All Chapters of 首狩り兎のダンジョンチューバー滅殺日記: Chapter 31 - Chapter 40

58 Chapters

第30話 江戸前の邪道ですが、これはおやっさんの味です!

 あっしは鳳凰寿司の十八代目、将太だ。 おやっさんは寿司一筋に生きてきた人でとても尊敬していた。 だけど、伝統にこだわりすぎるところはどうもいけねぇと思っていた。 ダンジョンができた。 漁船がいくつも沈んで、新鮮な魚が入りづらくなった。 だからあっしは、ダンジョンで取れた素材を使おうって言った。「馬鹿野郎! それだきゃぁいけねえ。先代の顔をつぶすつもりか!」 殴られた。 蹴り飛ばされた。 あっしは必死で謝った。 だから、自分でダンジョンに潜ってきた。 ゴブリンを活け締めにして、店でさばいた。 うん、脳みそには白子みてぇなドロリとした深い甘みがある。 キモは臭くていけねえな。悪りぃが、捨てるしかない。 肉質は全体的に固い。 臭みのある部位が多い。 脂が臭いを溜め込んじまってるんだな。 胸と腿から赤身を切り取る。 丁寧に筋を取って、隠し包丁を細かく入れる。 酒と醤油で漬けて、臭みを抜く。 握ってからバーナーでさっと炙って、香ばしさを出す。 あっしのできる限りの工夫を重ねた。 試食もしたが、文句なしに美味ぇ。 本マグロの頬や、ツノみてぇな、どっしりした味わいになった。「おやっさん、頼むから一貫だけでも」「こんな邪道、食えるか!」 俺の握った寿司は、調理場の床に散らばった。 おやっさんの下駄が、それを踏みにじった。「てめぇ、何様のつもりだ! 握りを任せるようになったからって、調子に乗るんじゃねえ! てめぇなんぞ、追い回しからやりなおせ!」 追い回しってなぁ雑用のことだ。 皿洗いや掃除、野菜の下ごしらえなんかしかできねえ。 板場で一番の雑魚ってことだ。 そんなのって、ねえじゃねえか。 あっしは、店のことを真剣に考えたんだ。 あっしは、真剣に新しい寿司を握ったんだ。「将太ァ……てめぇ……」 気がつきゃあ、おやっさんの胸に柳刃が刺さってた。 どくどく、どくどく、血が流れる。 おっと、いけねえ。 新鮮なネタじゃねえか。 早く冷やして血抜きしねえと。 おやっさんを流し台に押し込んで流水をかけつづける。 頸動脈を切り、腋窩動脈を切り、大腿動脈、膝窩動脈を切る。 時折、おやっさんの身体が震える。 死後硬直ってやつだな。 2、3日寝かして柔らかくし
last updateLast Updated : 2026-07-13
Read more

第31話 らーらー、ららーらー、ららーらー、やっぱり

 鳳凰寿司の十八代目として、あっしは踏ん張らねえとならねえ。 おやっさんの技を繋いで、江戸前寿司の伝統を継がなきゃなんねえ。 友子さんのお腹に授かったややっ子を守らなきゃならねえ。 老舗の江戸前鮨の十八代目。 三百年の伝統はあっしの肩にはなかなか重い。 だけど、やりきらなきゃあならねえ。 あっしはおやっさんの味を引き継いだんだから。「ハーピーはねえ、だんだん鳥になってくこのあたり……腕の付け根と、ヘソの下あたりがうまいんでさあ」 仕入れに出て、早々に出食わしたハーピーをさばきながら、カメラドローンに向かって解説する。 ありがてえこって、この前チャンネル登録者数は20万人を突破した。 江戸前の技はやっぱり人を引きつけるもんなんだな。【うわ、まだぴくぴくしてる】【そのまま飛びそうだな】【鶏肉っぽいけど、ちょっと違う感じ?】 熟練の包丁人は三枚に下ろした鯛を、骨だけで泳がしたっつう話もある。 鯛が自分が下ろされたことに気づいてねえってことらしい。 あっしはまだまだその域には届いてねえ。 おやっさんなら出来たのか? たぶん、出来たんだろうな。 おやっさんはそういう見せ芸を嫌うお人だったから、やらなかっただけだろう。【頭はどうすんのー?】 おっと、コメントだ。 配信もだいぶ客寄せの役に立っている。 いわば、視聴者はお客さん候補だ。 大事にしねえとな。「へえ、頭は硬ぇんですが、案外食える身があるもんですからね。こう致しやす」 背に負っていた鮪包丁を抜き、ハーピーの頭をズバッと縦に割る。 前頭骨だけパカッと外すやり方とか、側頭骨から頬骨に走る線にそってゆで卵みてえに剥くやり方とかあるんだが、今日は派手にやってみよう。【おお、一刀両断】【8888】【お美事】「へへっ、ありがとうごぜえやす。単に目立ちたくてやったわけじゃねえですよ? こうしてどろんと出てきたハーピーの頭白子を醤油に溶いて、さっき刺し身にした身につけるってぇと、カワハギの肝醤油をもっと濃厚にしたみてぇな、そんな塩梅でごぜえましてね」 さっそく食べてみせる。 むちむちとしたハーピーの刺し身の食感と、白子醤油の濃厚さがちょうどいい。 握りにするならかなり薄造りにして、隠し包丁も入れた方がいいな。 
last updateLast Updated : 2026-07-13
Read more

第32話 我は北派七星極拳の正当伝承者だ 

【バチバチバチッ!】寿司屋、魚に撲殺される【エンジョイ!(電撃)】1 名無し@モン虐あいつ、不老不死じゃなかったのかよ2 名無し@モン虐それは別の漫画だし、あれも不死じゃなくて不老長寿3 名無し@モン虐食うと不老長寿になれる寿司……マジでヴァンパイアだよな4 名無し@モン虐伏線、ちゃんと回収されるのかねえ5 名無し@モン虐それも含めてエンジョイ!6 名無し@モン虐モン虐で漫画の話してるんじゃねーよ別スレいけ7 名無し@モン虐寿司屋ボコったやつってなんだったん?マーマンの親戚っぽかったけど8 名無し@モン虐頭は岩魚だったな9 名無し@モン虐岩魚イズ何?10 名無し@モン虐岩魚(イワナ)川釣りが趣味だったからわかる11 名無し@モン虐坊さんみたいな服着てたよな12 名無し@モン虐イワナ坊主ってやつかねえ川に毒流そうとする漁師を「やめなされ」って言って止める昔話13 名無し@モン虐なんかアニメで見たことある気がするわ14 名無し@モン虐それがイワナ坊主だったとして何で寿司屋をワンパンで沈めてんだよwあれ、ゆうてレベル60前後はあったろ?15 名無し@モン虐強いイワナだったんだろうなあ16 名無し@モン虐川の主だったのであろう17 名無し@モン虐ダンジョンだしwww18 ブルース・チェン浸透勁の一種だなHPの鎧を抜いて氣の波動が通っていた19 名無し@モン虐アチョーの人!20 名無し@モン虐アターの人じゃないか!21 名無し@モン虐今日は鼻血を舐めないのか?22 ブルース・チェンアチョーの人でもアターの人でもない我は北派七星極拳の正当伝承者だ23 名無し@モン虐ほわたあの人?24 名無し@モン虐ひでぶの人?25 名無し@モン虐>>24それはやられる方なんだなあ26 ブルース・チェン我は北派七星極拳の正当伝承者だ何度も言わせるな27 名無し@モン虐こいつ、なかなかいじり甲斐があるなw有名人なん?28 名無し@モン虐格闘スレだと結構有名スパーオフで空気読まずに相手をぼこすから色んなところで出禁食らってるはず29 名無し@モン虐スパーって、試合ってこと?うわぁ・・・そういうの引くわあ30 名無し@モン虐世界がこんなになっても最低
last updateLast Updated : 2026-07-13
Read more

第33話 スキュラの鼻骨が潰れる。スキュラの眼底が割れる。スキュラの前歯が飛ぶ。

 北派七星極拳の歴史は三千年前にさかのぼる。 およそ紀元前千年、殷周革命の時代にそれは興った。 時の皇帝、紂王の暴虐に対抗するため、北派拳法八百八派が協力して練り上げた拳法だ。 そして、それは文化大革命による拳法弾圧をも乗り越え、現代まで脈々と受け継がれている―― ――否、受け継がれていた。 いまや、北派七星極拳の正当伝統者は私ひとりになってしまった。 なんとしても後継者を得なければならぬ。 ゆえに、私は配信者となった。 北派七星極拳の強さが轟けば、入門者が殺到するだろうと思ったのだ。 今日ついてきているカメラドローンは1機か。 まあ、仕方がない。 私のチャンネル登録者数はまだ5万。 せいぜい中堅と言ったところだ。 ゴブリンが現れた。 私の胸ほどの体高しかない小柄なモンスター。<劈掛掌>のデモンストレーションにはちょうどいいか。 両腕を大きく円形に回す。 左右の腕の連動がこの技の要諦だ。 ゴブリンが突き出す錆びた短剣をかわし、遠心力を最大にして脳天に掌を打ち下ろす。「アチョー!」 ごじゃり、と骨と肉とかちぎれる音がする。 ゴブリンの頭が胴体にめり込む。【初アチョーいただきましたw】【次はほわたぁを頼むぜ】「む、コメント、感謝する」 右手の拳を左手で包んで一礼する。 抱拳礼だ。 北派七星極拳とは単なる暴力ではない。 心を導く道でもあるのだ。 礼節を忘れてはならない。 次に来たのはオーガか。 身の丈は2メートル半ほど。 赤銅色の肌が隆々たる筋肉で盛り上がっている。 ふむ、これならば――「ほわたぁっ!」<前掃腿>。 身をかがめ、足払いを兼ねた蹴りを放つ技だ。 オーガはどうっと音を立てて石畳に倒れる。 そこにすかさず、<震脚>で首を踏みつける。「ほわぁぁぁあああ」 踏みつけた足に氣を通す。 バキバキと頸骨の折れる感触がする。 オーガが血を吹いて絶命する。【ほわたっ、いただきました!】【ほわぁもコンボだぜ!】【一粒で二度美味しい!】「コメント、感謝する」 抱拳礼。 次に出会ったのはスキュラだった。 上半身は妖艶な美女。 下半身は無数のタコの触手。【あたたたーで頼むぜー】「承知し
last updateLast Updated : 2026-07-13
Read more

第34話 固有スキル<波紋斬牙>が登録されました

「アルプ、そいつを回復の泉につれてやってくれ」「わかった!」 俺と配信者が対峙する。 その隙を縫ってアルプがスキュラを救出する。 配信者はおかっぱ頭を揺らしながら、とーんとーんと飛びながらタイミングを図っている。 黄色いトラックスーツがこちらに飛び込んでくる。「ほわったぁっ!」 猛烈な蹴り。 想像以上に伸びる。 つま先が腹に触れる。 衝撃が腹に響く。 くそ、ほとんどかわしたのになぜだ?「ほぉっほぉっほぉっ、儂は手を出さんぞ」「うるせえ、元よりそんなつもりはねえよ」 魚じじいは腕を組んで余裕の観戦モードだ。 文字通りの魚ヅラだから、何を考えてんのかさっぱりわかんねんだよ。「ひゅー……あたっ! あたっ! あたっ!」 下段蹴り、飛んでかわす。 中段蹴り、身を捻ってかわす。 打ち下ろしの右拳、両腕で受ける。 痺れるような衝撃が全身で木霊する。「ほぉっほぉっほぉっ、無駄が多いのう。水のように、流れるように、力には逆らわず、沿って流すのじゃ」「手出ししねえって言ったろうが」「口出ししないとは言っておらんのう」 ああ、口の減らねえじじいだ。 ただ、じじいの言うことにも一理ある。 大きくかわすとその後の隙がデカくなる。 小さく、小さくかわす。 連撃の合間を縫って、牙を突き立てる。 弾かれる。 くそ硬ぇ。 いつかの黄金野郎と同じ感触だ。「ほぉっほぉっほぉっ、表面の硬さに囚われておるのう。世のすべては水じゃ。流れに身を委ね、時にそれを利用するのじゃ」「うるせえ! 集中できねえだろが!」 ――脇腹に衝撃 やつの左拳が俺をかすめていった。 かすっただけだってのに、腹の中に衝撃が走る。 吹き飛ばされ、石畳に転がる。「ああ、何度も食らってなんとなくわかってきたぜ……」「ほわぁぁぁあああ?」 俺は血を吐きながら立ち上がる。 何か感じるものでもあったのか、アタタ野郎の足が止まる。 俺は地を縫うように低く跳ぶ。 やつの足が降ってくる。 地面を蹴って直角に曲がる。 低く跳んでりゃ融通がきく。 その足に牙を立てる。 通らない。 両脚に力を込める。 全身の力の流れを、牙に込める。「ほわぁぁったぁあぁあああ!?」 アタタ野郎の右足首から血を吹き出る。 ちっ、浅手か。 だが、コツは
last updateLast Updated : 2026-07-13
Read more

第35話 お兄ちゃん、知りませんか? 

【全米が】インキュバスきゅん、(*´Д`)ハァハァ 32【泣いた】1 名無し@モン虐スキュラと共に回復の泉に沈んでいくシーンは涙なしには見られなかった2 名無し@モン虐見事なサムズアップだったな……3 名無し@モン虐回復の泉は溶鉱炉じゃねーんだわ4 名無し@モン虐あの「インキュバス」がスキュラの血で赤く濡れている「手」…あれ……初めて見た時……なんていうか……その…下品なんですが…フフ……勃起……しちゃいましてね…5 名無し@モン虐血まみれのスキュラを引きずってくインキュバスきゅんの姿にはさすがのモン虐民も涙を禁じ得なかった6 名無し@モン虐スキュラの方は助かったん?7 名無し@モン虐助かってたよ8 名無し@モン虐排水管に詰まってた猫が助けられたニュースを見たときみたいなそういうアレがあるよね9 名無し@モン虐ああいうニュースつい見ちゃうよな10 名無し@モン虐底辺配信者のモン虐民にもまだ人の心が・・・11 名無し@モン虐目から水が出てくるのこれは……何……?12 名無し@モン虐ロボ娘かよw13 ポルクシアお兄ちゃん、知りませんか?14 名無し@モン虐知りません15 名無し@モン虐知ってます16 名無し@モン虐知ってるようで知りません17 ポルクシア知らないんですか?では失礼します。18 名無し@モン虐>>17待て待て、そもそもお前は誰でお兄ちゃんって誰やねん?19 名無し@モン虐「お兄ちゃん」に反応する >>18 がいると聞いて20 名無し@モン虐これは感動の再会か……!?21 ポルクシアお兄ちゃんなんですか?22 名無し@モン虐俺はお兄ちゃんじゃないよ>>21 のお兄ちゃんはどんな人なの?23 ポルクシアお兄ちゃんはとってもきれいな人でみんなに好かれていてみんなに愛される人でした私なんかとちがって24 名無し@モン虐いや、だからそれじゃわからんて名前とか特徴とか赤の他人にもわかることを言ってくれ25 ポルクシアお兄ちゃんは人気者でみんなに好かれていてみんなが知っていましたお兄ちゃんはがんばり屋で頭が良くて運動もよくできました26 ポルクシアお兄ちゃんはなんでもできてお兄ちゃんはとってもきれいでお兄ちゃんはとってもつ
last updateLast Updated : 2026-07-13
Read more

第36話 お兄ィィィイイイちゃァァァアアアんンンン

 私とお兄ちゃんはいつも一緒だ。 前世も。その前も。その前のその前も。その前のその前のその前も。 何度生まれ直しても、私とお兄ちゃんは双子で生まれてくる。 お兄ちゃんはいつも強くてたくましい。 お兄ちゃんはいつも賢くてかっこいい。 お兄ちゃんはいつも私を守ってくれる。 貧民窟で生まれたときも、いじわるな伯爵家で生まれたときも、迷宮でも、戦場でも、焼け野原でも、防空壕でも、いつもいつも私を守ってくれた。 お兄ちゃんは、ずっと私を守ってくれるのだ。 でも、今世は違った。 だいたい、5歳くらいで前世の記憶が目覚める。 いつもどおり、お兄ちゃんの姿を探す。 お兄ちゃん、どこ? お兄ちゃん、どこ? お兄ちゃん、どこ? どこにも、いない。 今世での母に聞く。 今世での父に聞く。 医者に連れて行かれる。 イマジナリーフレンドだと言われる。 医者の胸ポケットからボールペンを引き抜いて、眼球に突き刺してやる。 手のひらで根本まで押し込んで、ぐちゃぐちゃとかき回す。 医者が全身を痙攣させて倒れる。 診察室が悲鳴で満ちる。 鉄格子だらけの病院に閉じ込められる。 手足を縛られて、毎日注射をされる。 お兄ちゃん、どこ? お兄ちゃん、どこ? お兄ちゃん、どこ? これじゃ、探しに行けない。 外が見えない。 時間の感覚がなくなる。 看護師の男が私の体をまさぐるようになる。 毎晩のようにのしかかってくる。 耳元でささやいてやる。 ねえ、これを外してくれたらもっといいことしてあげる。 男は興奮しながら拘束具を外す。 私は男の顔を、両手でそっと包む。 口づけをして、舌を絡ませ、それを噛みちぎる。 耳の穴から、小指を根本まで突き立てる。 男が痙攣しながらリノリウムの床に倒れる。 鍵を奪って、お兄ちゃんを探して病院を歩く。 掃除用具入れからモップを拝借する。 先端を折って、尖らせる。 女の看護師を突き刺す。 眼鏡の医者を突き刺す。 突き刺す。 突き刺す。 突き刺す。 お兄ちゃんは、いない。 ナースステーションでパソコンを見つける。 何かの掲示板サイトが表示されている。『お兄ちゃん、知りませんか?』 書き込んでみる。 要領を得ない反応。 お兄ちゃんを知らないのか。 やっとまともな返事があ
last updateLast Updated : 2026-07-13
Read more

第37話 コカン湖のコッシー!ついに発見される!!

「お兄ィィィイイイちゃァァァアアアんンンン!!」 暗闇から奇妙な女が飛び出してきた。 女――と呼ぶには若すぎる。 せいぜい十歳やそこらのガキだ。 金髪で、西洋人形のような容姿をしている。 服装は入院着? どうもチグハグだな。「お兄ちゃん、お兄ちゃんでしょ!?」「え、な、この子、何っ!?」 そのガキが、アルプに突然抱きついた。 あまりの突拍子もなさに反応ができなかった。 アルプも混乱しているようだ。 俺も混乱している。「お兄ちゃん! お兄ちゃんでしょ! 私、ずっと探してたんだから!」「え、ちょ、何言ってるの!?」「私よ、お兄ちゃん! ポルクシアよ! お兄ちゃんの妹よ!」 ガキがアルプの身体にしがみついて揺すっている。 状況がわからねえが……念のため聞いておくか。「アルプ、お前、妹がいたのか?」「ちょっ、ヴォーさんまで!? えっと、あの、たぶん……いない……」「お兄ちゃん!? 忘れちゃったの!? 私よ、ポルクシアよ!」 ま、アルプに妹がいるわけねえわな。 アルプは男性型淫魔だ。 妹がいたら種族が変わっちまう。「さ、お兄ちゃん。私と帰りましょう!」「え、ええ……ちょっ、ヴォーさん、助けて!?」「わー! かわいいウサギさん! お兄ちゃんが飼ってるの?」 もふもふとなでくり回される。 カメラドローンがその様子をぐるぐると撮っている。 何なんだこれは……こんな居心地が悪いのははじめてだ。「こんにちわァん。ずっと診察に来ないもンだから、わっちから往診に……あらァん? 何やらかわいい子がおりんすねえ」 ああ、くそ、また面倒くさいやつが増えやがった。 女身蛇体の迷宮歯医者、ジョカがカバンを片手に現れた。「誰よ! この女! お兄ちゃんの何なの!」「何なのって言われても……歯医者さんだよ」「アルプはんの短剣もわっちが鍛えたでありんすよ」「お兄ちゃんの短剣って……どういう意味よ! この色情狂! あばずれ! 売女! クソビッチ!」 ガキが武器を手にとって、俺はやっと開放された。 毛並みがめちゃくちゃだ。 ひとまず足でざっと整える。「あの、短剣って、これのことで……」「お兄ちゃんは下がってて! こんな悪い虫がついてたのね! だから、お兄ちゃんはいなかったんだ!」「あらァん、おませさん
last updateLast Updated : 2026-07-13
Read more

第38話 画想が降りてきたのだ 

【UMA】インキュバスたん、(*´Д`)ハァハァ 48【発見】1 名無し@モン虐ひさびさのぼろん2 名無し@モン虐デカーーーいッ!説明不要ッッ!!3 名無し@モン虐マジだwww俺の3倍はあるwww4 名無し@モン虐>>3短小乙5 名無し@モン虐>>3強くイ㌔6 名無し@モン虐>>33倍なんて見栄張るなよ生きるのがつらくなるぞ?7 名無し@モン虐ここまでテンプレ8 名無し@モン虐ってか、あのラミアって何だったん?9 名無し@モン虐だいたい40層にいる歯医者配信者でもDP払えば治療してくれるよ10 名無し@モン虐マジかよ かかりつけ代えるわ治療中あのおっぱいが顔に乗っかるってことだろ?11 名無し@モン虐なんでわざわざ歯医者行くのにダンジョン潜らなきゃならんねんおい、予約取るの大変になるからみんな行くんじゃねえぞ12 名無し@モン虐>>11本音がダダ漏れwww13 インキュバスたんというのはどこに行けば会えるのかね?葛飾大観14 名無し@モン虐逆、逆w15 何が逆なのかね?葛飾大観16 名無し@モン虐名前と本文17 葛飾大観こうかね?18 名無し@モン虐そうだね19 名無し@モン虐プロテインだね20 葛飾大観改めて問おうインキュバスたんというのはどこに行けば会えるのかね?21 名無し@モン虐過去スレ見ろ定期22 名無し@モン虐本格的情弱のかほり23 名無し@モン虐なんでインキュバスたんに会いたいの24 葛飾大観画想が降りてきたのだよ25 名無し@モン虐画想……?26 名無し@モン虐絵のアイデアのことだな27 名無し@モン虐さすがにそれくらいわかるわいwww28 名無し@モン虐インキュバスたんの絵を描くんなら動画いっぱいあるけどttps://xxxxxxx.maze/xxxxxxx/channel1098/29 名無し@モン虐ほう、チャンネル出来てたのか30 名無し@モン虐モンスでチャンネルできるのは珍しいねえ31 葛飾大観実物でなければならんのだ32 名無し@モン虐なにやらこだわりのお方?33 名無し@モン虐こだわりのないモン虐なんてわさびのない寿司みたいなもんだ34 名無し@モン虐お子様舌のわい、さび抜き派
last updateLast Updated : 2026-07-13
Read more

第38話 心を打つのは、身体を打つよりはるかにむずかしい

 絵を、描きたかった。 絵の、才が欲しかった。 美しい絵が、描きたかった。 美しい絵を描く、才が欲しかった。 それがしは、真っ白な襖の前でじっと正座していた。 画想が、何も浮かばぬ。 模写は、褒められた。 写生も、褒められた。 だだ、手本通りでつまらぬ、と言われた。 蔦屋重三郎からは、風景を専門にしてはどうか、と言われた。 ただ見たものをそのまま描く。 近頃は伊勢参りなどの物見遊山が流行っている。 しかし、実際に行けるものは少ない。 見たままを描いてきて、旅の気分を味あわせてやれ、と。 嫌だった。 私が描きたいものは、そういうものではなかった。 この世にはない美しいものを。 この世のものとは思えぬ美しいものを。 そういうものを、描きたかった。 筆を置く。 襖は真っ白なままだ。 脇に目を落とす。 大小の刀が置いてある。 剣の才はあった。 五つの道場で皆伝を得た。 当家では師範代を務めている。 江戸三剣士などとも呼ばれているらしい。 そんな名声は要らなかった。 欲しいものはそれではなかった。 剣などつまらぬ。 棒切れで人を打つだけだ。 剣などつまらぬ。 刀でものを斬るだけだ。 そんなことは誰でもできる。 できぬ方がどうかしている。 剣の腕が褒めそやされるたび、白けた気持ちになった。 決まったふうに身体を動かし、決まったふうに竹刀を振るう。 たった、それだけのことなのに、と。 絵は違う。 一筆ごとに新奇でならねばならぬ。 一筆ごとに創意を込めねばならぬ。 猿真似で生まれるものでは人の心は打てぬ。 心を打つのは、身体を打つよりはるかにむずかしい。 ぼーん、と遠くで鐘が鳴った。 床に散らばる画材を片付ける。 絵筆も絵の具も高価なものばかりだ。 剣術の指導で稼いだ金で買ったものだ。 仙台藩、長岡藩、姫路藩、桑名藩、飯山藩、刈谷藩、松本藩―― 江戸詰めの大名たちの間では、それがしから剣を習うのが流行っているらしい。 くだらぬ、くだらぬことだ。 つまらぬ、つまらぬことだ。「剣術などは、しょせんただの棒振り芸よ」 ため息とともに、独り言が洩れる。「征十郎よ、いま何と申した」 背後から、声がかけられる。 この声は、父上!? 振り返ると、庭先に殺気をみなぎらせる男
last updateLast Updated : 2026-07-13
Read more
PREV
123456
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status