逃げてきたの間違いか?」 ピンときたのか、軽口が返ってきた。まさに逃げて来たので、肩を竦めておく。「だって、ノクタリウス様とアウレリア様のやり取りにはらはらするんですもん」「ああ、納得した」 ふっと笑うライオネル殿下に、ほっとした。本当にさっきは気まずくて仕方なかったのだ。しかも真相を知ってる身として下手なことは言えないし。「まだ書類あります?」「ああ、こっちを頼む。別棟は俺の方で行く」「わかりました」 一緒に行っても効率は悪いだろう。手渡された書類を持って、私はライオネル殿下と別れた。 今日の仕
last updateLast Updated : 2026-08-09
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112話 ミシェルでいい

 次の日の登校は面白いほど視線をもらった。目立つでしょうね、今まで隠していたんだし。 いつも通りライオネル殿下と合流する。さて、彼はどんな反応をするのかしら。「ミ……シェル?」 その驚き顔、昨日も見た気がする。驚かしてやろうと思ってたから、素直に嬉しい。「痣が……戻っている?」 あ、そっかライオネル殿下には化粧で隠してたこと説明してなかったのね。それは驚くわよね。「ええ、この間のは一時、アウレリア様にもらった白粉で隠してただけです。落とせば元通りですよ」「いや……だが……」 説明に納得はしたものの、前髪をばっさりと切って、むしろ痣をみせるようにセットされた髪に戸惑いを隠せないようだ。昔の髪型らしいんだけど……。「そんなに似合わないかしら?」「いや、似合っている……良かったのか?」 心配気な視線に笑ってしまう。残念だと言ったのはどこの誰なのか。痣を見て言われた言葉が、どうして嬉しかったのかわかったの。私はミシェルでいいって言ってもらえたことが嬉しかったのだと。「だって、ミシェルっぽいでしょ?」「……ああ」 ふっと嬉しそうに微笑むライオネルに私も浮足立ったふわっとした喜びを感じた。「さ、行きましょう。そろそろ学院にはしばらく来れなくなるでしょうし」「ああ」 私が歩き出せば、ライオネル殿下も歩を進める。さあ、まだやることはたくさんあるのだから、気合を入れて行かなくちゃ。
last updateLast Updated : 2026-08-10
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113話 ライオネル毒殺事件

 ライオネル殿下が倒れた。その一報が城内を駆け巡っていた。「すぐに状況を整理してくれっ」 フィリップ殿下が躍起になりながら、毒殺事件として指揮を執っている。これが公表されたなら、国のダメージは計りしない。下手をするとゲームのシナリオ通りに隣国が攻め込んできてしまう。 けど、実際外には情報が出ないように統一されている。「茶を運んだ黒髪のメイドはまだ見つからないのか!?」 フィリップ殿下はいら立ちを隠せていない。「見つからないでしょうねぇ……」 柱の陰からこっそり見つつ呟く。と、いうのもその黒髪のメイドは何を隠そう私なのだ。色替え魔法が使える魔法師に髪と目の色を変えてもらった。最近トレードマークの痣は、アウレリア様からもらった化粧で隠し、メイドとしてこっそり出入りしていたのだ。 ちなみに私自身は病弱設定を活かして、しばらく休学している。「ライオネル殿下、寝ていなくてもよろしいのでしょうか?」「兄上の慄く様を見せてくれるんだろう?」 倒れたと言われている第二王子が、メイドの服を着た私の後ろからフィリップ殿下の必死な様子を眺めている。「私、フィリップ殿下がちょっと可哀想に思えてきたのですが……」 この計画はすでに王様、王妃様に許可を得て行っている。よくある未来予知は一度同じ場面を再現することで、その後起こらなくなったりもする。それに一度、毒殺されかけた事実が出れば、警備が厳しくなるわけで、そうそう二回目の毒殺をすることはできない。 よって、ライオネル殿下の毒殺を偽装したのである。毒ではなく睡眠薬を入れたお茶を私が運んで、事情を知っている主治医が毒だと判断する。 主要人物のフィリップ殿下にのみ偽装だとは教えていないので、ものすごい剣幕になっているのである。泣いたことをバラした仕返しにしてはやりすぎた感が否めない。「いいさ、もしものために兄上にも予行練習になるだろ」「もしもを私は失くしたいのですが?」 不吉なことを言わないでほしい。フラグという文化があるので、おちおちそういうことを言ってもらっては困るのだ
last updateLast Updated : 2026-08-11
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114話 疑惑のジュリアナ

 フィリップ殿下の元に影が三つ。アウレリア様とケイティ、そして護衛のラルフさんだ。「フィル! ライオネルは!?」 アウレリア様が勢いよく、フィリップ殿下の腕を掴んだ。表情は必死で、取り乱しつつも心配しているのがよくわかる。「アウレリア、落ち着いて。レオは寝ているから会うことはできない」「そんなライオネル殿下……」 フィリップ殿下の説明にケイティも表情を曇らす。「今はシルヴァレーン嬢が看病しているから大丈夫だ」「ミシェル様が一番おつらいですよね……」 アウレリア様とケイティの嘆く姿にぐらぐらと決心が揺れる。「うぅ……まだネタバラシしちゃだめですか?」「俺たちは怪しいヤツを捕まえるんだろう? それまではバラさない方がいい」「ぐぅ……」 あまりに悲しくて変な声が出た。それまでみんなを欺き、なおかつ悲しむ様子を見なきゃいけないのだ。悲しいし、罪悪感が半端ない。誰よ、こんな計画立てたの! 私なんだけど!「早く終わらせたいなら俺の毒殺を考えていたヤツを捕まえるんだな。メイドとして動いてる最中、怪しいヤツはいたのか?」 メイドとして数日動いていたので、いくつか目撃したことはある。怪しまれないようにライオネル殿下と連絡はとってなかったので、気になるのだろう。「そうですね……一番気になったのは、ジュリアナ様が厨房にいるのを見たことでしょうか」 何故か、謹慎中の彼女が王城に入り込んでいた。謹慎中だからこそ親に連れられて、謁見を請うていたのかもしれない。と思ったものの、じゃあなんで厨房に? という疑問が残る。仮に彼女が犯人なら楽だ。 でも……。「俺が狙われるのは合わなくないか?」「そうなんですよ。だから、おかしいな。って思ったんですけど、フィリップ殿下の寝室に運ぶお茶について詳しく聞いていて、ご令嬢に逆らえなくて使用人が困ってました」 ジュリアナ様はライオネル殿下派なのよね。私が婚
last updateLast Updated : 2026-08-12
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115話 宰相の子ども

 もし仮にジュリアナ様がゲームではライオネル殿下の婚約者に収まり、フィリップ殿下を毒殺しようとして誤ってライオネル殿下に毒を持ってしまった。それで国が世界が崩壊するなんて、つじつまが合わなすぎるわよね。誰かが意図をもって毒殺しようとするのがしっくりと来る。「他に見たといえば……ノクタリウス様のご両親が宰相様に閲覧を願っていましたね」「ああ、あそこのことか……」 何か訳ありのようだ。でも、たしかにおかしいかもしれない。どうして彼は宰相の孫として登場するんだろう? ノクタリウス様のお爺様はどうして子どもに宰相を継がせなかったのかしら。「宰相殿は優秀だが、子育ては上手くなかった。ということだ。ノクタリウスは宰相にあらゆることを叩きこまれて優秀だがな。両親は察しの通りだ」 なるほど、両親は宰相としての才能がなかったのね。「しかし、王城へ入ってくるということは、他でお仕事をなされてるんですか?」「あいつらは名前だけだ。領地経営を表上任せている体になっているが、宰相殿かノクタリウスが管理していると聞く」「ダメダメだと」「どうせまた宰相殿に金の無心でもしに来たんじゃないか」「本当にダメな人たちじゃないですか……」 思わず本音が零れる。ノクタリウス様もそんな両親に育てられて大変だったろうに。「お前、他のメイドたちと仲良くしてただろ? 噂とかはなかったのか?」「噂……ですか……」 ありましたよ。私と貴方の恋物語が尾ひれはひれをつけて出回ってたり、アウレリア様とフィリップ殿下の悲恋話がこれまた壮大なスケールになってたり、ケイティとラルフさんの話もあったし、三角関係だの四角関係だの、しっちゃかめっちゃかでしたよ。噂怖い……。 唯一良かったのは、勧めてもらった小説がとても当たりだったことくらいかしら。あれは良かった。平民のシンデレラストーリーで成り上がり系だったけども。ケイティとフィリップ殿下の噂に拍車をかけてたわね。「&hell
last updateLast Updated : 2026-08-13
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116話 暗殺者

女性の噂話は恋愛と相場が決まっているのだ。ただ、噂の中にひとつだけ聞きなれないものがあった。それだけは確認をしておきたい。「恋愛話の中でひとつだけ気になったのがあるのですが、隣国の皇子がアウレリア様に好意を持っているという噂は本当なんですか?」 ゲームでそんな話は出てただろうか。攻め入る口実だと思っていたけど、まさかそこも恋愛関係が関わってこないわよね?「会ったのは数回、アウレリアの容姿なら惚れてるのもわからなくはないが、俺が見てる限りそういう感情を出してはこないな。政略結婚だろう」 隣国の皇子はあくまで国の繁栄のためであれば、どちらでもいいわけね。アウレリア様を娶って国交を結ぶのでも、戦争でカイリス国を手に入れるのでも。戦争をすればそれだけ死者も出る、天秤にかけた結果、この政略結婚が成されたわけね。スパイまで送ってライオネル殿下を狙い、関係を悪化させる意味はないか。 ライオネル殿下には言わないけど、実はノクタリウス様を疑っている。あれだけの愛情をアウレリア様に注いでる男が、アウレリア様に好きな人がいるって知ったら発狂しそうだな。と思った。そうなれば世界なんて滅ぼしちゃいそう。勝手なイメージなんだけど。 でも、そんな動きはないのよね。ラルフさんとのやりとりを見る感じ、意識はしてるからアウレリア様とラルフさんの仲を知らないってことも……ないよね? ラルフさんはあれだけ堂々と人に見せつけるんだから、ノクタリウス様にも見せつけてると思うんだけどなぁ。「怪しい人物はわからない。となりますと、次の手を打つしかないですね。毒殺したかった相手が先に毒を盛られて寝込んでたら、ライオネル殿下はどうします?」「条件によるが、俺の暗殺が成果報酬であれば直接寝込みを襲いに行く。早い段階でな」「別の暗殺者がいるのであれば、先に殺さなければならないからですか?」「ああ。だが、暗殺が目的ではないのなら、しばらく様子を見るだろう」 ゲームでは命は取られずとも下半身不随になって、戦闘はできない状態になっていた。と、なるとやっぱり様子見かしら。「様子見をするにしても内部の情報がほしいだろうから、毒殺しようとしたヤツは確実に城内
last updateLast Updated : 2026-08-14
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117話 寝室に忍び込む影

 そんなわけで、私はまだメイドとして城内を歩き回っている。もちろん、フィリップ殿下には見つからないように行動している。 ご令嬢という立場もあるので、客室を借りて、夜間は外出禁止を言い渡されてるけど、守っていたら情報を取り逃すかもしれないじゃない。 だから、夜間、人が少ない廊下をランタン片手に歩いている。ライオネル殿下に見つかったらお小言をいわれそうだ。 人影を見つけた。私と同じメイド服。けれど、最初の私同様、ご令嬢さが隠せておらず、遠目からでもそれが誰だかは予想できた。 彼女は辺りをきょろきょろと見回して挙動不審になりながらも、足は迷っていない。あっちの方向はライオネル殿下の寝室じゃなかったかしら。 ランタンを消して、彼女の持つ明かりを頼りにこっそりとついていく。月明りもあって、見失うことはない。 彼女はライオネル殿下の寝室まで辿りつくと、扉を少し開けて滑り込むように中に入る。 どうしようかしら、ライオネル殿下はこの部屋にはいないのよね。わざわざ敵が来そうなところは使わないって言ってたし。でも、人が入ったなら知らせる何かを仕掛けときそうよね。 そこまで考えて、後ろから声をかけられてびくっと肩が跳ねた。「おい、中に入ったのか?」 ライオネル殿下が訝し気な顔でこちらを見ている。私は首を横に振って応えた。「いえ、中に入ったのは……ジュリアナ様です」「……入るぞ」 私が答えると、ライオネル殿下は寝室のドアノブを掴んだ。私は彼の後ろから部屋の中に足を踏み入れる。「誰だ!」 ライオネル殿下の声に、ベッド際に立っている女が身を震わせた。ゆっくりとこちらを見る。 目立つ赤い髪を隠してもいないらしい。光に照らされ、彼女が誰なのかを映し出していた。ライオネル殿下を認めて、ジュリアナ様は叫びに近い声をあげる。「ら、ライオネル殿下……!」「そこで何をしている」 ライオネル殿下はジュリアナ様だとわかっていても、まだ名前を呼ばない。相手は、まだ気づかれてないと思っているのか、震えな
last updateLast Updated : 2026-08-15
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118話 別の形の毒殺

「ライオネル殿下は毒で動けないはずですわ、どうして立っておられるのですか!?」「……毒で動けなかったとして、その短剣を、お前はどうするつもりだったんだ?」「こ、これには毒が塗られてるって、刺せば体の一部が麻痺して動かなくなるって!」 ジュリアナ様は混乱しているのか叫びながら告白してくれる。どうやら誰かに何かを吹き込まれているらしい。「ライオネル殿下が大怪我をすれば、シルヴァレーン家は責任を取らされるわ! そうすれば我が家は、次期婚約者候補になる!」 しかし、吹き込まれてる内容がめちゃくちゃね。なんで私の関係ないところでライオネル殿下が怪我して、私の家が責任とらされなきゃいけないの? それは警備の薄い王城のせいでしょうが。 私は、冷たくジュリアナ様に言い放つ。「そんなわけないじゃない」「嘘よ! だってそう聞いたもの!」 けど、大声で突っぱねられた。聞いたって、やっぱりジュリアナ様が主体ではないみたいね。冷静に返す。「誰に?」「宰相さんよ! あの人がすべて手筈は大丈夫だからって、だから、私は――!」 宰相ってライオネル殿下も慕ってるあの優秀な人のこと? 嘘でしょ? こんなとんちんかんなことを吹き込む?「待て、本当に宰相か?」 私が動揺して言葉に詰まっていれば、ライオネル殿下が眉をひそめて問いただす。「そうよ! ノクタリウス様のお父上と名乗っていたもの!」 ダメな人間が勝手にやった口。それ宰相様じゃないから。ダメ人間の方だから。「……グレイヴァンド家か。すぐ取り調べよう」 ライオネル殿下がため息を吐いてから、肩を落とす。呆れるわよね、本当に。私はなおも冷たい視線を向けながら、ジュリアナ様に聞いた。「宰相様の顔もご存じない?」「~~っ! なんなのよ、なんのよ、もう!」 私とライオネル殿下の態度に、ジュリアナ様は地団太を踏んだ。相当お怒りのようだ。勝手に納得されているのだから、わけがわかなくて感情が爆発してるのだろう。 なんて悠長に眺めてたら、ジュリアナ様
last updateLast Updated : 2026-08-16
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119話 気がまぎれる

 ライオネル殿下はしばらく寝たきりだと聞く。 私は学院に行く気力もなく自室に籠りきりになっている。だって、もしゲームのようにライオネル殿下が動けなくなってしまったら、私があの場にいなければ良かったら、と頭がいっぱいだったから。 すべてから逃げ出して辺境の地に戻ってしまいたい。何もかも知らないフリをしたい。挫けそうな心の後ろ髪を引くのは、ライオネル殿下への罪悪感。 城からの一報もないまま、しばらく休んでいた私を心配して、アウレリア様とケイティが自室に訪問してくれた。メイドがお茶の準備をして下がる。「アウレリア様、ケイティ、来てくれてありがとうございます」 カップに口をつけてから、二人にお茶を進める。ひとりでいるといろいろな考えが頭にぐるぐるするから、ありがたかった。でも、二人にはライオネル殿下との作戦を話していなかったので後ろめたさがある。 学院の様子だとか、休んでいた時の勉強についてだとか、たわいない話をしてくれる。気がまぎれる。でも、頭の片隅では、目の前で血を流すライオネル殿下の姿がいまもちらついて離れない。「ミシェル……やっぱりライオネルのこと気になるわよね?」 心ここにあらずなのが透けて見えたのか、アウレリア様が心配そうに核心に触れて来た。ドキっとする。「はい……」 私があの場にさえいなければ、ライオネル殿下は毒の塗られたナイフで刺されることもなかった。もし、あの毒でライオネル殿下の足が動かなくなったらどうしよう。ゲーム通りに進んでしまう。「貴女のおかげで解毒が速やかにできたそうよ。だから、命に別状はないわ」「……はい」 私もそう聞いている。命に別状はない。それは喜ばしいことだけど、まだ目が覚めないらしいし、起きてから足が動かないという症状が出ることだってある。 なんであの時、私なんかを庇ったの……?「それでも気になるわよね」「…………」 罪悪感が胸に突き刺さる。「ミシェル&h
last updateLast Updated : 2026-08-17
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