結果から話そう。 戦いは、4時間にも及んだ。 いまでも語り草になるアトラス猪之崎の巌流島決戦、それが2時間5分14秒であったと言えば、この凄まじさがわかるだろう。 試合内容もまた、凄絶そのもの。 殴り、殴り、殴り合った。 蹴り、蹴り、蹴り合った。 投げ、投げ、投げ合った。 極め、極め、極め合った。 ありとあらゆる技が交錯した。 重爆撃機のような空中殺法。 思わず目を奪われる華麗な投げ。 目まぐるしく攻守の変わる寝技の応酬。 そして、原始時代に戻ったようなド突き合い。 それはもうどうしようもなくプロレスだった。 意地と意地のぶつかり合いだった。 闘志と闘志のぶつかり合いだった。 狂気と狂喜、侠気と狂鬼のせめぎ合いだった。 すべてのプロレスが、そこには詰まっていた。 賢しらな者は言うかもしれない。「酒呑童子ってのは素人だね。受け身すらろくにできてない」 目が肥えた者は言うだろう。「試合中にぐんぐん強くなっていた。結末はまるで読めなかった」 古参のプロレスファンは早口で語るだろう。「十年前を思い出した。スカイランナーとアトラス猪之崎のあの試合だよ。知ってるだろ? いや、あんなに完成度は高くない。それはわかる。だけど、ベテランが若手を指導するような、それでもやっぱり本気っていうか。どこまでも真剣っていうか……。ああっ! 言葉にするほど陳腐になる! とにかくこれがプロレスなんだよ! これを見ればプロレスがわかるんだよ!!」 熱狂する。 狭く小さな道場がバラバラになりそうなほどに。 熱狂する。 日本中の回線が狂熱に浮かされ、灼き切れそうなほどに。 熱狂する。 世界中の視線が現在この一点に集まり、炙られているかのように。 だが、この狂宴も永遠ではない。 最初に告げたように、4時間後、その戦いの結末は訪れる。 試合には終わりがあるものだ。 目覚めなければ試合ではない。 決着の刻は、否が応でも訪れる。 血まみれの男が立っている。 全身を赤く腫らした男が立っている。 それは筋肉をこねて固めて作ったような、羆に人の皮を被せたような、そんな男。 血まみれの男が立っている。 全身を紫に濡らした男が立っている。 それは青白い炎をまとい、燃え尽きる寸前の輝きを放
Last Updated : 2026-07-13 Read more