建国王により公爵位を授けられ、王国西方の安寧を任された偉大なる黒竜シュバルツ・ドラゴクロウ。その爪は山をも削り、その牙はミスリルさえも噛み砕く。一度ブレスを吹けば、地平線まで焼け野原となる――という千年前の伝説の存在だ。 何百年も人里に姿を現した記録がなく、歴史学者の中でさえ架空の存在だと断ずるものさえいた。そんな黒竜公の娘だという人物(?)が王都に現れた。 その名をシロ・ドラゴクロウ。銀糸の如き髪を持ち、肌は最高級の白磁を思わせる華奢な少女だ。だが、見た目に騙されてはいけない。自身よりも長大な戦棍を自在に振るう怪力は、その身に竜の力を宿していることの証である。 ……あと、面倒くさいことが起きると本当に竜になって飛び去ってしまう。王都の上空を白銀の竜が舞ったときにはそれはもう大騒動となった。 そのシロは冒険者として活動している。《大賢者》にして《凶獣》セージが率い、《金色幼女》メリスと《銀竜嬢》シロの三人で構成される冒険者パーティ《落ち着きがない》はいまや冒険者たちの畏怖を集める存在であった。 今回は、そのシロの休日を紹介しよう。【午前11:00】 宿屋で目覚める。 アキバ遺跡の探索成功にはじまり、数々の高難度クエストを達成した金級冒険者であるシロはお金持ちである。朝からあくせく働くつもりなどない。日が高くなり、空気がぬるんでからベッドを抜け出すのが習慣である。 髪を適当に手ぐしで整える。 乱暴な手入れだが、それだけで腰まで伸びた長髪がまっすぐに伸びる。宿からもらったお湯でざぶざぶと顔を洗うと、柳の房楊枝で歯を磨く。毎日の風呂は欠かさないが、朝の支度はじつに手抜きである。 寝間着を脱いで、着替えに袖を通す。 やたらに白いフリルやレースのついた黒い衣装だ。アキバ探索以前はメイド服がお気に入りだったが、メイドゴーレムが着ているのを見て何やら思うところがあったらしい。いまはアキバから流入してきた新しいファッションである『ゴシックロリータ』を愛用している。【午前11:30】 宿屋の1階にある食堂で軽く腹を満たす。 正午を回ると混み合うので、それより早い時間を狙っている。 今日のメニューはベーコンエッグとウインナー、ツナサラダという簡単なものだ。平皿に盛り付けた白いご飯に、それらを慎重に並べる。おっ
Last Updated : 2026-07-13 Read more