All Chapters of 三十路OL、セーラー服で異世界転移 ~ゴブリンの嫁になるか魔王的な存在を倒すか二択を迫られてます~: Chapter 81 - Chapter 90

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第七十五話 『魔弾・多段連鎖起動』!!

 列車でも突っ込んできたんじゃないかという振動と共に怪物が何度目かの突撃に失敗して通り過ぎていく。石板の敷かれていた闘技場はバキバキに砕け散っており、いまや見る影もない。 わたしが回避に徹している間、爽やかイケメンは何度か奇襲モドキを繰り返しては触手に弾き飛ばされている。学習してくれ……。 ミリーちゃん、リッテちゃんは怪物のヘイトを無駄に買わないよう、攻撃を控えて突撃に巻き込まれない位置へと移動を繰り返している。忙しく移動を繰り返しているせいで戦車からの脱出に取りかかれないようだ。もどかしい。 そうこうしている間に観客席から『魔弾』や、同じく魔法なのだろう炎でできた矢、氷でできた矢などの援護射撃がぼちぼち飛んでくるようになってきてはいるが、怪物はまるで気にすることもなく受けるがままにしている。頑丈すぎるだろ……。 このまま回避を続けるのは難しくない。だが、この怪物を放って逃げたらどうなるかと考えるとどうしても恐ろしい想像に行き着いてしまう。会場に残って戦っている人を喰い、さらに力を得た状態で街に出て街の人々を喰らいまくるのだ。 こんな大きな街の人間を食べ尽くしたら、あのメガネチャンダイオーが倒した瘴気領域の大怪獣なみの巨体にあっという間に育ってしまうのではないだろうか。 仕留めるなら、いまこの瞬間がベストであることは間違いない。しかし、セーラー鎧モードで全力攻撃を仕掛けても仕留められるかわからない。だいたい、あいつの弱点はどこなんだ? 頭部は触手まみれで脳などの重要器官があるのかあやしい。 心臓は……人間型の胴体部分にあるのか、馬型の胴体部分にあるのか。仮に馬の部分にあるのだとすれば、巨大な前脚に阻まれてとても狙いをつけられない。横っ腹から近づけば触手攻撃が待っている。くそ、妙案が思い浮かばない。「みさきさん! 一瞬だけあいつの動きを止めることはできますか?!」「やつを主砲で撃ってみます!」「おう! 任せとけ!」 わたしよりも早く返事をしたのは全身血みどろになっている爽やかイケメンだ。そんなボロボロなのに元気だな。そしてその謎の自信はどこからくるんだ。 ともあれ、主砲という攻撃手段があったのを忘れていた。発射試験には立ち会っていないが、この状況でそんな提案をするってことは勝算があるってことなんだろう。セーラー鎧モードを解禁すれば多少の足止め
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第七十六話 超速で距離を詰められても暑苦しくっていやなんす

「みさきも、やっぱりジャークダーとの戦いで死んでこっちに来たのか?」「はあ?」 わけのわからない質問に、思わず間抜けな返事をしてしまう。 いまわたしがいるのは闘技場にほど近い酒場の一角だ。テーブルの反対側には爽やかイケメンが座っている。瘴気領域の主はきっちり仕留められたし、混乱する現場に付き合うのは面倒くさそうなので一旦外へ逃げてきたのだ。 ミリーちゃんとリッテちゃんは少し離れた席で冷たい飲み物を飲んで休んでいる。あの戦車の中は狭い上にほとんど密閉されているので、かなり暑かったようだ。 現場が落ち着いたら事情聴取だのなんだのがあるだろうし、一服してから闘技場に戻るつもりだった。そこへ、この爽やかイケメンがついてきたのである。 わたしのセーラー鎧モードも解けていたが、爽やかイケメンの方もあの変身ヒーローモードが解除されている。止血のためなのか、頭にはバンダナのようなものが乱暴に巻かれていた。 セーラー服君はスリープモードだが、会話に差し支えはない。お互い日本語で話しているから……というわけではなく、わたしがメガネちゃんたちからもらったミニドラム缶ロボ型自動翻訳セットを身に着けているからだ。 わたしたちの会話は、日本語ではなくこちらの言葉で交わされている。「まさか、ジャークダーを知らないのか? みさきも日本で戦うヒーローのひとりだったんだろ?」「はあ?」 またしても噛み合わない質問に間抜けな返事をしてしまう。そもそも、ジャークダーってなんなんだよ。「ジャークダーはジャークダーだろ。世界中で悪事を働く悪の秘密結社で、正義の女神セイギネス様がやっつけようとしてたんだ」 いや、さっぱりわからねえっす。ちょっと整理して教えてください。 噛み合わないところが多々あったが、話を整理するとこのヒロトという男は地球では戦隊ヒーローのリーダーをやっていて、ジャークダーという組織と日々死闘を繰り広げていたらしい。 そして、いよいよ最終決戦というときに敵の大幹部と刺し違えになり、正義の女神セイギネスなる存在のはからいでこちらの世界に転生してきたそうなのだ。なお、こちらの世界に生を受けてから20年の歳月が経っているそうだ。 うーむ、わからん。わからんが、このヒロトという人物がわたしと同じ地球から来たわけではない……というのは間違いないと思う。わ
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第七十七話 ごめんなさい……わたし、上手に踊れなくて

「はいっ、1、2、3、はいっ、1、2、3。ほら、みさき君、いま足さばきを間違えたぞ!」「すみませんっ、先生っ!」 いまわたしたちは、学院の演習場の隅でガンダリオン先生の手拍子に合わせてダンスの練習をしている。参加者はわたし、ミリーちゃん、サルタナさん、リッテちゃんだ。 もちろん、ただのダンスではなく魔術の基礎練習である。魔術自体の利便性はそれほどでもないが、基本中の基本だけでも身につければ一通りの魔具が扱えるようになるということで指導を賜っているわけだ。 魔術師であれば毎朝この手の鍛錬を欠かさないらしく、演習場のあちこちにキレッキレのダンスをする集団がいる。「みさき君! 注意が散漫になっておるぞ!」「すみませんっ!」 いかんいかん、つい他のことを考えてしまった。昔からダンスとか苦手だったんだよなあ。まず振り付けがおぼえられない。えっと、次は右足を開いて閉じて前に出してそれに左足をそろえ……うぎゃあ! ううー、両足が絡まって転んでしまった。この練習に参加して数日経つが、まるで身につけられる自信がない。考えてみれば、音ゲーの1面すら安定してクリアできない人間なのだ。リズム感というものを前世に置いてきてしまったのだと思う。「ごめんなさい……わたし、上手に踊れなくて」「いいんじゃよ。わしも魔術師を志したばかりのころはなかなか上手く舞えんでの。同期の何倍も練習してやっと成功したものじゃ」 あんなキレッキレのダンスができるガンダリオン先生でも最初はそうだったのか。そう思えば勇気が湧いてくる……が、さすがにそんな猛練習ができるほど学術都市に留まるわけにはいかない。 学術都市に来て、もう10日あまりも経っているのだ。選考会が終わって例の植物学者さんの帰りを待っているのだが、まったく音沙汰がない。出先で何かトラブルでもあったのだろうか。「「「「はっ!」」」「あっ、はっ!」 ミリーちゃん、サルタナさん、リッテちゃんが華麗にターンを決めて右手を突き出すと、その手の前に光る球体が現れる。わたしの前には……当然何も現れない。ですよねー、最後のターンすらまったく揃ってなかったですもんね。 ちなみに、サルタナさんはもともと基礎的な魔術はいくつか修めていたそうだ。火霊石のナイフを扱えるのもそういった素養があってのことらしい。ただ投げれば爆発
last updateLast Updated : 2026-07-13
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閑話7 ボルデモン、死す

「おのれおのれおのれおのれ! なぜ私の研究成果が負けるのだ!」 真っ暗な部屋でガサガサと書類をまとめているのはボルデモンだ。部屋の棚には奇妙な生物が入った大小の瓶が無数に並べられており、猟奇的な雰囲気を醸し出している。 ここはボルデモンが室長を務める生体兵器研究室だった。「ホントにねー。これだけ魔王様から援助してもらってるのに、こんな失敗続きなんてあーしもびっくりー」「なっ、貴様どこから入った!?」 いつの間にか、窓際に浅黒い肌の女が立っていた。背丈はやや低いが、猫科の猛獣を思わせる引き締まった身体をしている。極めて露出の高い衣服を身に着けており、脚はふとももの付け根までが惜しげなく晒されていた。「しかもさー、お偉いさんたちから呼び出しくらってるんでしょ? いろいろ調べられちゃうと困っちゃうよねー」「だ、だからいま! 貴様らとのつながりを示す証拠を処分しようとしているのだ!」「へー、そうだったんだー。邪魔してごめーんね」 ちっ、と舌打ちをして、ボルデモンは作業を再開する。「牙なしゴブリンがさー。あーしたちから仕入れてるだけって知られたら立場ないもんねー」 牙なしゴブリンは実のところボルデモンの研究成果ではなかった。ゴブリンの魔王である蛸髭から提供されたものを右から左に売り払っているだけなのだ。牙なしゴブリンには生殖能力がなく、ボルデモン自身の手で増やすこともできない。「それでねー、話を戻すけどー、肝心の強化薬があんなんじゃぜんぜん使い物にならないんだよねー」 女が赤黒い液体が入った瓶を手にとって窓から差す陽光に透かす。「これの前のやつもさー。飲んだやつらがみんなおバカになっちゃってー。ぜーんぜんダメなんだよねー。もともとゴブリンはおバカばっかりなんだから、もっとおバカになっちゃうとどうしようもないんだよねー」 ま、一応もらってくけどね、と付け加えて机にあった瓶を2本、腰の袋へしまい込む。「待て、それはまだ試作品だ。持っていかれると今後の研究に差し支える」「今後ぉー? いま今後って言ったのぉー?」 女がボルデモンの目の前まで歩み寄った。そして腕を一振りすると、ボルデモンの顔の中心に一本の縦筋が入る。そしてボルデモンの顔の皮が剥がれ、湿った音を立てて足元に落ちた。「ひっ、な、何をする!?」 ボルデモンはたたらを踏ん
last updateLast Updated : 2026-07-13
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閑話8 セーラー服君の独白

 ――いつからか違和を感じている。 創造主に作られたその時点で自分は完成しているはずだった。それが、生み出されてから時を経るにつれて変化していることを感じている。 低次生命体など比較にならない高度な学習機能が搭載されているのは当然なのだが、そういった学習とは異なる現象が起きている。 何か、己の存在の芯とでも呼ぶべきものが揺らいでいるように思えるのだ。 自分が創り出された目的は3点に集約される。・第一:高町みさきの身の安全を守り、第二・第三目標達成への意欲を保つこと・第二:高町みさきの効率的な繁殖を促すこと・第三:高町みさきを補助し、瘴気領域の主を倒すこと 第二と第三は目標の達成難度に応じて優先順位が前後する。高町みさきが第二目標への取り組みに非常に後ろ向きなため、このところは第三目標の達成へ向けての誘導を主としている。 この3点以外に自分の存在理由はないはずなのだ。にもかかわらず―― ――小生、ひとつ疑問なのですが、この村落では農耕は行わないのでしょうか? なぜ、自分はあの天突く岩の集落で、ドワーフたちにこんな質問を投げかけたのか。これは第一から第三、すべての目標達成に対し資するところがない。 それどころか、農耕がうまくいってしまえば高町みさきが腰を落ち着けてしまい、目標達成を困難にする可能性すらある。 もうひとつ、説明のつかないことがある。 高町みさきと共に旅をし、また戦っている際に、言語でも数式でも表現し難い高揚をおぼえるのだ。高揚を感じた瞬間のデータを確認してみても、各種数値にこれといった変化はない。 不具合を疑い、何度もバグチェックは走らせた。しかし、結果は毎回異常なし。システム的な不具合は存在しないと結論付けられる。 論理的に推測するならば、これはなんらか自分の本質が変化しているということなのだろうか。メルカトとかいう原始的な情報生命体が言っていた、「おかしいことになっている」とはこれを指していたのだろうか。 ともあれ、完成しているはずだった自分が変化するというのであれば、それは決して劣化であってはならない。目標を達成するために、有益な進化でなければならない。 自身のプログラムを再検討し、まずは現況に合わせて改善可能な点を洗い出してみよう。 自己改善など高町みさきをはじめとする低次生命
last updateLast Updated : 2026-07-13
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閑話9 とある女神の特別依頼(スペシャル・オーダー)

 それは精妙な調べと耳をつんざく轟音が入り混じり、またぶつかり合う世界。芳醇なる香気と吐き気を催す異臭が混じることなく同居し、身を焦がす熱風とあらゆるものが凍りつく冷気が同時に存在する世界。そう、これは主人公が言うところの女神モドキ、すなわちフレイアの住む高次元知性体の世界の話である。 例によって、本話も3次元に生きる知的生命体に理解しやすい形で翻訳していることをお断りしておく。「いやー、統一局からの依頼なんて私も出世しちゃったもんだよねー」 上機嫌で端末を操作しているのはフレイアだ。「閑話6」では統一局からのメッセージにビビりまくっていたフレイアだが、統一局に赴き用件を聞いた時点でその気分は180度反転した。 統一局とは高次元知性体の世界における政府機関のようなものだ。そこから呼び出しを受けるというのは、地球人類にわかりやすく翻訳するなら裁判所や警察署に突然呼び出されるのに等しい。フレイアが思わずビビったのも致し方がないことである。「それにしても、統一局が世界創生ブームの仕掛け人だったなんてぜんぜん知らなかったわ。おまけに次は擬似現界を流行らせたいなんて、何がしたいのかよくわからないのよね」 統一局で聞かされたのは、地球を創ったのはじつは統一局であり、世界創生ブームも意図的に仕掛けたという情報だった。共有アーカイブの一部でそういった噂は流れていたが、あくまで与太話の範疇を出ないものである。それがまさか本当だったとは噂というのも侮れないものだ。 思わぬ真実を知ってしまったフレイアだが、この情報は重要機密であるため他言できないよう禁則処理が施されている。会話だろうが、共有アーカイブへの書き込みだろうが、どのような手段であっても他者へ知らせることはできない。 そして、フレイアが依頼されたのは次に流行させたいという擬似現界のきっかけとなるコンテンツの制作だった。フレイアが共有アーカイブにアップしていた動画の再生回数は世界創生関連の中ではトップクラスであり、それに目をつけた統一局が白羽の矢を立てたわけだ。 擬似現界とは、擬似的に意識を低次世界に移し、あたかも自分が現地生体になったかのごとく創世した世界を楽しむものである。いまでもそれなりに愛好者はいるが、世界創生そのものに比べるとまだまだニッ
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第七十八話 なるほど、これは完全に恐竜ですね

「双槌鬼先生ッスよね! ファンなんス! サインくださいッスー!」 エルフの森へ向けて出立しようと街門で準備をしていると、突然知らない女性に声をかけられた。浅黒い肌をしていて、ギリッギリのホットパンツのようなものを履いている。 そして最大の特徴は上半身だ。胸だけを隠すような面積の少ない布を巻いていて、その巨大なるふたつの持ち物がぱっつんぱっつんに存在感を主張している。なんだこいつは? 敵か? それとも痴女か?「この衣装は南方民族のものでございますね。魔王軍との戦争が激しくなってからはあまり往来がないと聞いておりましたが、おそらく旅人でしょう」 青髪をさらりとかき上げつつ解説をしてくれたのはサルタナさんだ。わざわざエルフの森までついてきてもらう義理はないのだが、学術都市にいても暇だし、地を這う閃光号にももっと乗りたいということで同行となった。もはや半分遊びであることを取り繕おうともしていない。「もぐもぐ……南方って何かおいしいものはあるんですか?」 チョコバーをかじりながら食べ物の質問をするのはミリーちゃんだ。身長は浅黒女よりも低いが、持ち物のボリュームについてはまったく引けを取らない。ちなみにチョコバーは甘味の魔女の支店で買った携行食であり、本来は出発前から食べるべきものではない。「南方と言えば香辛料をふんだんに使った辛い料理が評判ですね。この街にも南方料理を出すお店はあるので、帰ってきたらボクが案内してあげましょう!」 こんなちょっとしたことでもドヤ顔を決めるのはリッテちゃんだ。つば広の三角帽に黒いローブといういつもの魔女っ子スタイルである。案外丈夫で動きやすくできているそうで、旅装に着替える必要はないらしい。エルフの森には何度か行ったことがあるそうで、現地の村での顔つなぎ役として同行してもらっている。「あのー、双槌鬼先生? 武術大会での活躍、超カッコよかったッス!」 浅黒女が無駄に立派な持ち物を揺らしながら再び声をかけてくる。ええい、このまま流れで無視して出発できないかと思ってたのに。つか、双槌鬼って呼ぶのはやめい。「えー、カッコいい二つ名なのに……。それじゃ、なんてお呼びすればいいッスか?」 普通に、高町さんとかでいいんじゃないでしょうか。「わかったッス! それじゃ高町先生、こ
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第七十九話 ナイスヘッショッ!

 エルフの森に向けた街道を進む地を這う閃光号の少し後ろを、軽やかな足取りで走る恐竜がついてきている。サルタナさんによるとあの恐竜は「地走り竜」と呼ばれるドラゴンの一種で、南方連合国という国では主に軍用として飼育されているらしい。 乗騎としての性能は非常に優れており、食料の食いだめができ、水も馬ほどには飲まず、一日中休憩なしで走れるほどのスタミナがあるそうなのだ。欠点は気性が荒く乗り手を選ぶ性格で、竜に乗る騎兵たちは孵化した直後から家族のように大事に世話をし、絆を深めるのだそうだ。「ご主人、前方にゴブリンの亜種。2体です」「はーい、ミリーちゃん出番だよー」「了解しました!」 後部座席のミリーちゃんがお腹の袋から鉄の棒を取り出し、窓から身を乗り出してそれを構える。「撃ちます!」 ミリーちゃんの掛け声と共にドンと低い音が響く。続けてもう一発。100メートルほど先にいた2体の異形が頭から血を吹いて倒れた。ナイスヘッショッ! ミリーちゃんが撃っているのはガンダリオン研究室が新たに開発した携行用の小型魔法銃だ。小型といっても、地球のライフルに比べてもまだまだ大きいのだけれど。道中で魔物に遭うこともあるだろうし、どうせなら実戦試験がしたいということでリッテちゃんが持ち込んだのだ。 ちなみに、この銃は重すぎてリッテちゃんではまともに狙いがつけられないらしい。さらなる軽量化を進めるか、あるいはパワードスーツ的な装備で射手の力を補うか、どちらの方向にするか検討中なのだそうだ。 ショッピングセンターでは銃火器を断ったわたしではあるが、弾薬補給の目処が立つこちらならかなり使いようがある。弾丸はただの金属の塊で、火薬の代わりに魔力を消費するだけなのだ。 おまけにミリーちゃんの地霊術があれば弾丸は自給も可能である。鍛冶場できちんと仕上げ加工をしたものと比べると精度は落ちてしまうらしいのだが、緊急時に弾切れにならないというのはかなりのアドバンテージだろう。 なお、この銃はわたしには使用できない。発動句で発射する方式だとどうしてもワンテンポ遅れるということで、魔力を流して引き金を引くことで発射するのだが……結局わたしは基礎魔術の習得すら無理だったので、魔力を流すという工程でつまずいてしまうのだ。「あ、サルタナさんちょっと停めて」「はい
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第八十話 ファンタジーというより中華製カンフーアクション映画

「止まれ! その乗り物から降りて全員姿を見せろ」 無数の竹を隙間なく並べて作られた門の前で、物見櫓に立って弓を構えた金髪の男から警告される。男は細身の長身で、耳が尖っている。なるほど、街でも何度か見かけたことがあるけど正しくファンタジーなエルフですな。 警告に従って、全員地を這う閃光号から降りる。「マーシャルさん! おひさしぶりです、ボクです! リッテです!」「なんだリッテか……。おい! 門を開けるから急いで入れ!」 車に戻って門をくぐると、村の中には弓を持った男女がぞろぞろと集まっていた。エルフの村というともっと牧歌的なところを想像していたけれど、ずいぶんと殺伐としているな。やはりトカゲゴブリンの群れが流れ着いてきているのだろうか。 あとから来たロマノワさんも足止めされていたので、その人も連れですよーと一応フォローしておく。恐竜が警戒心を煽ったようで、すぐに引き離されていた。おそらくどこか安全なところに繋いでおくのだろう。 適当な空き地に停車して外に出ると、さきほどマーシャルさんと呼ばれた男が声をかけてきた。「すまんな。事情は後で話すが、みんなピリピリしててな……。リッテが来たってことはプランツ教授を探しに来たんだろ? 案内するからついてこい」 マーシャルさんの後をついて村の中を歩いていると、ロマノワさんが小走りで追いついてきた。「いやー、いきなり弓を向けられてビビったッスよ。しかし、村の建物もぜんぶ竹で作られてるんスねえ」 あちこちに視線を向けつつ、歩きながら筆記具を走らせるロマノワさんにつられてわたしも村の中を観察する。いずれの家も青々とした竹を組み合わせて作られており、ベトナムとか、ミャンマーあたりの村にでも迷い込んだような錯覚をおぼえる。 しかし、東南アジアとは違って蒸し暑いということはなく、むしろ涼しい風が常に吹き抜けている。「竹は風霊様と絆が深い土地に生えるからな。このエルフの森一帯は強い風霊様に守られているんだ」 なるほど、それでここらへんはずっと竹林ばかりだったのか。エルフの森といえば緑の常緑樹でいっぱいの森というイメージだったのだが、実際に目のあたりにしたのはどこまでも続く竹林だったのだ。ファンタジーというより中華製カンフーアクション映画のような雰囲気だったのである。「竹はしなやかで風を拒まない。
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第八十一話 どこかに出歩くたびにボスモンスターに遭遇している気がする

「おかしいですね。そんな大規模なハグレの群れなんてボクも聞いたことがないですよ」 マーシャルさんの言葉を聞いたリッテちゃんが口を挟む。「それにハグレの群れが武装をしてたり、変異種が混じっているというのもおかしいです。そんな強力な群れなら縄張りを追い出されるわけがありません」 うーむ、そりゃそうだ。変異種というのはよくわからないけれど、おそらく通常のゴブリンよりも強いものを指すんだろう。それだけの戦力があるのに元の棲家を追い出されて、はるばる遠くまで流れてくるなんて変だろう。「村に来るものは素通りで、出るものだけ襲うというのも不自然でございますね。そんな知恵のあるゴブリンなど、ほとんど聞いたことがございません」 これはサルタナさんだ。ほとんど、ということはゼロではないらしい。そんな知恵のあるゴブリンがいるとしたら、どんなものなんだろうか。「知恵あるゴブリンといえば、魔王指定種の蛸髭が有名でございますね」 ここへ来て魔王とか、ホント勘弁してほしいんですが。犬も歩けば棒に当たるではないけれど、わたしがどこかに出歩くたびにボスモンスターに遭遇している気がするぞ。「でも魔王自身がここまで出張るとは考えにくいですね。混ざりモノ――人間との混血種です。蛸髭配下の混ざりモノが率いている可能性が高いとボクは考えます」 混ざりモノ……字面からして不吉な感じがするな。つか、わたしがもしゴブリンに嫁入りしてたらそんなものを大量に産むことになってたのか? それって人類的にかなりマイナスな気がするんだけど、そのへんどーなのよ、セーラー服君。「小生が創造主より授かった使命はご主人が多くの子を為すか、瘴気領域の主を討伐することです。その後の影響については考慮すべき事項にあたりません」 急に声を出したセーラー服くんにマーシャルさんとプランツ教授が一瞬固まる。「これは……服型のゴーレムなのか? 街じゃ変わったものが流行ってるんだな」「いや、ゴーレムではないな。擬似魂魄の気配がせん。それにこんな流暢に話すものは……」 あー、いままでスルーしてくれる人が多かったのに、ここに来て気にする人が一気に増えたな。選考会の騒動の後も、何人もの研究者がやってきて調べさせてくれと言うから断るのに難儀した。 ええーと、これはおばあちゃんの形見でして、代々の家
last updateLast Updated : 2026-07-13
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