「お咎めが、皇帝直々の監督下での”全軍の訓練・人事監督任務”と“地方への軍視察などを禁じ帝都留任”ってさ、実際は――お前を帝都に縛っておきたい陛下の作戦だろうな、これは」皇宮にある国軍の執務室。執務机に積まれた書類に囲まれて黙々と仕事をするセオドアを、ビスゴール・ヤノシュは応接用の大きなソファから面白そうに眺めていた。「将軍職を拝命しておきながら、帝都に寄り着かず、国軍の訓練をおいぼれの儂に押し付けていた罰が当たったんだな、罰が」「そうですね。私の不徳の致すところです」その無機質な返事に、ビスゴールは不満げに眉間に皺を寄せる。「辺境の訓練や警備なんぞエンリオに任せときゃいいんだ。ロドリクも元気なんだろ?奴の息子もいるし。アングスやスヴェンも、面白い奴は、全部お前が連れて行っちまうから、儂は退屈で仕方がないんだ」「彼らは正式に任命されて配属されたのです。私が連れて行ったわけではありませんよ」セオドアは顔も上げず、手元の書類に目を通しながら淡々と応える。「皇軍の坊ちゃん兵たちを鍛えるのはな、大変なんだよ、年寄りにはな。お前みたいな鉄仮面の鬼軍曹が、前に立ってしょんべんチビるくらいのことさせないと、あいつらはちっとも動きゃしない」「ランバートがいるではないですか。彼の方が、人当たりもいいし、若者の信頼も得やすい。教育向きです」変わらず淡々と書類を処理し続けるセオドア。紙の音と、ペンの走る音だけが部屋に響く。その静けさを破ったのは、ビスゴールの穏やかな声だった。「セオドア。お前、皇宮をそんなに嫌うなよ。儂も、陛下も――お前ほど強く、誠実に国を想っている男を他に知らん。皆、お前と一緒に国を変えたいと思ってるんだ。そう、冷たくするな」セオドアは、しばらく黙ったまま書類に目を走らせていたが、やがて小さく返す。「冷たくしているつもりは、ありません。ビゴー。何か用があってお越しになったのでは?」そのそっけない返しに、ビスゴールの眉がぴくりと動いた。「ふん。まあ、いい。どうせ今日中にそれ全部片付かないんだろ?だから誘いに来たんだ――皇軍の鍛錬場で若い奴らの訓練を見てやってくれ」「いえ……今日は、遠慮しておきます。また時間のある時に」そう返すセオドアに、ビスゴールはにやりと笑って、手に持っていた書類を彼の目の前
Última atualização : 2026-10-01 Ler mais