九月に入り、美月の腹は目立つようになっていた。 カフェでの仕事は、今も短時間だけ続けている。「美月ちゃん、今日はここまで~」「まだ二時間ですよ?」「二時間働いたから終わりなの!」 店長にエプロンを取り上げられ、美月は笑った。「分かりました」「次の健診いつ?」「来週です」「じゃあ先生にちゃんと聞いてきなさいよ。そろそろ仕事もいつまでにするか決めなきゃ」「はい」 着替えを済ませ、店を出る。 今日も蒼真の車が待っていた。「お疲れさまでした」「ありがとうございます」 助手席へ乗ると、美月はシートベルトを締める。「店長に、そろそろいつまで働くか決めろって言われました」「そうですか」「できれば、もう少し続けたいんですけど」「先生と相談してください」「はい」 それだけの会話だった。 けれど、美月にはそれが心地よかった。 こうしろとも。 やめろとも。 蒼真は勝手に決めない。 ◇ 次の健診で、美月は仕事について医師に相談した。「今のところ経過に問題はありません。ただ、出産が近づけば体調も変わりやすくなります」「はい」「無理をせず、いつでも休めるようにしておいてください」「分かりました」 診察のあと、入院についても改めて確認する。 拓也から問い合わせがあった場合。 突然来院した場合。 退院する時。 病院側にも、これまでの経緯は共有されていた。「ご主人には、こちらから入院の有無などをお伝えすることはありません」「ありがとうございます」「何か状況が変わった場合は、またお知らせください」「はい」 美月は頭を下げた。
Last Updated : 2026-09-03 Read more