瘴気領域を進むこと2週間ほど、景色は見渡す限りの砂砂漠に変わっていた。 まるで海を進むように、砂の波をかいて地上帆船が進んでいく。「右舷前方、スナモグリの敵影発見。迎撃用意」 操舵室兼司令室にいる俺たちは、遠くに立ち昇る砂煙を視認した。 ぶっとい柱のようなものがうにょうにょと動いている。名称はスナモグリ。瘴気領域に巣食う魔物の一種だ。砂漠を自在に潜り、地面から飛び出して獲物に襲いかかる肉食性の大ミミズである。「ではメリス君。頼んだぞ」「わかったー! 《魔弾》!!」 銀色のパネルに手を置いたままメリスが魔法を使う。 その魔法は魔導線を伝って艦首に備えられた砲塔で発現し、光の弾丸が3つ立て続けにスナモグリに向かって飛んでいった。スナモグリは身をよじって苦しんでいるが、追い払うまでには至らなかったようだ。砂を巻き上げながら、こちらに向かって突進してくる。「ふむ、《魔弾》の火力では不足するのだな。《雷光弾》」 今度はメリスに代わってミストが魔法を使う。 紫電をまとった光球が発射され、スナモグリの巨体に突き刺さる。紫色の稲妻がスナモグリの全身を駆け巡り、ぷすぷすと白煙を上げながらドスンと倒れた。ミストの得意な雷系魔法だ。「中位魔法なら十分に通用するな。このあたりに脅威となりうる異類はいないようだ」「ミスト先生、すごーい! でも、イルイってなあに?」「ああ、瘴気領域にいる魔物の総称だ。王国にいる魔物と性質が違うことが多いからな。研究者は区別のために使い分けるが、あまり気にする必要もない」「へえー、そうなんだー」 むぅ、景色が見れるし索敵も手伝えるから、俺も操舵室にいるが……なんというか、微妙な疎外感がある。 百年前に旅をしていたときは、魔法をぶっ放して敵を吹き飛ばすのは主に俺の役割だった。大物となると一筋縄ではいかないから、ヒロトやイエローが前衛に立って食い止め、俺とミストが高位魔法の術式を整えるという役割分担ができていた。だが……現状、俺がいる存在意義が小さすぎる! 俺は不満を表明するために、その場でどんぐりタップを刻んだ。 硬い木製の床がいいかんじの音を立てている。おっ、これは木琴みたいで楽しいな。踏む板の場所で音が変わるぞ。俺は音階を確かめつつ、1曲分の演奏を終えた。「わー、ヒツジ先生、すごーい!」「お前は謎の才能だけは豊富だ
Last Updated : 2026-07-13 Read more