Todos os capítulos de 夫の浮気相手は、私の妹でした〜いまから夫の浮気を暴きます〜: Capítulo 21 - Capítulo 30

41 Capítulos

20話

12月7日に協議開始を依頼してから2週間後、12月21日、月曜日。弁護士事務所の会議室は、あっけないほど静かだった。窓の外の車の音も、エアコンの低い唸りも、ここでは他人事みたいに遠い。テーブルを挟んで、私と弁護士。向かいに、崇と、崇が急いで立てた弁護士。香織は、別室にいる。同席させないよう、私が最初に希望した。「では、始めます」私の弁護士が、ファイルを開いた。あの夜、私が指でめくった証拠の束が、いま、机の上で正式な資料になっている。……崇側の弁護士が、ファイルに目を通すごとに、表情を失っていくのがわかった。「……この状況では、争う余地は、正直、ほとんどありません」崇の弁護士が、崇に耳打ちする。崇は、うつむいたまま、何も言わなかった。「離婚の条件は、以下のとおりでよろしいですか」私の弁護士が、淡々と読み上げていく。「陽翔くんの親権者は美咲様とし、単独親権とします。養育費は月額6万円。財産分与は折半で……」数字が、次々と読み上げられる。不思議なくらい、心は動かなかった。感情を使う場面は、もう、済んでしまったのかもしれない。3カ月分の涙と絶望は、あの深夜のリビングで、使い切った。「慰謝料についてです」弁護士が、続けた。「崇様と香織様に、連帯して総額300万円を請求します」「300万……そんな額、すぐには無理だ」崇が初めて、顔を上げた。金額に驚いたのではない。その金額が、私の3カ月の痛みを、紙の上で消えない形にしたことに怯えているのだと思った。「あなたが決めたことではありません」私は崇を見た。「私たちの生活を壊すことを、あなたたちは2人で決めた。私は、壊されたものを元に戻せないから、責任の形を決めているだけです」300万円ずつ、二重に受け取るわけではない。同じ損害について、2人に連帯して支払いを求める。どちらがどれだけ負担するかは、2人の側で調整する。崇の弁護士が、口を挟んだ。「香織さんへの請求は、別件として……」「いいえ」私の弁護士は、動じなかった。「ホテルの利用履歴、調査報告書、写真があります。近しい親族による行為だった事情も含め、両名への連帯請求を維持します」香織にも、逃げ場はない。「……分割払いという形は、認められませんか」崇側の弁護士が、食い下がった。「一括でお願いします」私の弁護士が、間を置かず答えた
last updateÚltima atualização : 2026-08-23
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21話

年が明けた1月8日。離婚届の左半分は、拍子抜けするほど白かった。証拠を集めた約3カ月と、その後の協議を経て辿り着いた場所に、こんなに簡素な紙が待っているとは思わなかった。夫の欄。妻の欄。証人の欄。どれも、驚くほど小さい。窓口の職員は、私たちの事情など知る由もなく、記載内容を事務的に確認した。「以上で、手続きは完了です」拍子抜けするほど、あっけなかった。役所を出て、崇と、並んで歩いた。もう夫婦じゃない2人が、同じ方向に歩くのは、なんだか妙な感じがした。「……色々、悪かった」崇が、ぽつりと言った。「うん」それ以上、言葉は続かなかった。私も、続けなかった。この人との会話は、もう、これで十分だった。……その日の夜、私は【本日、離婚届を提出しました】とだけ投稿した。その投稿を見たフォロワーから、ぽつぽつとメッセージが届いた。【離婚届、提出済んだんですね。お疲れさまでした】 【区切りの日、おめでとうって言っていいのかな。とにかく、おつかれさま】まる子さんからも、短い一言があった。【新しい朝ですね】新しい朝。その言葉を、私はしばらく、画面の中で見つめていた。数日後の夜、崇本人からLINEが来た。【調査が入った。韓国の件も、ゴルフの精算も、全部洗われてる】【たぶん、出向になる。地方の子会社だ】【美咲。俺、どうしたらいい】画面を、しばらく見ていた。どうしたらいい。あの夏、香水の匂いをさせて帰ってきたこの人に、私が聞きたかった言葉だ。あの夜、私が飲み込んだ質問を、いま、この人が私に投げてくる。【会社の判断です。私に聞かないでください】送信して、私は指を止めなかった。【それと、出向はまだ入口だと思います。あなたが積んだ嘘を、会社はこれから、私と同じやり方で、一枚ずつ剥がすので】既読がついた。返信は、来なかった。胸の奥が、静かに熱くなった。可哀想だとは、思わなかった。一度も。自業自得。その4文字を、私は誰にも遠慮せず、はっきりと胸の中で口にした。バレなければ何も壊れない、と信じていた人が、バレたあとの世界で何を失うのか。これから、いやというほど知ればいい。……香織との連絡先を、端末から消す準備をした。LINEのトーク履歴を開いたのが、いけなかった。【お姉ちゃん、今週手伝いいる?】 【崇さん、無事に帰ってきた?お姉ち
last updateÚltima atualização : 2026-08-24
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22話

【あなたの発信は財産です】Rから届いた長いDMの中で、その1行だけが何度も目に戻ってきた。夜中のリビングで、私は依頼の条件を読み直した。財産。慰謝料の話だろうか。違う気がする。この人はお金の話をする人じゃない。カードの明細を教えてくれたときもリストの話をしたときもこの人が指していたのはいつもお金じゃなくて……私の、次の一歩だった。返信の入力欄を開いた。【ありがとうございます。仕事として検討します。依頼元、報酬、掲載範囲、権利条件を文書で送ってください】助けてほしいとは書かなかった。名乗らない相手だからこそ、善意ではなく条件で確かめる。送信すると1分後に既読がついた。【承知しました。知人の編集部へ、公開アカウントだけを共有します。採否と条件交渉には関与しません】翌日、会社名入りの依頼書が届いた。条件を比べ、今回は見送った。断ったあとも、Rの態度は変わらなかった。Rはそれ以上近づいてこなかった。……離婚から、2週間が経った。朝は前より早く始まる。「陽翔、ほら、靴」「じぶんで!」それだけは何も変わらない。左右逆の靴を本人の納得がいくまで待って、履き直させて、幼稚園バスに手を振る。変わったのはそのあとだ。バスが見えなくなった瞬間から、私の時間はぜんぶ私のものになった。家計簿のアプリを開く。慰謝料の入金予定、養育費の振込日、貯金の残り、求職サイトの応募履歴。数字は正直で、まだぜんぶ心細い。でもこの心細さは誰かの嘘に怯える心細さとは種類が違う。私が管理して、私が決めて、私が責任を取る。それだけのことがこんなに息のしやすいことだったなんて。離婚後、最初の平日の朝は、妙に静かだった。崇が置いていた革靴はなく、玄関には私と陽翔の靴だけが並んでいる。以前の私は、その光景を見たら家庭を失ったと思ったはずだ。いまは、帰ってくるか分からない人の靴を避けずに、自分の靴を置けることへ安堵していた。洗濯機を回すと、崇のワイシャツが1枚も入っていない。襟の汚れへ洗剤を塗り、ポケットを確認する作業もない。洗濯物は少ないのに、干し終えるまで何度も手が止まった。失ったのは夫だけではない。夫のために繰り返してきた手順まで、突然なくなったのだ。自由になった時間を、体はまだどう使えばいいのか知らない。私は空いたハンガーをまとめ、押し入れへしまった。崇のいた
last updateÚltima atualização : 2026-08-24
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23話

会う場所は駅前の喫茶店にした。日曜の昼、人目のある席。時間は30分と先に区切り、弁護士には「会って話す内容次第で連絡します」と伝えてある。バッグの中のスマホでは録音アプリが回っている。数か月前は震える指で初めてインストールしたアプリだった。いまは家を出る前に歯磨きと同じ顔で起動している。こういうものが身についてしまった。いいことなのかはわからない。ただ、もう丸腰では誰にも会わない。……崇は先に来ていた。窓際の席で、手を上げる。その仕草は昔のままだった。変わったのは細部だ。スーツじゃない。よれたニットに伸びかけの髪。頬のあたりが少し削げていた。10年近く隣で見てきた「大手商社の結城」はもうどこにもいなかった。数か月前の私なら、たぶん、胸のどこかが痛んだと思う。いまは観察が先に立つ。この身なりで「収入があれだから」と言うための、演出の可能性まで含めて。そう考える自分を冷たいとはもう思わない。「悪いな、急に」「30分で。それで、話って?」「……相変わらずだな」と崇は笑った。その笑い方で、わかった。この人は今日、謝りに来たんじゃない。距離を測りに来た。「養育費のことなんだけどさ」「取り決めどおり、月6万、25日振込。何か問題でも?」「いや、問題っていうか……俺、いま収入があれだから、少し待ってもらうか、額を」「弁護士を通してください。減額請求なら、調停の手続きがあります」「そういう話じゃなくてさ」崇はコーヒーに口をつけて、少し身を乗り出した。「もっと普通に話せないか。俺たち、10年近く一緒にいたんだぜ。事務の話しかできない関係って、おかしいだろ」おかしい、のはどちらだろう。「事務の話をするために婚姻という契約を解除したんです。事務以外の話が残っているなら、聞きますが」「……美咲、変わったな」「ええ。おかげさまで」沈黙が10秒。「俺もさ、色々考えたんだよ、あれから」崇は聞かれてもいない近況を話し始めた。会社で経費調査が続いていること。営業の仕事を外され、地方の子会社へ出向になるかもしれないこと。退職金まで減らされるかもしれないこと。考えた、と言いながら、出てくる言葉はぜんぶ「失ったもの」の目録だった。会社。信用。金。その目録のどこにも私と陽翔に何をしたか、は入っていなかった。「大変ですね」「だろ?だからさ……」「感
last updateÚltima atualização : 2026-08-26
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