All Chapters of 五角関係が世界を滅ぼす!? 恋愛経験ゼロの私、エセ占い師になって恋愛を正す!: Chapter 81 - Chapter 90

121 Chapters

80話 突き飛ばされる

 ライオネル殿下を手で静止して、私は壇を折りてジュリアナ様の前へと歩を進めた。目を細めて彼女を見る。「シルヴァレーン家は辺境伯です。普通の伯爵とは違います。それと、私の母親はエヴァリーナ・シルヴァレーン。王族直属の占い師です。家柄や血筋で侯爵家に劣りなどしないと思いますが?」 貴方の相手は私でしょう? とはっきりお前に劣ってなどいないと言い切る。「おだまり! 私は殿下に――」「ジュリアナ様が私に話しかけて来たのですよね?」 私はうっすらと笑みを浮かべながら、ジュリアナ様の言葉に割って入った。明らかに瞠目して私を見るジュリアナ様。けど、一瞬にして表情が怒りに染まった。目を真っ赤にして、私を睨みつけてくる。 ここまで頭に来た様子なら、ジュリアナ様は私のことを突き飛ばすわね。パーティ会場の真ん中で、かっとなって突き飛ばす光景。うん、見たことある、大丈夫想像ができる。 頭でシミュレーションした通りに、カッとなったジュリアナ様が動く。私は回避することなく、衝撃のまま後ろへと倒れ込む。 もちろんライオネル殿下には倒れる可能性があることは伝えてあるから、倒れる前に支えてくれるわけで。背中を力強い腕が受け止めてくれる。「大丈夫か?」「はい……」 思ったよりも近距離で一瞬体が強張るけど、ふっと息を吐いた。手汗がすごくて、気を張っていたのだとわかる。やっぱり彼が近くにいると安心するみたいで、今まで周りの声が聞こえてなかったのに、今はうっすらと聞こえる。ほっとする。でも、今はジュリアナ様の対応に集中しないと。 不自然にならないように、ライオネル殿下の顔を見ながら私はお礼を言う。「おかげさまで大事には至らなかったです、ありがとうございます」 ライオネル殿下は優しい手つきで助け起こしてくれる。腕を取って怪我がないかを確認しているので、じんわりと汗がにじんでしまうけど大人しく従う。「婚約者を助けるのは当たり前だ」 まっすぐ赤い瞳が突き刺さってきて、ドキっとする。本音ではないと知っているのに、心臓が大きく鳴って収まらない。 ジュリアナ様がまた動くのが視界の端に見
last updateLast Updated : 2026-07-25
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81話 悪役令嬢断罪シーン

「捕らえろ!」 ライオネル殿下とは別の低い声が響く。衛兵がジュリアナ様を捕らえて下がらせる。カツカツと降りて来たのは、黒髪をきっちりと整えたノクタリウス様だ。「何をするの!?」「生誕祭に第二王子の婚約者に暴行を加えた罪、並びに普段からの嫌がらせの数々をもって、ジュリアナ・ハートフォードを罪に問う!」 ぎゃーぎゃーと騒ぐジュリアナ様に、ノクタリウス様は私への嫌がらせの数々を記した書類を突きつける。 予想外の出来事に目を瞬いた。思ったよりも悪役令嬢断罪シーンっぽくなってしまった。「そんなっ!」「連れて行け!」 ノクタリウス様は手際よくジュリアナ様を連れて行こうとする。「イヤよっ!」 なおも抵抗するジュリアナ様に、私は、立ち上がって近づいた。ノクタリウス様が手で制止してきたけど、大丈夫と片手をあげる。 私はジュリアナ様ににっこりと笑ってみせた。「人を突き飛ばすようなお方には殿下はどう頑張っても似合いません事よ。直訴、させていただきますから」 宣戦布告。彼女はあろうことか第二王子の婚約者を突き飛ばしたのだ。しかも、生誕祭というお祝いの場で。 しかも、嫌がらせはノクタリウス様によって証明され、暴力については目撃者多数、どうあっても言い逃れはできないだろう。ジュリアナ様を慕っていた令嬢たちも事の重大さに気づいたのか、遠巻きに見ているだけだ。 生誕祭並びに婚約発表を侮辱されたのだ、直訴すればそれなりの刑罰が待っているだろう。怪我はないから、打ち首まではいかないわよね。国外追放はどうかしら。学生だし、よくて学院の出席停止、退学ぐらいでしょうね。もしかしたら、侯爵家の責任者は顔に泥を塗られたと、この娘をどこか遠い土地へやってしまうかもしれないけど。 目の前から消えてくれるなら、それは万々歳だ。 ジュリアナ様は私の言葉に口をぱくぱくさせて、指をさすだけ。「では、ジュリアナ様。ごきげんよう」 私は軽くお辞儀をすると、ライオネル殿下に目配せをする。ライオネル殿下はすぐに私の手を取ってくれた。「ハートフォード嬢、処分の沙汰は追って伝える。今日は生誕祭
last updateLast Updated : 2026-07-25
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82話 初めてのダンス

 ライオネル殿下は集まっている人の間を割って私の手を引いていく。 周りからはこそこそといろいろな声が聞こえてくるが、ライオネル殿下に連れられて王様と王妃様の前へ到着すれば、騒ぎもシンとする。「改めて紹介する。俺の婚約者ミシェル・シルヴァレーン嬢だ」 後ろを振り返り、ライオネル殿下が宣言すると、大きな声があがった。緊張しながらも私は丁寧にカーテシーをする。 婚約発表していいとは言ったけど、さっきの騒動もあって注目度は高かったようだ。ライオネル殿下と私の元に挨拶に来る人が後を絶たない。 契約が終了して、婚約破棄になった時を想像するのは怖い気がした。契約終了したら辺境に引きこもろうかしら。「ミシェル」 ある程度挨拶が終わったら、ライオネル殿下に呼ばれて手を引かれる。緩やかな音楽が流れているのでダンスの時間のようだ。 さっきのジュリアナ様への対応より緊張してしまう。いくら練習したからといって、初めての舞踏会で初めてのダンスだ。緊張しない方がおかしい。 大丈夫かしら、足踏まないようにしないと。 流れるようにリードしてくれるライオネル殿下につられて、会場の中心に来る。今日の主役は目の前の人だ。さらにプレッシャーが肩に乗る。「大丈夫か?」 ライオネル殿下が心配そうに見てくる。むずがゆさを感じて、目を見れずに鎖骨当たりに視線を落とす。「はい。緊張しましたが、無事に終わってほっとしています」 今は別の意味で緊張している。ステップに集中しなきゃ。「……足ぐらい踏んでもいいぞ」 ライオネル殿下は笑いを抑えているように言う。私がダンスに四苦八苦しているのがわかっているようだ。「本当に踏みますよ?」「ミシェルに足を踏まれたくらいじゃどうともない」 顔を上げて睨みつけたけど、ライオネル殿下が柔らかく笑った。瞠目する。緊張してた私がばかみたい。ふっと笑みがこぼれた。「わかりました、遠慮なく踏みます」 ライオネル殿下のリードが上手くて、実際は踏むまでもなく音に乗れている。だから、わざと足を踏んでやろうと躍起になる。で
last updateLast Updated : 2026-07-25
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83話 平民を登用

 次の日。ライオネル殿下は昨日のジュリアナの件を学院長と話さないといけないというので、私はアウレリア様と一緒に生徒会室へ向かっていた。「ふふ、生誕祭のミシェルはさいっこうだったわ」 道すがら、アウレリア様から今朝のことを褒めてもらった。頑張ったかいがあったと胸が温かくなる。とても緊張したし、恥ずかしさで感情も忙しなかった。そんな苦労を労われた気がした。 生徒会に到着して扉を開けると、見知った可愛らしい女性の姿があった。よかった、無事生徒会に入れたのね。「ケイティ、生徒会に入ったのね!」「はい! ライオネル殿下とミシェル様の推薦が通りまして、この度生徒会の一員となりました!」「ケイティは優秀だもの、絶対大丈夫だと思った」 ケイティの手を取って喜ぶ。さすがケイティ。優秀さは先生たちも認めざるを得ないということね。 しかし、横からノクタリウス様に冷や水をかけられる。「はあ、どういうことですか。平民を入れるなんて、ここは王族や侯爵家と言った地位のある人間とそれに付随する人間が入る場所ですよ?」 反対意見が出ることはわかっていた。だって、一般の貴族の感覚ではまさにその通りなのよね。王族がいる生徒会に平民を入れることがどれほどプライドを傷つけることかはわかっている。アウレリア様はすました顔をしているけど、会話に入ってこないところを見ると、やはり貴族的な考えなのかしら。 でも、二人には納得してもらうべきだ。「ケイティは国にとって必要な人材です。彼女の魔法の力はこの学院の誰よりも優れています。魔法は希少な力、それを手放すなど国の損害が大きすぎますわ」 私はケイティのメリットをはっきりと告げる。 しかし、私の言葉ではノクタリウス様の嫌悪感を打ち消すにはまだ不十分なようだ。表情が歪んだままだ。 そこで追撃をしてくれたのは、一番奥に座っていたフィリップ殿下だった。「そうだね、将来は僕かレオの直属になると思うよ」「は!? 平民を登用すると!?」 フィリップ殿下のにこやかな笑顔とは逆に、ノクタリウス様の顔には驚きと怒りがにじみ出ている。これは心が揺さぶられている証拠。私は畳
last updateLast Updated : 2026-07-26
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84話 ケイティ生徒会の一員となる

ノクタリウス様についてはこれ以上言わなくても勝手に落ちてくれるだろう。 けど、今度は違う方向から反論の火が吹いた。「平民が役に立つというの?」 アウレリア様がケイティを視線だけでじろじろと見ながら問いかける。 そういえばケイティにいろいろときつく言ってたのよね、アウレリア様。二人の相性悪いのかしら? でも、ヒロインの健気さで絆せると思うのよね。アウレリア様みたいな面倒見のいいタイプって。 だから私は、ケイティの良さをさらに言い募った。「ケイティの成績はアウレリア様もご存じかと思います。彼女は成績もすこぶる優秀ですのよ」「それは……知っているわ」「アウレリア様! アウレリア様のためなら役に立って見せます!」 さっきよりもきらきらした目でアウレリア様を見るケイティ。意気込みはばっちりだ。その意気よケイティ。 普段の令嬢にはない無邪気さを浴びてか、アウレリア様は扇子で口元を隠しながら一歩下がった。明らかな動揺が見てとれる。「……精々精進なさい」「はい!」 数秒考えた後、アウレリア様はケイティを肯定してくれた。嬉しそうに返事をするケイティの顔は花が綻ぶように愛らしい。アウレリア様も目を細めて彼女を見ている。目の前で浴びる笑顔は眩しいだろうな。 それでも負けないように、アウレリア様はすっと目を細める。「……何かあれば追い出しますからね?」「はい!」 アウレリア様に釘を刺されたが、ケイティは笑顔のまま返事を元気よくする。 ふぅっと息を吐いて目元を緩めるアウレリア様は、ケイティを認めてくれたということで間違いないと思う。なんとかなって良かった。懸念が払拭されて安心した。「よかったわね、ケイティ」「はい!」 私にも笑顔を見せてくれる。良い子だわ、本当。 和気あいあいとした雰囲気。そこにまたしても冷や水をぶっかけたのはノクタリウス様だった。「アウレリアと平民を一緒にするのは気が引ける。彼女については私が担当しましょう」
last updateLast Updated : 2026-07-26
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85話 女子会

 いつもの仕事が思ったよりも早く片付いた。ケイティはやっぱり優秀だったようだ。早く終わった分、休憩時間というお茶会を開くことになったのだから関心する。いつもならお茶を飲みながら仕事をしているもの。 フィリップ殿下とノクタリウス様は城内の仕事をすると、生徒会からは出て行ったため、アウレリア様、ケイティ、私と三人の女子会になっている。 ケイティは紅茶やお菓子を食べながら何度も目を輝かせていて、思わず新しいお菓子をあげてしまいたくなる。「美味しいです~!」「よかったわ」「口いっぱいには入れずに少しずつ食べなさい」 アウレリア様はケイティの横に座って、口元を拭いてあげるなど世話をやいている。口調は厳しいが、手のかかる子ほど可愛い。を体感している様子だ。微笑ましい。「アウレリア様は本当に麗しいですね……生徒会は目が幸せすぎます」 世話を焼かれながら、間近で見るアウレリア様にため息をはくケイティ。そういえば、彼女はアウレリア様の顔が好きだった。私も好きだけど。でも、ケイティの発言からするに、顔がイイ人間を推して行く人間なのでは? と思う。「そうね、顔はいい方が多いわね」「ミシェル様もですよ?」 私の軽口に、ケイティが訂正をかける。ふむ。たしかに今世の私は見た目儚げの美少女よね。ケイティは綺麗系が好きなのかしらね? 私はケイティみたいな可愛い顔も好きだけど。「私はケイティみたいなかわいい、笑顔が素敵な子も好きよ?」「私たち両想いですね!」 にこっと笑って肯定してくれる。ちょっとドキっとするし、嬉しいがすぎるんだけど。好きって言った子に好きって返してもらえるの、すごく嬉しい……!「貴女たち、恥ずかしくないんですの? 淑女としてもう少し人との距離を取ることをお勧めしますわ」 アウレリア様だけは私たちのノリについていけないとでも言うように頭を振る。「はあ、ツンツンしてるアウレリア様お美しい……」  アウレリア様の戒めも、ケイティには効かないようだ。完全に見惚れている。 アウ
last updateLast Updated : 2026-07-26
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86話 ミシェルの恋バナ

「そうだ、聞いてくださいアウレリア様」「何かしら?」「ミシェル様、この間ライオネル殿下にお姫様抱っこされて医務室に行ったんですよ」「げほげほっ!」 話題が飛び火してきて思わず咽た。ケイティに「大丈夫ですか!?」と声をかけられるも、手で制して、問題ない旨を伝える。それよりも何故? 今、ここで、私のその話題を出すの? そっちの方が問題だ。「……詳しくいいかしら?」 私が大丈夫だとわかった途端、アウレリア様が何故か食いつく。ちょっと待って、紅茶飲んで反論させてっ!「あ、あの! どうして私の話なんですか!?」「恥ずかしがらなくても良いではないですか、婚約者なのですし」 面白そうに口端を上げて言うアウレリア様の背中に毒々しい花が見えるような気がする。「それはそうですが……」 反論が出ない。アウレリア様にそれは違うんですよ。とも言えず、ケイティの方に視線を投げた。なんでこの話を振ったのよ。という恨みの念も込めて。「かっこ良かったですよ、ライオネル殿下。具合が悪くなったミシェル様を颯爽と抱きかかえて行っちゃったんです!」「まあ、やればできるじゃない」 話を続けないでっ! 私の、話はいいっ! 恥ずかしくてもだもだする。心臓が痒い。「そうね、生誕祭でも押されて転びそうになったミシェルを抱きとめてたし、ちゃんとやってるのね」「え!? そんなことあったんですか?」「ええ、思わずドキドキしてしまったわ。花言葉もばっちりだったし、今度褒めてあげなきゃ」 弟自慢に気をよくしているようだ。私は止まらない会話に無の境地になりつつ、きゃっきゃうふふと恋愛話をする二人を眺める。傍から見れば可愛い。話の内容が私とライオネル殿下主体じゃなければ、もっと良い。 たしかにライオネル殿下は顔もいいし、性格はむかつくこともあるけど、ちゃんと協力的だし、私がしたいことを尊重してくれている。またとない良き契約パートナーだ。と今なら認める。でも、私はまだ何も成せていないから、婚約者という立場を利用したい。だから、意識したくない。
last updateLast Updated : 2026-07-27
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87話 ケイティの恋バナ

 私は、正直に答える。「人として尊敬しています」 今はそれが精いっぱいだ。私の言葉にアウレリア様は目を細めて私の顔色を伺う。「そう……やっぱり貴方って恋愛に鈍感なのね」「っ……申し開きもありません」 アウレリア様の言葉に図星を刺されて、私は肩を竦めた。こんな私に恋愛相談なんか無理よね。そうよね。「ミシェル様はご自分の恋愛に鈍感なだけですよ? 私は助けてもらいました」 ケイティが助け舟を出してくれる。昨日のフィリップ殿下が告白してケイティが逃げた時の話ね。ケイティが前向きになれたのを再確認できてうれしい。「じゃあ貴女は好きな人がいるのね?」「はい! でもまだまだ見合わないから、私頑張ることにしたんです」 ケイティはふんっと鼻を鳴らして拳を作り、やる気をアピールする。お互いの気持ち以外がハードル高いのよね、ケイティの場合。 ケイティははたっと目を瞬いてから身体を縮こませる。何か気がついたことがあったようだ。どうしたんのだろう? 私とアウレリア様はケイティが話し出すのを待つ。「……あのアウレリア様ってフィリップ殿下の元婚約者なんですよね?」「ええ、そうね」「やっぱりその、好きだったとか……」 指を突き合わせながらもじもじと聞くケイティに対して、今度はアウレリア様は目を瞬く。そして口元を隠しながらくすくすと笑った。「ああ、そういうこと。貴女、フィルが好きなのね」「え!? あ、なんで!?」 アウレリア様の言葉にケイティは驚いて顔を真っ赤にしている。鈍感と言われてる私でもそんな仕草と直球な質問があれば察せられるくらいなのだ、アウレリア様が察するのなんて簡単だろう。 でも、アウレリア様の気持ちは私も知りたい。前に聞いた時は誤魔化されてしまったし、今なら前よりも本音に近い気持ちを聞けるかもしれない。「安心してちょうだい。私は彼なら国王としてやっていけるし、私ならそれを支えられると思ったから婚約を承諾しただけよ」
last updateLast Updated : 2026-07-27
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88話 大事な相手の死

 三人とも同じように、いかに大事な相手なのかアウレリア様の口調が物語っていた。彼女が自殺したのは恋心だと思っていたけど、ずっと一緒に育った大事な相手の誰かひとりが死んだとして、彼女は傷つくのだろうか。執着するようには見えない。けど、ノクタリウス様だって表面で見るよりも、手記の執着の方がはるかに強かった。人の心なんて見ただけじゃ何もわからない。 不躾な質問だと思う。でも、彼女が大事だと言うならそれはどの程度なのか、知りたかった。彼女は自殺をする。だから、そこははっきりしておきたかった。「……その中の誰かがもし死んだとしたら、アウレリア様はどうしますか?」「…………」 アウレリア様が顔をしかめた。やはり、してはいけない質問だっただろうか。慌てて口を開くも、アウレリア様の返答の方が早かった。「想像したくないわね。私は、だから最善を選んだのだし」 凛とした声ではっきりと言い切られた。そうか、彼女はライオネル殿下が戦場に立っていることが、普通ではないことを知っている。隣国との諍いがこの国に何をもたらすのかを知っている。だから、大事な人たちと国を守るために隣国へと嫁ぐのだ。 たしかに戦いになればいくらライオネル殿下が強いとしても、隣国の軍にいつまでも耐えられる保証はない。人は簡単に死ぬ。ライオネル殿下が死ねば、フィリップ殿下もゲームの通りに死ぬだろう。回避するために隣国の輿入れを承諾したのだとしたら、納得はする。「……申し訳ありません」「いいのよ、貴方はしっかりと情勢を把握しているだけなのだから」 私の言葉にアウレリア様は頭を振った。 アウレリア様は頭が良い。最善を選ぶような女性が、自殺することで被る国の損失を考えないはずがない。それでも彼女は塔から身を投げた。どこかにまだ私が知らない彼女の強い思いがあるのだろう。それが誰に対して、どういう気持ちなのかはわからない。 私はそれを知らないといけない。「家族……みたいなものですか?」 私が口を噤んでいると、ケイティが話を進め
last updateLast Updated : 2026-07-27
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89話 アウレリアの恋バナ

「それでアウレリア様は好きな人いるんですか?」「貴女、踏み込んでくるわね」「だってミシェル様も私もお話しましたから、今度はアウレリア様の番じゃないですか~!」 ナイス話題転換。そう、私もそこを聞きたかった。「私もぜひお聞きしたいですわ。お友達とこうして恋バナできるなんて、いままでなかったものですから楽しくて……」 期待の眼差しをアウレリア様に向ける。そう、私も恥ずかしかったのだから、貴方も同じ思いを。なんて思ってない。これは、知らなきゃいけないことのため。そう、決して愉しんでるわけじゃない。「……ま、まあ誰とは言いませんが、お慕いしてる方はおりますわ」 やはり、好きな人はいる。いるわけだ。さっきの三人は同様に好きと言ってたから、違うのだろうか。まだ三人を恋愛候補から外すのは早計かな。「誰かは聞かないです~。でも、どんなところが好きとか、教えてください!」「そうね、それくらいなら……」 どんどん情報を聞き出すケイティはさすがだ。私など足元にも及ばない。恋愛に鈍感と言われても仕方ないのかもしれない。私も誰かに恋をして恋愛経験値でもあげれば、どうにかなるのかしら? ライオネル殿下の顔が浮かびそうになって、慌てて打ち消す。「彼ね、目がとても綺麗なの」 初めて見た。綻んだ、本当に愛おしそうな表情。綺麗の中に可愛さがある、これが恋する乙女の顔……。「まるで宝石みたいだと思ったわ」 何故か、私はライオネル殿下の赤い瞳、ルビーのような瞳を思い出してしまった。いや、そんなはずはないとわかってるのだけれど。なぜか胸がざわつく。「ほわぁ、素敵な人なんですね」「どうかしらね?」 ケイティの言葉に悪戯っぽく笑ってアウレリア様は返す。どういう意味なんだろう。目が綺麗な彼をアウレリア様は好きに違いない。でも、確執もあるのだろうか。それともやっぱり秘めておかなきゃいけない恋?「さ、そろそろ休憩はおしまいにしましょう。ケイティはお店の手伝い、ミシェルは占い部があるのでしょ
last updateLast Updated : 2026-07-28
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