All Chapters of 三十路OL、セーラー服で異世界転移 ~ゴブリンの嫁になるか魔王的な存在を倒すか二択を迫られてます~: Chapter 91 - Chapter 100

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第八十二話 風霊様の恵みの中身

「ご主人、もう1.2度左です」「こう?」「照準合いました。ミリーさん、お願いします」「了解です!」 ドン! と音がして銃口から弾丸が発射され、竹林に隠れていたトカゲゴブリンの眉間に穴が開く。うむ、ビューティホー。 わたしとミリーちゃんはいま、竹で組み上げられた物見櫓の上にいる。エルフ村のあちこちに立てられていて、外敵が襲ってきたときに弓矢で反撃するためのものだ。「まったく、見事な腕前だな。我々エルフの弓でもこうはいかんぞ」「いや、マーシャルさんが風を停めてくれているおかげです」 わたしたちの他にもうひとり、マーシャルさんが物見櫓に立っている。狙撃の成功率が高まるよう、風の精霊術でサポートしてくれているのだ。 エルフ村からの脱出が容易ではないとわかって、わたしたちが考えた作戦がこれだった。逃げるのは難しい。相手の戦力がわからない以上、総出で討って出るのも博打。となれば確実に相手の戦力を削っていくしかないだろう。 幸いにして、わたしたちには高性能索敵装置と狙撃に適した魔法銃がある。わたしがセーラー服君の指示に従って照準を合わせ、ミリーちゃんが魔力を流して発射するという分業で狙撃を行っているわけである。 物見櫓からの狙撃はエルフたちも試みていたそうなのだが、弓矢ではどうしても初速が遅く、少し距離が離れるとかわされたり防がれたりして十分な戦果を上げられなかったとのこと。 魔法銃は一丁しかないが、一射一殺で仕留められているので効率が段違いだ。まだはじめて数時間も経っていない作戦だが、もう二十体以上のトカゲゴブリンを仕留めている。「正確には二十三体ですね、ご主人。これで推定敵戦力の4から5%は削れたものと思われます」 はいはい、曖昧なカウントですみませんね。セーラー服君が正確に数えてくれるので助かっておりますよ。 敵戦力についてはあくまで推定であるので過信はできないが、当てずっぽうというわけではない。まず、この村で戦力として数えられるエルフは150名ほど。敵が力押しで攻めてこないということは、それを一気に揉み潰せるほどの戦力はないはずだ。 地球での話だが、「城攻めには3倍以上の兵力がいる」と言われている。もしそれを相手が踏まえているのであれば、精々400体から500体程度なのではないだろうか。この世界でも似たような格言があるら
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第八十三話 エルフの水浴び

 プランツ教授の淹れてくれたお茶をすすりつつ、風霊様の恵みで作った菓子なるものを一切れいただいてみる。竹を削って作った爪楊枝を差し込むと、ゼリーのような見た目とは裏腹にしっかりした手応えで、そのまま持ち上げることができた。 口に入れるともちもちとした食感で、ハッカのような刺激的な香りが鼻を抜ける。噛むうちにほんのりとした甘みが出てきて、なんとも独特な味わいだ。ちょっぴり苦味のあるエルフのお茶にぴったり合う。「ぷるぷるもちもちで、面白い味ですねえ。そういえば、風霊様の恵みってなんなんですか?」「ああ、生えたばかりの竹のことだ。地面から顔を出したばかりのときは柔らかくて丸ごと食べられる。これはその中に詰まった汁を煮詰めて固めたものだ」 ミリーちゃんの質問にマーシャルさんが答える。その液体は食べることもできるし、膠のように接着剤として使ったり、防水性の塗料としても使用できるそうだ。 ほほーう、要するに風霊様の恵みとはタケノコのことだったのか。しかし、地球のタケノコにそんな液体は含まれていなかった。やはり、見た目は似ていても実際には異なる植物なんだろう。「それに、こればかり食っていても力がつかん。あくまで腹の足し、という程度だな」 マーシャルさんによると、もう30日以上も籠城が続いており、食料の備蓄がかなり乏しくなっているそうなのだ。とくに肉類は食べ尽くしてしまっており、村に飛んでくる鳥を射落として食べているとのこと。その鳥も、警戒してめったに村に飛んでくることはないらしい。 うーん、どうしたものかな。この村とわたしたちはもはや一蓮托生だ。村の戦力がいざというときに空腹で力が出せないとなるとわたしたちとしても困る。とはいえ、一人で判断してよいことでもない。 ミリーちゃんに目配せすると、迷いなくうなずいてくれた。いちいち損得を考えてしまうわたしとは違ってその表情は純粋そのものだ。うう、まぶしい。心が痛いぜ。「あの、多くはないですが、わたしたちの乗り物にも食料やお菓子、お酒を積んであります。よかったらそれをみんなで分け合いませんか?」「それはありがたいが……いいのか?」 ええ、ええ、いいんですよ。あなた方に倒れられてしまったらわたしたちも困るんですから。ホントはドワーフ村のみんなへのお土産用だったのだけれど、ここで惜しんで命を失っては元も子
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第八十四話 御柱っていうのは何なんスか?

 エルフ式シャワーを済ませて戻る途中、エルフの男たちがトカゲゴブリンの死体を粗く編んだ竹籠に入れているのを見かける。珍しい光景なのか、ロマノワさんが紙束を片手にしきりにメモしつつ、質問を飛ばしているようだった。 わたしも気になったのでそばに寄ってやり取りを聞いてみる。「なるほどッスねえ。魔物の死骸はこうやって処理するんスね」「そうだ。これを風霊様の御柱に吊るして風に晒しておけば、風霊様が魔物の穢を清めてくださるんだ」「御柱っていうのは何なんスか?」「村の中央にある一際大きい竹だな。ここからでも見えるだろう?」 男が指差した方向には、大人数人が手をつないでも抱えられないような太い竹がそびえている。まっすぐ同じ太さのまま天高く伸びているので、植物というよりまさしく柱のようだ。 この村に来てからずっと目に入っていたので気になってはいたが、御神木的なものだったのか。 男たちはトカゲゴブリンをいくつかの籠に入れ終わると、それを背負って霊柱へと歩いていく。集会所の方向と同じなので、わたしもそれについていくことにした。「あ、高町先生。トカゲゴブリンの駆除おつかれさまッス!」 安全が確保されてたところから一方的に狙撃しただけだからなあ。慣れない作業ではあったけれど、実際のところあまり疲れてはいない。 ロマノワさんも物見櫓の下からその様子を観察していたが、代わり映えのしない繰り返しに飽きてさっさとどこかに行ってしまっていた。「さすがタフっスねえ。故郷では狩人でもしてたんスか?」 いえいえ、むしろ荒事とはまったく関係ないインドア派でしたよ、わたしは。やむを得ない理由があってすっかり荒事に適応してしまっただけなのであります。「そうなんスねえ。もし読書がお好きだったら、自分の本をプレゼントするッスよ!」 おお、それはありがたい。この世界は製紙や印刷技術がそれなりに発展しているらしく書籍も流通しているのだが、けっこうなお値段がするのだ。ロマノワさんが「これが自分の代表作ッス!」と鞄から自信満々に取り出した本をありがたくいただく。 タイトルは「或るゴブリンの一生」。……またゴブリンか。歩きながらパラパラとめくると、一匹のゴブリンの誕生から、冒険者に狩られて死ぬまでの一生を描いた小説のようだった。時折、やたらにリアルな挿絵が入っている。
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第八十五話 「或るゴブリンの一生」

 竹を編んで作ったお盆の上に、椀と皿がひとつずつ並んでいる。例によってどちらも竹製で、椀は太い竹を輪切りにしたもの、皿は竹を削って作った長方形の角皿だ。椀の中身も皿に盛られた料理も量は控えめである。 椀の中には透明な汁の中にタケノコのスライスのようなものが入っている。何も言わずに出されたら日本のお吸い物だと勘違いしてしまうだろう。とりあえず、こちらから一口ずずずとすする。 ふぅむ、竹の香りと薄めの塩味、そしてわずかな甘みを感じる。とろみはまったく付いておらずさらりとした口当たりだ。和風だしや醤油を加えたら完全にお吸い物として通用しそうだ。 次に具をいただく。食器はこれまた竹を削って作ったフォークだ。タケノコにぶすりと刺して頬張る。おお、このシャキシャキの触感は完全にタケノコだ。 タケノコは好物なので素直にうれしい。炙ってからスープに入れたのか、非常に香ばしい。そして噛むほどに甘みが出てくる。日本で食べてきたタケノコにこんな甘みはなかった。これで煮物を作ったらすごい美味しくなりそうだ。 吸い物をフォークでかき回すと細く割かれた肉の切れっ端が引っかかった。口に入れるとほのかに香辛料の刺激。さっき進呈したジャーキーをさっそく使ったらしい。 貰い物を右から左に消費しなければならないとは、想像以上にこの村の状況は切羽詰まっているのかもしれない。 お次は皿に盛られた料理だ。見たところ、タケノコと葉物野菜の炒めものと言った雰囲気。こちらはひとまず野菜だけをつまんでみる。ふむ、柔らかくて少しねっとりとした舌触り。 いかにも「野草!」って感じのほろ苦さはあるが、耐えられないほどではない。日本酒などの甘いお酒に合いそうだ。大人の味わいって感じだけれど、ミリーちゃんは大丈夫だろうか? ふと心配になってミリーちゃんのお皿を見てみるとすでに空になっていた。わたしのを分けてあげたいけれど、わたしはわたしで空腹で動けなくなってしまっては問題である。心を鬼にして、残りの料理を腹に入れる。「すまないな、客人。狩りさえできればもっとちゃんとしたものを振る舞えたんだが……」 申し訳なさそうな顔でやってきたのはマーシャルさんだ。片手に竹筒を持っている。「ほんの気持ちだが、このエルフの酒を呑ってくれ。腹の足しにはならんが紛れはする」 といって竹筒を差し出してくる。酌を断る
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第八十六話 停車し、銃声。続けて火柱

「ご主人、左前方20度の方向。距離212メートルです」「ミリーちゃん、左の茂みの方だって! 300歩くらい先、見える!?」「はい! 見えました!」 ルーフの上で腹ばいになるミリーちゃんの返事が聞こえると、サルタナさんがバック走させていた地を這う閃光号を停車させる。ここは学術都市へ向かう街道の途中。エルフ村から出てすぐのところだ。 ドン、と銃声が響くと、ミリーちゃんが「命中しました! トドメお願いします」と声を上げる。「任せてください! 『火球』!」 リッテちゃんが車の窓から身を乗り出し、魔印を手に持ち何やら複雑な動きとともに発動句を唱える。すると、火の玉が出現してミリーちゃんが銃を撃ち込んだ方角へ、山なりにゆっくり飛んでいった。 着弾すると、ちゅどーんとその場で火柱が上がる。「トカゲゴブリン程度ならこれで黒焦げでしょう。さあ、次行きましょう!」 自分の魔術が活躍してうれしいのか、リッテちゃんが大張り切りだ。周辺に他のトカゲゴブリンもいないので、サルタナさんに再びバックで進んでもらう。 何をしているのかというと、街道付近に潜んでいるゴブリンたちを削っているのだ。ドライバーは安定のサルタナさん、索敵役はわたし……というかセーラー服君だ。 ルーフには竹製の固定具に腹ばいになったミリーちゃんが伏せている。ルーフの上にわたしとミリーちゃんが乗る案もあったが、さすがにまともに狙撃できる体勢を取れなかった。 マーシャルさんも同乗しており風を停めてもらっているが、セーラー服君の補助がない状態では一撃必殺というわけにはいかない。そこで、仕留め損ねたものはリッテちゃんの魔術でトドメを刺しているというわけだ。 あれから二日間ほど物見櫓からの狙撃を続けていたのだが、魔法銃の射程が読まれたのか、撃てる範囲に敵が姿を見せなくなったためだ。そこで作戦を変更し、街道沿いに隠れるゴブリンを削っていくことにしたのである。「いやー、見事な手際ッスねえ。これは筆が捗るッスよ!」 紙束に何かをしきりに書き付けているのはロマノワさんだ。こうして無邪気に筆を走らせているところを見るととても裏があるようには思えないが……警戒心は緩めないでおこう。 ロマノワさんが身分を詐称していることは間違いない。ロマノワさんの見た目は二十代そこそこ。50年以上も前の
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第八十七話 ゴブリンがうんこ投げてきた!

 街道に出ての削り作戦初日を終え、翌日も同様に街道に出る準備をする。物見櫓からの狙撃と合わせれば、70体以上を片付けた結果となる。推定される相手の戦力の1割以上を削った計算だ。戦果は上々である。 厩舎付近に停めてある地を這う閃光号に乗り込もうとした、そのときだった。「ご主人、左上方から飛来物です」 セーラー服君の警告を聞いて視線を上げるとなにやら茶色いものが飛んできていた。慌てて避けると、謎の物体は地面にぶつかってべちゃりと飛び散った。 一体何なんだこれは。ゴブリンが毒物でも投げ込んできたのか? 謎物体の正体を観察していると変な臭いがしてきた。臭いというか、これはクサイだ。わりとかぎ慣れたたぐいのクサさである。セーラー服君よ、この物体ってもしかして……。「はい、ご主人。ゴブリンの排泄物と推定されます。次が飛んできますのでご注意を」 うげぇぇ、あいつらうんこ投げつけてきてるんかい! こんなの食らったら精神的なダメージが大きすぎる。「ゴブリンがうんこ投げてきた! 気をつけて!」と周囲に注意を呼びかける。うーん、我ながら間抜けなセリフだ。 幸い、次弾は誰の直撃コースでもなかった。自動車のフロントガラスに命中し、べちゃりと汚れを散らす。「あのクソゴブリンどもッ! 我が地を這う閃光号になんてことを!!」 瞬時に鬼の形相になったサルタナさんがベルトから火霊石のナイフを抜く。いやいやいやいや、壁越しに投げてもさすがに当たらないと思うっすよ。 空から降るうんこの数がだんだんと数を増してくる。あいつらどんだけうんこ集めてきたんだ……こりゃたまらんとひとまず屋根のあるところに避難した。 それにしても、うんこを投げつけてくるとかゴブリンの生態はチンパンジーやらと同じなのか? 村中から悲鳴や悪態が聞こえてくる。ここだけではなく、あちこちからうんこが投げ込まれているようだ。「くだらない嫌がらせを……あとで風霊様に祈って雨を降らせてもらわねばな」 マーシャルさんが忌々しそうにつぶやく。 おおう、風霊様は天候操作までできるのか。竹だらけの村だから焼き討ちにされたら大変だと考えていたが、そんなことができるのなら無用の心配だろう。「おおーい! 南門にゴブリンどもの大群が攻めてきたぞ!」「くそっ! 本当の狙いはこれか!」 物見櫓で見
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第八十八話 おまえを女の子にしてやんよッ!

「ミリーちゃん、ここはお願い!」「わかりました! みさきさんも気をつけて!」 一瞬で意図を察したミリーちゃんが銃を受け取る。北門が破られたということはそこでは接近戦になっているはずだ。そしてわたしたちの中で接近戦の最高戦力は他ならぬわたし自身。素直に得意な土俵は任せようということだろう。 北門の敵はかなり少なくなったとは言え放置はできない。北門に続き南門まで破られてしまったら挟み撃ちにされてしまう。北門を死守しつつ、南門から侵入してきた敵を撃退するのがこの場の最善手に違いない……と思う! 物見櫓から飛び降り、北門に向かって全力で走る。怒号や悲鳴、金属同士がぶつかり合う音が徐々に近づいてくる。その中に混じるうめき声に、いつかドワーフ村で起きた事件を連想してしまう。 北門前の広場に到着すると、そこではエルフの男たちとトカゲゴブリンたちの乱闘が繰り広げられていた。竹の小片をつないだ鎧をまとったエルフたちが短槍を振るっている。 ゴブリンたちの装備は統一されておらず、薄汚れた鎧を身に着け、小剣、片手斧、棍棒などてんでバラバラな武器を振り回していた。戦争で人間から奪った武器を思い思いに使っているのだろう。 マーシャルさんの話では武装したゴブリンがいるということだったが、それまで自分の目では目撃していなかった。おそらく、これまで温存されていた精鋭部隊なのだろう。「ゲギャギャギャギャギャギャ!」 躍りかかってきたゴブリンの頭を、兜ごと戦鎚で叩き割る。一撃で地面に倒れ伏せ、ぴくぴくと痙攣している。よし、いける。トカゲゴブリンとの接近戦ははじめてだが、これなら十二分に戦える。 戦場を見渡す。メルカト様の加護のおかげで混戦でも視界はくっきりしている。押されているエルフのところへ優先的に駆けつけ、敵を蹴散らす。「一人ひとりで戦わないで! 二三人で組になって一体にあたって!」「わ、わかった!」 トカゲゴブリンは草ゴブリンや地潜りゴブリンなんかよりずっと強いようだ。普通の人間が一対一で戦ったら無傷で勝つのは難しいだろう。だが、その程度だ。奇襲で足並みが乱れているから押されているが、落ち着いて正面から戦えば勝てない相手ではないはずだ。 戦場を駆け回り、一体、また一体とゴブリンを屠りながら集団戦を徹底するよう声をかけていく。曖昧ではあるがエルフ側に徐々に戦列が形成され
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第八十九話 お仲間のうんこまみれだから一回拭かない?

 目の前を巨大な金属塊が通り過ぎていく。風圧で髪が乱れてうっとうしい。スピードは大したことはないが、バカでかい得物のリーチのせいで懐に飛び込んでいけない。こんなデカイ斧、一体どこの誰が作ったんだ?「この業物は金剛不壊のミノスの斧よ! 王国の勇者より奪ったものを魔王陛下より下賜されたのだ!」 うーん、質問もしてないのにわざわざ解説してくれるとは。この武器さえなくなればどうとでもなりそうな気がする相手だけれど、柄まで金属製のようだし、武器破壊を狙うのはちょっと無理そうだ。「ミスリル製で魔術も打ち払える! 刃こぼれもない! 貴様はこの戦斧によって薪のごとく叩き割られる運命なのだ!」 いやー、たしかにミスリルを含んだ合金は超硬いらしいっすけどね。刃こぼれもないってのはさすがに嘘ですよ。自己修復する謎機能はあるらしいですけど、一度に大きな損傷を負ったら戻らないらしいっす。 大ゴブリンの振るう戦斧を交わしつつ、ミスリルの解説をしてくれたオババ様を思い出す。オババ様によれば、ミスリルというのは鍛え方によって性質も重量も変わる謎金属だそうなのだ。 わたしが背負っているミスリル戦鎚も、含有量でいえば耳かき一杯ほどのミスリルしか入ってないらしい。だが、それが含まれているのといないのでは圧倒的に強度が変わるとのことだった。 回避に徹している限りこの戦いに負けはない。だが、攻撃しない限り勝ちもない。時間稼ぎをしていればいずれ味方の援護で勝てるかもしれないが、さっき動いた浅黒女の動向がわからない。何をやっているのか知りたいところだが、そちらに目をやるほど余裕のある状況でもない。「おらおらおらおらおら! 逃げ回ってばかりでは勝負にならんぞ!」 ひたすら攻撃をかわすことに集中しているわたしに焦れたのか、大ゴブリンが攻勢を強める。このまま体力を消耗させたい気持ちはあるが、浅黒女をフリーにしたままでよいと思えない。 様子をうかがう余裕がなく状況はわからないが、この大ゴブリンと対等に話していたやつだ。雑魚のはずがない。 というわけで、ここは方向性を変えて口撃で牽制してみよう。「ねえねえ、ご自慢の斧だけどさ」「なんだッ!」「お仲間のうんこまみれだから一回拭かない? 飛び散りそうでやなんだけど」「はぁ!?」 そう、先ほどから空振った
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第九十話 はい、女神モドキ確定です

「な、な、なんのことッスかねー。ぴぅっ、ぴぅー」 ロマノワさんが顔中からだらだらと汗を流して下手くそな口笛を吹いている。つか、これもう女神モドキでいいよね? セーラー服君よ、君の見立てに間違いはないのかな?「はい、ご主人。正確には我が創造主の擬似身体です」 はい、女神モドキ確定です。てゆーかさ、いつから気がついてたのよそれ? そういう大事なことは早めに言うべきじゃない?「我々の使命達成には関係のないことです。あえて口にする必要はなかったでしょう」 あるがな……めっちゃあるがな……ロマノワさんの正体すっごい気になってたし、こっそり会議とかしてたんだからさ! ちょっとは気を回せよ!「そんなことよりご主人、あちらはよろしいので?」「俺様を無視して、のんきにおしゃべりとはいい度胸だな!」 なんとか立ち上がりかけていたロマノワさん……ああ、もう女神モドキでいいや。女神モドキの頭に大ゴブリンが戦斧を再び振り下ろすと、再び女神モドキは地面にびたーんと叩きつけられた。「ああ、もうマジ怖い。バイオレンス系とかほんとダメなんだから私。暴力反対ー! あ、ッスー!」 もう口調もめちゃくちゃじゃねえか。傷ひとつついてないし、一旦女神モドキにはこのまま囮になってもらおう。「あーしの目の前でずいぶん余裕があるねー。双槌鬼さんー」 背後で声がし、咄嗟に身をかがめる。頭の上を何かがすさまじい速度で通り過ぎ、髪の毛先がわずかに斬り飛ばされる。うっわー、あっぶね。黙って襲われてたらやばいところだった。「ギガーズぅー。そいつ斬れなくてイライラするから、選手交代ね。あーしがこっちもらうー」「何を勝手な……ぬぅ、こやつ、なぜ俺様の戦斧で斬れん!」「もうやめてぇー! ホントそういうのむりなんだからー!」 大ゴブリンが女神モドキを殺すのを諦めて2対1になってはたまらない。ひとまず大ゴブリンから離れるよう横っ跳びする。女神モドキが涙目でこちらに視線を送ってくるが無視だ。どうせいざとなったら超パワーでどうとでもできるんだろ?「とゆーわけでねー。双槌鬼さんー、あんたの相手はあーしってことでー」 浅黒女が無防備にこちらへと歩いてくる。その手には何の武器も握られていない。さっき斬られたわたしの髪といい、女神モドキの服が切り刻まれてたのといい
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第九十一話 人間ごときがチョーシこきやがって

 凶悪なギザギザの刃が眼前を何度も通り過ぎる。かわして、かわして、戦鎚で受け、受け、反撃。かわされ、かわされ、交差した刃で受けられる。 スピードは浅黒女の方が上だが、一撃の重さはこちらが上だ。間合いが測れるようになったことでしっかり戦えている。 また、浅黒女が戦鎚にぶつけるような攻撃をしてこないのも有利に働いている。戦鎚で浅黒女の攻撃を受けたり、逆にこちらの攻撃を受け止めたときはわずかだが表情が歪んでいる。刃に神経が通っているのかわからないが、痛いのだろうか?「なんかー、あんた学術都市のときより強くないー?」「人間は日々成長するものだからねッ!」 戦鎚を大振りに構えると、浅黒女が一気に距離を詰めてくる。戦鎚から片手を離し、わたしも前に出て素早く左ジャブ。顔面に直撃。続けざまにジャブ、ジャブ。ガードが上がったところで半歩下がって戦鎚で足を払う。 倒れたところに全力を込めて戦鎚を振り下ろす。鈍い衝撃。戦鎚の柄頭が半分地面にめり込んでいる。浅黒女はその一撃をギリギリでかわし、地面をごろごろと転がって素早く立ち、跳躍して距離を取った。「ぜったいなんかズルしてるっしょー。そーゆーのまじサガるんだけどー」「さーてー、どーだろーねー」 口真似で返事をするとギリッと歯ぎしりの音が聞こえた。ふふ、イラついてるイラついてる。それに別にズルなんかしていない。まあ、そもそも実戦でズルも卑怯もないとは思うけど。 浅黒女の目にわたしが以前よりも強く映っている理由は簡単だ。ドワーフ流戦鎚術がそういう武術だからである。ドワーフ流戦鎚術の主な仮想敵は人間よりやや小さい岩ゴブリンなどの人型の魔物で、対人に近い戦いを想定してる。浅黒女はそれより多少大きいが、誤差の範囲内である。 また、ドワーフ流戦鎚術に現代地球の武術の要素を加えた結果、対人戦においてさらに高い戦闘力を発揮するようになったのだ。 浅黒女が学術都市で見たのは、奇策の連続で勝ち抜いた武術大会と、選考会での怪物との戦いだけのはずだ。牙あり牙なしゴブリン相手の戦いは全力には程遠かったし、その後の瘴気領域の主との戦いはサイズ差がありすぎて腕前を見るには参考にならないだろう。 要するに、余裕で勝てる相手だと思い上がったのが浅黒女の油断だったのである。「一応、言っておくけど、降伏するならわたし|は《
last updateLast Updated : 2026-07-13
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