All Chapters of 五角関係が世界を滅ぼす!? 恋愛経験ゼロの私、エセ占い師になって恋愛を正す!: Chapter 121 - Chapter 130

144 Chapters

120話 許しちゃった

 良い知らせが来ればいい。でも、でも本当に? 私、結局何もできてない。アウレリア様の恋愛事情だって、ライオネル殿下が戦場に立てなくなれば防ぐことなんてできない。何も好転なんかしてない。「私……ライオネル殿下の未来を知ってるの。下半身不随になって歩けなくなるわ」 もうダメだった。涙が止まらなくて、口は勝手に動いてしまう。いっぱいになった水があふれるように、言葉がどんどん溢れてくる。「回避しようとしたの。でも、ダメだった」「ミシェル、落ち着きなさい。占いをしたの?」「きっとダメだわ」 このまま魔王が復活して世界も滅亡するんだ。「ミシェル!」 アウレリア様の滅多に聞かない大声にはっと意識が戻される。「ミシェル、占いで見たの?」 今度は優しい声色でアウレリア様は問いかけた。私はこくんと頷く。未来を知っている、占いと言えばそうなのだろう。「それは怖かったわね……」 よりいっそう背中を撫でる手が優しくなった。涙が止まらない。 最初はひとりで逃げればいいと思っていたのに、今、とても悔しい。何もできていないことが悔しい。「ごめんなさいミシェル。もっと早く言えばよかったわ。今朝、ライオネルは目を覚ましたの。解毒が早かったおかげで重症化はしていなくて、身体の影響もなかったわ。安心して」 アウレリア様はなるべく自身を落ち着かせて私に言い聞かせる。ライオネル殿下が目を覚ました。足の影響も特にない。良かった……。 安堵で胸がいっぱいになる。 でも、なぜ来た時にすぐ話してくれなかったのだろう? 胸がちくりと痛んで、アウレリア様をじっと見てしまう。「貴方が、ライオネルの味方かどうかわからなかったの……わたくし、ミシェルがライオネルに占いのことを教えたの知ってたから」「……いつ、ですか?」 占いのことを知っていたと告げるアウレリア様に胸を鷲摑みにされたような衝撃を受ける。何をどのように知っていたのか、ライオネル殿下の味
last updateLast Updated : 2026-08-18
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121話 好き

「す、好きって――」「そうですよ! ミシェル様は自覚するべきです!」 ケイティからの畳み掛けに、喉が詰まる。ずっと認めないと目をそらしていたのに、第三者の方が見えてしまうこともあると痛感する。「もう、わかってるでしょ?」 アウレリア様に念を押された。取り繕うことはできない。私は、ライオネル殿下が好きだ。それをこの場の全員がわかっていることに顔を抑えて身体を縮こませてしまう。「~~っ……ライオネル殿下には言わないでください」 好きとは口にだせなくて、なんとかそれだけ絞り出した。なんでバレバレなんだろう? 恥ずかしい。「やっと認めたわね」 満足そうなアウレリア様の声色に顔があげられない。むずがゆくて、逃げ出したい。「ふふ、ミシェル様はライオネル殿下のどんなところが好きなんですか~?」 けど、ケイティが追い打ちをかけてくる。答えられるわけないじゃないっ! まだ自分の感情を飲み下すのに精いっぱいよ!「今自覚したばかりの人間に、すぐに恋バナを求めるなんて、貴女鬼畜ね」「えぇ!? だって気になるじゃないですか~!」 アウレリア様の呆れた声と、抗議するケイティの声。私は息を吸って、吐いて心を落ち着ける。 恋バナは、しない。だって……「別に私のは成就させるつもりはありませんので」「どうしてですの!?」「なんで!?」 私がようやく口元の手を離して言った言葉に、二人は噛みついて来た。二人の視線の圧がすごい。私は目を泳がせながら、今の状況を整理しつつ口にする。「だ、だって今してるのは契約の婚約ですし、私が視た未来を回避するために協力してるだけですからっ!」「はあ、ここまでわかってないなんて……ライオネルも苦労するわね」 片手で頭を抱えて、アウレリア様が呆れたように言う。でも、私も折れるつもりはない。「むぅ……だって本当にただの協力者なんです」 だいぶ落ち着いてきて反論ができる。「だからと言
last updateLast Updated : 2026-08-19
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122話 デートからどうですか?

「もう! 私はミシェルに諦めてほしくないわ」 アウレリア様の言葉に頭に血が上る。人には諦めてほしくないって言うくせに、アウレリア様はラルフさんのこと諦めて隣国に嫁ぐじゃないっ。 いまだに気持ちが高ぶってるせいで、そのまま口をついて出た。 「アウレリア様がそれを言っても説得力ないです。自分の恋愛諦めちゃってるくせに」 ふんっと、鼻息荒く言い切ると、みるみるうちにアウレリア様の顔は真っ赤に染まった。 しまった。「ちょ、ミシェル! 貴女どこまで知ってるの!? 占い!? 占いなの!?」 いつもの令嬢然とした姿ではなく、少女のような動揺の仕方で私に詰め寄ってくる。 口から出たものを取り消すことはできないし、どうしよう。諦めてもらうには、やっぱりアウレリア様と同じですって主張するのがいいわよね。主張するだけじゃアウレリア様のことだから、私は良いわよ。って言われそう。だから、一緒に諦めてもらうのがいいかしら。「アウレリア様が頑張るなら私もがんばります」 質問には答えずにきっぱりと言い切った。これなら、諦めてくれるだろう。そう思った。「~~っ……わたくしだって、出来たら彼と一緒になりたいわよ……」 吐かれたのは弱音。顔を下に向けて肩を小刻みに揺らしている。 ど、どうしよう、言い方を間違えたかしら……?「じゃあ、アウレリア様も頑張りましょう! お二人ともデートからどうですか?」 ぱっと暗い雰囲気を明るくするケイティにアウレリア様は顔を上げて、口をへの字に曲げた。「……ミシェルが先にやるなら考えるわ」 その言葉に、本当は諦めたくはない。でも、自分の気持ちを認めて、優先してしまうことが怖いのだと、解った。 学院生活は短いようで長かった。引きこもっていた私にとって、誰かと一緒に行動して、話して、笑いあった時間は貴重だ。だからこそ、私はアウレリア様も、ケイティにも幸せになってほしいと思う。 今、少しでも素直になれる機会がアウレリア様にあるのだったら&h
last updateLast Updated : 2026-08-20
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123話 なんで私を庇ったんですか

 面会許可が出て、ライオネル殿下にすぐに会いに行った。自分の目でしっかりと見ておきたいと気持ちが焦ったから。 当の本人はすでに執務室で仕事をしていたので、私は絶賛不機嫌中だ。「なんでそんなに不機嫌なんだ」 私の前のソファに座っているライオネル殿下が納得いかないと眉根を寄せている。私が来たことで一応休憩の体は取ったので、ふぅっと息を吐いた。「……もうお仕事ですか?」 心配したのに。横目でねめつければ、ライオネル殿下は苦笑する。「そうは言ってもな、目が覚めてからだいぶ経ってるぞ? 特に異常もないしな」 私が一番気にしていたであろう、足を動かしてみせる。「もっと早く会えれば良かったんだが、ごたごたしててな」「いいんです、それは。ええ、怒ってません」 会えなかったのは仕方ないのはわかってる。私が怒っているのはそこじゃない。「……怒ってるだろ?」 全然わからないと眉を下げて困った顔をされる。私はもう一度勢いよく息を吐いた。きゅっと服を掴む。「……なんで私を庇ったんですか」 どうして私なんかを庇ったのか。庇わなければこんな大事にもならなかったし、もしもだってなかったのに。「そりゃあ、か弱い令嬢を誰だって庇うだろ」「でも、貴方の命のが大事でしょう」 第二王子の命の方が、隣国に拮抗できるほどの力を持つ貴方の命の方が大事だ。 私の言葉にライオネルは瞠目する。「だって、第二王子じゃないですか、貴方がいなくなったら、誰が隣国の抑止力になるのですか? 抑止力に誰もなれなかったじゃないですかっ!」 もっと自分の命の価値をわかって! 心の叫びのままに言い放った。 ライオネル殿下はすっと真剣な表情をして赤い瞳で私を射抜く。どきっとした。「……もう二度とミシェルを失いたくない。と思った」「私……死んでません」 思わず言い返したけど、心臓の音が激しくうるさい。どういう意味な
last updateLast Updated : 2026-08-21
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124話 謝罪としてデートしてくださいっ

 でも、まだ話は終わりにしない。「……目の前で、親しい人が刺されるのは私もイヤです」 少し出てしまった涙を拭った。目が覚めてよかった。後遺症もなくてよかった。下手したら、彼は下半身が動かなくなる可能性があるのに。私なんかを庇ってほしくなかった。その気持ちがにじみ出てしまった。「悪かった」 ライオネル殿下が申し訳なさそうに謝るので、ここだと思った。どこかで言わなきゃいけないし、いつまでも後回しにはできない。ぎゅっとスカートを掴んで決意を固める。「じゃ、じゃあ……謝罪としてデートしてくださいっ」 どもってしまった。 ライオネル殿下は目を瞬かせてどう見ても動揺している。やっぱり言うんじゃなかったという焦りから、口が開いていた。「ほら、アウレリア様がラルフさんとデートするから、私におススメのデートスポットをお願いって言われたんですよ。だから、協力者として付き合ってほしいと思いましてっ!」 早口で捲し立ててしまい、顔があげられない。こんな様ではアウレリア様に笑われてしまう。「わかった。日取りを確保しよう。アウレリアとの仲が進展してるようで何よりだ」「はい」 普段と変わらない声色にほっとして顔を上げた。ちょっと笑っていて、一瞬戸惑ったけど普段も笑ってることのが多いように思えて、心臓がどきどきして嬉しくなってしまった。浮かれてしまいそうで、特別なことではないと自分に言い聞かせる。 その後、フリィップ殿下ともう一度いままでのおさらいをするべくフリィップ殿下の執務室へと私たちは移動した。
last updateLast Updated : 2026-08-22
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125話 実行犯

「と、いうわけで、ミシェルの占いを逆に使って敵を炙り出そうとしたわけだ」「なぜ私に言っておいてくれなかったんだ。本当に心配したんだぞ!」 私には言えなかったであろう文句をフィリップ殿下はライオネル殿下にぶつけている。「わかっていたら対応が甘くなるだろう。もし本当に占いの通りに俺が動けなくなったら兄上が指揮をとるんだ」「滅多なことを言うな!」 悲壮なフィリップ殿下がかわいそうになってきたし、そろそろライオネル殿下に反撃をしてもいいころ合いだろうと思って、私は横から口を出した。「本当はフリィップ殿下の必死な顔見て嬉しそうにしてましたよ」「ミシェルっ!」 ライオネル殿下に咎められるも、視線をそらして知らん顔をする。「……おまえというやつは……」 フィリップ殿下のあきれ顔初めて見た。弟の前だと表情豊かね。普段笑ってるイメージしかないのに。「ミシェルに逃げ込む兄上が悪い」 ぷいっと顔を背けて子どものように反抗するライオネル殿下。フィリップ殿下は、ふっと笑う。「ああ、あれは私が悪いかもな」「……わかっているなら、いいです」 ライオネル殿下は笑われたのが癪には触ったと眉を顰めながらも、言葉では許してしまっている。フィリップ殿下はははっと笑った後に、表情を引き締める。「さて、では今回の事件後についてミシェルにも共有しておこう。興味深い内容が出て来たんだ」 ライオネル殿下が倒れた後の話について話をしてくれるようだ。自然と背筋が伸びる。「実行犯のジュリアナ・ハートフォードだけど、捕まってはいない」「えっ!?」 すぐに捕まったかと思ったのに。どうやって逃げおおせたというの?「目撃例はいくつもあるけど、どうやら逃げるのを手引きした者が居たようでね。最後の目撃ではハートフォード嬢が馬車に乗ったところ。その馬車は隣国への道をひた走ったようだと報告を受けているよ」「ハートフォード家は一切の関与を否定してるがな」「実際、ハートフォード家が
last updateLast Updated : 2026-08-23
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126話 隣国の関与疑惑

「ずいぶん長い間、国政のお金が抜き取られているんだ。わからないように隠蔽されていたんだけどね」「どうしてわかったのですか?」「君が占いで国が亡ぶと言っていただろう? ライオネルが戦闘不能になっても、すぐに我が国が倒れるほどの国政はしていないんだ。だけど、雪崩れるように国が負けて魔王が復活するのだろう? だとしたら、すでに国内で裏切られている可能性があるから、いろいろと調べたんだ」 じゃあ、すでに国を揺るがすための下準備が行われていたってこと?「そちらは誰が行ったのか調べはついているのですか?」「……巧みに隠されていたし、いくつもの方向から行われていた。十中八九、城内の事情に精通している人物だね。時期を遡っていくと、宰相経由の仕事からの報告が大半になっていった。だから、宰相に今確認を取っているのだけど、だいぶ動揺しておいでだったよ。どうも宰相に上げてくる前の報告書が実質と異なっていたみたいでね。実質と合わせて宰相が自ら検査している。実際に行っていたであろう候補は宰相の息子とその嫁、ノクタリウスの両親と言った方が早いかな」 その二人って、ライオネル殿下はあまり頭がよろしくないって言ってなかったかしら? 確認するようにライオネル殿下の方を見る。「俺はあの二人が考えたことではないと思っている。ハートフォード嬢同様、誰かが手引きしてるのだろう」「その流れを誰が意図して行っているのか、調査中というわけだね」 結局その誰かはまだわからないということね。ジュリアナ様は隣国へ亡命された。この事件もつながっているというなら……。「この件に隣国が絡んでいるとお考えですか?」「ああ、隣国が我が国を陥れようとスパイを仕込んできたと考えているよ。規模が大きいからね、独断の動きでは無理があるんだ」 と、すると隣国の人間がスパイとして入り込んでるか、この国の人間が買収されてスパイになっているかのどちらかよね。でも、城内の事情に精通している人物であったら元々そういうポジションの人間が買収された考えた方が自然。 そこまで考えて、私は城内に対して詳しくないのだと気づく。ノクタリウス様の両親
last updateLast Updated : 2026-08-24
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127話 デートの待ち合わせ

 それから、何があったのか。実はあまり覚えていない。というのも、デートの日取りが思ったよりも早く決まって、どんなプランで行けばいいのか、場所はどこがいいのか、常に頭がそっちに気を取られていたから。 だって、デートなんて前世も含めてしたことなんかないっ。好きだと自覚したからといって、アプローチしすぎるのも、できないし。でも、できればライオネル殿下にだって楽しんでほしいじゃない。 邪な心と、楽しんでほしい心の合間でプランが揺れ動いてる。 あと、口走っちゃったアウレリア様の下見デート発言もあるから、そっちに合わせたプランにしないといけないし。考えることがいっぱいあったのだ。 当日デート、アウレリア様とケイティが気合を入れて街娘にしてくれた。一般人用の服装にお化粧を施してもらったけど、髪飾りやアクセサリーは道中買ってもらいなさいとつけることはなかった。 待ち合わせは、噴水の前。ちゃんとできるだろうか、不安が頭をもたげる。時間より少し前に来て、噴水の前にあるベンチに腰掛ける。「ふー」 大きく息を吐いて落ち着かせる。 今日は市街地で買い物をして、お昼、午後は本屋で、おやつにケーキ屋さんに行くのよ。帰りはケイティのお店でパンを買って、この噴水の前で夕方に解散。 予定を頭の中で確認する。「ずいぶん早いな」「ひゃっ!」 声をかけられて、驚いて立ち上がる。 目の前には、金色の髪を軽くワックスで硬め、凛々しい眉がよく見える平民風のライオネル殿下がいた。赤い瞳と目があって、ぐっと息を飲んだ。「……び、びっくりしました」「すまない、驚かすつもりはなかったんだが」 頭を掻いて謝るライオネル殿下の恰好は、一般人がよく着ている服とは違って、金色の装飾が綺麗だった。高貴さがあって、それが似合っていると思う。「ライオ――こほん。レオも早いですね」 いつものように呼ぼうとして、止まる。口元に指を持っていく相手の動作を見て、私は前にも使った愛称で呼びなおす。「待たすのは忍びなかったんだが、待ったか?」「いえ、今来たところです」
last updateLast Updated : 2026-08-25
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128話 獅子の髪飾り

 手を引かれながら市街地へ行けば、休日のせいか人もお店も賑わっていた。「わぁ、すごい人ですね!」「雑貨やら日用品やら売ってるからな。気になる店があったら立ち寄るでいいか?」「はい!」 手を繋いだまま人ごみの中へと入る。本当にいろいろと売っている。美味しそうな食べ物の匂い、きらきら光るネックレスや指輪を売ってるお店、何の用途かわからない置物があったり、子どもが喜びそうなおもちゃが売ってたり、視線を動かせば様々なものが目に入る。「何か気になるのあったか?」「いっぱいあって悩みます。レオは?」「じゃあ、何か食べながら回るか。食べ方わかるか?」「舐めないでください、前世ではもっと高度な食べ方をしてましたから」 食べ歩きは今世でも前世はないけど、仕事しながら食べたりとか、立ったまま食べたりとかはしてたんだから、大丈夫。零したりしないはず。 ライオネル殿下は串焼き、私はいちご飴を買って食べながら歩く。お店を順に見て回って、可愛い雑貨をアウレリア様やケイティにお土産で買ったり、剣飾りをライオネル殿下がフリィップ殿下に買ったりして、とても楽しかった。 ふと、髪飾りが売っているお店が目に留まった。今日は髪飾りもアクセサリーもしていないので、寂しい恰好なのだと思いだした。「どれか気に入ったのがあるのか?」 自然と足が止まったようで、ライオネル殿下が後ろからそのお店を覗き込む。獅子の髪飾り、アクセントに赤い宝石がついている髪飾りが気になる。というか、ほしい。けど、ここでこれを強請るのは……勇気がでない。だって、まるで好きって言ってるみたいじゃない。 もう少し、こう違うような物にしないと……。「お嬢ちゃんお目が高いねぇ。そっちの獅子の髪飾りはこの国も紋章から取ってるんだよ。土産に一つどうだい?」 んぐぅ。先に視線を逸らさなかった私の馬鹿っ! 勧められちゃったじゃないっ。「じゃあ、それを一つ」 ライオネル殿下はいとも簡単に買うことを決めてしまう。待って、まだ私何も言ってない。でも、ほしい。止めないとと、ほしいという気持
last updateLast Updated : 2026-08-26
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129話 獅子の髪飾り2

 葛藤している間にライオネル殿下が会計を済ませてしまった。いや、ほしかったけど……なんとも思わないわけ? ちらりとライオネル殿下を見ると、表情が緩んでいた。思わず前を向く。気づいてる気がするっ。「どうも……ありがとうございます……」 お礼を言えば、髪飾りを受け取ったライオネル殿下がこっちを向いた気配がした。「……つけてもいいか?」「あ、お願いします」 やけに真剣な声色だったから、顔を向けないことで怒ってるのかもしれない。でも、まだちょっと顔は見れないので、髪飾りをつけてもらう時間がありがたかった。首を横に向けて後頭部を彼の方に向けた。 優しい手つきで髪に触れられて、心臓がうるさい。きゅっと髪飾りを止める音がした。髪飾りが止めやすいように髪は編んでいるので簡単につけられたのだろう。彼の手の体温が離れていく。「ミラ、つけおわった」「ありがとうございます」 さすがにそろそろ顔を見せないといけないと、笑みを作って彼を見た。「似合ってる」 ライオネル殿下の顔が頬が緩み、優しい眼差しを向けられて頭が固まる。 顔が熱くて反論ができないまま、ライオネル殿下は再び私の手を取って歩き出した。一か所にとどまってると人の波が止まってしまうからだ。私の反応に何も返してこないのでほっとした。けど、「お幸せになー」なんて後方から声が聞こえて、早足になってしまう。「勝手に決めて怒ってるのか?」 早歩きになって私の方が前になる。だから、顔が見えなかったらしい。勘違いなんだけど、羞恥心から来る意地というか。このまま勘違いさせるのも忍びないので、否定しておいた。「……違います。欲しかったから、いいんです」「……良かった」 後ろから安堵した声が聞こえて、握った手をぎゅっと掴まれた。まだ頬の熱さが落ち着くことはない。そのまま、ライオネル殿下の手を引っ張って、次の目的地まで無言のまま歩いてしまう。
last updateLast Updated : 2026-08-27
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