All Chapters of 三十路OL、セーラー服で異世界転移 ~ゴブリンの嫁になるか魔王的な存在を倒すか二択を迫られてます~: Chapter 61 - Chapter 70

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第五十五話 あなた方のような冒険者を探してました!

「うーん、めぼしいものはなかったねえ」「そうですねえ。麓の町よりはずっと大きい街みたいですけど……」 酒場の一角でテーブルを挟んでジョッキを傾けているのはわたしとミリーちゃんだ。ジョッキの中身はエールである。薄めた甘酒のようでまあ一応美味しくはあるのだが、ショッピングセンターで生ビールの味を思い出してしまったわたしには正直物足りない。 ちなみに、エールは平地で穫れる小麦を発酵させて作っており、人間の住んでいる地域では広く飲まれているそうだ。これに特殊な香料を加え、さらに熟成させたものが天突く岩で飲まれていたエンペールである。 交易都市に到着次第、わたしたちは宿を押さえるとさっそく商店や露店が集まる通りへと向かった。案内してくれたサルタナさんは、付き合いのある商会へと挨拶回りをするとのことで一旦別行動をしている。サツマイモだのジャガイモだのといった地球の食材を知っているのはわたししかいないので、それが効率的だろう。 そんなわけで数時間かけていろいろなお店を見て回ったのだが……残念ながら、ドワーフ村で育ちそうな作物は見つけることができなかった。というか、想像していたよりもずっと品揃えが少ない。麓の町でも手に入りそうな見慣れた食材ばかりだったのだ。「お待たせいたしました。何かめぼしいものは見つかりましたか?」「あっ、サルタナさん。それがなんにも……」 挨拶回りを済ませたのか、サルタナさんがやってきた。「サルタナさんの方はどうでした?」と聞き返すと、青髪を横に振る。「残念ながらこちらも収穫はございません。どうやら、皇都が滅んだ関係でこの街もすっかり景気が悪くなってしまったそうで……珍しい産品もあまり集まらないようなのです」 サルタナさんによると、もともと交易都市は皇都という一大消費地の近くに位置していたことで発展したのだそうだ。いまでは商売のメッカと言えば第二皇都になっているらしい。第二皇都とは、瘴気領域の拡大を危惧した先皇帝の代から建設が進められていた都市だそうで、皇都が滅んでからは完全に首都機能をそちらに移しているらしい。 それなら「第二」とかまどろっこしい呼称はやめればいいと思うのだが、それでは緑の魔王に屈して皇都を取り返すことを諦めたようで国としての沽券が保てない……ということらしい。偉い人は守らなけ
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第五十六話 フェロモンを撒き散らす準備とかしてないだろうな

 急に護衛って言われてもなあ。そもそもこっちは冒険者じゃないし、正直困るぞ。「学術都市、でございますか」「たしか、魔法や色々な学問の研究をしてる学者さんがたくさん集まる都市でしたっけ?」 困惑するわたしとは対照的に、何か考え込むような仕草になったのがサルタナさんだ。そのつぶやきに応じたのがミリーちゃん。そうだ、そういえばショッピングセンターでのサルタナ先生の講義に出てきたな。たしか、交易都市からさらに西の方にあるんだっけ?「はい! そのとおりです。ボクはかの偉大なる魔具制作の第一人者、万象を識るガンダリオンに師事する学士で、リッテと申します!」 おお、「万象を識る」って二つ名的なやつかな? ちょっとかっこいいぞ。いかにも大賢人って感じがする。そんで、この三角帽に黒ローブの魔女っ子ルックの子はリッテちゃんっていうのか。「おお、ガンダリオン教授のお弟子さんだったとは。わたくしも皇都で学んでいたときは、講義を拝聴したものでございます」「あなたも師匠の講義を受けたことがあるんですね! ……あれ? でも最後に師匠が巡回講義に出たのはもう十年以上前だったような」 リッテちゃんが怪訝そうにサルタナさんを見る。サルタナさんは30歳……あ、天が灰色に染まる刻を過ぎたからもう31歳なのか。だが見た目は二十代半ばで通るクールビューティだ。ガンダリオンという大先生の講義を受けたにしては若すぎると見えたのだろうか。「わたくしは31歳ですからね。皇都で学んでいたのは15年ほども前のことになります」 リッテちゃんの疑問を察したサルタナさんがクールに返答する。いや、ちょっと表情が引きつってる気がする。いつかみたいな地雷が爆発しないことを祈る。「ええー! 精霊の加護はあるようですけれど、とてもそんな歳には見えないですね。ひょっとして、エルフの血とか混ざってません?」「いえ、当家の家系を辿ってもエルフの先祖はおりませんね。加護もたまさかわたくしのみが授かったものにございます」 こら、年齢の話はもうやめろ。アラサーというのは乙女にとって非常にデリケートな季節なのだ。それは女同士であっても変わりはない。ほら、口元がちょっとひくひくしてるじゃないか。「え、えっと、それでサルタナさん、学術都市になにかあるんですか?」 話題を切り替えようと慌てて口を挟む。暗黒モードのサル
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第五十七話 好きな話になるとついつい早口で語りたくなっちゃう

 急にセーラー服と素っ頓狂な会話をはじめたことに驚いたのか、リッテちゃんが目を丸くしてこちらを見ている。ああー、こういう反応が逆に新鮮だ。みんな「そういうこともあるよね」くらいにさらっと受け入れるから、わたしもすっかり気にしなくなってしまっていた。冷静に考えると、セーラー服がしゃべるって結構な異常事態だよね。「これほど流暢に話す魔具はボクも見たことがないです。学術都市で製作されている最新型のゴーレムでもここまでではないですよ。ひょっとして、これって超術由来の品ではないですか?」 んん? 驚くポイントが微妙に違った。そういえば、セーラー服君ってこの世界だと最上級の魔具だか魔道具だかに匹敵するんだったっけ。つか、超術ってなんじゃいもん。「超術というのは、既存の魔術や精霊術の枠に収まらない魔法のことです。無から魔力のみでお菓子を作り出す第二皇都の甘味の魔女や、あらゆる物を野菜に変える緑の魔王が扱う術などですね。その服からはほとんど魔力も感じませんし、超術由来の品で間違いないと思うのですが……」 リッテちゃんが好奇心で目を輝かせながらにじり寄ってくる。そのへんツッコんで来る人がいないから完全に油断してた。ええー、これはですね、先祖代々伝わる家宝でして、詳しい来歴などはわからないのであります、はい。「そうですか。超術由来の魔具なら研究対象としてぜひ譲っていただきたいんですが……」「やはり並の品ではなかったのでございますね。もしお売りになる際は当商会にもお声掛けくださいますよう」 あ、やべ、サルタナさんまで乗ってきちゃった。これはダメです、あれです、とにかく家宝なんで売り物にはならないんす。つか、これを脱ぐと死にます。いやわりと高確率で。「先祖代々受け継いできたものですもんね。急に無理を言ってすみません」 ああー、いいんす。いいんすよ。そんな貴重品には見えないですもんね。実際大したことないんすよ。研究する価値なんて微塵も存在しないっす。 セーラー鎧モードのことを知っているサルタナさんからの視線を感じるが、気が付かないふりをする。サルタナさんはサルタナさんで、競合を増やしたくないのかその件についてツッコむつもりはないようだ。ありがたいというか、油断できないというか、複雑な心境である。「超術や魔術って、精霊様
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第五十八話 ミリーちゃんが粘液まみれになるオチしか見えん

「さあ進め! 地を這う閃光号よ! お前ならば学術都市までの道のりも3日で走り抜けられるはずだッ!」「えーと、サルタナさん? くれぐれも安全運転でね?」「もぐもぐ……この梅ガムっていうのもおいしいですねえ」「これだけの速度で走り続けられる馬なしの馬車型ゴーレム……やはりこれも超術由来では……」 酒場での乱闘事件の翌日、わたしたちはサルタナさんの駆る地を這う閃光号に乗って学術都市へと向かう街道を進んでいた。ある程度整えられているとはいえ日本の舗装道路と比べればボコボコだ。 乗り物酔いになりかけたミリーちゃんがもぐもぐしているのがショッピングセンター土産のひとつの梅ガムである。なんでかわからないけど、梅ガムって酔い止めになるよね。 車内をじろじろと観察しているのはリッテちゃん。これも超術由来の品だと睨んで興味津々らしい。うーん、どちらかって言うと科学技術由来の産物だけど、まあそんなこと言ってもわからないよね。わたしだってどんな仕組みで動いてるかなんて詳しく知らないし。 移動しながらの雑談でほぼ確信しかけているが、超術というのはおそらくあの女神モドキが大盤振る舞いしてるチートのことだ。魔法の存在するこの世界であっても、さらにそれから逸脱するような力なんて他に考えられない。女神モドキみたいな存在が、別口で存在する可能性も否定できないけど。 セーラー服君だってしょっちゅうエネルギー収支がどうだのと言うけれど、そのエネルギーをどうやって得ているか不明だし、メガネチャンダイオーやドラム缶ロボたちにしても動力源がまるでわからなかった。まさしく、超常的な力が働いているとしか思えない。 ま、わたしは研究者じゃないし、こんなこと考察したって一文にもならないんだけどね。トンデモパワーで動いてるトンデモマシンやら、トンデモな現象が引き起こせるものが超術だと理解しておけば十分だろう。 地を這う閃光号がまた一台の馬車を追い抜かす。倍近い速度に御者さんが目を丸くしていた。通常なら交易都市から学術都市までの道のりは雷鳴が7回は巡る旅程になるそうなのだが、速い上に休憩がほとんど要らない自動車旅であれば、3日もあれば辿り着けるだろうとのこと。ビバ現代地球文明である。「ご主人、前方にヌルゴブリンの群れを検知しました」 うっわー、またあいつらか。サルタナさ
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第五十九話 おじいちゃんとその孫って感じで微笑ましい

 地を這う閃光号で街道を進むこと3日。わたしたちは学術都市にたどり着いていた。途中の関所で通行料をむしられたことと、時折ヌルゴブリンに進路妨害をされたこと以外にはさしたるトラブルもない。 なお、関所があったのはそこが国境だからだ。いままでわたしたちがいた地域は帝国領とされており、学術都市は王国領とされているとのこと。ショッピングセンターでのサルタナさん講義で教えてもらうまでまったく知らない情報だったが、日常会話で国がどうこうなんて話にはそうそうならないので仕方がない。 この世界には、他国の情報を知らせてくれるテレビもラジオもなければ、民主制でもないので一般庶民は政治に対する関心が薄い。税やヘンテコなお触れに対する不満について話すのがせいぜいである。 街の仕組み自体はそうそう変わりがないようで、街門を抜けると自動車を厩舎に預ける。多少物珍しげには見られたが、そこまでびっくりした様子ではなかった。リッテちゃんによると学術都市ではゴーレム車なるものがある程度普及しており、馬なしで走る馬車は見たことがないほど珍奇なものということではないらしい。 リッテちゃんの案内で彼女の師匠である、万象を識るガンダリオン大先生がいるという学院の研究棟へと向かう。おっ、いよいよ学院回か……異世界ファンタジーらしいじゃないのという考えが一瞬だけ脳裏をよぎるが、冷静に考えなくてもわたしは三十路である。 いまさら十代に混じって学校に入り、「えっ、わたしまたなんかやっちゃいました?」なんてできる歳ではない。そんなことをしたら顔から火を吹いて憤死してしまうだろう。 道を歩いていると、あちこちで頭からフードをかぶった小柄な人々を見かける。鎖で繋がれて普通の人間に連れられているのだ。どうも荷物持ちなどをさせられているようだ。あー、これまた異世界物定番の奴隷ってやつかな? 奴隷になったケモミミ獣人幼女を救って云々ってルートに入った系?「あれは牙抜きゴブリンですね。ゴブリンの原生種を改良して牙と爪、そして凶暴性をなくして従順にした生物です。ボクはあんなものを連れ歩くほど悪趣味ではないですが……少しずつ流行ってます」 解説をしてくれたのはリッテちゃんだ。リッテちゃんはその牙抜きゴブリンってのが好きじゃなさそうだな。やっぱり生命の冒涜的な行為には|忌避感《
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第六十話 実体火力投射機甲・試作弐号

 目の前にあるチョコケーキだが、正直、その存在自体への衝撃はもうかなり少ない。「超術」というのがあの女神モドキ由来のチートであることは当たりがついてきているし、その力を使う甘味の魔女という人物もおそらく地球から転移してきた人間なのだろう。 地球でパティシエでもやっていた人間がこちらに来れば、もともと身につけていた技能を活かして食っていこうと思うのは当然だし、現地人にはない力まで持っているのだ。それこそ二つ名が付くような有名人も多いのかもしれない。 それにしても、返す返すも腹が立つのはあの女神モドキである。わたしにだって、どんなスキルが希望なのか聞いてくれてもよかったろうに。「みさきさん! これ、あの神殿で食べたケーキみたいにおいしいですよ!」 おっと、少し考え事にふけってしまった。ミリーちゃんに促され、わたしもケーキを一口食べる。おお……けっこうビターだな。表面をチョコでコーティングしているだけでなく、スポンジにもチョコを練り込んだ上に中には幾層ものパリパリチョコを仕込んである。こんなんどうやって作るんだろ……。少なくともわたしには逆立ちしたって作れそうにない。「神殿でケーキ……? 一体どこで食べてきたんじゃ?」「瘴気領域の中にあるんです!」 ミリーちゃんが問われるままに無邪気に答える。そんなぺらぺらしゃべっていいの? と思われるかもしれないが、メガネちゃんたちからはとくに口止めもされていないのだ。というか、適度に噂が広まる分には旅人が増えて退屈しのぎになるのでむしろ推奨らしい。「瘴気領域の中にそんなものが……。うーむ、一度調査に行ってみたいものじゃの」 かいつまんでショッピングセンターのことを話すと、ガンダリオン先生が髭を撫でながらつぶやく。そりゃそうだよね。ごはんが美味しく寝床も最高、スーパー銭湯付きのユートピアなんてわたしだったら一度たどり着いたら一生出たくない。いや、事情が許すなら一生出たくなかった。まあ、この先生の場合はそういう俗物的な動機ではなく、純粋な学問的興味っぽいけど。「ところでリッテ様、そろそろ本題を……」「あっ、そうでした。師匠、サルタナ殿たちへの報酬について相談があるのですが」 すっかり逸れてしまった話題をサルタナさんが戻す。さすがバリキャリビジネスウーマン。わたしだけだったらこのまま用事を忘れて帰りかね
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第六十一話 あれ、私なにかしちゃいました?

 金属塊を身にまとったリッテちゃんの姿は、なんというか完全にパワードスーツを着たSF的兵士である。頭だけは生身が露出しているが、それ以外は全身がゴツゴツした無骨な鉄板で覆われている。つや消しのブラック色でいかにも「兵器」ってかんじだ。「さあ、見ていてください。これが我らがガンダリオン研究室の誇る最新鋭の魔印兵器です!」 そう言うと、ごつい右腕をうぃぃぃーんと標的の方へ向ける。改めて見るとその腕には金属製の角柱のようなものがついていて、先端には穴が空いているようだった。ありゃー、これってもしかして?「『魔弾・多重起動』!!」 リッテちゃんの叫びと共に角柱の先端が輝く。ほとんど同時にゴガン! という音が鳴り響き、金属製の標的に大きな凹みができていた。やっぱり、これは魔法を発射する銃的なもののようだ。いいね、こういうのは心がときめくよね。「魔印から生じる複数の『魔弾』によって鉄球を加速し、発射しているんです。オーガだって一撃で倒せる威力がありますよ」 たしかに、先ほどガンダリオン先生が見せてくれた『魔弾』とは威力が桁違いのようだ。「まだまだ動きがぎこちないところがありますが、油圧をヌルゴブリンの原液に変えればもっと滑らかに動くはずです!」 なるほど、それで交易都市までヌルゴブリンの原液なんてけったいな代物を仕入れに来ていたのか。「一度だけでは見逃したかもしれませんしね。もう一発試射してみましょう」 うーん、たぶん誰も見逃してはないんだけどな。でもまあ、銃の試射動画とかは見るだけでなんとなくテンションが上がるから喜んで拝見しよう。できれば、標的を粘土やスイカに変えるとかそういうバリエーションがほしいところだけど。 リッテちゃんが銃の先端から鉄球を詰め込んでいるのをミリーちゃんが興味深げに観察している。一方で、サルタナさんはそれほど興味がなさそうだ。こんな強力な武器、もし商品化されれば売れそうだけど、なんでだろ。 わたしの不思議そうな顔に気がついたのか、サルタナさんが小声で教えてくれる。「当商会の商圏に近い大型の魔物は、緑の魔王が正気だったころに狩り尽くされてございまして。これほど強力な魔具を欲する方はほとんどいないかと」 なるほど、そういうことか。たしかに草ゴブリン相手には過剰な威力だし、地潜りゴブリンを相手にするに
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第六十二話 文句があるやつは一歩前に出て歯を食いしばりなさい

「見苦しいものを見せてしまってすまんのう」 ガンダリオン先生が渋い顔で謝罪してくる。いえいえー、お気になさらず。日本でもよく変なおっさんに変な絡まれ方をしてストレスだったのでお気持ちはよくわかりますよ。ところで、さっきの感じの悪いおっさんって何なんです?「生体研究部門の教授でな。わしの同期じゃったんだが、牙抜きゴブリンの開発でひと稼ぎしてからはあの調子でのう……」「富は人を豊かにもしますが時に心を貧しくするものと申しますものね」 サルタナさんの合いの手にガンダリオン先生がうんうんとうなずく。 あー、わかります。お金って人を変えますよね。ヒットしてるみたいだし、ついでに名声も得て天狗になっちゃってる系なのかな? って、ガンダリオン先生と同期ってことは、ボルデモンっておっさんは見た目よりずっと歳をとってるんじゃろか。「歳はわしと一緒じゃよ。研究成果を自分の体でも試しているらしくての……」 ガンダリオン先生が遠い目をしてため息をつく。昔はいいやつだったのに、変な薬の影響でおかしくなっちゃったのだろうか。実は幼なじみで親友だったとか、そういうありがちなバックボーンがありそうな気がする。「いや、思い返すとやはり昔から性格が悪かったと思うての。最近はそれに態度の大きさまで加わったというだけじゃ」 身も蓋もねえなおい。「選考会が近いせいで余計にこちらが気になるようでな。よくああやって絡んでくるんじゃ」「ほう、選考会とはどんなものでございましょう?」 うーむ、行動が完全にチンピラやヤンキーのそれだな。資産や社会的地位に品性が比例しないというのは異世界でも変わらない真実らしい。ところで選考会ってなんですかね? わたしもちょっと気になる。「各研究室が成果を持ち寄って比べ合うんじゃよ。軍のお偉いさんも視察に来るでな。上手く目に止まれば研究予算の増額は間違いないからの。みんな必死なのじゃよ」 わしも含めてじゃがの、とカラカラと笑う。白髭のおじいちゃんがこうやってわらってるとなんだか水戸黄門みたいだ。「ところで、リッテとミリー君がずいぶん盛り上がっていたようじゃが、滞在中は研究を手伝ってもらえるということでいいのかの?」「地霊の加護を持っている人なんてめったにいませんしね! 色々と実験のしがいがありますよー!」「あの、実験は安全なのでお願いしますね?」 
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第六十三話 それほどの力を持つ神など聞いたことがありません

 用務員さん的な人に「商いの神の神殿」とやらまでの道を教えてもらい、わたしとサルタナさんは学院を後にした。そういえば、いつもミリーちゃんと一緒にいたからサルタナさんと二人きりになるのは初めてのような気がする。ま、何か違和感はあるけれど、いまさらそんなことで緊張するような間柄でもない。「みさき様、以前からひとつお聞きしたいことがあったのですがよろしゅうございますか?」 まばらに通行人がいる街路を歩いていると、サルタナさんが口を開いた。おや、一体なんだろう。バストサイズについては話さんぞ。って、サルタナさんがそんなセクハラ発言するはずもないけれど。「地球や日本というのは何なのでございましょう? 大神殿でのことや料理や武器に関する知識など……到底、辺境などとは思えぬのです」 ありゃー、ついに来たかその質問。うーん、どうやってごまかそう……あれ? そもそもごまかす必要あるのかな? もともと普通に話したら頭おかしいと思われそうな内容ではあるけれど、いまならそんな心配もないんじゃなかろうか。ここはひとつ、さらっと暴露してみよっかな。「うーん、実はこの世界……惑星? 宇宙? とはぜんぜん違うところなんだよね。なんか性格も頭も悪そうな自称女神に誘拐されて、こっちに放り込まれちゃったんだ」「惑星や宇宙というのはよくわかりませんが……なるほど、にわかには信じがたくはありますが、そういうことでございましたか」 ありゃ、ずいぶんあっさりとした反応。信じがたいとは口にしているものの、そんなに疑われているという風でもない。もともと転移者は大量にいるみたいだし、その手の噂が広まっていたのかな?「皇都で学んでいた際に似たような話を耳にしたことがあるのです。民話や伝承のたぐいとして、ではございましたが」 なるほーど、そういうことか。日本の感覚に合わせて考えるなら、「月から来たかぐや姫は実在した!」みたいなかんじかな? いや、それでも十分通院を勧められる案件だけど。こっちは魔法がある分、そういう不思議現象が受け入れられやすいのかもしれない。「むしろ気になるのはその女神を自称する存在でございますね。それほどの力を持つ神など聞いたことがありません」 ありゃ、そうなの? こっちでもそれなりに神様は信仰されてそうだし、なんでもできる超パワーを持つ存在だと思われてるわけじゃないのかな。
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第六十四話 部活の体験入部みたいなノリで宗教勧誘されてるんですけど

 神殿の扉をくぐって中に入る。中は広間になっていて、あちこちに置かれたテーブルで何やら話し込んでる人たちがいた。「これくらいでどうですか?」とか、「あっちの街でこういうのが流行ってるらしいんだが仕入れられないか?」みたいな会話が漏れ伝わってくる。なるほど、商談をしているのか。 広間の奥は一段高くなっており、人間の男性の1.5倍くらいの大きさの像が鎮座している。ターバンのような布を頭に巻いていて、ゆったりした外套をまとっているデザインだ。旅の商人をイメージしているのだろうか。顔は細面で、エキゾチックな雰囲気のイケメンだ。精巧な作りではあるけれど、あまり神々しさは感じないな。 サルタナさんの後について神像の前まで進むと、神像と同じ服装をした男性が歩み寄ってきた。「ようこそ商いの神メルカトの神殿へ。本日はどういった御用で?」「お初にお目にかかります、神官様。わたくしどもは遠方より参った旅の商人でございまして、こちらには初めて訪れましたのでまずはメルカト様にお祈りを、と」 そんな挨拶を交わしつつ、流れるような動きで布袋に入った硬貨を渡す。受け取った神官は無遠慮に布袋を開くと、中の金額を確かめている。もし日本の神社やお寺でやったらネットに晒されて大炎上しそうな光景だが、サルタナさんは気にする様子もなく金額の確認が終わるのを待っている。商いの神の神殿だけあって、金銭のやり取りはばっちり明瞭に行うということなのだろうか。「さすがは第三位階の聖印をお持ちの方ですな。たしかに預かりました。奥の部屋にお通ししますのでいらしてください」 布袋から顔を上げた神官が満面の笑みでわたしたちを案内してくれる。これ、もし少額だったらすっごい塩対応をされたりしたんだろうか。 テーブルがひとつ置かれた小部屋に通され、しばらく待っていると先ほどとは違う男の子が冷たいエールとお茶請けのお菓子を届けに来た。紹介できる商人の名鑑があるので、それの準備をしている間待っていて欲しいとのこと。なるほど、こうやって情報収集をしようとしていたのか。よくあるファンタジーでたとえるなら、商人ギルド的な役割をこの神殿が担っているのかな。 お茶請けの菓子は焼き菓子だった。薄く伸ばした生地を巻いて焼き、全体に砂糖がまぶされている。正直、エールには合わないが単体ではなかなか美味い。 お菓子をもそもそと食べてい
last updateLast Updated : 2026-07-13
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