草むらにうずもれるように、何かの屋根が見えてきた。 扁平な円錐形の骨組みに、破れた布がところどころにこびりついている。 往時は柔らかく日を透かしていたのだろう。しかし、いまは建物の白骨死体とでも呼ぶべき惨めな姿を晒していた。 その下に、何頭もの動物たちが円を描いている。 半数は馬だ。大きさはポニーよりも小さいが、体型はサラブレッドのようにすらりとしている。 残りは様々だ。長い鼻のゾウがいる。王冠をかぶったライオンがいる。とぼけた顔のパンダがいる。首の長いキリンがいる。大きな尻尾のリスがいる。うずまき角のヒツジがいる。「あ、メリーゴーランド!」 史料館を出てから息も絶え絶えだったソラも、少し元気を取り戻した。 オクたちピギーヘッドや、ダンジョン銀行のウサギ頭取と出会ったときの反応からもわかるとおり、ソラはかわいいものが好きなのだ。目の前のメリーゴーランドは風雪に晒させて劣化はしているものの、デフォルメされた動物たちは丸っこく、不気味さはあまりない。 中央に立つ柱にはあまり劣化がないことも要因だろう。 大理石調の素材で、ローマの遺跡にあるような彫刻がかたどられており、八角柱のそれぞれに鏡がはめ込まれている。鏡にはサビも浮いておらず、あたりの景色をきれいに写し取っていた。「そういえば、こういうのって乗ったことなかったなあ」「ん? そうだったか?」 ソラのつぶやきに、クロガネが一瞬表情を曇らせる。 数えるほどではあるが、幼いソラを遊園地に連れて行ったことぐらいはあるのだ。どれに乗れ、どれに乗ってはいけないなどとうるさく口を出した記憶もない。「あっ、ごめんごめん。クロさんが悪いとかじゃなくて、あたしって遊園地じゃジェットコースターとかそういうのばっかり乗ってたじゃん」「そういやそうだったな。タカさんなら一緒に乗れたんだろうがなあ……」 後悔があるとすれば、一緒に乗ってやれなかったことだ。 その巨体ゆえに、どの乗り物も乗車を拒否されるのだ。座席に身体が収まりきらなかったり、安全バーが締められなかったりするのだから仕方がない。 ソラの亡父である風祭鷹司であれば、そんなことにはならなかったろう。 身長はクロガネとほとんど変わらなかったが、体重は100kgに満たずプロレスラーと言うより総合系の選手のような体型をしていた。その均整の取れた肉体
Last Updated : 2026-07-13 Read more