■仙台市真央区 繁華街 高層ビルが立ち並ぶ一角。 先日の迷宮災害によって被害を受けたため、あちこちから工事の音が聞こえてくるが、被害のなかった店舗も多い。宵の口を過ぎた繁華街は仕事終わりの勤め人の姿で賑わっている。 そんな雑踏の中、街並みを物珍しげに見上げる着物の男――第三十一代渡辺綱がいた。「むう、これが二百年後の日ノ本……いや、異界の日本か」 ともすれば女と見紛う美貌に、道行く人々が思わず見惚れる。 声をかけようとする者もいるが、隣に筋肉をこねて作ったような大男――クロガネがいることに気がつくと退散する。「江戸時代にゃ、こういうビルはなさそうだもんなあ」 互いに異世界人であるいことが判明した後、ツナはこちらの世界に連れて行ってくれと頼んできたのだ。ツナの仕事が迷宮改方ということも知らされた。 現代で例えるなら、警察の迷宮課のようなものらしい。配信企画的に問題はないのかとアカリに目顔で尋ねると、問題はないと言う。 そんなわけで、一行は現代に戻ってきていたのだ。「そりゃ江戸時代にビルはないでしょ……って言いたいけど、異世界だもんねえ」「<アイナルアラロ>にもこんな高い建物はないでござるなあ」 もちろん、ソラとオクも同行している。 道中、バスや電車にいちいち驚くツナへの説明役をこなしていたのはもっぱらソラだった。そういった会話の中で、ツナの暮らす江戸時代は西暦1600年頃にダンジョンが発生しており、8年前にダンジョンが生まれた現代とは異なる歴史を辿っていることが判明している。 そういった説明や情報交換はアカリの方がよほど上手そうなのだが、撮影に集中してほとんど口を挟んでこない。いま現在も配信中で、通行人の顔が写り込まないようリアルタイムでピントと画角を調整する地味な神業を披露している。 ダンジョン配信はその性質上、同業者の視聴も多い。 そのため【どういうカメラワークだよ】【俺なら編集してもこうはならんw】などの称賛がちらほら書き込まれるが、わざわざそんなコメントを拾ったりはしない。配信の主役はあくまで演者。カメラマンはその素材の活かすための黒子というのがアカリの信条だ。「ま、見るだけじゃ面白くねえだろ。ぼちぼち牛タンでも食おうぜ」「ぎゅうた
Last Updated : 2026-07-13 Read more