「うーん、めぼしいものはなかったねえ」「そうですねえ。麓の町よりはずっと大きい街みたいですけど……」 酒場の一角でテーブルを挟んでジョッキを傾けているのはわたしとミリーちゃんだ。ジョッキの中身はエールである。薄めた甘酒のようでまあ一応美味しくはあるのだが、ショッピングセンターで生ビールの味を思い出してしまったわたしには正直物足りない。 ちなみに、エールは平地で穫れる小麦を発酵させて作っており、人間の住んでいる地域では広く飲まれているそうだ。これに特殊な香料を加え、さらに熟成させたものが天突く岩で飲まれていたエンペールである。 交易都市に到着次第、わたしたちは宿を押さえるとさっそく商店や露店が集まる通りへと向かった。案内してくれたサルタナさんは、付き合いのある商会へと挨拶回りをするとのことで一旦別行動をしている。サツマイモだのジャガイモだのといった地球の食材を知っているのはわたししかいないので、それが効率的だろう。 そんなわけで数時間かけていろいろなお店を見て回ったのだが……残念ながら、ドワーフ村で育ちそうな作物は見つけることができなかった。というか、想像していたよりもずっと品揃えが少ない。麓の町でも手に入りそうな見慣れた食材ばかりだったのだ。「お待たせいたしました。何かめぼしいものは見つかりましたか?」「あっ、サルタナさん。それがなんにも……」 挨拶回りを済ませたのか、サルタナさんがやってきた。「サルタナさんの方はどうでした?」と聞き返すと、青髪を横に振る。「残念ながらこちらも収穫はございません。どうやら、皇都が滅んだ関係でこの街もすっかり景気が悪くなってしまったそうで……珍しい産品もあまり集まらないようなのです」 サルタナさんによると、もともと交易都市は皇都という一大消費地の近くに位置していたことで発展したのだそうだ。いまでは商売のメッカと言えば第二皇都になっているらしい。第二皇都とは、瘴気領域の拡大を危惧した先皇帝の代から建設が進められていた都市だそうで、皇都が滅んでからは完全に首都機能をそちらに移しているらしい。 それなら「第二」とかまどろっこしい呼称はやめればいいと思うのだが、それでは緑の魔王に屈して皇都を取り返すことを諦めたようで国としての沽券が保てない……ということらしい。偉い人は守らなけ
Last Updated : 2026-07-13 Read more