年の瀬もやや押し迫ってきた頃。 行き交う人々が少々足早になるその季節、商店街の一角に間田木食堂はある。 何の因果か悪霊や妖怪のたぐいが引き寄せられ、それを料理で祓ってしまうと噂の謎多き店だ。 その間田木食堂に、悩める男が今日もまたひとり――「ぜったいにこれは悪霊の仕業なんだ! もったいつけないで助けてくれ!」「ンなこと言われましてもね、ここは単なる定食屋で、あっしはただの料理人でして」「うう……どこの除霊師に頼んでも霊なんかついていないと言われ、噂に聞いたこの店だけが最後の頼みだったのに……」「あー、わかんねえっすけど、それなら悪霊がついてなくてよかったじゃありやせんか?」「よくないっ! それでは僕の悩みが解決しない!」「はぁ、うちはお悩み相談所のたぐいでもないんですけどねえ」 カウンターを挟んで、ベレー帽をかぶった男と赤髪の女――間田木リョウコがなにやら話している。 男の表情は必死そのものだが、対するリョウコは困惑している。リョウコには霊感などないし、過去に除霊を手伝ったのも成り行き上のことである。除霊師の間で店の噂が広まっているとは聞いていたが、こんな客に来られても対応のしようがないのだ。「悪霊は、この中に――あれ、今日はいないですね」「おお、トウカ。いいところに来た。このお兄さんの相談に乗ってやってくれよ」 ガラリと引き戸を開けて現れた巫女服の少女は稲荷屋トウカ。 黙っていれば日本人形のような愛らしい美少女なのだが、美味そうな料理を見るとよだれを垂らす食いしん坊と化すのが玉に瑕だ。本職の除霊師であるトウカがやってきたので、リョウコはこれ幸いとバトンタッチすることにした。「なんです、悪霊関連の相談ですか?」「あ、あんたはこの女の弟子っていう新米除霊師だな! 除霊師ランキングにも載っていた!」「えへへ、新人除霊師ランキング第4位の稲荷屋トウカです。リョウコさんの弟子っていうのはちょっと違うんですけど」「細かいことはどうでもいい、僕に憑いた悪霊を祓ってくれ!」 すがりついてくる男に、トウカもまた困惑する。男には、悪霊の気配など微塵も感じられないからだ。 リョウコに視線を送ると、「こういうわけだからよろしく頼むわ」という表情をしている。トウカは「ひとつ貸しですよ」という意味のことを目顔で返した。「ええっと、まずは具体的に
最終更新日 : 2026-07-13 続きを読む