Tous les chapitres de : Chapitre 101 - Chapitre 110

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26.ひとりは怖いの、と結葉は言った①

「今夜なんだけどさ、結葉はどうしたい?」 沢山の荷物を抱えてアパートに戻ってきて。 それらをリビングの床にドサリと下ろすなり想に世間話でもするみたいに問いかけられて、結葉はキョトンとする。「一応俺もお前も……その……男と女だろ? お前が俺とひとつ屋根の下で寝んのが不安なら……俺はしばらくの間実家で寝泊まりしても構わねぇと思ってる」 言ったら、結葉が初めてそのことに気づいたように瞳を見開いて真っ赤になった。「想ちゃ……、私……」 ――すっかり失念してた。 小声でそう付け足すなり、ソワソワと想を見詰めてくる結葉の黒目がちの瞳が可愛くて、想は目まいがしそうになる。 結葉も実妹の芹も、想にとっては幼い頃から可愛がってきた守るべき存在だ。 だが、想が芹と結葉に感じる思いは、時折明らかに違っていて、それを実感するたびに、想は密かに戸惑った。 一時は掴めていたその感情の正体を、いまは認知するわけにはいかないと思っている想だ。 自分は結構自制心が強い方だと思っていたけれど、結葉のように見目麗しい女の子から、不意に余り可愛いことをされると、それがぐらつきそうで怖くなる。 そんな不安定な感情を誤魔化すように、「ん?」と努めて平坦な声音で問いかけながら食器類の荷解きを開始したら、結葉が不安そうに視線を揺らめかせて。「結葉?」 その戸惑いを払拭してやれたらと、手を止めて声を掛けたら、結葉が荷物に載せたままの想の手の甲に、そっと触れてきた。 突然そんなことをされて……。 それじゃなくても落ち着かない思いだった想は
last updateDernière mise à jour : 2026-08-28
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26.ひとりは怖いの、と結葉は言った②

 布団を一式買うとなると結構な金額になる。 結葉はそれを心配しているらしい。 ましてや想は、それを結葉に使わせようと思っている。 怒られそうだし、何より結葉が気後れしてしまいそうだから彼女には言えないが、安価な薄い布団を買うつもりなんてさらさらないのだ。「バーカ。だからってうちにゃー布団、一組しかねぇんだから買うしかねぇだろ。――冬に布団なしはキツイ。どう考えても必要経費だ」(一緒に寝るわけにゃいかねぇしな) 心の中でそう付け加えた想だったけれど、結葉は納得がいかないみたいにじっと想を見つめてくる。 そうして「うちの……」と言おうとしてキュッと眉根を寄せて口を閉ざしてしまった。 きっと、結葉は、自分の実家に眠っている客用布団のことを思い浮かべたんだろう。 だが、いま実家に布団なんか取りに行ったりしたら、偉央に見つかってしまうかも知れない。 それを思い出して続きが言えなくなってしまったらしい。 それは同時に、結葉の実家の隣にある、想の生家にもそのまま当てはまってしまうわけで。「想ちゃん……私のせいで本当にごめんなさい」 結葉は、自分を匿うことになってしまったばっかりに、想に沢山負担をかけてしまっていると思っているに違いない。 結葉の性格を思えば引け目に感じるのは仕方ない事なのかもしれないが、それでもやっぱり〝私のせい〟という物言いが、想は気に入らなかった。「こら、結葉。モールでした約束、もう忘れちまったのか?」 想はそんな結葉に、彼女の当面の着替えなどが入った袋をポンポンと叩いてみせる。「こういうのは結葉、どういう買い方をしたんだっけ
last updateDernière mise à jour : 2026-08-29
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26.ひとりは怖いの、と結葉は言った③

 想の三白眼は両親にはない特徴で、どうやら父方の祖父からの隔世遺伝らしい。 自分にその遺伝がこなくてよかった!と、芹は母譲りのクリクリの大きな目に感謝しつつ日々を過ごしているのだけれど。(これで結葉ちゃんみたいにくっきり二重だったらもっと良かったのになぁ) 芹は一重ではないけれど奥二重。 二歳年上の〝お隣の結葉ちゃん〟は、黒目がちな大きな目に、くっきり二重で、同性の芹から見ても相当な美人さんだ。(結葉ちゃん、てっきりお兄ちゃんとくっつくと思ってたんだけどなぁ〜) 幼い頃から、どう見ても相思相愛に見えた二人なのに、何故か結葉は芹がちょっと一人暮らしを満喫している間に別の男性と結婚してしまった。(兄よ、何をやっていた!) と心の中で密かに毒づいたのは内緒。(まぁ結葉ちゃん、玉の輿に乗って、高級タワマン住まいで幸せに暮らしてるみたいだし、お兄ちゃんと結婚するよりは良かった……の、かな?) 兄だって、トータル的に見れば結構優良物件だと思っている芹だったけれど、そうでも思わないと何だか妹としてやっていられないな、とも感じるわけで。(お兄ちゃん、良い人いないのかなぁ) あれは相当〝初恋〟を拗らせている、と芹は分析している。(良い加減、気持ち切り替えんと、あたしの方が先に結婚しちゃうぞ) 学生の頃付き合っていた彼氏とは残念ながら相手の浮気で破局してしまったけれど、今の職場で出会った営業職の男性と、かれこれ一年ちょっと。ラブラブな関係を築いている芹だ。 社内恋愛禁止の職場じゃないから、営業職の彼をサポートしながら、愛を育んできた。 会社で毎日のように顔を合わせている二人だけど、そろそろ結婚もありかな?と……そんな話が出ている。(お兄ちゃんのことがなければ結構早めに話進めちゃうんだけどなぁ)
last updateDernière mise à jour : 2026-08-30
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27.芹だって馬鹿じゃない①

 兄である想がいそいそと出掛けていくのを見送って、芹は目の前に真剣な顔をして座る結葉を見て小さく生唾を飲み込んだ。 芹だって馬鹿じゃない。 結葉が、ちょっと遊びに来たという体で兄のアパートを訪れていないことは、ここに来て割とすぐ、部屋の中を見回した時に何となく察しが付いていた。 部屋の片隅――。 片付けられずに置かれたままの、買ってきたばかりと思しき袋の山。 その中に、レディースアパレルショップのロゴが入った袋を数個見つけて、プレゼントにしては多すぎだよね?と思った芹だ。 まるで服を一新する勢いで買い揃えたとしか思えない、そのブランドの袋の山は、プチプラだけど可愛いデザインのものが沢山あるから、芹自身もよく利用するお店のものだった。 そのお店では下着を買った時だけ黒い袋に入れてくれるのだけれど、それもちらりと袋から覗いているところが如何にもという感じがして。(結葉ちゃん、ひょっとして着の身着のままで家出でもしてきた?) そう思ってみれば、結葉の両足首に巻かれた包帯も何かを暗示しているようで何だか気になるし、何より幼なじみの彼女が物凄く痩せていることも気になった芹だ。 極め付けは、ハムスターの雪日の存在。 雪日が入っているケージは、回し車の取り付け方や給水ボトルの設置法、果てはフタ部分の金網のはめ方に至るまで、兄の想が手作りしたものであることは明白で。(うちにあるのと一緒だもん) 想が、芹の飼っている五匹のハムスターたちのために作ってくれたケージとほぼほぼ造りが一緒。 見間違えるはずがない。 それを、想が結葉のハムスターのために手作りしたということは、雪日はきっと、今まで住んでいたケージには住めなくなってしまったということだ。 ちょっとの間だけならあんなに本格的にケージを作
last updateDernière mise à jour : 2026-08-31
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27.芹だって馬鹿じゃない②

  たまたま実家で想に再会したあの日――。 想は結葉を一目見るなり、結葉自身が誰にも知られたくなくてひた隠しにしてきた結葉の異変に気付いてくれた。 その上で、いつでも相談してこいと手を差し伸べてくれた。  言葉に詰まった結葉を見て、芹が小さく吐息を落とす。「お兄ちゃんって昔っからそう言うところあったよね……。あたしも何度もお兄ちゃんに助けられたから分かる」「……うん」 芹の言葉に結葉がうなずいたのを確認すると、彼女はもう一度だけ結葉をそっと抱きしめてくれて。「あたしも……結葉ちゃんの力になりたい」 言って、芹が涙に濡れた瞳で、真剣に結葉を見つめてきたから、結葉も目頭が熱くなった。「あのね芹ちゃん。実はね、私。もう芹ちゃんに助けられてるんだよ?」「え……?」「ほら。芹ちゃんが想ちゃんの連絡を受けてすぐにここへ来てくれたから。それだけで私、すごくすごく救われてる……」 結葉の言葉に芹がキョトンとする。 そんな芹に結葉は、想に告白したのと同様、近場だと旦那と遭遇しそうで外に出るのが怖いこと。 だからと言って一人留守番のためにアパートに残ると、夫が連れ戻しに来るのではないかと不安に押しつぶされそうになって縮こまってしまうこと。 それらを包み隠さず話した。*** 結葉の告白を聞いて、ようやく何故兄が自分をアパートに呼び寄せたのかが分かった芹だ。「結葉ちゃん……」
last updateDernière mise à jour : 2026-09-01
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27.芹だって馬鹿じゃない③

 その通話を受けて結葉が選んだのは、価格が一番安い機種の白だった。「結葉ちゃん、一番安いからっていう理由で選んだんじゃない、よね?」 すぐさま芹にそう言われたけれど、結葉はゆるゆると首を横に振った。「初心者向けって説明があったから」 実際、それが本当の決め手だった。 長いことスマートフォンはもちろんのこと、普通の携帯電話からは離れていた結葉だ。 芹は問題ないと言ってくれたけれど、簡単なのに越したことはないと思って。 あとは本体自体が小さめで、片手で持つのにも適しているというのが、手の小さな自分には向いている気がしたのだ。 画面が大きい方が見やすいのかもしれないけれど、持ちにくいのは好きじゃない。 色は白、黒、青から選べたのだけれど、一番無難そうな白にしておいた。「ピンクとかあったら結葉ちゃん!って感じがしたのにね」 芹は残念そうにつぶやいたけれど、結葉は正直何色でも良かった。(私、また自分のスマホが持てるんだ) もうそれだけで、ワクワクしてしまう。 芹の説明だと、Wi-Fi下にいれば、通信費もほとんどかからないらしい。「好きな映画やドラマやアニメなんかの動画を観ても平気だからね」 言われて、ずっとそう言うのからも離れていた結葉は嬉しくて仕方がない。「あ! そう言えばお兄ちゃんの契約だからうちの家族とは通話料無料だから。お兄ちゃんやあたしとはライン使わなくても話し放題だよっ?」 芹にニッと笑いかけられて、結葉は何だか山波家の一員にしてもらえたような気持ちになって、くすぐったくなる。 それと同時、自分の契約ではないから、無駄使いしないようにしないと、って気持ちを引き締めた。***「ほい、コレ、な?」 帰宅するなり|想《そ
last updateDernière mise à jour : 2026-09-02
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28.初めての夜①

 明日も仕事があるからと芹が後ろ髪を引かれるようにしながら帰ってしまって、アパートに想と二人取り残された結葉だ。 芹は食べたものの片付けまでしてくれたから、後は入浴を済ませて寝るだけ。  想は買ってきたばかりの布団を出して「これ、お前の、な? ホントは一旦干してからのほうがいいんだろうけど」と申し訳なさそうに眉根を寄せる。「大丈夫だよ。想ちゃん」 結葉はそんなにやわじゃないと自分では思っているのだけど、想は昔から結葉のことをこれでもかと言うくらい〝女の子扱い〟してくれて、チヤホヤしてくれるところがある。 芹と一緒にヤンチャなことをしようとすると、すごく心配されたのを覚えている。 ***  小学三生の頃、近所の川に小一の芹と二人、スカートの裾をまくり上げて入っていたら想にオロオロされまくったのを思い出した結葉だ。 小魚を狙って芹と二人網を川に沈めるたび、『そこ、ヌルヌルしてるから気を付けろ!』 そう言って最上級生の想が二人の後をくっ付いて右往左往して。 余りにバチャバチャ歩き回るものだから、芹に『お兄ちゃん邪魔! お魚逃げちゃう!』と叱られて。 『すまん』と謝りながらも結局すぐまた同じことを繰り返す。 そうこうしていたら自分達を気遣っていた想が、真っ先に転んでびしょ濡れになってしまった。 芹と二人で大笑いしていたら、結局自分達も滑りやすいコケに足を取られて転んでびしょ濡れになって。 三人で水を滴らせながら家路を急いだのを思い出す。 あれは、まだ水浴びするには早い五月の中旬だった。 あのあと、結局身体を冷やしてしまったのがいけなかったのか、結葉は風邪をひいてしばらくの間、学校を休む羽目になって。 想が、申し訳なさそうな顔をして、何度も何度もお見舞
last updateDernière mise à jour : 2026-09-03
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28.初めての夜②

「――んだよ?」 一人で笑っていたら、想に不機嫌そうな声で問われて、結葉は思わず肩を跳ねさせた。「ごっ、ごめんね、想ちゃ……っ。かっ、カバーがマイハモだったからちょっと、そのっ、ぎゃ、ギャップ萌えしちゃって」 言っているそばから笑ってしまって、うまく喋れなかった結葉だ。  それにギャップ萌えだなんて言ってしまったら、自分が何を想像して笑っているのかバレバレじゃない!と、すぐに失言だったと思ったけれど後の祭り。 「笑うな。俺だって買うの、すっげぇ恥ずかしかったんだからな?」 今度こそ想が真っ赤になっているのがしっかり見えて、結葉はキュン、と胸が高鳴るのを感じずにはいられない。(想ちゃん、可愛い……) 完璧主義の夫に対してはただの一度もそんなこと思ったことなかった。 偉央のことは「かっこいい」と思うことはあっても「可愛い」だなんて感じさせられる要素は皆無だったから。 「お、前がっ、このキャラ好きだったな、って思い出したからこれにしただけで……」  そういえば、今日一緒にショッピングモールに行った時にも、結葉は百均でマイハモのグッズをひとつ買っていた。 想がアパートの合鍵をくれると言うから、その鍵につけるキーホールダーにひとつ、マイハモのを選んだのを思い出す。 想はそれを見て「そういえば」って思ってくれただけだと思う。  想が、一生懸命ゴニョゴニョと言い訳をしてくるところもまた、堪らなく愛しく思えてしまった結葉だ。 想は基本的にはいつも優しくてカッコイイお兄ちゃんだ。 だけど時々。  そう、本当に時々。  こんな風に照れて可愛らしいところを見せてくれて、それが結葉にはすごく魅力的に思えてしまう。 何年も離れていたけれど、やっぱり想
last updateDernière mise à jour : 2026-09-04
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28.初めての夜③

「バーカ。お前を床なんぞに寝かせられるか」 畳の部屋ならまだしも、フローリングに敷き布団は結構寒いはずだ。「お前が下に寝るとなると敷き布団の下にアンダーマットレス買わねぇといけなくなんだけど?」 わざと睨むようにして言ったら、結葉がちょっぴり怯んで。 でもすぐに気を取り直したように言い募ってくる。「私に必要なものなら想ちゃんにも要ると思う……」 怯えた目をして言いたいことの半分も言えなかったんじゃないかという雰囲気だった結葉を思えば、いまこうやって想に物申してくるのは喜ばしいことだ。 そう思いはするのだけれど。「おっ、俺はいいんだよ」 正論を突きつけられた想は、若干しどろもどろになってしまう。「何で?」 なのに結葉は引き下がるつもりはないみたいだ。 想は一瞬グッと言葉に詰まって、それでも何とか言い返す。「お、俺は男だから」 寝心地の良し悪しに男も女もないのは百も承知だ。 だが、結葉と自分の明確な違いはそれぐらいしか思い付けなかった想だ。 苦し紛れに言った言葉だったけれど、結葉が黙ってくれてホッとする。「な? そう言うことだからお前は上で俺は下、な? そこはもう決定事項だからこれ以上ガタガタ言うな? いいな?」 ――でないとここには置いてやれねぇぞ? 思わずそう続けそうになって、想は慌てて口をつぐんだ。(そんなことを言っちまったら結葉が気にするじゃねぇか。馬鹿なのか俺は) きっとそれを言えば、行くあてのない結葉は押し黙るしかない。  だけどそんなことを言うのはフェアじゃないではないか。 想は結葉にはなるべく伸び伸びと過ごして欲しい。 いくら彼女の身体を案じてのこととはいえ、結葉を萎縮させるようなことは絶対に言うべきじゃない。 「……分かった。でも――」 結葉は渋々といった調子でうなずいてくれて。 でも、と言葉を続ける。「でも、お願い。やっぱりアンダーマットレスは明日ちゃんと買ってきて? 私のせいで想ちゃんが寒いのはイヤ。もちろん、私のワガママだし、私が買うことにしてツケにしといてくれたんでい
last updateDernière mise à jour : 2026-09-05
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28.初めての夜④

「あ、そう言えば結葉の服が整理できるようなもんも買って来とかねぇといけねぇな」 いつまでも袋の中から出し入れでは不便だ。「ホント、俺って後手後手だよな。すまん」 はぁっと吐息を落としながら謝る想に、結葉はフルフルと首を横に振る。 生活に必要なものを一気に買うだなんて土台無理な話なのだから、あ、あれも要る、となったものはその都度少しずつ集めていけばいい。 「そんなことない。私、想ちゃんがいてくれなかったらきっと、路頭に迷ってたもん」 雪日の住環境改善のために、想が衣装ケースで作ってくれたケージ。  そのついでに買い揃えてくれた、ハムスター用のフードや床材やおもちゃ。 想がショッピングモールに連れて行ってくれたから、アレコレ揃えられた服や食器類や化粧品、それから細々とした日用品。 追加で買いに行ってくれた寝具一式。 芹が想に言ってくれて、夕飯前に手渡されたばかりの新しいスマートフォン。  今日一日で、想は結葉のために一体どれだけお金を使ったんだろう。 どう考えたって、申し訳ないと感じなくちゃいけないのはこっちなのに、と思ってしまった結葉だ。 想は前貸しみたいなものだから気にしなくていいと言ってくれたけれど、気になるものは気になるのだから仕方がない。 だけど、それを口にすれば、想が困った顔をして「そう言うことはもう言うな」って不機嫌になるのも分かっていたから。 だから結葉はそこに関してはもう言及すまい、と心に決めている。 そもそもどんなに引け目に感じたところで、自力でどうにも出来ない以上、現状、結葉は想に頼るしかないのだから。(なるべく早くお仕事見つけなきゃ) でも、そのためには偉央とのことを何とかしなくては話にならない。 結局はそこに戻ってきてしまうことを少し
last updateDernière mise à jour : 2026-09-06
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