All Chapters of 首狩り兎のダンジョンチューバー滅殺日記: Chapter 51 - Chapter 58

58 Chapters

第49話 ゴムに切れ目があるとこうなりますよね

「ゴム製の~~~ガトリング!!」 腕の長い男が両手をフル回転させてパンチを打ってくる。 近づいちゃえばリーチは関係なくなるだろうって思ったんだけど、下がって避けるってことができないのが想像よりもたいへんだ。 かわした拳が床や壁を砕いてる。【インキュバスきゅん、よくかわすねえ】【SPD特化?】【しかしこれじゃジリ貧だろ】 コメントが流れてくる。 視聴者っていう人たちらしい。 こんなの、見てて何が楽しいんだろう?「ゴム製の~~~ストーム!!」 腕長さんも言っていることは変わるけど、やってることは変わらない。 ひたすら連打、連打、連打だ。 だんだん、慣れてきた。【インキュバスきゅん、防戦一方】【風に吹かれる落ち葉のようだ】【ポエマーが降臨しました】 防戦、そうだ。防戦はよくない。 ヴォーさんに教わったことだ。 闘いの基本は攻め。 攻めて攻めて、自分のリズムを相手に押し付ける。 拳が絶え間なく通り過ぎていく。 顔の横。 頭上。 首筋。 脇腹。 肩。 途切れることのない風切り音。 間合いはまだ遠い。 必殺の距離に入れない。 それでも攻めなきゃ。 どうやって? かわしながら考える。 かわしながら隙を狙う。 かわしそこねた一撃を短剣で払う。 硬いゴムでも切りつけたような感触。 それでも腕長さんの拳には、薄っすら血が滲んでる。 ……あっ、そうか! 簡単なことだった! かわす。 斬る。 かわす。 斬る。 かわす。 斬る。 近づけないなら、近づいてくるものを斬ればいい。  かわす。 斬る。 かわす。 斬る。 かわす。 斬る。 かわす。斬る。かわす。斬る。かわす。斬る。かわす。斬る。かわす。斬る。かわす。斬る。かわす。斬る。かわす。斬る。かわす。斬る。かわす。斬る。かわす。斬る。かわす。斬る。かわす。斬る。かわす。斬る。かわす。斬る。かわす。斬る。 みちみちっと、異質な音が混じりだす。「ゴム製の~~~マシンガン!!」 言葉は違う。でも同じ技。 連打、連打、連打。 かわす、かわす、かわす。 斬る、斬る、斬る。 みちり、みちり、みちり。 何かが裂ける音がする。 かわす、かわす、かわす。 斬る、斬る、斬る。 みちり、みちり、みちり。 何かが裂ける音が大きくなる。 
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第50話 似た者同士

 紫電をまとった斬撃が飛んでくる。 雷光の速度で飛んでくる。 ダンジョンの床が、壁が、天井が弾け砕ける。 空気が灼ける臭いが立ち込める。「近隣配信者のみなさま、<ピアニスト>と<ゴム人間>が殉職しましたが、ご安心ください。<勇者>は必ず国民のみなさまの安全と秩序をお守りします」 片手剣を振るう<勇者>は余裕の表情だ。 カメラドローンに向かって能面のように微笑みかけている。 俺は必死で避けてるってのに。【なんでこんなスキル連発できるんだよ】【勇者、チートがすぎる】【ウサギなんかにかまってないでインキュウバスきゅんをだな】「コメント、感謝いたします。そうですね、まずは魔王指定種の駆除を優先しましょう」<勇者>は俺に背を向け、アルプに向かおうとする。 俺なんぞ相手じゃないって言いたいのか? 舐めるなよ。 牙を地面に突き立てる。 斬撃を地面に伝導す。 さっきじじいがやってたやつだ。「ッッ!?」<勇者>が咄嗟に跳び上がる。 地面が切り裂かれ、斬撃が飛び出す。 空中にいる<勇者>に向かって俺も飛ぶ。 牙が風を切る。 盾で受けられる。 関係ねえ、伝導す。<勇者>が自分の左腕を盾ごと切り飛ばす。 ちっ、気取られたか。【なんで自分の腕切ったの?】【よく見ろ。切り飛ばした左手の付け根】【ちょっと巻き戻した。切り口がずたずたにされてるね】「えー、国民のみなさま、ご心配をおかけして申し訳ありません。この程度の負傷は駆除任務の支障にはなりません。しかし、駆除対象はやはりまずこの兎とさせていただきます」<勇者>は紫電をまとう剣を左腕の傷口に押し当てた。 どじゅう……という音とともに、肉の焦げる臭いが立ち込める。 やつの微笑に変化はない。 大した野郎だ。「所詮はテイムモンスターと油断しました。これより、最大火力にて駆除を行います」【おっ、超必殺技!】【なにそれ?】【剣にすげー雷魔法つけてぶったぎるの】【ネタバレやめーや】 視聴者とやらのコメントもたまには役に立つ。 斬撃と雷撃を合わせて放つ大技が来るってことか。<勇者>は剣を高々とかまえた。「<霹靂顕現:刀剣憑依>」  空中に無数の稲妻が走り、それが剣に吸い込まれていく。 雷光で刀身が作られ、それが天井
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第51話 1000 

【ゴムゴムの】インキュバスたん、(*´Д`)ハァハァ 62【返り討ち】1 名無し@モン虐インキュバスきゅんがゴム人間にぎゅんぎゅんされるところが見たかった2 名無し@モン虐ぎゅんぎゅんってなんだよw3 名無し@モン虐ぎゅむぎゅむの方が伝わりやすかったか4 名無し@モン虐伝わらんw5 名無し@モン虐伝わらねえw6 名無し@モン虐わい、なんかわかる7 名無し@モン虐どういうことなの・・・?8 名無し@モン虐ゴム人間が伸びまくってインバスきゅんを縛るインキュバスきゅんは必死で逃れようとするでも、もっと食い込んでく……的な9 名無し@モン虐ほう、続けたまえ10 名無し@モン虐描いてきたAI絵だけどttps://xxxxxx.maze/s481254/image98511 名無し@モン虐ふう……12 名無し@モン虐ふう……13 名無し@モン虐ふう……14 名無し@モン虐>>11 >>12 >>13ジョブ<賢者>に覚醒しました15 名無し@モン虐いまのAI絵ってそんなことまでできるのな16 名無し@モン虐ここまでクオリティ上げるのは簡単じゃないよ学習データも呪文も相当練り込んでるはず17 名無し@モン虐スレチにもほどがあるAIイラストの話なら他所でやれ18 名無し@モン虐話変えるけど、封鎖エリア8層から11層まで拡がったね19 名無し@モン虐けもんとあのサイボーグ、まだやりあってるのか20 名無し@モン虐やりあってる(意味深)21 名無し@モン虐配信見てもピカピカ光ってるだけで何が起きてるかさっぱりなんだよなw22 名無し@モン虐けもんの発情した声を楽しむASMRと思え23 名無し@モン虐なるほど、理解した24 名無し@モン虐けもんとインキュバスきゅんの絡みが見たい25 名無し@モン虐けもん✕インキュバスきゅん26 名無し@モン虐は?インキュバスきゅん✕けもんしか勝たん27 名無し@モン虐喧嘩すんなってけもん✕俺✕インキュバスきゅんこれで平和になろう28 名無し@モン虐百合に挟まる男の人って29 名無し@モン虐そもそも百合なのか?30 名無し@モン虐百合は見出すものお主が百合味を感じればそれは百合なのじゃ31 名無し@モン虐
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第52話 イッセン

 時空大震災、次元大破断、ダンジョンインパクト、迷宮災害、大異変、宇宙間衝突――呼び名はいくつもある。 ともあれ、そういう事件が起きた。 観測できるだけでも23もの並行宇宙が衝突していた。 場所は一点、太陽系第三惑星、地球。 各宇宙の基盤定義に罅が拡がっていく。 このままでは、すべての宇宙が崩壊する。 だから、第七宇宙(第七とは便宜上の呼称だ)のハイエルフが大魔法を放った。 世界樹の根を、すべての宇宙を貫通するように伸ばし、なんとか固定した。 それから、第九宇宙のハデスと、第四宇宙のミノスが根の中に空間を作った。 人間や魔物を行き来させ、根に栄養を行き渡らせるためだ。 第二十三宇宙のオレたちは、カメラドローンを作った。 ダンジョンリンクを作った。 ダンジョンポイントを作った。 ダンジョンチューブを作った。 ダンジョンマーケットのプラットフォームを作った。 ぜんぶ、ぜんぶぜんぶぜんぶタダ乗りされた!! あー! っざけんじゃねえよ! 何日徹夜したと思ってるんだ! 何ヶ月家に帰れなかったと思ってるんだ! ああ、ああ、セキュリティが甘かったのは認めるよ。 他の宇宙の連中が好き放題改造するせいで、ぜんっぜん意図通りに動いてない。 チートはやめろ! バランスがぶっ壊れるだろ! お互いの宇宙がぶっ壊れないようにするために作った仕組みだろ!? お前らはなんでそれで遊びはじめるんだよ!? 正気か!? 脳みそついてんのか!? 叫びながら、キーボードを何度も叩きつける動作をして(実際には叩かない、壊れるから)、ふうふうと深呼吸をして、それから共用冷蔵庫に行って、エナドリを一本飲み干す。 ああ、カフェインと糖分が身体に浸透していく。 脳みそに栄養が染み渡っていく。 ああ、落ち着いた。落ち着いたさ。 取り乱して悪かったな。 エンジニアは冷静じゃなくちゃならない。 営業がめちゃくちゃな条件で案件を取ってきた時も、冷静に舵取りしてソフトランディングさせるのがエンジニアの矜持ってもんだ。 派手な干渉は好ましくない。 自然状態で安定するのがベストだ。 話題が自然に建設的な方向に向かうよう、最低限の書き込みをする。 いわゆる、カオス理論の応用だ。 北京の蝶の羽ばたきが、ブラジルでハリケーン
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第53話 ボクは頭が悪いから

「お願いします! 第100層のフロアボスになってください! 何でもしますからぁぁぁあああ!!」 土下座でスライディングをしてくる女を初めて見た。 身体にフィットしたタイトスーツの女。 両手は拝むように名刺を握っている。 何なんだこれは?「困惑されるのもわかります! 急なご提案をしてしまい、申し訳ありません! しかし、いまのままではレベルデザインが……難易度のバランスがおかしくなってしまうんです!」 女は石畳に額をこすりつけている。 何なんだこれは?「あっ、申し遅れましたが、私はダンジョン運営公社のイッセンと申します。ヴォー様の活躍はずっと拝見しておりました。どんな強者も銀色の牙で一閃! あ、私の名前とかけたわけじゃないですよ。うひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」 女は自分のダジャレに腹を抱えて笑っている。 何なんだこれは?「あの、まずはどういう人なのか教えてもらえると、いいのかなって思うんだけど」 アルプがおずおずと尋ねる。 こういう突拍子もないやつは、何をするかわからないからな。 とりあえず、ストレートに聞いちまうのもありだ。「ああ、説明が不足しまして失礼しました。私はイッセンと申しまして、いわゆる運営に属しているものです」「俺はヴォーだ。首狩り兎のヴォー。『運営』っつーと、あのカメラとか作ってるやつのことか?」「ええ! 理解が早くて助かります! カメラドローン、ダンジョンリンク、ダンジョンポイント……その手の文明的な仕組みは一通り弊社が整えさせていただいたと、そう考えていただいて問題ありません」「へえ、そりゃすげえな」 実際、大変だったろう。 俺もありがたく使わせてもらっちゃいるが、考えてみりゃ、さっぱり原理はわからねえ。 こういう配信者がダンジョンのインフラを支えてくれてるってことなのか?「そういや、最近メルカトんとこの行商が来ねえんだけどよ。それもどうにかなるのか?」 好奇心で尋ねてみる。 メルカト寺院の行商人は、来てくれるんならありがてえが、別に必須ってもんじゃない。 だが、どうも女の地雷を踏んでしまったようだ。「メルカト……メルカト……メルカト……そりゃあ比べられますよね! 知ってます! あのタダ乗り野郎どもが! 生ビールの売り子みたいな格好もですね! 私の歳ってわかります!? あなた方の基準で
last updateLast Updated : 2026-07-13
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最終話 わからないから、面白い

「んがぁぁぁあああごごご……すぴぴぴぴ……」「うーん、ヴォーさん、ボク、足が痺れてきたんだけど」「床に転がしときゃいいんじゃないか?」「それもちょっと可哀想な気がして……」 イッセンを名乗った女は、アルプの膝枕で寝ていた。 会社や恋人、配信者などへの愚痴を支離滅裂に叫んだ挙げ句、糸が切れたように寝てしまったのだ。「んごっ!」「うわっ!?」 そして、時々いびきが止まる。 そのたびにアルプがびくっとしている。 ちなみに俺もびくっとしている。「おせんに~キャラメル~ポップコーンに生ビールはいかがっすかあ~」 動くに動けずにいたら、半袖シャツに短パンの女がやってきた。 背中にはでかいビールサーバーを背負っている。 メルカトの行商人だな。 ちょうどいい、アルプに買い物を体験させてやろう。「おい、あんた。こっち頼むよ」「はい~、いま伺うっすよ~」「生ビールと焼き鳥をくれ」「毎度ありっす!」 ステータス画面を開き、決済する。 紙コップに生ビールが注がれ、亜空間ポーチから取り出された焼き鳥が渡される。「アルプ、お前も何か買ってみろ」「えーっと、どんなのがあるの?」「毎度っす! 品揃えには自信があるっすよ~。<メニューオープン>!」 行商人の前に、膨大なリストが浮かび上がる。 食料品や飲み物の他、武器や防具も大量に並んでいる。「わっ、こんなにあるの!?」「はいっす! このポーチはダンジョンマーケットの倉庫と直通っすからね! 常時百万点以上の品揃えっすよ!」 あまりに膨大な量に、アルプは戸惑っている。 じっくり見てたらそれだけで日が暮れちまう。「何かおすすめはあるのか?」 助け舟を出してやると、行商人は満面の笑みで応じる。「お食事でしたら、このたこ焼き、お好み焼き、焼きそばセットがおすすめっす! バラで買うと1500ダンジョンポイントのところ、セットなら1000ポイントになっちゃうっす! お得っすよ~」「えっと、じゃあ、とりあえずそれ。あと、生ビールっておいしいの?」「試してみたらどうだ」「うん、それじゃ生ビールもひとつ」「毎度っす!」 手際よくビールが注がれ、紙パックに入った料理が差し出される。「んがっ!? 美味しそうな匂い……」 あっ、イッセンが起きた。 よだれを垂らしながら並んだ料理を見つめている
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第55話 迷宮プロレスリング~ 東北チャンピオンズ vs 迷宮モンスターズ ~

【ダメ絶対】インキュバスたん、(*´Д`)ハァハァ 108【未成年飲酒】1 名無し@モン虐ついに煩悩の数に至った2 名無し@モン虐すっかりご立派になって・・・3 名無し@モン虐ご立派様ァ!4 名無し@モン虐お酒ちびちび飲んでるインキュバスきゅんかわゆす5 名無し@モン虐おれ現地行けなかったんだけどどんな感じだったん?無料だとほとんどモザイクでわけわかんねえw6 名無し@モン虐けもん来るモザイク展開になる半分くらい死ぬ7 名無し@モン虐マジかあ……壊れるなあ……8 名無し@モン虐も、もしやインキュバスきゅんも・・・(*´Д`)ハァハァ9 名無し@モン虐インキュバスきゅんはけもんが来たら即消えてたよ10 名無し@モン虐君子危うきに近寄らず……インキュバスきゅん、やるな!11 ザ・フォートレス失礼する宣伝ならこの掲示版に書き込めって言われたんだが、そういうのはアリなのか?12 名無し@モン虐なし13 名無し@モン虐ナシよりのアリ14 名無し@モン虐アリよりのナシ15 名無し@モン虐内容次第じゃねーの?マルチポストは論外だけど16 ザ・フォートレスあー、じゃ、一応アリってことで宣伝させてもらうな迷惑だったらすまん■迷宮プロレスリング~ 東北チャンピオンズ vs 迷宮モンスターズ ~試合開始:○月✕日18:00~(開場17:00)開場:20層 共有エリア入場:無料こんなイベントをやるから、よかったら観に来てくれ17 名無し@モン虐>>16 が出場すんの?18 ザ・フォートレス>>17ああ、一応メインイベンターだ19 名無し@モン虐いまどきプロレスとかw20 名無し@モン虐結構流行ってるよ超日とかWWEとか、ダンジョンを絡めたギミックもアツい21 名無し@モン虐日本語でおk22 名無し@モン虐>>16プロレスラーなのに掲示版書き込むんか23 ザ・フォートレス>>22なんでも手弁当だからなやれることは全員で分担する24 名無し@モン虐つか、16掲示版に慣れすぎてね?w25 ザ・フォートレス>>24若手の頃は掲示版の評判チェックも仕事だったんだよ半年ROMれの時代だな最近はSNSをチェックすりゃ済むから楽になったもんだ26 名無し@モ
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第56話 イワナ坊主 vs プロレスラー

 俺がアルプを連れて共用広場に着いたときには、最終試合を前にして、会場の盛り上がりは最高潮に達していたらしい。 そこらじゅうで酔っ払いどもが歓声を上げ、酒を飲み、飯を食らい、興奮して殴り合いをしているものたちもいる。 ぴょんたんと高く跳ねて辺りの様子を見る。 ひしめく配信者と魔物たちの頭の先に、ロープで囲まれたリングが設置されていた。 その上にはトビホタルイカが何匹も飛び交い、リングを照らしている。「うわぁ、ヴォーさん。すごい混んでるね」「ダンジョンにゃ娯楽がねえからなあ。物珍しいんだろうよ」 屋台で適当に飲み物と食い物を調達しながら、人混みを縫って小高い岩場に登る。 途中でアルプのケツを撫でようという手が何本も伸びてきた。 が、アルプは表情ひとつ変えずに短剣でそれを切り落とす。 手首を無くした配信者どもが悲鳴を上げるが、すぐに近くの配信者に殴られて気を失う。 ちょうどよく平らになっている場所を見つけ、腰を下ろす。 俺は缶ビールのプルタブを開け、アルプはチューハイの缶を開ける。 軽くぶつけて乾杯だ。 肴をつまみながら待っていると、突然照明が落ちた。 アップテンポのテクノミュージックが大音響で鳴り響き、スモークを割って大柄な人影が歩いてくる。スモークを抜け、ロープを軽々と飛び越えて入場したのは筋肉で膨れ上がった男だった。逆三角形の身体に薄っすらと脂肪がのった実戦向けの仕上がりになっている。『青ぉーコーナぁー! 地上から来た刺客。遅れてきた新星。そびえ立つ筋肉の移動要塞。クロガネ・ザ・フォートレスーーーッッ!!』 体の芯から湧き立つ強者の匂い。 思わず牙がうずいてしまう。 再び照明が落ちる。 さらさらと水の流れる音がする。 それに混じって、笛に鼓、琵琶などの音色が響く。雅楽だ。正月でもあるまいし、なんとも時代がかった選曲だ。通路に川が現れ、袈裟をまとった人影がその上を滑ってリングに飛び込む。『赤ぁーコーナぁー! やめなされ、やめなされ。そんな漁はやめなされ。正体不明の環境モラリスト、魚の顔で何を想うっ!? 誰が呼んだか――イワナァー坊ぅー主ぅー!!』 魚じじい……何をやってやがる。 おごってやるから絶対に来いと言っていたが、こういうことだったのか。 達観したように見せて目立ちたがりだからな、あのじじい。 
last updateLast Updated : 2026-07-13
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