Tous les chapitres de : Chapitre 91 - Chapitre 100

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22.結葉の告白①

「私ね、あの雪の日の翌日から夫に監禁されたの……」 結葉が一息に告げたら、想が息を呑んだのが分かった。「想ちゃんも気づいたよね? これは、そのとき足枷を付けられてた痕」 足首をさすりながら言ったら、想が思わず、と言った調子で腰を浮かせて苦しそうに眉根を寄せた。「結葉、それって俺がっ……!」 旦那を牽制したせいだよな!?という声が聞こえてきそうで、結葉は慌てて想の言葉を遮る。 あの雪の日、想は結葉を心配して夫の偉央に意見してくれた。 それが、偉央を焚き付ける火種になったのではないかと思ったんだろう。 だけど、あの直後、偉央はちゃんと結葉の訴えを信じて怒りを収めてくれたことを、結葉は覚えている。 だから、偉央を壊す決定打になったのはそれじゃない。 きっと、一度は信じようと思った結葉が、偉央を裏切ったと思わせてしまったあのカップたちこそが真の原因なのだ。 だから――。「想ちゃんのせいじゃないよ? 全部私が蒔いた種だから。――きっと言いたいことは沢山あると思うけど……お願い。最後まで……黙って私の話を聞いて?」 言って、じっと想を見つめたら、こちらに半身乗り出していた腰を落ち着けて、想が一言「……分かった」と答えてくれた。 偉央には言えなかった、「私の言葉を聞いて欲しい」と言う意思表示が、想にはすんなり出来てしまえたことに内心驚いた結葉だ。 きっと想がまとうオーラが、結葉を威圧してこないからだろう。  結婚して程なく始まった、夫からの精神
last updateDernière mise à jour : 2026-08-19
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22.結葉の告白②

「私と偉央さんの関係が歪だと気付いた友人たちと、どんどん連絡が取れなくされて……。私、気がついたら孤立無縁になちゃってたの」 結葉が苦しそうな顔をしてしまったからだろう。 想が何か言いたげな表情をしてじっと結葉を見つめてきた。 けれど、結葉が何も言わずに最後まで話を聞いて欲しいとお願いしたから。 想は諸々の感情をグッと我慢して、聞き役に徹してくれている。「偉央さんと、双方の両親以外連絡が取れなくされてしまって。お父さんやお母さんには心配掛けたくなかったから私、偉央さんとのこと誰にも相談できなくておかしくなりそうだったの。……そんな時だよ。想ちゃんと再会したの……」 そこで目の前に座る想をじっと見つめると、結葉は横座りをやめてほんの少し後ろに下がる。 テーブルから距離をあけて姿勢を正座に正すと、三つ指をついて想に頭を下げて。「想ちゃん、今日は本当に有難う」 と、改めて礼の言葉を述べた。「えっ、おいっ。結葉っ」 いきなり結葉がかしこまってそんなことをしたものだから、想は慌てて立ち上がると結葉のそばに膝をつく。「頭上げろ! ――全部! 俺がやりたくてやったことだ!」 想は心外だと言わんばかりの口調でそう言ったけれど、結葉にしてみれば全てが奇跡だったのだ。 あの日、実家でたまたま想と再会できたことも。 想が、両親でさえ見過ごしていた結葉の異変に気づいてくれたことも。 昔と変わっていなかった携帯番号を差し出して手を差し伸べてくれたことも。 想との出会いがなかったら、きっと結葉は今でもあのタワーマンションの一室で、夫に怯えて縮こまっていたと思
last updateDernière mise à jour : 2026-08-19
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22.結葉の告白③

「……ごめんね、想ちゃん。私、バイトとかしてちゃんと返すから」 眉根を寄せて想を見上げたら、一瞬だけ押し黙った想だったけれど。 そこは結葉の性格を熟知した幼なじみ。「返さなくていい」とか言わずに、「ん、それで良いよ」と再度頭を撫でてくれた。 それが、結葉にはとても有り難かったのだ。  マンションを出るとき、結葉が手に出来たのは雪日入りのキャリーと、封の開いた彼のご飯。 それから首輪がわりに偉央から持たされていたGPS機能付のキッズ携帯と、身体を隠すために使ったバスタオルのみ。 キッズ携帯は、想の車に乗り込む直前にバスタオルに包んでマンションを出てすぐの植え込みのそばへ隠すように置いてきた。 コンシェルジュルームに置き去りにすることも考えた結葉だったけれど、それでは親切にしてくれた斉藤と白木に迷惑がかりそうで申し訳がないと思ったから。(でも……結局私があのマンションを逃げ出した時点で、彼女たちが無関係ではいられないこと、明白だよね……) あのマンションを出入りする人間が、正面入り口にいるコンシェルジュらの視線をかいくぐることは構造上不可能なのだから。 ましてや結葉がキッズ携帯を置き去りにしたのはエントランスを出てすぐの辺り。 偉央が彼女たちの関与を疑わないわけがない。 でも――。 「想ちゃん、偉央さんは……コンシェルジュの女性たちを問い詰めたりすると思う……?」 俯いたままポツンと。 半ば独り言のようにつぶやいたら、想がほんの少し考えてから「しねぇんじゃねーか?」と応じてくれた。「俺、お前の旦那のことはよく知らねぇから絶対とは言い切れねぇけど。……あの人、プライド高いタイプだろ? そういう人間が妻に逃げられたってぇのをわざわざ自分から周りに触れ回るようなことはしねぇ気がするんだわ。
last updateDernière mise à jour : 2026-08-20
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23.新生活の準備①

「結葉と出かけんの自体すげぇ久しぶりだしさ、高速乗ってドライブすんのもいいよな?」 生活圏から離れたところまで出向こうと示唆すれば、きっと結葉の不安は薄らぐだろう。 そう思って問い掛けたら、結葉が「いいの?」と想を見上げてきた。「いいも何も……俺が行きてぇんだって! とりあえずは、一番最初にお前の服買って着替え済ませような? ――制服のままじゃ動きづれぇだろ」 言って、想は隣の市にある大型ショッピングモールに行けば大丈夫かな、と目星をつける。「想ちゃん、……有難う」 結葉がそんな想の服をギュッとつまむように握ってきて。 想は幼い頃の結葉を彷彿とさせられた。 それと同時。大切な幼なじみをこんなにも萎縮させてしまった御庄偉央のことを心の底から腹立たしく思った想だ。「行こっか」 想がいそいそと車のキーを手にしたところで、結葉が「あ、でも……」と心配そうな声を出す。(まだ何かあんのか……?) そう思って見つめた先、結葉が雪日の入ったトートバッグを手元に引き寄せたのを見て、遠出する前にコイツを先に何とかしてやるべきか、と思い至った。 でないと、きっと結葉はハムスターのことを気にして買い物に集中出来ないだろう。「結葉、俺、ホームセンター、先に行って来るわ。お前は…………どうしたい?」 もちろん、留守番しててもいいぞ?と軽い感じで想が付け加えると、結葉が雪日と想を交互に見遣って。 ややしてポツンと「お留守番、させてもらってもいい?」と聞いてきた。 想は予想通りの返しに、「もちろん構わねぇよ」と答えながら、結葉にテレビのリモコンを渡す。「あんまし面白いのやってねぇかも知んねぇけどさ。テレビでも観て待ってて? 超特急で行ってくっから」 ホームセンターまで車で五分とかからない。 衣装ケースとともに、バーベキュー用の網と結束バンドを調達して帰れば、雪日の飼育ケージぐらいはササッと作ってしまえるはずだ
last updateDernière mise à jour : 2026-08-21
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23.新生活の準備②

「……バーベキューの網と結束バンド?」 結葉が中に入ったものを見て小首を傾げるのを横目に、「それ使って飼育ケース仕上げるからな。楽しみにしとけ」とニヤリと笑ってから、「あー、あと……回し車なんかも買ってきたぞ」と、ペットコーナーから探してきた品々をケースから取り出しては床に並べていく。「餌、回し車、トイレ、トイレ用の砂、巣箱、餌入れ、それと吸水ボトルな……。あー、あとは床材も足り臭ぇから買ってきといたぞ」 床材の入った袋をポンポンと軽く叩きながら「雪日の飼育用品一式、こんなモンで足りるっけ?」と付け足しながら顔を上げたら、結葉の顔が思いのほか近くてドキッとさせられる。「十分すぎるくらい。……想ちゃん、……本当に有難う」 言って、感激のためかウルッと涙目になった結葉を間近に見てしまって、想は(何故そこで涙腺を緩ませる!)と内心慌てまくりだ。 結葉はすごく整った顔をしているから、瞳を潤ませられたりしたらかなりのパンチ力がある。 幼い頃から見慣れているから少しは免疫があるつもりの想だったけれど、長いこと会っていなかった上にこういう不意打ちはやはりまずかった。 ブワリと身体の中の血が沸騰するような錯覚に襲われた想は、その空気を一新するみたいに「伊達に芹の兄ちゃんやってねぇかんな。大いに褒めろ」 努めて明るくおちゃらけて見せたら、結葉が「うん、そう……だね」とポロリと涙を落として。(あー、俺のバカ!) 対応を間違えたことを後悔しまくりの想だ。 きっとこういう時は何も反応せずに淡々と作業を進める、が正解ルートだった気がしたけれど、後の祭り。 泣き虫結葉を前に、(ちっさい頃は俺、コイツが泣いた時、どうしてたっけ?)と頭をフル回転させてみた。  けれどサッパリ対処法が思い出せなくて弱ってしまう。 結果、ここは結葉の涙には気付かないふりで行こう、と今更ながらスルー作戦を敢行することにした想だ。 「カッターナイフとか取ってくるな」 言って立ち上がると、想は結葉のそばをさり気なく離れる。 どうか戻ってきた時には結葉の涙が乾いていますように、と祈りな
last updateDernière mise à jour : 2026-08-22
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23.新生活の準備③

 そこから運転する想に礼を言って、思い出したように「今日のレシート、後でちゃんと渡してね」とお願いしてくる結葉に、想は「あ、すまん。ついいつもの癖でレシートは要りませんって言っちまったわ」と返す。 実際には仕事で買い物することも多いし、領収はちゃんと持ち帰る習慣のある想だ。  今日も、いつも通りレシートを一旦は受け取っていたけれど、結葉がそんなことを言い出すことを想定して敢えて店で処分して来た。「えっ。……じゃあ、あの……大体の金額だけでもいいから後で教えて。――ね?」 結葉が眉根を寄せるのをルームミラーでチラリと確認して、想は「おう」と、小さく聞こえるか聞こえないかの声音で答える。 頑なに拒否すれば結葉は逆に気にするだろうから、まぁこの辺は適当に流しておくのが妥当だろう、と思いながら。 *** 「想ちゃん。そう言えばどこに向かってるの?」 ややして窓外を眺めていた結葉がそう聞いてきて。 想は目的地のショッピングモールの名を告げた。 そこには映画館も入っていて、結葉が結婚する前は妹の芹も交えて、よく三人で映画を観に行ったりしていた。「わ〜、懐かしいっ。あそこ、まだ映画館、あるのかな?」 ソワソワと声を弾ませる結葉に、(あんなに映画観るの好きだったのに最近行ってねぇのかな?)とふと思った想だ。 数年前、そこのショッピングモールの映画館にも、とうとう体感型映画上映システム【4DX3D劇場】ができた。 想も、芹にせがまれて何度か連れて行ったことがあるが、モーションシートが映画のシーンに合わせて前後上下左右に揺れたり、嵐のシーンなどでは水が吹き付けてきたり、光やスモークに加えて匂いまで漂うという凝り様だったのを覚えている。 もちろん、視覚的には3Dなので、要所要所でスクリーンから物が飛び出してきてかなりの臨場感だった。 言うなれば遊園地の体験型アトラクションと言った感じで。 結葉はあれを知らないのだろうか。 「結葉、最近映画観に行ってねぇの?」 ふとそんなことを思
last updateDernière mise à jour : 2026-08-23
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24.着信①

「映画、すっごく楽しかったね」 たまたまいい時間帯に上映予定のアドベンチャー映画があって、結葉の服と化粧品を購入して、彼女の身支度を整えたらすぐ、シアター入りしたふたりだ。 その流れで、結局昼食も館内の売店でホットドッグと飲み物のセットを買って軽く済ませてしまった。「夕飯はガッツリ食おうな」 映画を観終わってすぐ、想が食い気味にそう言ったら、結葉に驚いた顔をされてしまう。 実際、想はそのぐらいでは足りくさかったのだが、結葉は「お昼食べるの遅くなっちゃったから……夜は余り食べられないかも」とはにかんだ。 昔から結葉はそれほど沢山食べなかったのを思い出した想だ。 少量を丁寧にゆっくりと食べる。 幼い頃からそんな印象の女の子だった。「俺はさすがにこれじゃ途中で腹減る自信あんだよな〜」 眉根を寄せて言ったら、結葉が「想ちゃんは体力お化けだから沢山燃料が必要だもんね」とクスクス笑って。 ベージュのワンピースに白のモコモコニットカーディガンという出立ちに衣装替えした結葉は、想にはとても可愛く見えた。 昔からフェミニンな服装がよく似合う女の子だったけれど、大人の色香が増した今は、ただ愛らしいだけの頃とは雰囲気が違って見えて。 化粧品を持ち出せなかった結葉は、逃げ出してきた時はほぼノーメイクに近かったのだが、今は薄らとメイクを施している。 透き通るように白い肌は昔のまま。 黒目がちの大きな目と、くっきりとした二重まぶた。 サラサラストレートの黒髪は艶々とした烏の濡羽色だ。 素材がいいとそんなに塗りたくる必要はないのだと想は改めて思い知らされた。 さすがに何もメイクしないままモールを彷徨くのは恥ずかしいとうつむきがちだった結葉に、想は「
last updateDernière mise à jour : 2026-08-24
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24.着信②

「カード払いだって、その時に現金を払うわけじゃねぇよな? 後日請求がきて、決済日になって初めて通帳から引き落とされる形で金を払うだろ? この買い物もそういう感じだと思えよ」 まくし立てるように告げてからニッと笑って、「だからこれから当分の間、何か買うたびに謝るの、禁止な?」 そう言ったら、結葉が目を見開いて想をじっと見詰めてから、「……有難う、想ちゃん」と瞳を潤ませた。*** 想にはよく分からなかったが、最近のモールは女性トイレに隣接する形でパウダーコーナーもあるらしい。 結葉が「すぐに支度してくるね」と女性用トイレの方へ姿を消したから、想は踊り場にあるベンチに腰掛けて彼女を待っている真っ最中だ。 買った服を、店員に話してフィッティングルームで着替えさせてもらって。 制服から私服にチェンジした結葉が扉を開けて恥ずかしそうに出てきた時、その姿が余りにも可愛らしくて不覚にも想はドキッとさせられてしまった。 きっと化粧を施して出てきた彼女を見ても、自分は同じように驚かされるんだろう。 そんなことを思いながら座っていたら、不意に手にしたスマートフォンが着信を知らせてきて、想は(親父か?)と思ったのだけれど――。 着信画面に表示された番号を見て、小さく吐息を落とした。***「もしもし……?」 女子トイレの方を気にしつつ応答したら、『山波さんの携帯で合っていますか?』と落ち着いた声音の男の声。 想はもちろん声の主を知っている。 結葉の夫、御庄偉央だ。「はい。合ってますよ」 なるべく感情を表に出さないように気を付けて応えたつもりだが、果たしてうまくいってるかどうか。『良かった。山波建
last updateDernière mise à jour : 2026-08-25
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24.着信③

 想は、偉央から『だったらどうしますか?』みたいに売り言葉に買い言葉なセリフが返ってくるのを想像していたのだけれど――。『その口ぶりからすると……貴方は僕が妻にしたこと、全部ご存知なんですね? ――でしたら話は早い』 偉央が発したのは、想の考えていたものとは全然違うものだったから。 想は戸惑ってしまったのだ。***「想ちゃん、お待たせ」「あ、……ああ」 電話を切ってしばらくの間、想は真っ暗になったスマートフォンの画面をじっと見つめたまま身動きが取れないでいた。 まさか偉央からあんなことを言われるとは思っていなかったから、衝撃でフリーズしてしまって。 後日、社の方に送られてくると言われたモノに関しても、どう扱っていいのか正直検討がつかない。「あの、想ちゃん? ひょっとして……お仕事の電話?」 想が、自分が声を掛けたと言うのにぼんやりとスマホを握りしめたまま、立ち上がる気配もなく座り続けていたからだろう。 結葉が心配そうに眉根を寄せて、想の顔を間近から見下ろしてくる。「もしっ。もしも帰らなきゃいけなくなったんなら私……映画は今度でも大丈夫……だよ?」 言って、結葉が想からの返しを不安そうな顔で固唾を飲んで待ってくれる。 薄らと、付けていることも分からない程度に施された結葉のメイクは、彼女の愛らしい顔にとても映えていた。 想は手にしたままだったスマートフォンを服のポケットにしまうと、気持ちを切り替えたように「よっ!」と一声掛け声を上げてベンチから立ち上がる。「バーカ。あんまりお前が綺麗になって戻ってくるからビ
last updateDernière mise à jour : 2026-08-26
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25.妻の不在

 昼休み。 と言っても今日は患者が多かったから、偉央が午前の診察を終えて休憩に入れた頃には十三時半を過ぎていた。(結葉は昼、ちゃんと食べただろうか) このところ、もともとそれほど食べる方ではなかった結葉の食が更に細っていることに気付いている偉央だ。 それが、自分のせいであることも分かっているつもり。 でも、だからこそ余計にちゃんと食べて欲しいと希ってしまうのだ。 昼休みに偉央がマンションに戻ることは、結葉の両親がアメリカへ旅立ってからある種のルーティンのようになっていた。 最初は、結葉の話し相手になるために。 だが最近のそれは、結葉と話をしに帰るというより、妻の監視をしに戻っていると言った方が正しかった。 特に今日は結葉の両足首の傷の具合が芳しくないからと、足枷を外してしまっている。 結葉を監禁してからこんなことは初めてだ。 この生活に、諦めの感情が出てきたのだろうか。 このところの結葉は偉央にとても従順で。 足枷を外す話をしたときも、結葉は逃げないと約束してくれたのだ。 けれど、偉央は心配でたまらなくて。 結局、大事をとって、結葉の服を全て、彼女の手の届かないところに隠した偉央だったけれど、それでも不安が尽きなかったのは何故だろう。***「ただいま」 家に戻ってみると、暖房を強めに効かせて出たはずなのに、何故か家全体がひんやり冷たくて。(もしかして暖房が故障した?) だとしたら、下着姿のまま家に置いている結葉が震えているかもしれない。 焦る気持ちを抑えながら、偉央は結葉の名を呼びながらリビングに入って。 ガランとした部屋の中
last updateDernière mise à jour : 2026-08-27
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