ごほん、とスフィンクスは咳払いをし、背筋を伸ばした。 深呼吸をして息を整え、精一杯威厳のある声を出す。「ほう、人間如きに答えがわかったというのか」「あ、そのノリ続けるんだ」 せっかく取り繕ったのに、いきなり腰を折られて涙目になる。 クロガネが小声で「おい、そういうのはやめてやれ」で言っているのが筒抜けなのも心に刺さってくる。「ごめん、いまのナシ! 最初からやり直しで」「……ほう、人間如きに答えがわかったというのか」「へへーん、人間様を舐めてもらっちゃ困るよ!」 物心がついたときからプロレスに染まっているソラだけに、このあたりの切り替えはとんでもなく早い。いかにも世間知らずな少女が生意気に振る舞っているように見せる。 こっちはこっちでクロガネとは別の方向で怖い、とスフィンクスは戦慄した。「ならば答えてもらおうか、人間よ。これで正答にたどり着けなければ、貴様らには罰を与える」 これだけヒントをやっているのだから、頼むから正解してくれ……とスフィンクスは念じる。 小学生でもわかる問題なのだ。それが解けないほど脳みそまで筋肉が侵食しているとは信じたくない。 罰はスフィンクスの意志とは関係なく発動する。 仕返しが怖いからナシ……というわけにはいかないのだ。 自分の運命は完全に眼前の少女に委ねられた。 スフィンクスは脂汗を垂らしながら考える。 祈るような気持ちで、ソラの回答を待つ。 しかし、ソラは口をつぐんだまま一言も発さない。 生きた心地がしないまま、時間だけが過ぎていく。 実際にはほんの数十秒なのだが、焼けた鉄板の上に正座しているかのように時間が進まない。* のこり 60秒 です * 無常にも、脳裏に<運営>のシステムメッセージが鳴り響く。 ソラの沈黙が遅延行為であると判定されたのだ。 この少女は「いざとなれば絞め落とす」と豪語していた。 このまま不正解となったら、勢い余って首をねじ切られても不思議はない。 仙台駅前ダンジョンの<神社>で軽く屠っていた<ヘカトンケイル>だって、自分に比べたら何枚も格上なのだ。* のこり 10秒 です * 死へのカウントダウンがはじまった。 頼む。答えは1秒で十分言えるような短い単語だ。 ちゃんと答えてくれ……!* のこり 5秒 です 4,3,2
Last Updated : 2026-07-13 Read more