로그인「さて、お前はこれからチーズルに向かえ。いいな?」
僕は頷く。 「ああ、それと、このことは誰にも「そりゃ、私たちがいるからこそ、あいつ等強く出てるだけなのよ。馬鹿の一つ覚えの様に周囲に喧嘩吹っ掛けまくってたら、いつか痛い目に合うのも知らずにね」
溜息を吐きつつ後ろから来た少女が立ち止まり、左手を腰に当てる。 彼女は淡緑色の髪を持つ青年が血相を変えて走っていた。
全体的に薄く、儚く見える。更にその青年が一部に濃茶の色を持つので、より現実味がない。それでいて他人を寄せ付けない冷徹な雰囲気は、その青年が確かにそこにいることを疑う余地がない。眼鏡を掛けているのも相まって、より冷徹に見える。 「大変だ」 青年は簡潔に仲間たちに伝える。 彼は冷静に見えるが、歯ぎしりしている様子から、感情を必死に抑えているのかわかる。 「何が大変なんだ?」 そう聞いてきたのは、茶髪の青年だ。彼は少し伸びた毛先に青銀の色を纏っている。 こちらも眼鏡を掛けているが、淡緑色の青年は冷酷、茶髪の青年は無愛想又は寡黙といった印象を受ける。 「01が消えた。もう手遅れだ。既にチーズルに入国している」 「もう一度言ってくれ。聞き間違いかもしれない」 茶髪の青年は頭を抱える。聞きたくないものを聞いてしまった風だ。 「01が消えた。もう既にチーズルに入国している」 「それを誰かには?」 「これから言う。――今まで立てていた計画がこれでおじゃんだ。全く、どこまでも邪魔してくる……!」 「落ち着け、06。それで、未来は」 テーブルに拳を打ち付け苛立つ淡緑色の青年――06を、茶髪の青年が落ち着かせる。06は息を大きく吐いて、自己を落ち着かせる。 「僕がこう行動するのが最善だった。――取り敢えず01は死なない。けれど扱き使われ過ぎて疲労困憊。今から約2年後、セオドア王国の国王の暗殺に失敗する。原因は睡眠不足と貧血。それから飢餓による思考の乱れだ」 「つまり01はチーズルの連中に寝る間も惜しんで暗殺仕事をさせられ、血も満足に飲めず、そしてついに体の限界が顕れてしまった、と」 「僕が感知したのは、セオドア王国の国王の暗殺失敗の瞬間だ。つまり、それが01の危機になる」 「死にはしないが、命の危機はあるって訳か……。それで06、俺はどうすればいい?」 「僕は「取り敢えず、02。色々と作戦を立て直す。07、話を聞きたければ、何も言わずじっとしてて」
「おう」 06は二人が頷いたのを確認して行動を起こす。 「これから未来を変えよう」 06の雪色の瞳が一瞬、七色に光った。Side Cyrilアルが蔵書室を出ていく。――一体彼は何者なんだ? アルはこの国の王太子、であり、僕の甥である、マティアス・ドゥ・セオドアに見初められて王城で働くことになった、見習いだ。 そこに居合わせた友人の話によると、マティを狙った暴漢を、彼が守ったらしい。どことなく物腰も丁寧で、マティに媚びようともしない。 見目麗しいマティは、女どころか男にまでアプローチを仕掛けられる。それにうんざりしていた彼は、自分に媚びない少年を面白く思ったのだろう。彼を王城で働かせることに決めた。その時は、王城は上へ下への大騒ぎだった。今強国2国と戦争状態のセオドアは、常に王族暗殺に警戒している。当然、少年暗殺者も視野に入れて。オケディアには、天才暗殺者がいるのだ。次々と対象を暗殺し、一度も失敗したことはない。それが商人の一家とか、残虐な弱小貴族だけならまだいい。戦争中、一度も警戒を怠らない軍の本拠地に潜り込み、大将の首だけを狩る。その間、不審な人物は誰も見なかったらしい。 ――もしアルが噂に聞く、“鮮血の死神”なら、この国は終わるね。 “鮮血の死神”はそこら辺の暗殺者とは訳が違う。歳は11だが、腕前は世界最高。暗殺者が最も苦手とする向かい合っての1対多ですら圧勝できる程。そもそも実力差がありすぎるのか、殺し方は至ってシンプル。毒などの搦め手はほとんど使わない。 そんな人物なら、どんな人間にでも成りすますことができるし、声が出せないというのも噓臭い。別人に成りすまされたら、声を聴いても同一人物と判断出来ないからだ。 ――それにしても、やはり兄上の言葉も気にかかる。 いくら王太子といえども、身元不明の少年を使用人に引き立てることはできない。そんなことができるのは、国王くらいだ。実際、揉めに揉めなかったのは、兄上の鶴の一声があってこそ。もし彼が暗殺者だったとしたら、今は絶対に尻尾は出せない。僕が同じ立場だったとしたら、不審すぎて罠を疑う。 「でも、アルが暗殺者という証拠もない」 もしかしたら運よく王城で働くことができた少年なのかもしれない。まあ、食わせ者の兄上が絡んだ時点でその可能性はなきに等しいが。成長期に差し掛かる年頃で、4歳も違うし。 ――もう少し観察してみるかな。 僕は彼を常日頃から警戒しているが、とても人を殺しているようには見えない。
あれから2年が経った。僕はどうやらチーズル帝国に売られたようだ。大国、セオドア王国への対抗策として、チーズル―オケディア間の同盟の印に。 僕はチーズル帝国に使い潰されていた。寝る暇もなく。ただただ無感情に敵を殺す。 僕は吸血鬼なので、血を吸わないと吸血衝動で狂ってしまう。 それでもなお、僕が飲むための血は与えられなかった。 僕は喉の渇きを常に感じていた。どうしようもない衝動に身を任せる前に、戦場で血を飲み、衝動をしずめる。 こんな生活がいつまでも続くとは到底思えなかった。いつかは吸血衝動で狂い死ぬ。それか任務失敗時の自害、または処刑だ。 まだ任務を失敗させたことはない。でもそれは、薄氷の上を歩くような綱渡り。取れない疲労を抱えた体では、いつか近い内に失敗する。僕の未来は死以外ありえない。どんなに06や04が手を尽くしたとしても。体はとうに限界を迎えている筈だ。 王族の親族でしかない司令官が、僕に横柄に命令した。「死神、セオドア国王と王太子を暗殺しろ。これは絶対だ。そして、王子王女も殺せ。王族は一人残らず、だ」 僕は頷いた。「チッ、陰気臭ェなァ!!」 そう言いながら拳を大きく振りかぶり、僕を殴る。普通に避けれるほど遅いパンチではあったものの、僕はそれを敢えて受けた。こうしなければただじゃ済まないからだ。僕は殴られた衝撃で倒れこむ。男は、それで満足したのか、さっさとこの場を後にしていた。僕はセオドア王国へ不法入国し、王城に潜り込む準備をした。 セオドア王国の警備はかなり厳しい。どう考えても長期戦になりそうだが、1年以内という期限が設けられた。 それから早数か月。僕は無事にセオドア王国に入国し、王城に使用人として潜り込むことに成功していた。 僕の赤と金が所々に混ざった黒髪と、黒に限りなく近い深緑は、遠目から見ると双黒に見える。黒――特に双黒――は珍しく、中々に人目を引く。 しかも髪色が二色以上の者はまずいない。目立ってしょうがない。 なので、髪や瞳の色を、どこにでもいそうなくすんだ赤髪と茶色の瞳にした。 気弱な印象を持つ、どことなく地味な少年がそこにいた。彼は話せないながらも、懸命に仕事に取り組み、職場での信頼を勝ち取っていた。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「ああ、いたいた。ア
「さて、お前はこれからチーズルに向かえ。いいな?」 僕は頷く。 「ああ、それと、このことは誰にも言うな。言えば……分かるな?」 僕は頷く。 「ではさっさと行け。ああ、国境の連中には話は通してある。九星の“鮮血の死神”が国境越えする、となあ?」 目の前の男が高笑いする。怖い。言うこと聞かなきゃ、鞭で叩かれる。 僕は男の前を去り、自分の割り当てられた部屋へ行く。殺風景な部屋だ。でも、誰かが隠れることができない空間だから、安心する。 僕は荷物を纏めた。最低限。大荷物にならないように。誰にもばれないように。ばれたら鞭で叩かれる。だって、僕はそもそも話すことができない。なのにああ言うっていうことは、僕への嫌がらせ。それと誰かにばれたら容赦なく鞭で説教するぞ、という意思表示。怖い。痛いのは嫌だ。それ以上に、あの男と鞭が怖い。 行かなきゃいけない。九星の皆と離れるのは嫌だけど、それ以上に怖い。痛い。 部屋から出ると、僕より少し背が高い、オレンジの短髪を持つ青年がいた。 「お、01!3日振りだな。元気だったか?」 僕は頷く。彼は05。14歳。僕とは5歳差。二つ名は、“終焉の狂戦士”。適性属性は火、土、闇、魔。僕と一番年が近くて、優しい兄のような存在だ。多分、今日前線から帰ってきたところだろう。 「やっぱ強いな、セオドア王国は。負けやしないンだが、兵士の損害が桁違いだ。全く、そもそも俺たちがいないと、真面に戦えない相手に、どうして喧嘩吹っ掛けるンだか」 溜息を吐きながら、05はぼやく。「そりゃ、私たちがいるからこそ、あいつ等強く出てるだけなのよ。馬鹿の一つ覚えの様に周囲に喧嘩吹っ掛けまくってたら、いつか痛い目に合うのも知らずにね」 溜息を吐きつつ後ろから来た少女が立ち止まり、左手を腰に当てる。 彼女は03。水色の髪は胸に届くか届かないかであり、毛先にかけて濃青のグラデーションがかかっている。16歳になった03は、段々と大人っぽくなっている。そんな03の二つ名は、“全色の魔術姫”。7歳差の03と05、僕と共に、九星の年少組と呼ばれていたりする。主に06に。 「というか、そもそも俺たちの存在が露見する方が拙い
Side soldier俺はオケディア王国の一兵卒だ。つい最近、軍に志願した。この国は昔、弱小国家で、戦争とは無縁の国だった。だからといって、平和ではない。ただ単に力を持たない弱者だっただけだ。それも今は昔。今は周囲の国家を腕っ節で従えられるほど強くなった。俺はそんな軍に憧れを抱き、最近ようやく夢が叶った、という訳だ。とある日の訓練の帰り道。豪華な城の中庭が見える回廊を、先輩と一緒に談笑しながら歩いていた。もうすっかり夜も更け、涼しい風が、頬をくすぐる。戦争が近いからと、いつもより熱が入った教官の愚痴を言いつつ、寮部屋に帰っていた時の出来事だった。「っと、危ないだろ、どこ見て歩いてんだ!」「……」俺は、ぶつかってきた腰の高さくらいしかない黒髪――所々に金と紅の髪が見えるが――の少年に文句を言った。その少年は俺を見上げ、じっと見つめる。長い前髪の所為で瞳は全く見えない。その上始終無言なので、薄気味悪かった。「な、なんだよ」「おい!お前!そこをどいて差し上げろ!その方は英雄様だぞ!」俺はその少年に気圧され、どもってしまう。しかし、それを悟られまいとしていると、先輩が、焦ったように俺の肩を引いた。俺は、肩に食い込む先輩の手に引っ張られ、通路の端に寄ってしまう。そして、先輩は俺の頭を掴み、一緒に頭を下げた。「失礼いたしました!ほら、お前も!」「し、失礼いたしました……」俺は、先輩に怒られ、渋々謝罪する。少年はそんな俺たちを一瞥すると、そのまま歩き去っていった。「あの、あの子供は一体……?軍服も見たことないものでしたが」ひどく鮮やかな深紅が、夜の涼やかな風ではためいたのが、俺の目を引き、少年の持つ雰囲気も相まってひどく不気味に思えた。俺がやや呆然としていると、先輩はあの少年について、説明してくれた。「あの方は、英雄様だ。一度戦場に出れば、その戦いは必ず勝ちになる。9人の天才のみで構成された部隊、九星を知っているか?」「いえ……」初めて聞く名だ。あすとろろじー?というか、たった一人で戦争を勝ちに導く存在など、いる訳がない。この国は、異能力者という、他国にはいない存在がいるが、それでもそこまでの能力はないのだ。「ああ、最近入ったのか。説明するとな、九星は一人一人がその辺の将軍より功績を挙げている、化物







