様々な工夫がこらされた黒竜邸とは違い、師匠の料理は至ってシンプルなものだった。 色の薄いスープに大ぶりに切られた野菜がごろごろ入っているだけの煮込み料理だ。見た目は質素だが、これが案外美味かったんだよな。いまの俺には食えないから、食事中はタンタカタンとタップを刻むだけだが。「それでセージよ。どういう経緯でそんな身体になったのじゃ?」「えーと、それはねえ――」 俺がヒツジさんボディになった事情を端的に説明する。 美少女になりたいと願ったことは当然秘密である。「ほうほう、《神》と思わしき存在の介入があったのか。それは興味深いのじゃ。しかしセージ、その身体では魔力の生成が――「ウィ、ウィズ殿! この要塞のような住居はウィズ殿が作られたのか? 凄まじい技術ですな。後学のために色々伺いたいのだが」 師匠の質問が俺の余命に関わる話になったので、ミストが慌ててさえぎった。 俺は目配せをして師匠に「察しろー!」という念を送る。具体的にはメリスと師匠を交互にしゅばばばばっとものすごい首振りで見た。俺はおそらく、ヒツジさんの首振り速度世界記録を記録したと思う。 師匠とミストからはものすごい目で見られた気がするが、それはそれとして意図はなんとか伝わったようだ。「うむ、なるほどな……。まあ先ほどの話はまたあとで聞くとして、いまは錬金術師殿の質問に答えよう。この甲虫を模した移動要塞はわしが手掛けたものではない」「すると、遺跡ですか?」「うむ、おそらく降魔災害の真っ只中に作られたものではないかと推測しておる」「降魔災害以前ではなく?」「人間同士の戦でここまで大仰なものを作る意味が感じられんからのう。虚無の谷を渡ってくる《悪魔》や強力な魔物に対抗するための兵器なんじゃないかの」「なるほど。やはり兵器でしたか。しかし降魔災害を経た人類にここまでのものを作り上げる余力があったとは――」 師匠とミストがなにやら難しい話で盛り上がり始めたので、メリスちゃんやシロちゃん、ピュイたちが退屈そうにしている。 俺にとっても修行時代に聞かされていた話なので退屈だ。とりあえず、俺たちは河岸を変えさせてもらおう。「師匠ー。娯楽室使わせてもらってもいいか?」「ああ、かまわんぞ。それでだな、錬金術師殿、この要塞の機構でとくに面白いところが――」 一応の許可を得たのでメリスちゃん
Last Updated : 2026-07-13 Read more