「まずは簡単な話からはじめましょう」 緊張で固まったクレイ君たちに、私は表情を緩めて微笑んでみせた。 ここまで話を持ってくるのにケレン味をきかせすぎた感は正直ある。まずは、わかりやすい報酬から提示して、メリットを明確に示しておこう。「パルレ、例のものを」「かしこまりました、お嬢様」 パルレがずっしりと中身の詰まった布袋をローテーブルに置く。 その袋にはヴラドクロウ家の家紋が刺繍されており、布地も麻ではなく上等な綿だ。貴族同士でちょっとした贈り物をする際に使用するものだが、この袋を売るだけでもちょっとした小遣いにはなるだろう。「尾籠な話で恐縮だのだけれど、これは謝礼金です。中身を改めてくださるかしら?」「わ、わかった」 前世の日本なら、封筒に入ったお金をその場で数えるなんて失礼極まりないが、現世での常識は違う。もらったものはその場で即確認。そして中身に応じた謝意を示すのがこの世界での礼儀なのだ。 クレイ君が布袋の紐を解き、中を覗き込む。そしてその姿勢のまま固まった。「ちょっと、クレイ。手早く数えなきゃ失礼でしょ。こっちに貸しなさい。いったい銀貨何枚……」 クレイ君の手から布袋をひったくったエイスちゃんが固まる。「エイスまでどうしたのですか? あなたらしくもない。ここは私が……えっ、き、金貨……?」 リジアちゃんも緑色の瞳をまん丸にして固まった。 布袋に入れた報酬は、平均的な冒険者の3年分の収入くらいだ。物価がぜんぜん違うから単純に換算はできないけど、無理やり日本円にするなら1千万円くらいかな。 少年少女に渡すには大金だが、彼らにはこれから正義の味方として活動してもらわなければならない。小銭で転んで悪事に走ってしまわないよう、当座の生活費に困るような事態は避けなければならないのだ。 また、彼らが取り戻してくれたヴラドクロウ家の聖印がいかに大事なものだったのか、その重みを印象付ける意味合いもある。「こ、こんなに頂いてしまってよいのでしょうか……?」「それだけの手柄だったということです。セイギネス様の聖印は我が家に代々伝わる秘宝。悪が再び動き出すその日に備え、秘していたものなのです」「それほど大切なものだったのですね……」 最初に正気を取り戻したのはリジアちゃんだった。 おっとりしているように見えて、実は肝
Dernière mise à jour : 2026-07-13 Read More