連れてきた2人のうちの1人が声をかける。「まさか、それを独り占めするつもりじゃないだろうな」男は、その言葉にイライラとしながらも、想定内の反応だな、と表情を変えずに振り返った。「いえいえ、そんなつもりはないですよ。後でちゃんとお分けします」その言葉に2人は顔を見合わせている。痩せて力のなさそうな自分には、なんの抵抗もできないと踏んだのだろう。黙って再び岩肌を削り始めた。「ここに大きいのがありますよ」そう誘うと、もう少し奥の部分にある縦に長い亀裂に埋まりこんだ、金色に光る塊を削り始めた。ガツガツと2人がそれに夢中になり始めたころ合いを見て、少しずつ後ろへ下がる。彼らは夢中になっていて気づいていないが、天井からパラパラと土が落ち始めている。頃合いだ入ってきた坑道の三叉路のようになったところまで下がったところで、彼らが持ってきたカンテラを足でけり倒し、腐りかけた坑道の柱の支えを持ってきた鉈で叩き割った。「おい!何してんだ!」彼らが急に訪れた暗闇に驚き、振り向いた時には支えを失った細い坑道の天井が崩れ始めていた。激しい轟音を背に、男は胸に塊を抱いて必死で出口に向かって走る。仮に彼らがあの場所で生きていたとしても、地図のない真っ暗な坑道の中で外へ出ることは難しいだろう。自分は何度も神に会うためにここへやってきた。この場所から外へ出る道筋は、体が覚えている。しばらく走ったところで空気の匂いが変わり始めた。あぁ、もうすぐ出口だ。自然と笑みが浮かぶ。神よ。私を守ってくださったのですね。出口の光が見えて、そこから抜け出た瞬間にまぶしさで視界が真っ白に変わる。喜びに溢れて思わず笑い声をあげた瞬間、悪魔のような低い声が聞こえた。「随分とご機嫌だな。さぁ、ここで何をしていたかじっくり話を聞かせてもらおうか」◇◇◇部隊が城へ戻ってから、ひと月が過ぎた。けれど、セオドアはまだ戻ってこない。「いろいろな処理に追われておられるようです」と、ドーバンはそれ以上多くを語らなかった。侍女たちも、自分以上に事情を知らないようだし、そもそも、あまり気にしていないようだった。この城の使用人たちは、かつてドラグナとの戦争を経験している。だからなのか、領主が数か月戻らないことなど平気らしい。セオドアの話を聞きたいと思うのに、居住区にいると、エンリオに会う
Last Updated : 2026-09-24 Read more