Lahat ng Kabanata ng 非モテ大賢者は美少女になりたかった ~わたぐるみに転生した結果、美少女にこねくり回される日々がはじまりました~: Kabanata 61 - Kabanata 70

71 Kabanata

第61話 大賢者、食べる

「そういやさ、どうやって2万人も捕まえたの? 一人残らず捕まえたってわりには、ヒロトとツカサは残ってるし」「あー、それはっすねえ……」 マサヨシ君の案内でYADOBASHIビルの頂上、2048階に向かいながら、俺が浮かんできた素朴な疑問をぶつけた。 マサヨシ君はどうも言いづらそうに頬をかいている。なんだ、またジャークダーによる悪逆非道な行為があったのか?「YADOBASHIを占拠したあとに、ハッキングしたアキバ電工のメイドを使ってぜんぶのお客さんを捕まえたんすよ。その間は臨時休業ってことで出入り口を閉鎖して……」「そんときに取りこぼしてたってことか? まあ、あんなゴーレムに捕まるほど二人とも間抜けじゃないもんな」「いや、休業中なのに、全員捕まえたあとに無理やり入ってきたんす」「え?」 俺は思わず、ヒロトとツカサに視線を向けた。「定休日じゃなかったからな! ドアの故障だと思ったんだぜッ!」「あー、YADOBASHIは勢力争いが激しかったから、勝手に封鎖されるとか珍しくなかったんだよね。あっ、もちろんガラスを割ったりはしなかったよ? 自動ドアに手のひらを当てて、ボクとヒロトでぐいーっと左右に開いて慎重に開けたんだ」「正義の道は誰にも止められないんだぜッ!」「目的はただの買い物だったんだけどね」 ただの買い物で正義の味方を名乗る連中が平然と不法侵入をする異世界……率直に言って、嫌すぎるんですが。「自分たちだって嫌だったっすよ。普通は通れるところが封鎖されているとか抗争が起きてる証拠みたいなもんっすし、レッドさんたちみたいなアレな……いや、勇敢な人たちじゃないと入ってこないっす」「正義と勇気は共に歩くものなんだぜッ!」「えっと、それでっすね。レッドさんたちが侵入してたのに気づいたのはこっちの世界にきたあとで、メイドロボ――セージさんたち的にはゴーレムっすかね? それを差し向けたところでどうにもならないんで、周辺の探索なんかに向けてたらしいっす」 なるほど、俺たちを襲ったのはそういうメイドたちだったのか。 警備がなんたらとか言ってたけど、あれは何だったんだろう?「たぶん元のプログラムを流用してるっすからね。アキバ電工みたいな老舗のAIは秘伝のタレの塊みたいなもんで、リバースエンジニアリングはほぼ不可能なんす。おそらく、敵性対象を誤認する
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第62話 大賢者、最上階につく

 YADOBASHIビル2048階。 そこはこれまでの階に比べて明らかに柱の数が少なく、広々としたドーム状になっていた。四方どころか天井までもガラス張りだ。雲は眼下にしかない。まるで青空に浮かぶ半球のようだった。 そして、ドームの中央には巨大な黒い柱が立っていた。もしかして、あれ丸ごと魔石かな? 濃密な魔力の気配が漂っている。 柱の前には祭壇が設けられ、そこには無数の魚の頭に囲まれた黒い像があった。絡み合った無数の蛇が人型を為しているそれは、禍々しい雰囲気とともに耐えきれない異臭を放っている。 ……な、生臭い。魚の頭が生臭いんですよ。腐ってませんかそれ?「くくく……よく来たなジャスティスイレブン。たった2人でこの斬殺怪人キルレインに勝てるつもりか?」 祭壇の影から、人影が現れた。 流れる黒い長髪を後ろでひとつにまとめている。抜けるような白い肌に、酷薄さを感じさせる鋭い双眸。腰には1本の刀。逆巻く荒波を大胆に描いた着流しを崩して羽織り、その胸元にはさらしで巻いた谷間が見事に存在感を主張していた。「ふふ、たった2人ではありませんよ。この《大賢者》セージをお忘れでは? 六鬼将との戦いはどこかからご覧になっていたのでしょう。ところで、いまはちょっとゴツめの装備をしてますけどね、本当はもこもこふわふわがウリなんです。ほら、この背中のあたりとか、ちょっともふもふしたくなってきませんか?」 谷間の引力に負けた俺は、トテトテとどんぐりの蹄を鳴らしてお姉さんに吸い込まれていった。あっ、さらしとかよくないですよ。形が崩れるのが早くなるとかなんか聞いたことがあるっす。取るんならお手伝いしますよ。あっ、ぼくヒツジなんで、下心とかそういうのは一切――「有象無象は数には入らん。六鬼将もただの余興よ」 その言葉とともに、お姉さんの右手が消えた。 続けて、チンと鍔鳴りの音がする。 すると、俺の装備が微塵に分割され、ガラガラと音を立てて床に落ちた。 えっ、なにそれ? 神速の居合抜きみたいなこと……? これミスリル入りなんですけど? ものすんっごい硬いんですけど!? 普通斬れるようなものじゃないんですけど!?「我と愛刀 《人喰い雄呂血》の前に斬れぬものなし。だが、この貴様の如き下衆を斬っては刀が汚れる。さがれ、下郎め!」 俺はお姉さんに蹴り飛ばされ、ぽてんぽ
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第63話 大賢者、活躍する

 黒い甲冑の怪人が縦横無尽に漆黒の刀を振るう。 赤と黄の人型が空間を刻む無数の斬撃をかわす。 黒、赤、黄が目まぐるしく入れ代わり立ち代わり、動く抽象画のような光景を眼前に表出させていた。その名状しがたい混沌とした色の暴風が通り過ぎたあとには、床が切り裂かれ、柱が砕かれ、すさまじい破壊痕が残されていく。「うわー、たまんねえなこれ」「とても割って入れる隙がないな……」 せめて弾除けにでもなれば、と開戦直後は俺もキルレインの近くでぴょこたんぴょこたんしていたのだが、どういう理屈かやつの斬撃は間合いの外まで飛んでくる。狙われなくても流れ弾……流れ斬り? でまっぷたつにされかねなかった。 俺の反射神経じゃとてもかわし続けられないので、ミストが展開している《多重障壁》のうしろまで避難してきた次第だ。半透明の無数の壁を生み出し、破壊されたら次々に新しい壁を再生していく。設置型の術式を得意とするミストの十八番のひとつだった。「……シロも、出る?」「いや、シロ殿は後詰めだ。ここぞというときまで待ってくれ」「……わかった」 シロちゃんは巨大なメイスを手にうずうずしているようだ。 ミストが上手いこと止めてくれたからよかったが……実際、あの戦いの中にはシロちゃんでも入り込めないだろう。ヒロトとツカサの連携を崩す弱点にもなりかねない。 パワーだけならシロちゃんが圧倒的だろうが、実戦経験が違いすぎる。とくにシロちゃんには強者と戦った経験はほとんどない。黒龍のおっさんから訓練くらいは受けてるだろうが……おっさん、親バカだからなあ。厳しい修行なんてさせてないだろう。「ミスト先生ー、あたしはどうする?」「メリス君はそのまま《疲労回復》の準備をしていてくれ。ヒロトかツカサが交代で退いてくるかもしれん。そのときにかけてやってくれ」「わかったー!」 メリスちゃんは細い腕を組んで、いつになく真剣な様子で戦いを見守っている。いつもお気楽元気なメリスちゃんだが、いまのシリアスな状況はさすがに察したようだ。俺をぐえーすることもぶんぶんすることもなく、青い瞳で懸命に人外たちの動きを追っていた。「それでセージ、お前の方はどうだ?」「悪りぃ、まるでスピードに追いつけねえ。しかもあの斬撃はどういうわけか俺の魔力を斬ってくる。数十秒……いや、数秒でも動きを止められればなんとかできると思
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第64話 大賢者、我を失う

「ん……ああ……あ、あれ……お兄ちゃん?」「霧子、目を覚ましたんだな! 大丈夫か、痛いところはないか?」「もう、いい加減子どもじゃないんだからそういうのは……って、あ……れ……?」 よだれを垂らしてびくんびくんしていたサムライお姉さんは、メリスちゃんの《疲労回復》によって意識を取り戻した。《疲労回復》は新陳代謝を加速させ、全身の不調を改善させる魔法だ。ガンとか感染症には逆効果になることもあるが、基本的には何にでも効果を発揮する便利な治癒魔法である。「お兄ちゃん、これ、どうなってるの?」「霧子がよくわからないものに取り憑かれていたのをレッドたちが助けてくれたんだ。ほら、ちゃんとお礼を言いなさい」「えっ、レッドが!? くっ……あ、ありがとうございます!」 マサヨシ君に膝枕されていたサムライお姉さんが、しゅびっと正座になってヒロトに頭を下げた。三指をつく所作が実に優美だ。これが伝承に聞くヤマトナデシコというものか……。「ハハハッ! 気にする必要なんてないぜッ! 決め手はマサヨシだったからな!」「すごいパワーだったね。ヒロトが変身すると、あれを使わないとならないから六鬼将戦のときは素でやりあってたんだ」「あはは……ほんの数十秒しかもたないっすけどね。上級怪人並みの力を出せる、自分の奥の手っす」 マサヨシ君は黒タイツの頭をぽりぽりかいて照れている。 ちょっと待てや、サムライお姉さんの洗脳を解いたのは俺なのだが!? この大賢者セージなのだが!? ……って主張したくなるが、まあ、いくら俺でもこの空気で手柄を主張したりはしない。「んで、マサヨシ君とキルレインさん? はどういう関係なわけ? お兄ちゃんとか言ってますけど、兄妹なの?」「いや、実の兄妹ってわけじゃないっす。一緒の孤児院にいただけで――」「疑似お兄ちゃんポジションんんんん!?」 俺はガガガガガガッと歯を打ち鳴らしてマサヨシ君を威嚇した。 サムライお姉さんはびくっとなってマサヨシ君に抱きついた。マサヨシ君はマサヨシ君で、その細い体をかばうように抱き返す。なんやねん、このうえ当てつけを重ねるのかっ!?「そ、そう言われたらそうっすけど。なんでそんな荒ぶってるんすか!?」「そりゃ荒ぶるだろう!? 疑似妹! 疑似お兄ちゃん! そんな関係はなあ、人類史がはじまる前からアカシックレコードに刻まれた
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第65話 大賢者、ラストバトルの予感

 夫婦、ペアレント、あるいは夫婦、それは一体何であろうか? 男女が一対になり、人生を共にする。そして子を成し、次代に血をつなぐ。いや待て、それは必須ではない。メリスのご両親がそうではないか。血の繋がりはなくとも子を慈しみ、愛情を注ぎ、次の時代を紡いでいく……そういうあり方も否定されるべきではない――。「おい、正気に返れ。馬鹿者」 俺の意識はミストチョップにより現世に帰ってきた。「それよりもだ。少し気になることを言っていたな。キルレイン女史、あなたは先ほど世界の滅びを見たと言ったが、それはどういうことだ?」「すまん。若干錯乱していたようだな。そんなことをつぶやいていたか……。それが現実であったかはわからんが、見たままを話してかまわんでござるか?」「かまわん。と言うよりも、変に解釈を交えず、そのまま話してもらった方が事実の検証には役立つな」「わかった。それがしの精神があの不吉なるものに囚われていた間のことで、夢で見たような曖昧さであるのだが――」 キルレインは、マサヨシ君に見守られながら訥々と経緯を話す。 なんでも例のお魚を囲んだダンスをはじめる直前から、世界に奇妙な現象が起きていたそうなのだ。空間が歪み、ねじれ、縮んだり拡がったりする。そんな状況の中で、黒い像を囲んだ儀式は行われていたらしい。「なるほどな。ジャークダーとやらが行った儀式はこの現象のトリガーそのものではなく、なんらかの現象に便乗して行われたことなのか?」「それがしにも正確なところはわからぬ。だが、それがしの感覚でもミスト殿の見立てで間違いないと思うでござる」 ううーん、なんかややっこしくなってきたな。 このアキバ遺跡が転移してきたのはなんらかの自然現象みたいなもので、それに何者かが介入してきたってことか? 降魔災害の真似事ができるような存在なのであればやってることが微妙にしょぼいし。腑に落ちるところはあるっちゃある。「うーん、そのへんも気になるところだけど、ボク的には監禁されてる人たちは無事なのかが気になるんだけどな」「ああ、すまぬ。全員無事だ。それがしが身につけている護符から亜空間への扉を開けることができる」 ツカサから質問されたキルレインは、さらしでキュッと盛り上がった谷間から、錠前に蛇を絡みつけたようなデザインの首飾りを引き出した。そ
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第66話 大賢者、気合を入れる

「貴様がキルレインを操っていた黒幕か!?」『黒幕とは人聞きの悪い。我が加護を与えてやっていたのだ』 ミストの問いかけに、絡みつく蛇が不気味に蠢いて応じた。 蛇体を震わせて音を発しているのだろう。人間のそれとはまったく異質な声。まるで小さな蛇が耳の中に潜り込んでくるようだ。「操り人形がいなくなったから本人登場って、完全に黒幕のムーブだよね」「お前からは悪の臭いがぷんぷんするぜッ!」 ヒロトとツカサが、ミストの前に出る。 さっきの黒い波動は溜めが必要なのだろう。べらべらとしゃべりはじめたのはやつも時間稼ぎのはずだ。この隙に俺もちょっと仕掛けをさせてもらうか。(ミスト、悪いけど少し魔法使うぞ)(こら、早まるな。もう少し様子を見ろ)(さっきのやつをまた連発されたらマズイだろ。だいじょうぶ、金属メイドから回収した分くらいしか魔力は使わないから)(くっ……本当だな?)(本当本当、それにあの蛇野郎のうしろにあるデカいのはまるっと魔石だ。あれを回収できればもう俺の寿命を気にする必要もない)(……仕方がない。わかった) ヒロトとツカサが蛇野郎の注意を引いている間に、俺はミストと小声で打ち合わせを済ませる。 俺はひさしぶりに本格的に魔力を練る。第一の仕掛けとして、やつのあの広範囲魔法をなんとかしなくちゃどうにもならん。「この街を千年守ってたとか言うけど、外は廃墟じゃん。どこが守ってたのさ?」『矮小な者どもには想像もつかぬことよ。千年前、いくつもの宇宙がひとつになった。我もそれに巻き込まれてな。次元の境界が入り乱れる中で、この世界に堕ちようとしているこの街を見つけたのだ』 俺とミストが作戦を立てているのを察したのだろう。ツカサが会話を繋いでくれる。「千年前……といえば降魔災害か?」『お前たちはそう呼んでいるらしいな。無数の世界が折り重なり合い、異なる因果律が無理やりまとめあげられた』「異なる因果律……魔法や、新たな月のことか?」『ほう、矮小なる者にしては察しがいい』 ミストの問いに、蛇野郎は全身をおかしげに震わせる。『あらゆる次元、あらゆる宇宙、遠き星々からすべてが集まった。貴様らが《神》や《悪魔》と呼ぶ存在もだ。知らぬ地に堕ちたやつらが相喰む様子は壮観であったぞ』「傍観者気取りか。どうせその争いに割って入れるだけの力がなか
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第67話 大賢者、高笑いする

『いい加減にしろォォォオオオ!!』 蛇野郎の叫びとともに、やつの身体が一気に膨張する。 大人の腰よりも太い大蛇の群れが絡まりながらうねり、爆発したかのように暴れまわった。床が、天井が、柱が砕け、弾ける。サムライお姉さん戦の時点ですでにひどい有様だったが、いまや瓦礫置き場の様相を呈している。その中心には、伝説の九頭竜を思わせる巨大な姿に変じた蛇野郎がいた。 蛇野郎が、九つの首を無秩序に振り回す。ヒロト、ツカサ、シロちゃんの三人は直前にぱっと飛び退き、すんでのところで大蛇の奔流をかわした。「巨大化なら慣れてるぜッ!」「まあ、毎度のパターンだよね」 ヒロトとツカサは慌てるでもなく、ヒットアンドウェイで大蛇に打撃を加える。 だが、先程までと違って蛇野郎に苦しむ様子はない。デカくなったぶん、防御力も増しているようだ。「……んっ!」 二人が攻めあぐねているところに、シロちゃんが満身の力を込めた打撃で割って入る。特注のメイスが黒い鱗に食い込むが、鱗一枚砕けずに弾き返される。シロちゃんのフルパワーであの様子だと、物理はもう通りそうにないな。「それがしの刀であれば……」「ちょっ、キルレインさん! 無理はダメっすよ!」 刀を杖にし、ふらふらと立ち上がろうとするサムライお姉さんをマサヨシ君が止める。 あゝ、仲良きことは美しきかな。夫婦でいちゃつくのは見えないところでお願いします。「怪我人にうろつかれるのはかえって邪魔だ。大人しくしていろ」「俺たち、一応勇者パーティなんて呼ばれてたんでね。役割分担はきっちりできてるわけよ」 ミストが懐から出したワンドに紫電を走らせる。 俺はヒツジさんトゥースをカカカカッと打ち鳴らす。 《魔封じ》はすでに解除済み。これからは火力担当、魔法使いチームの出番だぜ!「メリス君、牽制を頼めるか。何、あれだけ大きな的だ。外す心配はしなくていい」「わかったー! 《魔弾》! 《魔弾》! 《魔弾》! 《魔弾》! 《魔弾》! 《魔弾》! 《魔弾》! 《魔弾》! 《魔弾》! 《魔弾》! 《魔弾》!!!!」 両手を前にかざしたメリスちゃんの周辺に無数の光球が生まれ、九頭竜と化した蛇野郎に向かって次々と撃ち出される。光球が黒い鱗を弾き飛ばし、肉をえぐり、血しぶきを発する。 ま、物理特化したら魔法に弱くなるのが
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第68話 エピローグ①

 およそ1年後。王都の壁外にて。「カカカカッ! この《大魔王》セージ様に楯突こうというのか!」「《凶獣》セージが現れたなっ! みんなっ、かかれー!」「「「わぁー!」」」「うぎゃー!」 俺は手に手に棒を持った貧民窟のガキどもに追われていた。 ヒツジさんボディはいくらぶん殴っても怪我しないもんだから全員遠慮なしだ。まったく、ガキってのは加減しないから困る。まっ、俺は1発も喰らわないけどな。「ヒツジ先生ー、ごはんできたよー」「おっ、メリスちゃんありがとう。おらっ、ガキども! 冒険者ごっこは終わりだ。メシ食いに行くぞ!」「「「わーい!」」」 メリスちゃんが作った羊肉のスープに、欠食児童どもが群がる。 え、えと、メリスちゃん? ここで羊肉を使ってることに他意はないよね……?「さあ、みんないっぱい食べるっす! いっぱい食べて、立派な悪の組織の戦闘員になるっすよ!」「くっくっくっ、孤児を幼少からみっちり育て上げてジャークダーの精鋭戦闘員に育て上げる。それがしが言うのもなんであるが、完璧な計画でござるよ」 木皿にスープをすくい、配膳しているのはマサヨシ君とサムライお姉さんの夫婦だ。 アキバとチョーダ王国の交易路が確立したら、アキバの守りを六鬼将のポンコツどもに任せて王都に引っ越してきた。名目は貧民窟のガキどもをジャークダーの引き込むことだが……どっからどう見てもボランティアのお兄さん、お姉さんである。 なお、戦闘員スーツを脱いだマサヨシ君は細マッチョの精悍な男であった。ろくに手入れもしていなそうな赤茶けたボサボサヘアーがワイルドな魅力を放つイケメンである。くそっ、爆発しねえかな。 1年前、俺たちがあの蛇野郎を撃破した後からが忙しかった。 亜空間とやらから2万人もの異世界人を助け出し、生活の基盤を整える手伝いをしなければならなかったのである。あのYADOBASHIビルには大量の物資が残されていたが、2万人で消費するとなると心もとない。あっちこっちに畑やら工場やらを作らせて、チョーダとの交易で経済が成り立つように整えなければならなかったのだ。「おい、ヒツジ野郎。ミストの姐さんが呼んでっぞ」「ハッ! 俺がハーピー如きに捕まえられると思ったか!」「ったく相変わらずめんどくせえな……。メリスの嬢ちゃん、頼むよ」「わかったー
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第69話 エピローグ②

「着いたぜ。じゃあな、ヒツジ野郎」「ちょっ、投げるなよっ!?」 俺は青空から乱暴に放り捨てられた。 いやあ、落下ダメージ無視な身体だけどさあ。さすがに扱いが雑すぎませんかね? 俺はむいっと力を込め、全身をぼふっと膨らませる。 風をはらんでタンポポの綿毛のごとく宙を漂うと、ミストの研究室の窓ガラスにべたっと張り付いた。「よう、ミスト。開けてくれー」「お前はいい加減ドアから来ることをおぼえろ」 ミストが黒髪をかきながら、呆れた様子で窓を開ける。 俺はきゅっと身体を縮めて、ミストの研究室へ転がり込んだ。「相変わらず元気そうじゃのう」「師匠こそ変わってねえなあ。たまにはカラーリングでも変えてみたらどうだ?」「お主の目は節穴か? ほれ、脚部パーツの装甲の素材を一新したのじゃ」「さ、さっぱりわかんねえ……」 謎の薬剤と謎の骨格標本でいっぱいだったミストの研究室には、半機械の等身大人形――またの名を師匠という――が増えていた。アキバ遺跡から回収できた技術を研究するために、引きこもりをやめて王都に出てきたのだ。 円環の内側の創立メンバーのひとりであり、伝説の《黒鉄の魔女》であるという名声を活かして学院の名誉教授にすんなり収まっている。隠者気取りのくせになかなか生き汚いところがあるのが我が師匠だ。「それで、今日は何の用だ?」 俺はどんぐりの蹄でとてとてと歩き、ソファに座って要件を尋ねる。 どうせ魔力操作関連だろうとは思うのだが、呼び出されるたびに突飛な実験に付き合わされるので具体的な内容は予想もつかない。「うむ、その前に確認したいのだが……セージ、お前は人間の体に戻りたいか?」「人間の体に?」 ミストから問われ、俺は思わず考え込んでしまった。 ヒツジさんボディで過ごすこと2年弱。あまりにも馴染んでしまってもはや人間の体だった頃の感覚が思い出せない。メシも食えるし、伸縮自在だし、怪我もしないし……。アキバ遺跡から回収した魔石で寿命の問題も解決したし、ぶっちゃけこの身体のままの方が便利なんじゃないかと思うところもある。「うーん、ぶっちゃけわからん。もはや人間だった頃が思い出せん」「結婚したいとか、こ、子を成したいなどとは思わないのか?」 なぜかミストが頬を赤らめながら聞いてくる。 その様子になぜか俺までドギマギし
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第70話 エピローグ③

「ええー、というわけで本日は墓参り兼、青空バーベキュー大会となります」 ドンドンパフパフーと俺はオプション装備したラッパやらタンバリンやらを打ち鳴らした。「おい、ちょっと待て。そんな話は聞いてないぞ」「うん、言ってないからな」 丸メガネをくいっと中指で持ち上げ、眉間にシワを寄せているのはミストである。「さすがにお墓でバーベキューっていうのは不謹慎なんじゃないかなあ」「墓で眠ってる当人たちが納得してりゃ問題ないだろ」「うーん、そう言われたら、別にボクも反対ってわけじゃないんだけど」 黄色いアホ毛を風に揺らし、首を傾げているのはツカサである。「バーベキューだなッ! オレの正義の炎で燃やし尽くしてやるぜッ!」「炭への着火だけ頼むわ」 事情もわからず拳を握り締めているのはヒロトである。 こいつに料理をさせると文字通りすべてが灰燼と化すから絶対に任せられない。百年前の旅でも、ヒロトだけは絶対に料理当番をさせなかった。「ヒツジ先生ー、シロちゃん連れてきたー」「……バーベキュー、はじめて」 メリスちゃんが金色のゆるふわヘアーに風をはらませて駆けてくる。手を引かれてやってくるのは銀色のさらさらヘアーを風にたなびかせるシロちゃんだ。うふふ、絵になるね。映魔機を回しっぱなしにしていた甲斐があるというものだ。「おい、ヒツジ野郎。あーしらも来てやったぞ」「姐御ぉ、こんなやつに義理立てする必要あるんすかね?」 ピュイが率いるハーピーチーム、魔土怒羅権も舞い降りてくる。 きっかけはメリスちゃんが気まぐれにエサをあげたことだったのに、気がつけば結構長い付き合いになっていた。ミストの地上帆船が量産に入ったこともあり、王国は魔物として認定していたハーピーたちを国民として組み入れようと働きかけているところらしい。 ピュイはその端緒となったハーピーとして、王国に属したハーピーの代表ポジションに収まっているようだ。本人曰く「このまま全国制覇してやるぜ!」ということだが、ちょっと意味がわからない。「墓場でバーベキューとはのう。相変わらず常識のないやつじゃ」「おっ、降ろしてくださいにゃ! 吾輩は高いところが苦手なんですにゃ!」「む、そういえばはじめて拉致……共に旅をしたクロネコ族もそんなことを言っておったのう」「拉致!? いま拉致って言った
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