บททั้งหมดของ 三十路OL、セーラー服で異世界転移 ~ゴブリンの嫁になるか魔王的な存在を倒すか二択を迫られてます~: บทที่ 41 - บทที่ 50

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第三十八話 お金にならない研究なんて、そうそう手を出したがる人は多くない

「瘴気領域とは何か……でございますか。改めて尋ねられると難しい質問ですね」「ンな難しいことはねえだろうよ。どこまで行っても不毛で、たまに魔物が現れる。軽い気持ちで近づくと大やけどするってだけおぼえときゃあ不自由はねえよ」 サルタナさんと酔っぱらいの反応が対照的だ。普通に暮らしていくだけなら、たしかに酔っぱらいの言うことが正しいのだろう。だが、わたしたちはこれからその瘴気領域を突っ切らなければならないのだ。「わたくしは専門外でしたので詳しくは存じませんが、魔術師からは汚れた魔素が溜まった地、神学の立場からは遥か古代に倒れた邪神の呪いの残滓……などと言われているようでございます」 そういえばサルタナさんは、緑の魔王によって滅んだという皇都で勉強していたインテリだった。瘴気領域というのは人類社会の大敵らしいし、研究が進んでいて当然だろう。「しかし、まだまだ不明なことばかりではっきりしたことは何もわからない……というのが実情のようでございますね。調査には危険も伴いますし、直接の利益が見込める研究でもありませんから。予算もあまりなかったようでございます」 ありゃま、あっさり肩透かしだ。思い返してみれば、地球でも温暖化やら環境汚染の研究が進んだのはごく近年に入ってからのことだった。危ない上にお金にならない研究なんて、そうそう手を出したがる人は多くないのだろう。 あの女神モドキから「使命」なるものを授かってしまっているので真正面から向き合わざるを得ないが、それさえなければわたしだって無関心を貫いたんじゃないかと思う。「おう、ねえちゃんの言うとおりだ。瘴気を吸うだけで寿命が縮まるっつうし、畑も作れねえ。どこの領主様だって瘴気領域になんざ興味ねえだろうよ」 おれらみたいな冒険者は別だがな、と酔っぱらいがやけくそ気味に笑う。 瘴気というのはドワーフ村にあの怪物が現れたときの異臭のことだろう。たしかに、あんなものを吸い続けていたら寿命が縮まっても不思議はない気がする。「このあたりに出る魔物はお金にならないんですか?」「このへんのゴブリンはなあ、魔石ぐらいしか売れる素材が取れねえんだよ。よーく脂がついてるから昔はそれが売れたんだが……いまじゃもっぱらアレだからな」 と、酔っぱらいが向けた視線の先には酒場の照明がある。あれも光輝石とか言うもので光っているのだろう。
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第三十九話 この世界ゴブリンの亜種が豊富すぎるだろ

 どこまでも見渡す限り真っ平らな荒野をわたしたちは歩いている。振り返れば街が見えたのはもうとっくに前のことだ。はじめのうちは草むらを踏みつけたような獣道を歩いていたのだが、いまではそれもない。瘴気領域に向かう者など魔物狩りをする冒険者くらいのもので、まともな道を敷こうという酔狂な施政者もいないのだ。 街を離れるにつれて……つまり、瘴気領域に近づくにつれて、植生がどんどん貧相になっている。まばらにやたらとトゲトゲした植物が生えているだけだ。あの女神モドキが瘴気が世界に満ちると生き物が全滅してしまうと言っていたことをいまさらながらに思い出す。そんな重大なことに対抗する使命をこんな三十路OLに与えようと思ったのかまったくもって理解できない。いや、ぜんぜん期待されてなさそうだったけど。 先ほどの街までは馬車で移動していたにも関わらず、なぜこうして徒歩移動をしているのかと言えば、単純に道が悪くて馬車が使えないためだ。また、地を這う稲妻号は大食漢である。街道を往く途中は、所々に設置された駅や街で飼い葉も水もふんだんに与えられたので問題なかったが、雑草すらろくに生えていない瘴気領域に入ってはそれも望めない。 ちなみに、駅と言っても現代日本のような電車が止まる駅ではない。この世界における駅は、馬車や旅人向けに設置された有料の休憩所のようなものだ。簡素な作りの小屋に、食料や水、飼い葉などが備えられている。領主が派遣した兵士がその見張りをしていて、それらの物資と安全を少々お高めの値段で売ってくれるというわけだ。「ご主人、地面から不審な震動です。真正面、2メートル先」「みんな止まって!」 セーラー服君からの警告に全員が足を止める。釣って実物を確認しておくべきか、迂回して安全を図るべきか。ひとまず背負っていた黒い戦鎚を手に構える。ミリーちゃんも同じく槌を、サルタナさんは片手にナイフを構えて戦闘態勢に入る。迷っているうちに、目の前の地面がもごもごと盛り上がってきた。「ピギャーーー!」「うぎゃーーー!」 土を跳ね飛ばしながら地面から現れたのはブタを二足で立たせて全身をしわくちゃにしたような怪物だった。全身の所々から不規則に黒い剛毛が生えている。ちなみに先ほどの叫びは前者がこの怪物のもので、後者がわたしが上げたもの。いやだって、事前に聞いてたからってキモすぎますよこれは。「
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第四十話 投げると煙とともにおうちが出てくる謎のカプセル

 野営と言っても、投げると煙とともにおうちが出てくる謎のカプセルもないし、女ひとりでも簡単に張れるテントのような便利グッズもない。毛布を敷き、そこに寝転がって疲れを癒やすだけである。 わたしが背負っていた毛布を広げようとすると、ミリーちゃんがちょっと待ってくださいね、と止めてきた。ミリーちゃんは地面に手をかざすと、「地霊様……お願いします」とつぶやく。おお、これはひょっとして魔法的なことをしているのか。 何が起きるのかとドキドキしていると……ありゃ、何も起きないぞ? こういうのはパァーッと光って石造りのおうちが出来上がってたりするんじゃないの? もしかして失敗したのかな。「さ、みさきさん。ここに毛布を敷いてください」 しかし、ミリーちゃんは意に介した様子もない。ドワーフに伝わる野営の時のおまじない程度のことだったのかな。言われたとおりに毛布を敷き、腰を下ろす。「あれ? なんだか柔らかい?」「はい、地霊様にお願いをして、ここの地面を柔らかくしてもらったんです」 ほほー、地味ながらそれは助かるなあ。日本時代、キャンプブームに毒された友達に無理やり連れられて山に行き、寝袋で地面に直接寝たことがあるがあれは辛かった。地面から冷えが伝わってくるし、硬くて寝心地が悪いなんてものではなく、朝起きると全身がバッキバキになるのだ。 それに比べると、ミリーちゃんが柔らかくしてくれた地面はウレタンマットのような弾力で実に丁度いい。なるほど、地潜りゴブリンが使っていた魔法的な何かも、この延長線上にあるのだろう。「これだけのことを一瞬でできるとは。さすがはミリー様も天突く岩の氏族の一員でございますね」 毛布越しに伝わる地面の感触を確かめながらサルタナさんが感心している。地味ながら魔法としてはなかなか高等なことをしてたってことだろうか。でも、土魔法っていうと石壁を作って防御したり、石弾を飛ばして攻撃するようなイメージがあるんだけどな。「オババ様ならきっとできると思いますけど……私じゃまだまだ力不足で」 あ、いかん。ミリーちゃんが少ししょげてしまった。そういうつもりじゃなかったんだよ。ほら、この鶏ジャーキーをお食べ。「地霊様は留まり固まる性質が本分でございますからねえ。それを動かすのは並大抵のことではございません。それにミリー様もこれだけ地面を柔らかくでき
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第四十一話 金色の野に降り立つ少女が身につけていたものを彷彿とさせる

 野営の間は交代で見張りを立てる……のが定番であると思うが、わたしたちの場合は必要がない。索敵能力ではセーラー服君がダントツな上に、こいつは眠る必要がない。これまでの道中で現れた地潜りゴブリンを完璧に察知していたのを見ているので、サルタナさん的にも不安はない。「これはもしかすると、かなり高位の魔道具なのではございませんか?」 とか、サルタナさんが尋ねてきたけれどおばあちゃんの形見でもらったものなのでよくわかりませーんとすっとぼける。これはローガンさんのミスリル槌以上に売ることが許されない代物で、買い取りたいなんて言われたら困ってしまう。なにしろ文字通りの生命線である。セーラー服を脱いだら、肉体強化や言語翻訳ができなくなるどころではなく、呼吸ができるかすら怪しいのだ。 何か危険が近づいてきたら起こしてちょ、ということで三人ともぐっすり就寝だ。一日歩いた疲れが睡眠導入剤となって、夜の女子トーク的なものに花が咲くこともなくあっさり入眠。いや、夜とは言ってみたものの、空には複数の太陽と太陰が変わらずにあるのだけれど。 そして翌日。東の雷鳴の少し前くらいに自然に目が覚める。わたしも完全にこの世界の生活サイクルに馴染んできたようだ。以前に確認してみたのだが、セーラー服君によると雷鳴の間隔は地球時間にすると七時間強といったところらしい。つまり、一日二十八時間。地球より微妙に……いや、けっこう長いが、もはやそれほどの違和感はない。人間の適応力とは偉大である。 またお湯を沸かして、野菜ブロックスープと石パンの食事を済ませたら出発だ。サルタナさんによると、もう少し進めば瘴気領域とされる辺りに入るらしい。人外の地なので、「ここから瘴気領域です」という標識があるわけもなく、なんとなくこの辺から瘴気領域だよねー、という程度の共通認識があるだけのようだが。「たしかに検出される瘴気の濃度が高まっています。そろそろ口当てをされた方がよいかと」「まだ臭いは感じませんが……もう瘴気が漂っているのでございますね」 セーラー服君に言われ、サルタナさんが荷から取り出したマスクを全員が身につける。マスクと言っても現代日本にあったような不織布製のものなどではもちろんない。革製の口当ての左右に突起がついたガスマスクのようなものだ。 金色の野に降り立つ国民的アニメ映画の少女が身につけていたものを
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第四十二話 地潜りゴブリンの十倍はキモいし怖い

 体高は普通の地潜りゴブリンの軽く数倍以上。ブタを直立させたような大まかなシルエットは変わりないが、全身のあちこちからミミズのような触手が生えてのたくっている。そして何より普通と異なっていたのは下半身だ。腹のあたりから下が乾いたミミズのような形状になっており、不気味に蠕動を繰り返している。均等な間隔で体節があり、その隙間からは尖った針のような剛毛が不規則に突き出していた。その先は地面に隠れたままであり、全身は確認できない。 率直に言って、地潜りゴブリンの十倍はキモいし怖い。 呆気にとられながら観察していると……あ、まずい。そんなことをしている場合じゃない。「ひとまず! 逃げよう!」 二人に声をかけつつ、さっさと駆け出す。残り二匹の地潜りゴブリンたちはそれぞれ進路を変えて逃げ去っているからそちらを追ってくれればいいが、あの怪物の標的がこちらに移ったらたいへんだ。なんかさっき一瞬目が合った気もするし。気のせいかもしれないけれど。気のせいだといいなと思うけど。 全力疾走しながらちらちらと振り返って確認すると、先ほどの怪物の姿はもうどこにも見当たらない。地面に潜ったのか?「セーラー服! 探知できる!?」「巨体の割に震動は微弱ですが可能ですね。こちらに向かって真っ直ぐ地中を進んでいるようです」 のおおおおお!! なんでこういう悪い予感ばっかり当たるかな!? 何事もなく瘴気領域を抜けました。めでたしめでたし、ちゃんちゃんとはならないのか!?「ご主人、もうすぐ追いつかれます。小生が合図に合わせて右に飛んでください」「りょぉぉぉおおかいぃぃぃいいい!」 あんなのに地下からいきなり襲われたら手も足も出なかっただろう。いてよかったぜ、セーラー服君。みんなも異世界転移するときはセーラー服を忘れんなよ! くだらないことを考えて恐怖を打ち消しつつ、ミリーちゃんとサルタナさんに手が届くよう位置取りを修正する。「もうすぐです。3、2、1、いま!」 セーラー服君の合図とともに、二人を掴んで横に飛ぶ。背後から風圧。転げそうになりながらなんとか着地。振り返るとそこには土煙の中に立つ見上げんばかりの巨体があった。必殺の奇襲を外されて悔しいのか、ブギィィィイイイ!! と濁った雄叫びを上げている。「ご主人、移動速度から計算しますと、この怪物から逃げ切るのは不可能
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第四十三話 グロさを増すための飾りじゃなかったってわけか

「ご主人、来ます。真下です」「くっそ! これで何回目よ!」 ミリーちゃんとサルタナさんを抱えたわたしが飛び退くと、先ほどまで立っていた地面が吹き飛び、中からあのデカブツが現れる。全身が宙に飛び上がるほどの勢いで現れたそれは、そのまま弧を描いて再び地面へと潜り込んでいく。 そう、デカブツが取った戦法は地上での殴り合いを避け、徹底的に地中からの攻撃をするというものだった。ミリーちゃんやサルタナさんを狙われた場合、躱せるかどうかわからない。そこでわたしが二人を抱えてぴょこんぴょこんと跳び回っているというわけだ。「でも、こんなのがいつまでも続けられたら……」 正直、すでに結構きつい。息が上がりはじめているし、全身が汗まみれだ。動ける体力が残っているうちにセーラー鎧モードを解禁して一気に勝負をかけるべきだろうか。「次、試してみます!」 わたしが悩んでいるうちに、ミリーちゃんが何か思いついたようだ。「来ます、真下です」 一拍置いてセーラー服の警告。再び跳び退き、地面が爆発する。怪物が地中に消える前に、ミリーちゃんが叫んだ。「地霊様! お願いします!」 デカブツが飛び込もうとしている先の地面がカッと光を放つ。おお、本気モードだとエフェクトが付くのか! デカブツがそこに激突し、どおおおんと地響きがする。デカブツは痛みに苦しんでいるのか、混乱しているのか、地下に消えず地上をのたうっている。 いまがチャンスとばかりに二人を放し、デカブツに向かって一直線に駆け出す。なんとか眉間に一撃を叩き込めればきっとなんとかなる……と思いたい。だが悩んだところでしかたがない。現状を切り抜けられる可能性があるのはそれだけだ。接近するわたしに気づいたデカブツがしっぽを振るう。リスク覚悟で前方に跳躍して回避。デカブツの頭へと飛びかかる。それを叩き落とそうとデカブツが右腕を振り回す。迫りくるそれに戦鎚を叩きつけて上方に方向転換。わたしは怪物の頭上に舞い上がった。「これでッ! くたばれぇぇぇえええ!!」 気合と共に渾身の力を込めて戦鎚を振り下ろす。狙う先はもちろん眉間だ。いやいやをするようにデカブツが顔を振る。くそっ、これじゃ当たらないどころか――「ぐあっ!」 デカブツの豚鼻に弾き飛ばされる。大丈夫。ブロックは間に合った。ダメージは浅い。空中で姿勢を立
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第四十四話 眠りを邪魔するやつはこのメガネチャンダイオーが許さん!

 セーラー鎧が光の粒子になり、元のセーラー服へと戻る。全身の力が抜けて思わずへたり込む。うわ、べちゃって。血まみれのデカブツの顔の上に座ってしまった。凹むわー。ふらふらと立ち上がり、地上波アニメならモザイク必須の何かから飛び降りる。以前セーラー鎧モードが終わったときは気絶してしまったが、いまではわたし本体も体力がついたのだ。そんな情けないことにはならない。 あ、つかこれちゃんと死んだよね? このあと背後から襲ってくるとかないよね? 振り向いて確認してみる。泥縄の硬化はすでに解けており、怪物の全身に残った湿った土にだけその形跡が残されている。拘束が解けても動き出す気配はない。死亡確認である。 ……あれ? いまあっちの触手がぴくって? いやいやいや、死後硬直とか目の錯覚とかそういうやつだ。そうに違いない。 自分に言い聞かせつつ、身体に鞭打って二人のところに戻る。ミリーちゃんもサルタナさんもかなり疲弊しているようで、地面にへたり込んで荒い息をついていた。「○△みさき×※×、×□※※×■■?」「○※×■みさき、□※△■※×■○」 あー、しまった。セーラー服君が寝てると言葉がわからん。スカーフをちょいちょいと引っ張ってみるがまるで反応がない。そりゃそうっすよね。さっきエネルギー切れになったばかりだ。セーラー服君が再起動したら、辺境出身だから実はこのへんの言葉わかんなくて、魔道具的なアレで翻訳してたんですーということにしてしまおう。いやあながち間違いではないのか。 ともあれ、こんなところに長居はしたくない。少し休憩したら身振り手振りで移動を提案……あ、待て。動くよりもこの場にいた方がいい可能性も? あのデカブツは地潜りゴブリンの天敵だったわけだし、しばらくはこのへんには近寄ってこなそうな気もする。 あれこれ考えつつ、とりあえず口の前でバッテンを作って「あいきゃんとすぴーくいんぐりっしゅ」とか言ってみる。続けてセーラー服を引っ張って、首を振る。そして再び「あいきゃんとすぴーくいんぐりっしゅ」と言うとなんとなく納得したような顔になってくれた。さすがは奇跡も魔法もある世界。異常事態への順応が速い。いや、魔法はともかく奇跡があるかは知らんけど。 とりあえずちょっと休もーぜーということで腰を下ろす。全身デカブツの返り血でドロドロだが、致し方ない。とにかくいまは体力の回
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第四十五話 地下に潜ることさえ許されない終わることのない連撃

 大怪獣の横に降り立った白い巨人……いや、もう特撮ロボのほうがしっくりくるな。特撮ロボは、頭部を燃やされて混乱する大怪獣に向かって打ち上げ気味の左フックを放つ。力任せの大ぶりだ。 一見、ノロノロした打撃に見えるが、拳の周辺に円形の雲が発生してる。あー、これあれですね。ソニックブームってやつですね。戦闘機とかが音速を超えると生じるやつですね。スケール感が違いすぎて、速度の目測さえ大幅に誤るレベルなのだ。 音速の打撃はごごーんという重低音とともに大怪獣の脇腹に突き刺さる。うわ、やっば、あの何百トンあるのかもわからない巨体が一瞬浮いた。大怪獣は呻きながらたたらを踏む。そこに一歩距離を詰め、今度は反対の脇に特撮ロボの右拳が突き刺さる。ごばぁっと大怪獣の口から粘液が吐き出される。うっわー、脇腹打ちの二連打。これは効きますわー。って、あの大怪獣に人体構造を当てはめていいのかわからんけど。 突然、わたしの両手が引かれる。ミリーちゃんとサルタナさんが蒼白な顔でわたしを引きずろうとしていた。あっ、まずい。あまりに非現実的な光景に思わず観戦モードに入ってしまった。こんな戦いに巻き込まれたら一瞬でぷちっだ。慌てて立ち上がり、大怪獣vs特撮ロボの戦いに背を向けてよろよろと駆け出す。 駆けている間も、背中から伝わる轟音。身体が浮きそうになるほどの震動は終わらない。たいへん馬鹿みたいな表現で恐縮だが、ぼごーん、どがーん、ずしーんって感じだ。体感したことのない現象に、脳内で理解するための語彙が追いつかない。もし、大砲が無数に撃ち込まれる塹壕の中にいたとしたら、こんな気分が味わえるのだろうか。絶対イヤだけど。 ちらちらと振り返ると、大怪獣はひと目で分かるほどにふらふらになってた。地下に潜って逃げようという素振りは見えるが、そのたびに特撮ロボの拳が撃ち込まれているようだ。ああ、なるほど、それで打ち上げ気味の打撃ばっかりだったのか。地下に潜ることさえ許されない終わることのない連撃だったというわけだ。『そろそろトドメかな?』『いや、もうちょっと弱らせておこうよ』『うん、今回は絶対逃げられないようにしよ!』 特撮ロボからまた女の子ふたりの声が響き渡る。 特撮ロボはその両手で大怪獣の頭を捕まえて引き込むと、今度は猛然と膝蹴りを打ち込みはじめた。腹、腹、腹、腹、腹、腹。大怪獣の腹は元の色
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第四十六話 セーラー服を着る権利を本来ならとっくに失ってる人間

 わたしたちはいまおしゃれな喫茶店で冷たい紅茶を飲んでいる。 これは比喩ではなく、文字通りの喫茶店だ。田舎にできると行列ができ、都会ではおしゃれノートパソコンでこれみよがしに作業する人が散見され、やたら長い呪文のようなカスタムメニューが頼めるあのお店だった。 ここでは瘴気も完全にフィルタリングされているそうなので、マスクも外している。恐る恐る臭いを確かめたが、あの独特の異臭はまったく感じなかった。 腰くらいの高さのドラム缶にマジックハンドを付けたようなロボットが持ってきたフルーツの香りがするアイスティーを、ミリーちゃんとサルタナさんがおっかなびっくりストローで飲んでいる。二人とも、わたしが飲んでいるのを見て飲み方を理解したようだ。「※■△みさき△○、××※□□△○」 ミリーちゃんが話しかけてくるが、セーラー服君がまだおねむなので内容がわからない。わたしは「ごめん、わからない」という意思を込めてジェスチャーを返すと心細そうに肩を落とした。一体ここはどんなところなのか、まったくわからないのだろう。わたしだって、瘴気領域のど真ん中に、いや、この異世界になぜこんなものがあるのかさっぱり想像がつかない。「お待たせしました。一息つけましたか?」「あっ、はい。おかげさまで……」 突然声をかけられ、慌てて返事を返す。いまのは日本語だ。そしてやってきたのはセーラー服を着た二人の女の子。年頃は……リアル女子高生? 一人は両サイドを三編みにしたお下げ髪でメガネをかけている。もうひとりは長い前髪で目が隠れており、メガネの子の後ろを隠れるように歩いている。「スーパー銭湯もあるので、落ち着いたらゆっくり汗を流してください。でも、その前に少しお話させてもらえますか?」 メガネの子と目が隠れた子がテーブルを挟んだ向こう側に座る。ドラム缶ロボがまた現れ、すかさずアイスティーをふたつ置いた。「コーヒーはこっちの世界の人には慣れないらしくて。始めは勝手にアイスティーにしちゃうんですけど、大丈夫でした?」「あ、はい。もちろん。こんなもの飲めるなんて思わなかったですし」 メガネの子が微笑みながら気遣ってくれるが、こちらとしては飲み物にこだわれるような心境ではない。何が何やらわからなすぎて、何から聞いていいかわからないのだ。だがしかし
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第四十七話 脳の形と記憶を丸ごとアインシュタインと同じものに

 セーラー服を着ているのは決して趣味じゃないということを、異世界転移の顛末を手短に……っていうか手短にしか話せんわ。大した内容がない。一方的にセーラー服と無茶苦茶な使命を押し付けられただけで、質疑応答もろくにできなかった。「私たちの時とはぜんぜん違いますね……。私たちの場合は、一応質問には答えてくれたし、チートも希望のものがなんでももらえました」「……なんか雑だった。アインシュタインとか」 おい、マジでわたしとぜんぜん待遇が違うな。っていうかアインシュタイン?「天才にして欲しいって言った子が、脳の形と記憶を丸ごとアインシュタインと同じものにされたんです」 は? それじゃアインシュタインが転生したのと同じことじゃない!?「魂が違うから、別物になるって言ってましたね。正直、ピンときませんけど」「……メガネちゃんがわからないことは、あたしもわからない」 魂か……急に哲学? 神学? 的な話題が来たな。もちろんわたしにもさっぱりわからない。「それで、メガネちゃんかメカクレちゃんがもらったチートが、この……ショッピングセンターってこと?」「はい、のんびり本を読んで暮らしたいな、と思って」「……あたしはメガネちゃんに着いてきただけ」 そう、ずいぶん引っ張ったが、わたしたちがいるのはショッピングセンターの一角にある喫茶店だったのだ。「セーラー服なんで?」の後、目の前の特撮ロボットががしょんがしょんと音を立てて変形し、そこに現れたのがショッピングセンターだった。そしてやってきたドラム缶ロボに喫茶店まで案内されたのである。 地方都市では地元商店街キラーとして恐れられることもあれば、老若男女に愛されるテーマパーク的存在にもなるショッピングセンターだ。そういえば、思い返すと特撮ロボットの胸のあたりに施設名を表すロゴの看板がついていた。 他にも全身のあちこちに看板のようなものがあったので、冷静に観察すればあのロボが商店の集合体でできていることに気がつけたかもしれない。まあ、あの状況で冷静になれる人がいたらお目にかかってみたいが。「まだまだ情報交換をしたいところですが……キリがないので、一旦お風呂にしますか?」「……血まみれセーラー服、サイコ感すごい」 つい話に夢中になってしまったが、改めて自分たちの姿を見るとひどいも
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