「読みどおりだと? 華々しく負けたかったと、そう願っていたのかい?」「ハッ! 誰が負けるつもりでリングに上がるんだよバカヤロー……!」 クロガネが息も絶え絶えに憎まれ口を叩く。 猪之崎にはこれが負け惜しみにしか思えない。 完全に極まった卍固めから脱出する手段は存在しないのだ。 どんなにあがこうと、クロガネがこの窮地を逃れる術はない。「いよいよボケてきたんじゃねえのか? 大事なことを忘れてるぜ……!」 観客席がどよめいている。 異常を察知した猪之崎が視線を上げる。 どよめきの原因はコーナーポストに立つ人影。 血化粧を施した少女の姿。「オーホッホッホッ! デスプリンセス魔姫! 魔界の底から遊びに来たわっ!」 トップロープを揺らしながら、両手を高らかに掲げ、手拍子を始める。 どよめきが次第に歓声に変わり、手拍子が津波の如く会場に満ちていく。 会場が、コメント欄が、魔姫コールで一色に染まっていく。『なんとすさまじいコールでしょう……ッッ! アナウンスがかき消されるほどの大音響ッッ! 手拍子の弾幕ッッ! 魔界商店街のご令嬢ッッ! デスプリンセス魔姫の参戦に場内のボルテージは一気に最高潮だッッ!!』「くっ、マズい……!」 ソラの飛び技のキレは先ほどのドラゴン・ラナで知っている。 返し技で対応したが、まともに受ければただでは済まない。 卍固めを解いて備えようとするが、なぜか身体の自由がきかない。「けけけっ! 離さねえぜ、妖怪親父……!」 クロガネが不敵に嗤う。 関節技を極められながら、あえてその関節を固め、筋肉をバルクアップさせて猪之崎の動きを封じているのだ。云わば、筋肉の拘束具。130kg超えの肉塊が猪之崎の動きを封じていた。 卍固めは複雑に関節を絡ませる技。 かけることも困難だが、解くこともまた難しい。 技をかけられた側が、反対にかけた側を囚えることが可能なほどに。 逆卍固めとでも呼ぶべき自爆技が、猪之崎を拘束していたのだ。「これが狙いか!」「ああ、そのとおりだよ。だが、いまさら気づいても手遅れだぜ……!」 大歓声。 それを一身に浴びて、少女が天高く舞う。 伸ばされた両足が、猛禽の嘴の如く猪之崎を首をロックする。 同時にクロガネが猪之崎を解放。 旋回するソ
Last Updated : 2026-07-13 Read more