All Chapters of 非モテ大賢者は美少女になりたかった ~わたぐるみに転生した結果、美少女にこねくり回される日々がはじまりました~: Chapter 41 - Chapter 50

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第41話 大賢者、謎の才能が豊富

 瘴気領域を進むこと2週間ほど、景色は見渡す限りの砂砂漠に変わっていた。 まるで海を進むように、砂の波をかいて地上帆船が進んでいく。「右舷前方、スナモグリの敵影発見。迎撃用意」 操舵室兼司令室にいる俺たちは、遠くに立ち昇る砂煙を視認した。 ぶっとい柱のようなものがうにょうにょと動いている。名称はスナモグリ。瘴気領域に巣食う魔物の一種だ。砂漠を自在に潜り、地面から飛び出して獲物に襲いかかる肉食性の大ミミズである。「ではメリス君。頼んだぞ」「わかったー! 《魔弾》!!」 銀色のパネルに手を置いたままメリスが魔法を使う。 その魔法は魔導線を伝って艦首に備えられた砲塔で発現し、光の弾丸が3つ立て続けにスナモグリに向かって飛んでいった。スナモグリは身をよじって苦しんでいるが、追い払うまでには至らなかったようだ。砂を巻き上げながら、こちらに向かって突進してくる。「ふむ、《魔弾》の火力では不足するのだな。《雷光弾》」 今度はメリスに代わってミストが魔法を使う。 紫電をまとった光球が発射され、スナモグリの巨体に突き刺さる。紫色の稲妻がスナモグリの全身を駆け巡り、ぷすぷすと白煙を上げながらドスンと倒れた。ミストの得意な雷系魔法だ。「中位魔法なら十分に通用するな。このあたりに脅威となりうる異類はいないようだ」「ミスト先生、すごーい! でも、イルイってなあに?」「ああ、瘴気領域にいる魔物の総称だ。王国にいる魔物と性質が違うことが多いからな。研究者は区別のために使い分けるが、あまり気にする必要もない」「へえー、そうなんだー」 むぅ、景色が見れるし索敵も手伝えるから、俺も操舵室にいるが……なんというか、微妙な疎外感がある。 百年前に旅をしていたときは、魔法をぶっ放して敵を吹き飛ばすのは主に俺の役割だった。大物となると一筋縄ではいかないから、ヒロトやイエローが前衛に立って食い止め、俺とミストが高位魔法の術式を整えるという役割分担ができていた。だが……現状、俺がいる存在意義が小さすぎる! 俺は不満を表明するために、その場でどんぐりタップを刻んだ。 硬い木製の床がいいかんじの音を立てている。おっ、これは木琴みたいで楽しいな。踏む板の場所で音が変わるぞ。俺は音階を確かめつつ、1曲分の演奏を終えた。「わー、ヒツジ先生、すごーい!」「お前は謎の才能だけは豊富だ
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第42話 大賢者、遺跡に着く

 スナモグリを蹴散らしながら進むことさらに1週間。 地平線の先に人工的な直線が見えてきた。砂塵で霞んでいるが、距離が詰まるにつれてくっきりとしてきた。王都の雰囲気に似ているな。アキバかどうかは確信が持てないが、なんらかの遺跡であることは間違いないだろう。「瘴気がだいぶ薄まってきたな。遺跡に入ればマスクなしでも外に出られるだろう」「おっ、いよいよ冒険本番のはじまりだな」 ミストが操舵室の計器で瘴気の濃度を確認している。 太い街路を見つけて地上帆船を遺跡に乗り入れた。そこで停船し、探索用メンバーの組分けを発表する。 第一陣は俺、ミスト、メリスちゃんの3人。 シロちゃんとピュイたちは船に残ってお留守番だ。 師匠の話によるとアキバ遺跡に危険な魔物はいなかったそうだが、戦力不在で船を放置するわけにはいかない。シロちゃんを護衛として残しつつ、ピュイたちには休憩してもらう。ローテーションを組んでいたから無休ってわけじゃないが、移動中はずっと風魔法を使っていたのだ。「それじゃ、いざ出発っ!」「あたし、遺跡ってはじめてー!」「こら、メリス君。あまりはしゃぐと危ないぞ」「そうだよ、メリスちゃん。危ないし、ぶんぶん振り回されると目が回るんだよ。ミストから離れずにゆっくり歩こうね」 俺の腕をつかんだメリスちゃんが辺りを駆け回る。 道路には亀裂が走ってるし、劣化した建物から落ちてきたのだろう瓦礫も多い。つまずいて転んでしまうかもしれない。心配していると、メリスちゃんは瓦礫をぴょんぴょん飛び越えてミストの元へと戻っていく。 あっ、田舎育ちだもんね。足腰は強いよね。毎度農家の子をみくびってしまい申し訳ございません。「ふむ、何か妙だな。セージ、周辺の魔力におかしなところはあるか?」「うーん、やけに濃いところと薄いところ……いや、新鮮な魔力と古い魔力が入り混じってるかんじ?」「魔力に鮮度があるのか……」「すまんが、俺も感覚的なものだから上手く説明できん。ところでミストは何が妙だと思ったんだ?」「たとえばあの二つの建物を見比べてくれ」 ミストが指さす先には、ひび割れだらけの建物と、ほとんど劣化していない建物があった。後者なんて窓ガラスもほとんど無事だ。あんな状態の良い遺跡は見たことがない。「まるで古い建物と新しい建物が混じってるみたいじゃないか?」「たし
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第43話 大賢者、メイドさんに追われる

「ゴ主人様、抵抗ハ止メテ、大人シクシテクダサイ。罪ガ重クナリマス」「さっき死刑って言ったじゃん!? もう極刑確定じゃん!? これ以上重くしようがないじゃん!?」「ゴ主人様、抵抗ハ止メテ、大人シクシテクダサイ。罪ガ重クナリマス」「話が一切通じねえ!」 俺はヒツジさんボディを縦横無尽に操作しつつ、メイドさんゴーレムの猛攻をかわし続ける。 動きは素早いし、ぎゅいーんと高音を立てて回転するドリルの威力も脅威だが、幸いにして攻撃が単調だ。フェイントを使わずこちらに向かって直線的に仕掛けてくるだけだから、防御に集中すれば問題なく避け続けられる。 へへへ、新型ヒツジさんボディの機動力を舐めるんじゃあない。 何度目かの攻撃を避けると、勢い余ったメイドさんドリルが床を砕き、コンクリートが弾け飛ぶ。「ゴ主人様、器物損壊罪ガ追加サレマシタ。コレ以上、罪ヲ重ネルノハヤメマショウ」「濡れ衣っ!?」 罪が追加されたせいなのか、一度床を砕いたせいで吹っ切れたのか、ますます動きが荒ぶっている。 四つん這いになってドリルで走りはじめた。のっぺらな顔面が4つに割れ、その中央からまたドリルが飛び出してくる。「器物損壊罪追加、器物損壊罪追加、器物損壊罪追加、器物損壊罪追加……」「だからやってるのはお前だしっ! それにどんだけドリル好きなんだよっ!?」 俺はときにバック宙をし、ときに手足を伸ばし、ときにタップダンスやヘッドスピンを決めながらメイドさんゴーレムの猛攻をかわし続ける。 うーん、めんどくさいな。いっそ魔法でぶっ飛ばしたくなってくるが……いやいや、短気を起こしちゃいかん。じゅうぶん時間も稼いだし、俺も逃げるとしよう。「あばよっ! メイドさぁ~~~~ん!」 俺はビブラートをたっぷりきかせた捨て台詞を残すと、びょいんと足を伸ばして自動ドアの隙間から脱出する。 すると、即座にばりーんとガラスを突き破ってメイドさんゴーレムが追ってきた。「時間稼ぎと誘導、よくやった」「まあ大賢者的にはこれくらい余裕的な?」「調子に乗るな。《地雷光》」 地面に魔法陣が輝き、稲妻の網が半球形に展開する。 その中に閉じ込められたメイドさんゴーレムが、釣り上げられた魚みたいにビチビチビチっとなって全身のパーツの隙間から黒煙を吹いて停止した。「ひさびさの連携だったが、きれいに決まったな
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第44話 大賢者、旧友に会う

 声がした方を見てみると、近くの遺跡の屋上に太陽を背にする黒い人影が見えた。 その人影は両手をぐるっと大きく回すと、さらに叫んだ。「この世に太陽ある限り、闇の栄える試しなし! 変ッ! 身ッ!!」 叫びとともに人影は炎に包まれ、屋上から飛び降りてくる。 高さにして30メートルくらいはあるか。ダイナミック焼身&投身自殺かなあ。なんとかと煙は高いところが好きって言うし、その手合かもしれん。 いや、しかし、あんな暑苦しいやつが何人もいるとは思えんしなあ。 予想通り、炎をまとった人影は片手、片膝を地面について見事に着地した。 路面が砕け、ちょっとしたクレーターができている。 そしてその中央で立ち上がるのは、真っ赤な全身タイツを着た男だった。「正義と友情の使者、ジャスティスレッド参上ッ! いくぜッ! 爆熱疾走!!」 真っ赤なタイツは炎の筋を引きながら猛スピードで駆け回り、ゴキメイド軍団を跳ね飛ばしていく。ふっ飛ばされたゴキメイドは一体残らず炎に包まれ、タイツがその足を止めると同時に爆散した。 タイツは俺たちの前に歩いてくると、変身を解除した。 タイツが消えて中から現れたのは、燃えるように真っ赤な短髪の男。引き締まった長身には均整の取れた筋肉が無駄なくついている。「ようッ! 俺の名は天王寺ヒロト。英雄の人って書いて英雄人ってンだ! あんたたち、大丈夫か!」 白い歯がキラッと光った。 あ、これはもう間違いないわ。俺が知ってるあの《神託の勇者》ヒロトだ。 * * *「へえ、セージまで転生してたなんてびっくりしたぜ!」「こっちはお前が転生してることに驚いたわ」「まったく、セージに続いてヒロトまでとは……思わぬことが続くものだな」 ふふ、ヒロトもミストが女だったとは知らないはずだ。 さあ、せいぜい驚きのリアクションを見せてくれ!「おう、ミストも久しぶりだなっ! 元気だったか?」「おかげさまで変わりはないよ」 んんー? あれー? どうしてヒロトは驚かないんすかね?「邪神を封印して、王都に戻ったあとに告白されたからなっ!」「こっ、告白ぅ!?」 えっ、じゃ、じゃあ、あの旅のあとはふ、二人はそういう関係になったの!? バグった俺は、言語化不能な複雑な思いをメェメェと鳴き声に込めた。「紛らわしい言い方を
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第45話 大賢者、さらに旧友に会う

 女が立派なものをばいんばいんさせながら走ってくる。 黒髪にショートカットで、頭頂に黄色い髪が一房立っている。それを左右に揺らしながら走る女の顔立ちは、ともすれば少年のような印象も受けるボーイッシュなものだ。にも関わらず、胸に搭載された質量兵器の威力は特大だ。これがギャップ萌え……俺は心の中のヒツジさんが震えるのを感じた。「ちょっとヒロト、勝手に走り出さないでよ。あれ? この人たちは……」 ばいんばいんさんが目の前までやってきたので、俺は四肢を広げてその足元に飛び、五体投地した。そしてぐるっと寝返りを打って挨拶する。「はじめまして、美しいお嬢さん。私はセージと申す一介の旅のヒツジ。ヒロト殿とは奇縁がありまして、しばし旧交を温めていたところであります。ところで我が故郷には初対面同士がする風習がありまして、こうしてお腹を見せてもふもふするのです。ふふっ、自分でも言うのもなんですが、私のもふもふは並みじゃないですよ? なんといっても羊毛率は90%を超えますからね」「えっ、なにこの変なの? 新種の怪人? 潰していいの? 触りたくないけど……」 ばいんばいんさんが後退りして俺から距離を取る。 なぜだ、こんなにかわいいヒツジさんなのに……。「はははっ! ツカサ、こいつはあのセージなんだってさ。すっかり変わっちまってびっくりするよな!」「えっ!? セージって、一応《大賢者》の……?」「そのとおりだぜっ!」 あの、一応ってつけるのやめてもらえませんかね? というかですね、私はお嬢さんを存じ上げないのですが、どこかで会いましたでしょうか?「その一部だけ黄色い髪……ひょっとして、イエローなのか?」「わっ!? ミストまでいるの!? なんで!?」「その様子だと、イエローで間違いないようだな」「うん、いまはツカサって呼ばれてるけどね」 んんー? イエロー? イエローって誰だっけ……俺の知り合いだといつもカレーばっかり食べてたやつしか思い出せないぞ。男だか女だかわからない顔をしていて、小柄なくせにオーガも片手で転がす怪力で、ヒロトと同じく変身の固有魔法を持ってて……ああ、そういえば頭の先から黄色いアホ毛が生えてたな。ちょっと目の前のばいんさんを確認してみよう。うん、黄色いアホ毛が生えてますね。「メェっ!?」「ひっ!?」 俺の鳴き声に、ばいんさ
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第46話 大賢者、船に戻る

「っていうかさぐえー、ミストさんやぐえー、イエローが……ツカサが女にぐえー、なってることに驚きはないわけ? ぐえー」「ん? ああ、そうか。性格も話しぶりも変わっていないから違和感がなかった。頭頂の毛も一緒だし、顔立ちの雰囲気も近いからな」 カレー談義が終わらなそうなので、俺はメリスちゃんに締め付けられながら口を挟んだ。 ちょっ、メリスちゃん。魔力の扱いが上手くなったせいか力も強くなってない? 面白がってチョークを決めるのはやめようね? ぐえっぐえっぐえっ。「ツカサはなっ! 転生するたびに男になったり女になったりしてるんだぜっ!」「ボクとしてはずっと女の子の方がかわいくていいんだけどね。ヒロトもたまには女の子に生まれてみたら?」「おうっ! じゃあ今度転生するときはセイギネス様に頼んでみるぜっ!」「軽いなあ……」 ツカサは性転換の常習者だったらしい。 口ぶりから察するに、望んだものではなく勝手に決められているようだ。一方のヒロトは男にしか生まれたことはないようだ。この熱血正義バカが女になっていたら……うーん、想像もできん。セイギネス様とやら、ヒロトは何があっても女にはしないでくれ。 なお、セイギネスというのはヒロトたちに加護を与えている女神的存在だ。俺の転生にも絡んでいるかもしれないが、名乗りもなかったし加護ももらってねえしなあ。勘にはなるが、別口の存在な気がする。「ねえねえ、おねえさんは男の人だったの?」「あっ、ごめん、挨拶が遅くなっちゃったね。ボクは黄馬ツカサ。前世は男だったんだけど、いまは女の子だよ」「へー、おもしろーい! あたしはメリスだよっ! よろしくね!」「こちらこそよろしくね、メリスちゃん」 ツカサが軽くかがんでメリスの金髪を撫でる。「それで、セージたちはどこから来たの? パーティはこれで全員?」「いや、別の場所に仲間を残してる。さっきのメイドのこともあるし、一旦引き返して合流するか?」「シロ殿もいるし戦力的な心配はないと思うが……念のため状況の共有はしておいた方がいいな。ヒロトたちも来れるか?」 ヒロトとツカサがうなずき、俺たちはひとまず船へと戻ることにした。 * * *【……セージ、おかえり……ばりばり】「た、ただいま」 地上帆船へと戻った俺たちを出迎えたのは、竜化したシロちゃんだった。 そ
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第47話 大賢者、鬼ごっこする

「それにしても、こんなすごい船まで作れるようになったなんて、この世界も進んだんだねえ」「男の浪漫が詰まってるぜッ!」「私は女なのだが……。まあいい。お前たちが死んでから三十年以上も経っているからな。私の研究も色々と進んだぞ」「もうこういう船で瘴気領域も自由に行き来してるの?」「いや、これは試作機の第1号だ。今回の探索が成功すれば、量産の検討に入るだろう」「なんだかわからないが、すごいんだなッ!」「ああ、自信作だ。中も見てみるか?」 自慢の発明を誉められて、ミストがご満悦だ。 ヒロトとツカサは、ミストに連れられて地上帆船の中へと入っていった。 俺は俺で、ちょっと気になることがあるので外に残る。「ねー、ヒツジ先生-。なにしてるの?」「うーん、なんだか不思議な気配を感じてねえ」 シロちゃんが噛み砕いた金属メイドの残骸を、拾った棒でガシャガシャと突っつき回していたら、メリスちゃんがやってきた。「このゴーレムさん、ヒツジ先生のぽわぽわみたいなかんじがする?」「おお、やっぱりメリスちゃんは天才だねえ。あっ、やっぱりあった」 残骸の中に目当てのものを見つけ、それをどんぐりの蹄でつまみ上げる。 蹄の間にあるのは、米粒ほどの大きさの真っ黒な石だった。「……それ、なに?」「これは魔石だねえ。師匠の家で、俺が食べさせられたやつと一緒だよ」「……おいしい、の?」「俺以外は食べるとお腹を壊しちゃうだろうねえ」 俺とメリスちゃんがわちゃわちゃしていると、シロちゃんもやってきた。 きらきら光る黒い魔石を、興味津々に見ている。ドラゴンはたいてい光り物が好きだからなあ。シロちゃんも宝石が好きなんだろうか?「魔石は、ぜんぶのゴーレムさんに入ってるの?」「たぶん入ってるねえ」「……ぜんぶ、集める?」「うん、折角だからねえ」「……手伝う」「あたしも手伝うっ!」「二人ともありがとうねえ。よーし、そしたらみんなで競争だ!」 俺たち三人は、それぞれ散って金属メイドをガシャガシャとやりだした。 なんだか貧民窟時代のゴミ漁りを思い出す。色々としんどいことも多かったが、たまーにお宝が見つかるとテンションぶち上がるんだよな。お宝と言っても鉄貨が何枚か入った財布とか、偽物の宝石とか、せいぜいその程度のもんだが。 小一時間ほどガシャガシャしたとこ
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第48話 大賢者、心配する

「へえ、ツカサたちはずいぶんでっかい遺跡……いや、ビルと一緒に転移してきたんだなあ」「トーキョーで一番大きい家電屋さんらしいね」「カデンヤ?」「あー、こっちで言う魔道具屋みたいなもの」「ほう、これほどの規模の魔道具店とは、興味がそそられるな」「飯屋もいっぱいあるんだぜッ!」 なし崩し鬼ごっこを終えた俺たちは、地上帆船を動かしてヒロトたちと一緒に転移してきたというビルにやってきていた。 路面が悪いから遺跡内に乗り入れるのは避けていたのだが、ヒロトとツカサという肉体労働力が手に入ったので進行の妨げになる瓦礫をどかすのも楽勝だ。 人間よりもデカいコンクリの塊を片手でぽんぽん放り投げるあいつらは、同じ人類とは到底信じられなかった。「そんな身体になってるセージにだけは言われたくないよ」「正義の道は誰にも邪魔できないんだぜッ!」 真っ向からツッコんでくるツカサに対し、ヒロトはまるでピントのずれた自由な発言だ。さすがの大賢者セージ様でも、この複数同時攻撃には反応しきれないぜッ!「うわー、おっきい建物ー!」「……ぴっかぴか」 甲板ではメリスちゃんとシロちゃんが目の前のビルを見上げて感嘆の声を上げている。 俺も見上げるが、途中から砂煙で霞んでよく見えない。下手したら高さ1キロメートル以上はあるんじゃないか? こんな弩級の遺跡はさすがの俺でも見たことも聞いたこともない。 ほぼ全面がガラスで覆われているが、ところどころに大小のチューブのようなものが通っており、突拍子もない場所から突起が飛び出していたりする。無機物のはずなのに、どこか大樹のような印象があり、生命を思わせる不思議な造形だった。「わっ、やっぱりセージだね。変なところで鋭い」「変なところは余計だ。で、何が鋭いって? 俺の隠しきれない知性がほとばしってしまったところについて詳しく聞きたいんだが」「うわ、調子に乗る速度がえぐい。えっとね、このYADOBASHIビルは生体コンクリートで出来てて、植物みたいに勝手に上に上に成長してるんだってさ」「生体コンクリートとは、なんだ?」 あっ、ミストが割り込んできた。「ボクも素人だから細かいことはわかんないよ? ナノマシン……すんごくちっちゃい機械がいっぱい集まって出来てるコンクリートなんだって」「ほう、ウィズ殿が研究していた生命機械工学のようなも
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第49話 大賢者、武装白十字に遭遇する

「とりあえず、ビルの後ろに回ってみて」「わかった。ピュイ、微速前進だ」『りょーかーい。おう、てめぇら、ビソクゼンシンだ!』 ミストは伝声管を通じて機関室のピュイたちに指示をした。 地上帆船がゆっくりと進みはじめたのに合わせ、ミストが慎重に舵輪を回して進路を調整する。「よーそろー! 面舵いっぱーい! ってやつだね」「海ではないからな。そんな急に舵を切っては壊れてしまう」「俺も回してみたいぜッ!」「ヒロトは絶対にさわるなよ。間違いなく壊す」 ミストたちの他愛も無いやりとりに、俺はかつての冒険を思い出す。 俺の主観ではせいぜい数ヶ月ぶりなんだが……客観的には百年ぶりなんだよな。そういう情報のせいか、はたまた意識がなかった間も時の流れを感じていたのか、なんだかやけに懐かしい感じがした。「ミスト先生ー、あそこにでっかい穴が空いてるー」「穴というより、人工的に作られたものだな。この船でも問題なく入れそうだ。ツカサ、お前の目当てはあそこか?」「そうそう、地下駐車場の入り口。危険はないから入っていって」 ミストが舵輪を左に切り、船はゆるやかなスロープを下って地下に入っていく。 すると、真っ暗だった大穴の中がふっと青白い光に照らされた。操舵室の窓から辺りを確認してみると、金網に覆われた細長い照明があちこちで輝いている。色は沼地の鬼火に似ているが、動きもしなければゆらめきもしていない。不思議な光だった。「どういうわけか、電気系統が生きてるんだよね。発電所なんてどこにも見当たらないのに」「ほう、これは電気の光なのか。降魔災害以前の文明はこんな光で照らされていたんだろうか?」「魔法の代わりに電気を使ってるんだぜッ!」「すっごい乱暴な言い方だけど、ヒロトの言う通りだよ。ボクたちが来た世界には魔法がなくて、大体のことは電気を使ってなんとかしてたんだ」「それは興味深いな。そういえば、お前たちの変身魔法も本当は電気の力なのか?」「うーん、それは違うらしいんだよね。ボクらのは特別。っていうか、原理がわからない。あっ、あのへんに停めて」 ツカサが指差した場所に船が停まった。 船の駆動音がなくなると、辺りはシンとして物音ひとつしない。あの気味の悪い金属メイドや、野生の魔物などはいないようだった。「ここに停めておけば、十中八九安全だよ
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第50話 大賢者、探索する

「これ、本当に動かないんだよな?」「ははは、セージって意外と心配性だよね」 地下駐車場から建物の中に入った俺たちは、ツカサの案内で1階を進んでいる。なお、ピュイたちハーピー連は留守番だ。「家ん中をずーっと歩くなんて、あーしらには考えられねえよ」とのことである。 通路の両側には大きな棚が延々と並んでおり、その中には微妙に形の違う金属製のメイドが整列している。たまに箒やデッキブラシなどの掃除用具や、大鎌に戦鎚、斧槍などの武器の展示が混じっているのがなんとも奇妙な雰囲気を醸し出していた。「ぜんぶ商品として展示されてるだけだからね。勝手に動いて襲ってきたりはしないよ」「こんなもんが普通に売ってるなんて、ずいぶん物騒だったんだなあ」「こっちだって鍛冶屋で剣とか売ってるじゃん」 それもそう……なのか? 普通に売り買いするには危険すぎる道具に感じるけどなあ。「ふうむ、こちらの型は極限まで装甲を削ってスピードに特化しているのか。こちらの分厚い装甲があるものは耐久重視と。む、4脚のものもあるのか」 細い顎を指先で撫でながら金属メイド群を観察しているのはミストだ。さすがにこの状況で足を止めはしないが、何もなければ1日中観察してそうだ。「ここから100階まではずっと防犯、護身グッズだよ。1階はアキバ電工のフロアだからメイドシリーズばっかりだけど、2階からは別のメーカーだからもっと色んなのがあるんだ」「ほう、それは興味深いな。メーカーごとに特色があるのか?」「むしろアキバ電工が尖り過ぎなんだよね。こんなひとつのシリーズに執着してるメーカーなんて他にないよ」 ツカサによると、このYADOBASHIビルはフロアごとにメーカーが貸し切って、自社の商品を陳列・販売する仕組みになっているのだという。100階までは防犯、次の200階までは理美容、300階までは生活家電……という風に階層ごとにテーマは設定されているそうだのだが。 通路は曲がりくねっていて脇道や行き止まりも多く、まるで迷宮だ。 一度探索を済ませて道をおぼえているツカサがいなければ、1階だけでいつまでもさまようハメになっていただろう。「ああッ! 一度ツカサとはぐれたときは、合流するまで大変だったぜッ!」「お前、迷子になってたんかい」 ヒロトがなぜか自信満々に迷子の前科を自白する。 こいつが迷子になっ
last updateLast Updated : 2026-07-13
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