「別に入信ゆうても大仰なことはあらへんよ。寄進して、名簿に記帳して、引き換えに聖印をもらったらおしまいや」 あらまあ、ずいぶん簡単な。説法を聞いたり洗礼の儀式を受けたりする必要はないんだろうか。「山ほどの金貨でも雷鳴は戻せん、ゆうからな。無駄な時間がかかることはやらへんのよ」 さすがは商いの神様というだけはある。徹底して合理的だぜ。ちなみに、「山ほどの金貨でも雷鳴は戻せない」というのは「時は金なり」的な意味のこちらの慣用句だ。 しかしなあ……とくに面倒な戒律やらなんやらがないにしても、寄進となると考えてしまう。 そう、ぶっちゃけわたしは金欠なのだ。元々ドワーフ村のみんなから預かったお金しか持ってないし、これは有望な作物を見つけたときのために手を付けるわけにはいかない。しかも、道中の路銀は基本的にサルタナさんに出してもらっている。 一応、ずっと護衛を続けているという建前ではあるのだが……交易都市を出て以降の旅は最初の契約からは明らかにはみ出ている。サルタナさん的にもメリットがあるというのは理解しているのだが、それにしたってずっと支払いを任せっぱなしというのはどうも肩身が狭い。 自前で稼いだお金で寄進ができるのなら、損はなさそうだし入信してみたってかまわないのだが。神様、イケメンだし。「なんや、金欠なんか。ほんなら武術大会にでも出てみたらどうや?」 武術大会とはなんぞい?「学院の選考会で来る王国軍のお偉いさんの向けの接待ゆうか、仕官希望の腕自慢が集まる武芸比べの大会やな。ま、半分は興行や。上位に入れば賞金も出るで」 ほへー、そんなイベントがあるんだ。しかしわたしはごく普通の三十路OL……とは言い難いな、もはや。ともあれ、武道の達人でもなんでもないぞ?「そんなクソ重たい戦鎚を2本も背負って平然としてるやつが普通なわけあるかい。わいの見立てじゃ結構いいとこまでいくと思うけどな」「ご主人、小生も出場を推奨します。あの大型の瘴気領域の主との戦いで痛感しましたが、いまのご主人の力ではまだまだ不足と言わざるを得ません。この機会を利用して研鑽を積むべきかと」 うわ、こいつこんなタイミングで話しはじめやがった。メルカト様が顔をしかめてセーラー服を見る。「なんやこいつ……けったいやな。疑似魂魄もないのにこんな|流暢《りゅうち
Last Updated : 2026-07-13 Read more