美月はその日の夜になっても、写真を送るかどうか決められずにいた。 赤ちゃんが眠っている間にスマートフォンを開くと、写真がずらりと並んでいる。 どれも大切な写真だった。 生まれた日の顔。 初めて病室で抱いた時。 退院の日。 家に戻ってから撮ったものも、すでに何枚もある。 その中から一枚を選び、拓也へ渡す。 ただそれだけのことなのに、指が動かなかった。「……どうしよう」 赤ちゃんへ聞いても、もちろん答えは返ってこない。 美月はスマートフォンを伏せた。 ◇ 翌日、母が来た時、美月は写真のことを話した。「拓也が、写真を見たいって言ってるみたい」「そうなの?」「うん。弁護士さんを通して」 母は少し考えた。「美月はどうしたいの?」「分からない」「じゃあ、今すぐ決めなくてもいいんじゃない?」「でも……一枚くらいならって思う気持ちもあるの」「だったら、それも藤崎先生に相談したら?」「そうだね」 母はそれ以上、送るべきとも、送るべきではないとも言わなかった。 赤ちゃんが泣き始めると、「あらあら」とそちらへ向かう。 美月も立ち上がった。 今は、考えることが多すぎる。 ◇ 藤崎に相談すると、美月は自分が何を怖がっているのかを、少しずつ言葉にした。「一枚送ること自体は、そんなに嫌じゃないんです」『はい』「でも、それで次もって言われたら嫌だなって」『今後も継続的に写真を送る約束をする必要はありません』「一枚だけって決めてもいいんですか?」『もちろんです。今回は一枚だけ提供する、それ以上については別途検討するという回答もできます』「…&
Last Updated : 2026-09-10 Read more