All Chapters of 迷宮プロレス道 ~伝説のおっさんレスラー、ダンジョン配信で無双する~: Chapter 121 - Chapter 130

147 Chapters

第121話 牛タンと南蛮味噌

■仙台市真央区 繁華街 高層ビルが立ち並ぶ一角。 先日の迷宮災害によって被害を受けたため、あちこちから工事の音が聞こえてくるが、被害のなかった店舗も多い。宵の口を過ぎた繁華街は仕事終わりの勤め人の姿で賑わっている。 そんな雑踏の中、街並みを物珍しげに見上げる着物の男――第三十一代渡辺綱がいた。「むう、これが二百年後の日ノ本……いや、異界の日本か」 ともすれば女と見紛う美貌に、道行く人々が思わず見惚れる。 声をかけようとする者もいるが、隣に筋肉をこねて作ったような大男――クロガネがいることに気がつくと退散する。「江戸時代にゃ、こういうビルはなさそうだもんなあ」 互いに異世界人であるいことが判明した後、ツナはこちらの世界に連れて行ってくれと頼んできたのだ。ツナの仕事が迷宮改方ということも知らされた。 現代で例えるなら、警察の迷宮課のようなものらしい。配信企画的に問題はないのかとアカリに目顔で尋ねると、問題はないと言う。 そんなわけで、一行は現代に戻ってきていたのだ。「そりゃ江戸時代にビルはないでしょ……って言いたいけど、異世界だもんねえ」「<アイナルアラロ>にもこんな高い建物はないでござるなあ」 もちろん、ソラとオクも同行している。 道中、バスや電車にいちいち驚くツナへの説明役をこなしていたのはもっぱらソラだった。そういった会話の中で、ツナの暮らす江戸時代は西暦1600年頃にダンジョンが発生しており、8年前にダンジョンが生まれた現代とは異なる歴史を辿っていることが判明している。 そういった説明や情報交換はアカリの方がよほど上手そうなのだが、撮影に集中してほとんど口を挟んでこない。いま現在も配信中で、通行人の顔が写り込まないようリアルタイムでピントと画角を調整する地味な神業を披露している。 ダンジョン配信はその性質上、同業者の視聴も多い。 そのため【どういうカメラワークだよ】【俺なら編集してもこうはならんw】などの称賛がちらほら書き込まれるが、わざわざそんなコメントを拾ったりはしない。配信の主役はあくまで演者。カメラマンはその素材の活かすための黒子というのがアカリの信条だ。「ま、見るだけじゃ面白くねえだろ。ぼちぼち牛タンでも食おうぜ」「ぎゅうた
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第122話 【サムライ参上!】WKプロレスリング総合Part241【ニンニンでござるよ】

【サムライ参上!】WKプロレスリング総合Part241【ニンニンでござるよ】1 いつかはバズる名無しさんWKプロレスリングについて語るスレです公式チャンネルttps://xxxxx.maze/s90832/@user-qi3xk4gr7h次スレは >>900 が立てること2 いつかはバズる名無しさん1乙3 いつかはバズる名無しさん乙だがスレタイがなんか混ざってるぞw4 いつかはバズる名無しさんジャパニーズサムラーイはNIN-JITSUもお手の物でござるよニンニン5 いつかはバズる名無しさんまあ確かにあの新キャラは忍術使えそうだ6 いつかはバズる名無しさんクロガネと手四つ互角だったよな?あれが忍術?7 いつかはバズる名無しさん何しろ三十一代目渡辺綱だからな襲名を重ねるうちに忍者が混ざったのでござるよニンニン8 いつかはバズる名無しさんその語尾は絶対流行らない9 いつかはバズる名無しさんいかにも古流の体捌きって感じだったよな現代格闘技だとまず見ない動き10 いつかはバズる名無しさんおれ合気道やってるんだけど、師範のおじいちゃんの動きに似てた11 いつかはバズる名無しさん古流()に合気道()かプヲタの妄想はオカルト武術にまで広まってたのかwあんなん実戦で使えるなら近代格闘技なんて生まれてねえよ12 いつかはバズる名無しさんルールの枠の中で使えない技術が多すぎるんよんで、安全重視の道場剣術が主流になった江戸時代以降から一気に廃れたガチの古流の技なんて伝書にしか残ってないし、口伝なんかはほとんど消えたんじゃないか?13 いつかはバズる名無しさん月刊秘奥の再現企画面白いよね「伝書の技やってみた」のDVDシリーズ全部持ってるわ14 いつかはバズる名無しさんいまどきDVD……そんなとこまで古流にせんでもええやろ15 いつかはバズる名無しさん部数が少ないからねえどうがんばっても千枚も売れないだろうし、物理媒体で高値にするしかないんでしょ16 いつかはバズる名無しさんやはり需要……需要がすべてを解決する!17 いつかはバズる名無しさん解決してねえから円盤なんだよなあ18 いつかはバズる名無しさんつか、あの江戸時代はホンモノなん?ダンジョンの変形フロアなんじゃないの?19 いつかはバズる
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第123話 自衛隊迷宮作戦群

■大江山ダンジョン(仮称)第81層 未踏領域 切り立った峰々を覆い尽くす濃い緑。 ぼうぼうと正体のわからぬ鳥獣の声が響く。 その峰の先端のひとつに、迷彩服に身を包んだ男たちが立っていた。「大佐ァ、通信はやっぱり回復しないっすねえ」「そうか。やはりダンジョン内で高度を取ってみたところで意味はなかったな」「ほぼほぼわかってたんすから、登山なんてさせないでくださいよ、大佐ァ」「それから、妙なあだ名はやめろと何度言わせる、この昼行灯が」「へーい、曹長殿、失礼したでありますっす」 一行は総勢6名。 全員が陸上自衛隊迷宮作戦群所属の精鋭だ。 大佐と呼ばれた髭面の男が隊長であり、昼行灯と呼ばれた茫洋とした顔の男が副隊長を務める。こんななりでも、数々の修羅場をくぐってきた猛者たちだ。 今回の出動は、内閣からの直接の命令だ。 大江山ダンジョンでは、<神変大菩薩>をはじめ、民間では国内トップクラスの配信者パーティが何組も未帰還となっている。レベルでいえば平均で100を超えていた。中難易度のダンジョンなら、最深層までピクニック気分で行って帰って来られる人間たちだ。 それだけの実力者が、ただひとりの帰還もできずに全滅するなど異常事態というほかない。 このダンジョンの深層では通信が途絶するため、情報は何もない。 現代の通信機器は<運営>からもたらされた技術により、ヒマラヤの山頂だろうが海底だろうが通信不能に陥ることはない。無論、ダンジョンでも同様だ。魔素を撹乱する何らかの要因がない限り、「圏外」などありえないのだ。 これらの事態を鑑み、防衛庁情報本部はレベル200以上、すなわち災害級の脅威が潜んでいることを予測した。 災害級のモンスターの処理は、民間に無用な動揺を与えないよう秘密裏に実施される。 そうした超高レベルモンスターの駆除任務に特化した部隊が迷宮作戦群である。 配信を行っていないために知名度こそ低いが、探索・戦闘の両面において最高峰の実力を備えている。「ま、しかし高所を取った甲斐はあったみたいっすねえ」「そのようだな」 二人の視線の遠く先には、小さな鳥居があった。 双眼鏡で覗く。鳥居に寄りかかって腕を組む長身の男。 平安貴族がまとうような狩衣を着崩しており、細身ながらはだけた襟からは引
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第124話 特別迷宮警報

■仙台駅前ダンジョン(裏) <アイナルアラロ>「すまぬが、今宵一晩世話になる」「かまわねーけど、まーた妙なのを連れてきやがったなあ」 ヤシの木が生え、コバルトブルーの波が打ち寄せる島々の一角。 常夏の国に、涼やかな目元の武士――渡辺綱が訪れていた。 相対するのは浅黒い肌にびっしりとトライバルタトゥーを刻んだ男、<カマプアア>だ。「客が増えてすまねえな。道場がぶっ壊れてなきゃうちに泊めるんだが」「だからかまわねーって。こっちもオクが面倒をかけたな」「それがしは面倒などではないでござるよ!?」 客を連れてきたのはクロガネである。 左手で頭をボリボリとかきながら、右手で小さく手刀を切っている。<アイナルアラロ>は現在のクロガネたちの仮住まいだ。 道場の再建中は短期貸しのマンションでも借りようかと考えていたら、<カマプアア>の方から<アイナルアラロ>に過ごせばいいと勧められたのだった。 条件は手隙の時間にプロレスを教えること。もともと週に一度は指導をする約束になっているのだが、ピギーヘッドたちの上達は目覚ましく、もっと詳しく教えてほしいと願う者が増えているらしい。「メシは食ってきたのか? まだならなんか用意させっけどよ」「あー、ありがてえが、メシは済ましちまった。風呂借りるぞ」「っとに人間は風呂が好きだな。勝手に湧いてるもんなんだから断りなんていらねえよ。好きに使ってくれ」「む、風呂か……」 ツナが一瞬表情を曇らせるが、クロガネたちは気がついていない。「天然温泉入り放題! もうこっちに住みたい気分だよね!」「おう、ついでに専属のコーチになってくれや」「えー、ちょっとそういうわけにはいかないなあ」「おいおい、うちの選手を引き抜かねえでくれよ」「ソラ殿ならいつでも大歓迎でござる! 師匠はまあ、たまにくらいで」「なんだコノヤロー。俺の指導に不満があるってのか?」 軽口を叩きながら、一行は温泉へと向かう。 岩浜に湧く温泉はポンプも使っていない純粋な源泉かけ流しで、そこに海水を混ぜて適温に調整するのだ。景色もよく、日本人ならばこれほどの贅沢はない。おまけに上級ポーション並みの回復効果もあるのだから一流の温泉旅館以上のものだと言えるだろう。 海水のため、湯上がりには川の水で身体を流す必要があるが、それはそれでいわゆる「整う
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第125話 列島群発迷宮震

■京都府福知山市 大江山 大江山――酒吞童子伝説で知られるこの山は、京都府北西の外れにある。 一般的に京都と聞いて思い浮かぶ、雅な古都ではない。 京都市内からは丹波山地の向こう、自動車で2時間ほどもかかる山奥だ。 酒吞童子を祀る鬼獄稲荷神社にはダンジョンが発生し、未踏ダンジョンの探索を主とする配信者には注目を浴びている場所だ。いまだ危険度の調査中ということで一般には開放されていない。インターネットの一部では、国内トップレベルの配信者パーティがここで消息を絶ったという噂が流れている。 その大江山が、ぶるりと震えた。 膨れ上がり、山肌が内側から引き裂かれる。 激烈な噴火の如く、噴煙が立ち上り、煮えたぎった溶岩が土砂を巻き込んで溢れ出す。 その中から、九つの黒く長大な影が、天に向けて伸び上がった。 それは黒々とした金属的な鱗で覆われている。 それは鹿を思わせる二本の角を生やしている。 それは爛々と燃える真紅の双眸を宿している。 ビルが降ってきたのか。 そう錯覚するほどに太い、太い脚が進む。 一足ごとに、山体が崩れ、木々が小枝のように舞い散る。 震動。 轟音。 塵埃。 山そのものが動き出していた。 否、山ではない。 山の如き巨体に、九つの頭を持つ龍が、南東に向けて進んでいた。 その行く先は、京都市。 丹波山の原生林を踏みにじりながら進むのは、人口150万に迫る、世界でも有数の歴史を誇る古都であった。■東京都荒川区 日暮里 8年前のダンジョン災害により最大の被害を受けた土地。 元はJR山手線、京浜東北線、常磐線や成田線などが通り、繊維問屋が集まる町。 日本最大級の広大な霊園である谷中霊園を擁し、下町情緒に溢れた街。 ダンジョン災害前までは、閑静な住宅地として人気を集めていた。 それも今は昔。 現在では治安の悪化によりヤクザ者や半グレの集まる都内でもっとも治安の悪い地域と化してる。 線路網はここを避けるように迂回され、東京を丸く囲んでいた山手線は、外にぽこりと膨らんだ歪な形となっている。 しかし、配信者たちからはいまでも人気が高い。 日本で最初に発生した日暮里ダンジョンはいまだ最奥にたどり着いたものがおらず、難易度も最上級にランク付けされている。 モンスターの出現率も高く、戦闘を主とする者たち――とり
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第126話 警察庁総合庁舎 菅原ブンヤ

■東京都千代田区霞が関 警察庁総合庁舎「はぁ、厄介なバイトなんて引き受けるもんじゃないねえ」 特別迷宮警報の発報から数十分後、国道1号線桜田通りのコインパーキングに駐車した軽四輪から一人の男がぼやきながら降りてきた。 よれよれのスーツにくたびれたハンチング帽、無精髭の男――菅原ブンヤだ。 眼の前にそびえるのは、コンクリートと鉄骨をまとった要塞の如き威容。 警察庁総合庁舎である。 テロや迷宮災害などの有事に備え、補強を重ねてきたその建物に入る。 エコだかメタボ対策やらの理由で、職員は3階までの昇降にエレベーターの利用は禁止されている。 ブンヤは白髪の混じった眉をしかめながら階段を上り、荒い息を整えて3階奥のドアをノックした。「ちーす、菅原っす」「入り給え」 重いノブを引き、分厚いドアを開ける。 裏側には特殊材の金属板が貼られていた。室内の壁も同様の素材で覆われている。 見る角度によって色を変えるマーブル模様のそれは見ているだけで目が回りそうな錯覚をもたらす。 部屋の中には、飾り気のないオフィスデスクがひとつ。 パイプ椅子に座ったスーツの男がデスクに両肘を突き、組み合わせた手を口元に当てて深刻な顔をしている。ブンヤのバイト先の上司の上司だ。普段は直接言葉を交わすことなどない。 ブンヤは「このポーズ、平成に流行ったロボットアニメで見たことあるな」と場違いなことを考えつつ、不格好な敬礼をしてみせる。「事態は把握しているかね?」「ええ、大雑把には。大江山で巨大なドラゴンが出現、日暮里ダンジョンが氾濫、仙台は未確認ダンジョンからこれまた未確認のモンスターの群れが溢れ出している……ってとこですかね」「ドラゴンではなく竜種。モンスターではなく迷宮固有生物だ」「はい、そういうのが出てるってことまでは」 お役所言葉には慣れねえな、という愚痴を飲み込み、ブンヤはうなずいた。 ここまでは、事前の連絡やテレビニュースなどを通じて知っている。 緊急報道番組のコメンテーターは、ダンジョン発生以来、最大級の迷宮災害につながりかねないと訳知り顔で話していた。「3箇所だけではない。我々で確認できているだけでさらに7箇所。予測では20以上の迷宮で氾濫の予兆が出ている」「20以上!?」 これにはブンヤも驚く。
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第127話 日暮里ダンジョン氾濫

■東京都荒川区 日暮里 日暮里。 江戸城の鬼門の方角に当たるこの地には、江戸初期に慈眼大師天海によって開かれた寛永寺がある。徳川家康の腹心であった天海は、密教、陰陽道に広く通じ、江戸幕府の鎮護を祈願し、呪術的狙いをもってこの寺を創建したとも言われる。胡乱な説ではあるが、その正体を明智光秀と同一視するものもある。 鬼門とは北東を指し、風水においては邪気の流れ込む方角とされる。 8年前に発生した日暮里ダンジョンは、まさしくその寛永寺の境内に入り口があった。 鳥居から溢れ出すのは百鬼夜行。 毛のない皺だらけの緑の猿、ぐちゃぐちゃと真っ黒な粘体生物、ぼろぼろと鱗の剥がれた二足歩行の蜥蜴人、きらきらと毒の鱗粉を撒きながら笑い狂う羽つきの小人。そういった異形どもが、津波の如く押し寄せ、一帯を蹂躙したのだ。 被害は深刻で、魔素によって汚染された土地は常人が住める環境ではなくなった。 木々や花々はねじくれ奇声を上げ、蝶は口吻を人に刺して血をすすり、あちこちに瘴気の吹き出す毒沼が湧き出した。 閑静な住宅街であった日暮里は、一夜にして地上の地獄と化したのだ。 元からの住民はそのほとんどが避難し、地価は実質ゼロになった。 日暮里の土地を買いたい者など、誰もいなくなったのだ。 しかし、年月が経るとそこに住まう者たちが現れる。 最初はホームレス。無人となった家々に、我が物顔でいつきはじめた。 次は脛に傷を持つもの。 前科者や指名手配を受けたもの、一般社会に馴染めない者たちが集まった。 半グレやヤクザ、蛇頭やマフィアといった犯罪組織も流れ込む。 そして、配信者。 なにしろ日本で最初のダンジョンだ。 撮れ高のある鉄板のコンテンツであり、難易度にふさわしい希少品のドロップもある。 長期のアタックを続ける配信者がキャンプを張る。 人が集まる。バザールめいた市が立つ。 配信による収益は<運営>から支払われるため、銀行口座すら作れないヤクザ者でも稼げると知られる。 低層であれば危険は少ない。 運が良ければ大金を得られる可能性もある。 それに惹かれて、ホームレスたちもダンジョンに挑みはじめる。 そうやって出来上がったのが、現在の日暮里の街だ。 寛永寺を中心に、ダンボール、トタン、プレハブ、材木、プラスチックに帆布に廃材……そういったもので作られた、テ
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第128話 取材映像より一部抜粋

■京都市内 某日某所 元配信者の証言 ええと、もうカメラ回ってるんです? はい、はい。わかりました。録画ですね。 はい、だいじょうぶです。変な切り取りとかされたらアレですけど、そもそも話してまずいようなこともないので。 あっ、ゼンキお姉ちゃんのインタビューはもう済んでいるんですよね? そしたら余計な経緯とかは省略した方が――あ、重複してもかまわないですか。むしろ全部話してほしいと。 わかりました。 ええと、自己紹介ですね、はい。(咳払いをして)ボクは元配信者で、<神変大菩薩>のメンバーだった者です。 京都じゃ一番って言われてて、それなりに名前も通ってたのでご存じの方もいるかもしれません。って、ちょっとうぬぼれかな? 最初は幼馴染のオヅくんと、お姉ちゃんと三人ではじめたチームで。 オヅくんは<陰陽師>で、お姉ちゃんは<くのいち>で、上級職になってたんですけど、ボクは縛りプレイとか好きなタイプだから、ずっと<黒魔術士>だったんです。 基本の攻撃魔法しか使えないですけど、レベルが上がるたびにちょっとずつ威力が上がるんですよ。 私が<火炎の弩>を使うと、コメントが『いまのはメラではない、メラゾーマだ』なんて盛り上がったりして……あ、逆でしたっけ? すみません(笑) それで、他のメンバーが入ったり抜けたりはしましたけど、順調にレベルも上がって、チャンネル登録者数も増えて、市や県からのお仕事なんかも受けるようになりました。 はい、嵯峨野ダンジョンとかですね。あのトロッコのギミック、最初に解いたのボクたちだったんですよ。懐かしいなあ……あの頃が一番楽しかったなあ……。(すすり泣き。しばらく撮影中断) ごめんなさい。取り乱しました。 はあ……ダメだな。もう吹っ切れたと思ってたのに。思い出しちゃうとダメですね。 あっ、もうだいじょうぶです。続けますね。 それで、大江山ダンジョンにも京都府からの依頼で潜ったんです。 新規ダンジョンの難易度調査ですね。そういうのは何度も受けてたので、そのときもいつもと同じだと思ってたんです。油断……は正直していたところがあると思います。モンスターも京都だとよく見かける妖怪ベースでしたし、特別変わったトラップもリドルもなかったですし。 調査は順調に進んで、最深層まで進
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第129話 仙台市郊外 WKプロレスリング道場

■宮城県仙台市郊外 WKプロレスリング道場「クロちゃん! ああ、いてくれてよかった。あたしゃもう心細くって心細くって……」「おお、笹木のおばちゃんじゃねえか。どうしたんだ?」 特別迷宮警報から約1時間後、クロガネたちは地上に戻っていた。 建築中の道場が心配だったからだ。 幸い建物に問題はなかったものの、どういうわけか道場の敷地には近隣の住民たちが集まっていた。クロガネを見つけるなり駆け寄ってきたのは、最古参のジム会員である笹木という老人だった。「どうしたもこうしたも、あの警報だろう? 街の方はモンスターが現れてるとかで、こっちでも見かけたって人がいて、ほら、この前だってあのでっかい……そう、ドラゴンってのが出たろう? だからもう生きた心地がしなくって」「なるほど、それでうちに避難してきたってわけか」 笹木の早口でクロガネは事情を察する。 改めて集まっている住民たちを見れば、顔ぶれは老人ばかりだ。みな笹木と同じ理由で集まったようだ。「ごめんねえ、急に押しかけて」「いいってことよ。それよりうちがこんなんですまねえな。まだ柱しか立ってねえや」 道場の再建が済んでいれば、家に上げて休ませてやるところだが、残念ながら工事は始まったばかりでそういうわけにもいかない。 どうしたものかとクロガネがぼりぼり頭をかいていると、オクがトコトコとやってきた。「それなら<アイナルアラロ>に来るでござるか?」「おお、それは助かるが……いいのか?」 クロガネは手首に巻いた牙の首飾りを見る。 気軽に行き来しているが、<アイナルアラロ>はこのレアアイテムが通行証となっている。クロガネたちが行くまでは誰にも知られていなかった隠れ里なのだ。オクと交流の出来たツナはともかく、初対面の人間たちを何人も連れて行ってよいものなのか。「何を今更でござるよ。困ったときはお互い様というやつでござる」「あんれえ、めんこい豚っこだねえ」「それがしは豚ではないでござるよ!?」 胸を張るオクの頭を、笹木が目を細めて撫でる。 オクたちピギーヘッドの見た目は子豚のキャラクターのようでかわいらしいのだ。オクが望んだわけではないが、笹木の不安を和らげるのに役立っていた。「じゃあ悪りぃが、頼りにさせてもらうぜ。おばちゃんもそれで大丈夫か? 階段をかなり降るんだが」「気を使わせ
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第130話 源次綱流印地打ち<飛燕>

 浦波町へとつながる国道を軽トラックが走っていく。 百万を超える人口を擁する仙台市であるが、その全域が真央区のような大都会ではない。面積だけで言えば、むしろ田畑や戸建てが並ぶ住宅街の方が多いのだ。 道場のある田園風景が続く風景を抜け、住宅地に入っていく。 浦波町に近づくにつれ、緊急車両のサイレンや、防犯ブザーのけたたましい音があちこちから聞こえはじめる。それはまるで、ひとつの街が丸ごと悲鳴を上げているかのようだった。「あっ、モンスター!」 ソラが軽トラックの荷台から夜空を指差す。 そこには、禿頭の老人の顔をふたつ持ち、ところどころの羽が抜けた醜い怪鳥が飛んでいた。 怪鳥はソラの視線に気がつくと、ふたつの顔に薄ら笑いを浮かべる。 そして涎を撒き散らしながら軽トラックめがけて急降下を仕掛けてきた。「ていっ!」 しかし、急襲はあえなく失敗する。 軽トラックの屋根を使い、三角跳びの要領で飛び上がったソラが縦回転のオーバーヘッドキックで撃墜したのだ。ソラはそのまま空中で姿勢を立て直し、止めの二撃目を加えて荷台に降り立つ。「いやはや、お見事。いまのがるちゃなる流儀か」「空中殺法はルチャの華だからね! 寝技も見せたいけど、いまは無理かなあ」 ソラの視線の先には、夜空を舞う怪鳥の群れがあった。 闇に紛れて見えにくいが、十匹以上はいるだろう。屠殺される家畜を連想させる耳障りな奇声とともにトラックを追いかけて飛んできている。 トラックがカーブするたびに、その距離は徐々に詰まる。 ついには数匹が一斉に飛びかかってきた。 ソラが再び空中に舞おうとするのを、ツナが手で制する。「技を見せてもらったのだ。返礼に源次綱流をお見せしよう」 ツナが懐に手を入れ、また手を伸ばす。 怪鳥の頭から潰れ、血と脳漿が飛び散る。 怪鳥は「んぐぇ」と情けない声を上げて地面に落ちていく。 二度、三度。同じ動作を繰り返すたび、怪鳥の断末魔が続いた。「すごっ! 何それ、超能力?」「ちょうのうりょく……? いや、印地打ちと申してな。要するに、石投げよ」 ツナが手に持った石を見せる。 ピンポン玉ほどの、投げるには手頃そうな石だ。 そして素早く手を振ると、怪鳥がまた一匹落ちた。「当流では<飛燕>と言うが……少々大げさで恥ずかしいな」「いや、す
last updateLast Updated : 2026-07-13
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