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ジリ貧生活

Auteur: 七海飛鳥
last update Date de publication: 2026-07-19 22:30:32

あれから2年が経った。僕はどうやらチーズル帝国に売られたようだ。大国、セオドア王国への対抗策として、チーズル―オケディア間の同盟の印に。

僕はチーズル帝国に使い潰されていた。寝る暇もなく。ただただ無感情に敵を殺す。

僕は吸血鬼なので、血を吸わないと吸血衝動で狂ってしまう。

それでもなお、僕が飲むための血は与えられなかった。

僕は喉の渇きを常に感じていた。どうしようもない衝動に身を任せる前に、戦場で血を飲み、衝動をしずめる。

こんな生活がいつまでも続くとは到底思えなかった。いつかは吸血衝動で狂い死ぬ。それか任務失敗時の自害、または処刑だ。

まだ任務を失敗させたことはない。でもそれは、薄氷の上を歩くような綱渡り。取れない疲労を抱えた体では、いつか近い内に失敗する。

僕の未来は死以外ありえない。どんなに06や04が手を尽くしたとしても。体はとうに限界を迎えている筈だ。

王族の親族でしかない司令官が、僕に横柄に命令した。

「死神、セオドア国王と王太子を暗殺しろ。これは絶対だ。そして、王子王女も殺せ。王族は一人残らず、だ」

僕は頷いた。

「チッ、陰気臭ェなァ!!」

そう言いながら拳を大きく振りかぶり、僕を殴る。普通に避けれるほど遅いパンチではあったものの、僕はそれを敢えて受けた。こうしなければただじゃ済まないからだ。

僕は殴られた衝撃で倒れこむ。男は、それで満足したのか、さっさとこの場を後にしていた。

僕はセオドア王国へ不法入国し、王城に潜り込む準備をした。

セオドア王国の警備はかなり厳しい。どう考えても長期戦になりそうだが、1年以内という期限が設けられた。

それから早数か月。僕は無事にセオドア王国に入国し、王城に使用人として潜り込むことに成功していた。

僕の赤と金が所々に混ざった黒髪と、黒に限りなく近い深緑は、遠目から見ると双黒に見える。

黒――特に双黒――は珍しく、中々に人目を引く。

しかも髪色が二色以上の者はまずいない。目立ってしょうがない。

なので、髪や瞳の色を、どこにでもいそうなくすんだ赤髪と茶色の瞳にした。

気弱な印象を持つ、どことなく地味な少年がそこにいた。

彼は話・せ・な・い・ながらも、懸命に仕事に取り組み、職場での信頼を勝ち取っていた。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「ああ、いたいた。アル、これを蔵書室まで運んでおいてくれないか?俺はダンスホール前の廊下を掃除しなきゃいけないからな。頼んだぞ」

廊下を歩いていると、同僚に声をかけられた。到底細身の人間には持てない量だ。同年代より背の低い僕は、すっかり前が見えなくなってしまう程の量だが、大量の本を持つ僕は、体を鍛えるのが日課らしい、目の前の同僚よりも安定していた。

最初は、それにかなり驚かれたものだが、今はもう慣れており、当たり前のように持たされる。

同僚は、僕に感謝を告げながら、足早に立ち去った。

普段は優雅に振舞うことを念頭に置いている彼だが、今日はそのことを忘れているようだ。

――蔵書室とダンスホールは反対側だ。それなのに仕事を押し付けられたということは、案外仕事量が多いのかもしれない。

もう既に5つ位仕事を引き受けているが、僕は彼の頼み事も引き受ける。

決して彼がサボりたくて僕に仕事を押し付けたとかではなく、今日は、セオドア王国建国際の前日なのだ。

忙しさは向こう3日でピークを迎える。

そして、このだだっ広い王城を横断するのは効率が悪い。僕はたまたまそっちへ行く用もあったしで、断らなかった。

「大丈夫かい?」

蔵書室に入るや否や、僕に心配そうに話しかけたのは、蔵書室の司書であるシリル。

噂によれば、彼はこの蔵書室の中の本全てを覚えているらしい。内容からいつどこで、誰が書いたのかとか。

彼の問いに僕は頷いた。

「うん、無理しないでよ?いくら王太子様の推薦を受けた有能な君だって、まだ成人したてなんだからさ」

シリルは、穏やかな笑みを浮かべ、僕の頭を撫でた。

僕は15歳としてここにいるのだが、僕の背格好は人間の15歳のそれより少し小さい。

今セオドア王国は、九星がいるオケディア王国やそこから派・遣・された“鮮血の死神”がいるチーズル帝国とは、戦争状態だ。

なので、得体の知れない子供にも敏感になっている。

しかし、相手に勘違いを与えるために、僕“鮮血の死神”の情報は少し調べたら分かるようになっている。更に、そもそも吸血鬼は数が少ない。

なので、その存在は殆どの人間は“鮮血の死神”を、御伽噺の登場人物としてしか認識していないだろう。目の前の男がどうかは分からないが。

「じゃ、僕はこの本達を片付けておくから、アルは次の仕事に行っておいで」

僕は頷いて、シリルに持ってきた本たちを託す。そして僕は蔵書室を出て、次の仕事に取り掛かった。

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  • 必ず死ぬ君を救うには   九星の脅威

    Side Matthias「さて、緊急会議だ」 俺はジェシカを呼びつけ、今起こった緊急事態を説明する。ゲームの知識が必要かもしれないと思ったからだ。 「それって放置でいいんじゃない?アイン、強いよ」 「俺が嫌だ。それに、“丁重に扱う筈の捕虜”が行方不明。下手したら、国が消えるぞ?」 「え、そこまで!?」 九星は都市伝説じゃない。中には称号的な物と捉えている者もいるが、違う。一人一人が化物な、九人の軍人だ。“終焉の狂戦士”、“絶対零度の司令官”、“世界最高の鍛冶師”に会って分かった。全員化物じみた強さだ。“鮮血の死神”と呼ばれるアインがかなり手加減してくれていたのが分かる程には。 「九星って、そんなに強いの?私、ゲームに出てないことは分からないのよね……」 「九星は、一人で国を簡単に沈めることができる、九人の化物集団だ。それぞれに二つ名がある。 ただ、存在が機密扱いなのか、その情報は殆どが出回らない。分かるのは、一人一人の年齢、性別それと二つ名だ。名前は、アインのように最初からない者もいるだろうな」 「アインって、そんな立ち位置だったんだ……」 「フッ」 俺よりアインを知っているジェシカを驚かすことができ、正直気分がいい。 「九星はやると言ったらやる。それ程の力を持つ上に、元オケディア王国だ。こんな国、幾らでも如何こうする事ができる」 「オケディアは何か特別な意味が?」 「超古代国家なんだ。そんじょそこらの国とは一線を画す。――まあ、今はアインだ。一体どこにい……」 ふと、魔力を感じ、俺は言葉を止める。 「どうしたの?」 「覚えがある魔力が流れた」 「私には感じなかったけれど……」 当惑しながらジェシカはこちらを見る。微かではあったが、確かに流れた。 「で、これからどうすンだ、王太子サマ?」 「「は?」」 ここにいる筈のない声が上から降ってくる。スタ、と軽い音とともに現れたのは、オレンジの髪を持つ青年だった。頭には、鬼の証である黒い角が生えていた。 ――影は何しているんだ!! 心の中で、目の前の人物――“終焉の狂戦士”ラースを止められなかった隠密部隊に悪態をつく。 「アイツらか?もうちょっと訓練した方がいいンじゃねぇか?アインのヤツだと、アイツら制圧すンのに十秒あれば十分だぞ?」 「じゅ、十秒

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