職員室に向かう途中でライオネル殿下とは合流できた。「……あ、ライオネル殿下。よいところに」「……ミシェル?」「はい? そうですが?」 まさか髪型変えただけで認識できないとかないよね? 視線が合わない。私の視線の少し上を見ている。髪が違うから凝視してるみたいだ。「痣、消えたのか?」 思いもよらない言葉に、目を瞬いた。額を見ていたのか、アウレリア様のお化粧すごい。いくつかいただいてしまったし、今後使うのも良いかもしれない。 それにしてもライオネル殿下に会ってから痣は髪で隠してたから、知ってるとは思わなかった。昔会った時に見せてたのかしら?「痣のこと、知ってたんですね?」「ああ……昔は隠してなかったからな」 そっか、そうよね。だからジュリアナ様に痣のことを言われたんだもの。昔の私は痣のこと隠してなかったのね。「あの痣がミシェルって感じがしてたから、残念だ」 ぽろっと目から涙が零れた。 あれ? なんでだろう? 「トラウマの痣がなくなって良かったって言うべきじゃないんですか?」って返すべきでしょ。 でも、ライオネル殿下の言葉はしっくりときて胸から離れない。「わ、悪いっ! お前にとってトラウマなのに……!」 私の涙を見て、ライオネルが慌てて謝る。トラウマだから泣いている……わけじゃない。でも、理由がわからない。きっと忘れた記憶の中の何かなのだと、それだけ理解する。私が感じてる感情は、嬉しい、温かいであって、トラウマの暗く、恐いとは矛盾するから。 ライオネル殿下から時折香る懐かしい匂いが鼻先をかすめた。ハンカチで涙を拭われたのだと気づいて顔をあげる。「ちがいますよ、髪型を変えたのに褒めてもくれないんで泣いてたんです。えーんえーん」 自分でもよくわからない気持ちを口にすることはできなくて、茶化して泣き真似をする。目から涙はもう出ていなかった。助かった。「おまえっ……」
Last Updated : 2026-08-08 Read more