「もちろんです」 結葉の泣き腫らした目元にチラリと視線を投げると、斉藤がすぐにそう言ってくれて。「大丈夫よね?」 とすぐ横の白木にも同意を求めてくれる。 白木も「予備なので急がなくても大丈夫ですよ」とニコッと微笑むと、「……その、どなたかと連絡は取れましたか?」と言葉を選ぶようにして問い掛けてくる。 斉藤と何かを話したのかも知れないし、ただ単に結葉の現状を見て色々慮ってくれただけかも知れない。 いずれにしても眼前の二人が、偉央のことを思い出させないよう気遣ってくれているのが分かって、その細やかな気遣いに結葉は視界が涙で霞んでくるのを感じた。「あ、の……実は」 そこでやっと。 結葉は、以前このロビーで打ち合わせをしたことのある作業服姿の長身男性が迎えにきてくれることを伝えることが出来た。「雪の日に来てらした、茶髪のツーブロックの彼ですよね?」 確認するように白木が問いかけてきて。 斉藤が「よく覚えてるわね」と感心したように吐息を落とす。「だってかっこいい人だなぁって思ったから」 クスッと笑う白木に、「幼なじみなんです」と応えながら、結葉はほんの少しだけ緊張の糸がほぐれた気がした。*** 待ち人が来たら声を掛けますから、と二人に背中を押されてコンシェルジュルームに戻された結葉は、このマンションに彼女たちがいてくれて良かった、と心底思った。 普通は常駐のコンシェルジュなんていないところの方が多いだろう。 偉央が、自分の勤務先への利便性はもちろんのこと、セキュリティなどの面からもここを住まいに選んでくれたことを、結葉は初めて有難いなと思った。 今まで結葉にとってこのタワーマンションは、エントランスとエレベーター、そして自分の住
Last Updated : 2026-08-14 Read more