偉央は結葉を連れ戻すつもりはないと言ってくれたようだけれど、じゃあ、と言ってそれを鵜呑みにしてのほほんと実家に住み着けるほど結葉はまだ図太くなれそうにない。 「俺が……あのアパートを出たらいいのか?」 憮然とした口調で想が公宣に問うから、結葉は「想ちゃんっ!」とそんな想を心配そうに見つめた。「想。お前は結葉ちゃんを一人ぼっちであのアパートに置いておけるほど薄情な男なのかい?」 だけど公宣に全てを見透かされたような目で見つめられて、想は言葉に詰まってそっぽを向く。 それが出来なかったから今みたいなことになっているのだ。 「じゃあ。親父は結葉に実家にでも行けって言うのかよ」 想が腹立たしげにつぶやいたのを見て、公宣が小さく吐息を落とした。 「それ、お前は結葉ちゃんに言えるの?」 そこで結葉に視線を移した公宣が、「結葉ちゃん、旦那さんに知られてる実家に一人で住める?」と問いかけてきて。 結葉は頷くべきだと分かっていても、どうしてもそうすることが出来なかった。 「親父っ! 何てこと言うんだよ!」 それを見た想が、思わずと言った感じで立ち上がって父親に抗議するのを、結葉はそっと彼の手に触れて止める。 「すみ、ませ……。いまはまだ………無理……です」 それでも結葉は泣きそうになりながら、か細い声でそう言うのが精一杯だった。 そんな結葉の頭を、公宣が優しく撫でてくる。 その感触が、余りにも想の手に似ていたから。 結葉はハッとして顔を上げて、ソワソワと公宣を見遣った。 やっぱり想と公宣は親子なんだと痛感させられた結葉だ。
Dernière mise à jour : 2026-09-17 Read More