All Chapters of 『TENJIN REVENGE(天神・復讐契約)』〜殺された妻は、韓国の魔王と手を組む〜: Chapter 11 - Chapter 20

42 Chapters

生贄のライブ配信、あるいは怪物の産声

「略奪愛を勝ち取ったと信じていた女は、暗い地下室で『グラム単位の肉』へと値踏みされる。私はその光景を、極上のワインを味わうように、ベッドの上で鑑賞していた――」◇ 冷たいブルーライトが、薄暗いスイートルームを無機質に照らしている。 私の手の中にあるタブレット端末には、箱崎埠頭にあるカン一族の違法倉庫の内部が、高画質の赤外線カメラ越しに映し出されていた。 画面の向こうは、重油と鉄サビ、そして恐怖から漏らした排泄物の臭いが充満する底辺の世界。 そこに、全裸でコンクリートの床に転がされている女がいる。 高橋愛理だ。「……いやっ、やめて、触らないで……!」 ノイズ混じりの音声が、静まり返ったホテルの部屋に響く。 ゴム手袋をした無表情な男たちが、馬の蹄でも調べるように、彼女の口をこじ開け、歯並びを確認し、皮膚の張りや骨格の歪みをチェックしている。 彼女の自慢だった巻き髪は、すでにバリカンで無残に刈り上げられ、頭皮にはマジックで数字の羅列――管理番号――が乱暴に書き殴られていた。 画面の端、薄暗いケージの中に、もう一つの肉塊が転がっているのが見える。 指を砕かれ、顔の形が変わるほど殴られた私の夫、健太だ。 愛理は彼に助けを求めて手を伸ばすが、健太は怯えた犬のように身を縮め、彼女と目を合わせようとすらしない。 かつて、私を「カビ臭い女」「ベッドでは木石のよう」と嘲笑い、自分たちの欲望を正当化していた二人の人間。 それが今、異国へ出荷される「食肉」として並べられている。 私はタブレットの画面を見つめながら、グラスの赤ワインをゆっくりと喉に流し込んだ。 美味しい。 五千円のワインと五十万円のワインの味の違いなんて分からない私だが、他人の絶望をツマミにして飲むこの一杯が、人生で最高に美味であることだけは理解できた。「……いい眺めか(韓国語)」 背後から、低く、鼓膜を直接震わせるような声がした。 カン・テジュン。
last updateLast Updated : 2026-07-27
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西中洲の密談、あるいは老いた蜘蛛の巣

「夫を失った哀れな未亡人。彼らの目に映る私は、都合よく喰い物にできる『極上の餌』でしかないらしい。自分がすでに、見えない巨大な顎(あぎと)に噛み砕かれようとしていることにも気づかずに――」◇ 那珂川の水面が鈍く光る西中洲。 一見さんお断りの高級料亭の奥座敷には、上質な出汁の香りと、隠しきれない老人の加齢臭が混ざり合って漂っていた。「いやあ、健太くんのことは本当に災難だったね。まさか多額の借金を抱えて飛ぶなんて」 上座で日本酒の杯を傾けながら、大林はわざとらしく眉を下げた。 大林重蔵。福岡市議会のドンであり、天神地区の再開発利権を牛耳る地元のフィクサー。健太が佐藤不動産の社長だった頃、裏金のパイプとして頻繁に出入りしていた男だ。 私は口をつけずに冷めたお茶を見つめながら、静かに頭を下げた。「ご心配をおかけして申し訳ありません」「美咲くんも大変だろう。なにせ、天神の一等地にある佐藤不動産のビルだ。あんな美味しい土地、夫を失った素人の女手一つで守り切れるものじゃない。……どうだろう、私が後見人になってあげようか?」 大林の濁った瞳が、私の胸元から太ももへと、ねっとりと這う。 助けてやる代わりに、土地の権利を格安で寄こせ。そして、お前の体も差し出せ。 言葉の裏にある要求は、吐き気がするほど露骨で、そして酷く陳腐だった。 かつての私なら、この男の圧力に怯え、震えながら頷くしかなかっただろう。 地方都市の権力という小さな檻の中で、彼らは自分たちが絶対的な捕食者だと信じて疑わない。「お言葉はありがたいのですが、会社の権利はすでに第三者へ譲渡する手続きが進んでおります」 私が淡々と告げると、大林の顔から薄ら笑いが消えた。「……おいおい、勝手な真似をされちゃ困るな。あの土地は、私の許可なく動かせるものじゃないんだよ。どこの馬の骨とも知らん業者に売るつもりなら、警察や役所が黙ってないぞ。健太くんの裏帳簿、私が全部知ってると言ったらどうなるかな?」 脅迫。
last updateLast Updated : 2026-07-28
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雨音の密室、あるいは血族の殺意

「権力の蜜を舐めた舌は、自分が食物連鎖の頂点に立ったと錯覚する。だが、その滑稽な全能感は、バックミラー越しの『見知らぬ両目』と合った瞬間、無残に打ち砕かれた――」◇ 西中洲の料亭を出た私を乗せ、黒塗りのハイヤーは深夜の福岡市内を滑るように走っていた。 窓の外では、雨に濡れたネオンサインがアスファルトに滲み、毒々しい色彩を放っている。 後部座席の深い革のシートに体を沈めながら、私は吐く息の熱さに酔いしれていた。 地元の有力者である大林を、たった数枚の紙切れで社会的に抹殺した。かつての私なら、権力者の恫喝に怯え、震えながら頷くしかなかっただろう。 だが今の私には、テソングループという絶対的な魔王の後ろ盾がある。この街の人間など、私の指先一つでどうにでもなる。そんな全能感が、胸の奥の空洞を満たしていた。「……運転手さん。エアコン、少し下げて」 防音ガラスの向こう側、運転席に向かって声をかける。 しかし、返答はない。 制帽を被り、黒いスーツを着た運転手の背中は、いつもと同じように微動だにせず前を向いている。だが、ふと窓の外を見ると、流れる景色が天神の繁華街から遠ざかり、街灯の少ない港湾地区へと向かっていることに気づいた。「ちょっと。ホテルへ戻る道、違わない?」 再び声をかけるが、やはり無視される。 苛立ちと共に身を乗り出し、バックミラーを覗き込んだ瞬間。 私の心臓は、氷水を浴びせられたように硬直した。 ミラー越しに私を見返していたのは、いつもの白髪の初老の運転手ではない。 深く被った制帽の下から覗く、爬虫類のように冷たく、細く切れ長な若い男の目。 運転手は、私が料亭で大林をあざ笑い、自分の万能感に酔いしれている間に、すでにすり替わっていたのだ。「誰……あなた、誰なの! 車を止めなさい!」 私がドアハンドルを引こうとした瞬間、車のロックがガチャリと無機質な音を立てて掛かった。 そのままハイヤーは、人気のない箱崎埠頭の、街灯すら届かない暗がり
last updateLast Updated : 2026-07-28
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無菌室の獣たち、あるいは血の洗礼

「傷口から滴る血よりも、自分の内側から湧き上がる昏い熱の方が恐ろしかった。魔王の手に委ねられたこの痛みこそが、私が人間を辞めたという確かな証明だった――」◇ 雨に濡れた衣服が、皮膚に冷たく張り付いている。 中洲の喧騒を見下ろすホテル・ロイヤル福岡の最上階。重いマホガニーの扉を開けると、完璧に空調の効いた無菌室のような空間が私を迎え入れた。 エントランスの鏡に映る自分の姿は、凄惨だった。 高級なシルクのスーツは雨と泥で汚れ、首には男の指の形をした赤黒い痣がくっきりと浮かんでいる。頬の浅い切り傷からはまだ血が滲み、蒼白な顔を汚していた。「……遅かったな(韓国語)」 リビングの奥、間接照明の薄暗がりの中から、静かな声が響いた。 カン・テジュン。 彼は革張りのソファからゆっくりと立ち上がり、こちらへ歩み寄ってくる。手には、飲みかけの琥珀色のグラス。 私の惨状を見た瞬間、彼の歩みが止まった。 漆黒の瞳が、私の首の痣と、頬の血痕を音もなく舐め回す。部屋の空気が、急激に重力を持ったように冷たく沈み込んだ。「誰だ。俺の所有物に触れたのは(韓国語)」 怒鳴り声ではない。だが、それは内臓の裏側を直接撫でられるような、底知れぬ殺意を孕んだ低い声だった。「……リュ。そう名乗ったわ(韓国語)」 私がかすれた声で答えると、テジュンの目に微かな、しかし決定的な侮蔑の色が浮かんだ。「あの野良犬か。……まだ生きていたとはな(韓国語)」 テジュンはグラスをサイドテーブルに置き、私の腕を掴んだ。そのまま無言で、大理石で囲まれた広大なバスルームへと私を引きずり込む。 暴力的なまでの眩しい照明が、私の惨めな姿を容赦なく照らし出した。 テジュンは洗面台のキャビネットから医療用の消毒用エタノールを取り出し、純白のタオルにたっぷりと染み込ませた。「上を向け(韓国語)」 有無を言わせぬ命令。私が顎を上げると、彼はエタノー
last updateLast Updated : 2026-07-28
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白昼の屠殺、あるいは魔王の代行者

「かつての私は、他人の流す血を見て目を背ける、ありふれた善良な人間だった。だが今、目の前で飛び散る脳漿は、私の新しい人生を祝福する心地よいBGMにすぎない――」◇ ファンデーションとコンシーラーを何度重ねても、首の痣と頬の傷を完全に隠し切ることはできなかった。 私は黒いシルクのハイネックブラウスを選び、鏡の前で冷たいルージュを引く。鏡の中の女は、夫の裏切りに泣き崩れていた昨日の佐藤美咲ではない。テソングループという巨大な顎(あぎと)の、鋭い牙の一つだ。 昼下がりの天神。 大通りから一本入った路地裏にある、要塞のような雑居ビルの最上階。そこは、福岡の裏社会で最も血の気が多いと言われる武闘派組織のフロント企業『神野興業』のオフィスだった。「……で? 健太の嫁はんが、一人で俺に何の用だ? 亭主が飛んで、とうとうウチのシマで体でも売る気になったか?」 応接室の奥、紫煙の向こう側で、顔の左半分に深い刃物傷を持つ男が下劣な笑い声を上げた。神野。健太の裏帳簿を握り、昨夜私を襲ったリュが接触を図っていた地元の顔役だ。 部屋には神野の他に、刺青を覗かせた屈強な男たちが五人。全員の腰が不自然に膨らんでいる。いつでも弾を撃ち込める準備ができている証拠だった。 ここは修羅の街。生半可な脅しなど通用しない、暴力の純度だけで生き残ってきた獣たちの檻だ。 私は出されたコーヒーには手をつけず、神野の濁った目を静かに見つめ返した。「神野社長。単刀直入に申し上げます。あなたが所有している天神南の三つのビルの権利書、およびこの会社の実権を、本日付けでテソングループに無償譲渡していただきます」 私の言葉に、神野の動きがピタリと止まった。 数秒の空白の後、彼は腹の底から馬鹿にしたような、そして底知れぬ殺意を込めた声を絞り出した。「……舐めてんのか、アマ。テソンだか何だか知らねえが、ここは俺たちの街だ。海の外から来た小綺麗なスーツ着た連中が、ヤクザ舐めて生きて帰れると思ってんのか」 神野が顎をしゃくると、五人の男たちが一斉に懐から黒
last updateLast Updated : 2026-07-29
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無垢な瞳を撃ち抜く、決別の銃声

「プロの暗殺者は、家族の愛こそが最大の弱点だと信じて疑わなかった。だが彼は知らない。完全に人間を辞めた女にとって、肉親の涙など、忌まわしい過去を断ち切るための手頃なハサミにすぎないということを」◇ 昨日、天神のヤクザ組織をたった数分で全滅させたテソングループの「清掃」は、裏社会に決定的な静寂をもたらした。 後ろ盾を完全に失い、孤立無援となったリュ。焦った狂犬が最後の切り札として食いついたのは、私がすでに捨てたはずの『家族』だった。 ホテル・ロイヤルのスイートルーム。 窓際に立っていたテジュンのスマートフォンが、無機質な着信音を鳴らした。画面を一瞥した彼は、微かに眉を動かすと、無言でその画面を私に向けた。 表示されていたのは、見知らぬ番号から送られてきた一枚の画像。 私の三つ下の妹、詩織が、見慣れたパステルカラーの椅子にダクトテープで縛り付けられ、恐怖に顔を歪めている写真だった。 画像には、短いメッセージが添えられている。『六本松のマンション。美咲を一人でよこせ。警察やテジュンの犬が一人でも来れば、妹の首を刎ねる』 詩織は保育士として働き、来年には平凡なサラリーマンと結婚する予定の、私とは真逆の「真っ当な」人生を歩む妹だ。「……行くのか(韓国語)」 テジュンが、冷たいグラスを揺らしながら尋ねた。 彼の漆黒の瞳は、私が肉親の情にほだされ、愚かな自己犠牲に走るのではないかと値踏みしている。「ええ。私の手で、過去のゴミ掃除をしてくるわ(韓国語)」 私はコートを羽織り、テジュンがテーブルの上に置いていたサプレッサー付きの拳銃を無造作にバッグへ放り込んだ。手の中の重たい鋼鉄の感触が、今の私にとって唯一の精神安定剤だった。◇ 六本松にある、築浅のありふれたワンルームマンション。 強引に鍵を壊されたドアを開けると、甘ったるいバニラのルームフレグランスの香りが鼻を突いた。だが、その平和な日常の匂いは、すぐに生暖かい鉄の匂い――リュの服に染み付いた血液と、安いハッカ草の悪臭に塗りつぶされた。
last updateLast Updated : 2026-07-29
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博多港に沈む、札束で編まれた蜘蛛の巣

「飢えた獣を狩るのに、猟銃を持って森を走り回る必要はない。森にあるすべての水場と獲物を買い占め、獣が自ら罠にかかるのを特等席で待てばいい。それが、絶対的な権力を持つ者の『狩り』だ」◇ 深夜の博多港。 玄界灘から吹き付ける冷たい海風が、重油と潮の入り混じったむせ返るような匂いを運んでくる。 巨大なガントリークレーンが恐竜の骨組みのようにそびえ立つコンテナヤードの片隅で、私とテジュンは、防弾仕様のマイバッハの後部座席からその光景を静かに見下ろしていた。 視線の先には、韓国・釜山行きの貨物船に積み込まれる直前の、古びた赤い鉄製コンテナがある。「……ネズミが罠に入りました(韓国語)」 運転席の私兵が、インカムを押さえながら短く報告した。 テジュンはグラスの氷をカラリと揺らし、短く「閉めろ」とだけ命じた。 数秒後。 赤いコンテナの重厚な鉄扉が、外に潜んでいた私兵たちの手によって外側から乱暴に閉ざされ、太い南京錠が掛けられた。 中からは、鈍い打撃音と、「開けろ!」というくぐもった叫び声が響いてくる。 リュだ。 天神のヤクザという後ろ盾を失い、私の妹を使った人質作戦にも失敗した彼が、最後にすがるのは「密航」による韓国への逃亡しかなかった。 博多港から釜山へ抜ける裏ルート。身分証を持たない犯罪者がよく使う、地元のブローカーが手配する密航船だ。 リュは、自分が手配したブローカーの案内で、安全な逃走用のコンテナに乗り込んだと信じ切っていたはずだ。 だが彼は、テソングループという巨大な顎(あぎと)のスケールを根本的に見誤っていた。「いくら払ったの? あのブローカーに(韓国語)」 私が横顔を見つめながら尋ねると、テジュンは退屈そうに吐き捨てた。「五千万だ。リュが提示した逃走資金の、ちょうど十倍の額をくれてやった(韓国語)」 たった五千万。 テジュンにとってはポケットマネーにも満たないその端金が、この街の裏社会のルールを完全に書き換えてしまった。 リュ
last updateLast Updated : 2026-07-29
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極上のコーヒーと、ソウルから来た毒蜘蛛

「魔王の血族を自らの手で屠った翌朝に飲むコーヒーは、どうしてこんなにも香ばしいのだろう。私の中で何かが決定的に腐敗し、そして羽化していた」◇ コンテナの中で掻き毟るように響いていた、リュの断末魔。  それを思い出しながら、私はスイートルームのバルコニーでコーヒーを飲んでいた。  罪悪感など微塵もない。あるのは、目障りな害虫を駆除した後のような、生々しく心地よい達成感だけ。 人の命を奪った。血の繋がった妹を切り捨てた。  もう私は、誰から見ても真っ当な人間ではない。けれど、夫の暴力に怯え、息を殺して「良妻」を演じていたあの頃より、今の自分のほうがずっと息がしやすい。  倫理や道徳なんて、弱者が自分を慰めるための安っぽい鎮痛剤だ。自らの手で他人の命を終わらせる絶対的な権力の味を知ってしまった私には、もう必要ない。「……悪い顔になっているぞ(韓国語)」 背後から、バスローブ姿のテジュンが私の腰に腕を回した。  体温の低い、大きな手。「あなたのせいよ(韓国語)」 私は彼の首筋に顔を埋め、その危険な血の匂いを深く吸い込んだ。 その時。  重厚な扉の電子ロックが、無機質な警告音と共に強制解除された。  ルームサービスでも、テジュンの私兵でもない。 カツ、カツ、カツ。 高いヒールの音が、大理石の床を叩く。  現れたのは、仕立ての良すぎるツイードのスーツに身を包んだ、初老の女だった。  首元には大粒の真珠。整形の跡が残る不自然に引きつった笑顔の奥に、爬虫類のような冷たい目を隠し持っている。 ソン・ミラン。  テソングループ本家、カン・ドフン(テジュンの異母兄)の母親であり、現在の実質的な支配者だ。「あら。朝から発情期かしら、野良犬どもは(韓国語)」 ミランは部屋の惨状(昨夜私たちが脱ぎ捨てた衣服)を一瞥し、ハンカチで鼻を押さえた。「……何の用だ。本家の人間が、俺の許可なく国境を越えるな(韓国語)」 テジュンの声が、絶対零度まで冷え込む。
last updateLast Updated : 2026-07-30
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裏切りの銃口、眉間にキスするような極上の死

「真実を知っても泣き叫ばない私を、老いた魔女は気味悪そうに見つめた。哀れな人だ。極上の殺意がどれほど女を狂わせ、美しくするか、彼女はもう忘れてしまったのだ」◇ テジュンの銃を無造作に押し退けた私の手を、ソン・ミランはひどく気味の悪いものを見るような目で見つめた。「気が触れたの? ……自分の父親を殺すよう命じた黒幕を前にして、笑うなんて(韓国語)」 いぶかしげに眉をひそめるミラン。 首元に刻まれた深いシワ。高級な美容液をどれだけ塗り込んでも隠しきれない、死へ向かう古い肉の腐臭。 ああ、醜い。他人の血を啜って生き延びてきた権力者の末路が、こんなにも吐き気を催すほど滑稽な老婆だなんて。「ええ、狂っているわ。……あなたたちのおかげでね(韓国語)」 私が一歩前に出ようとした瞬間、ミランが苛立たしげに指を鳴らした。 カチャッ、カチャッ。 背後の開け放たれたドアから、足音も立てずに黒服の男たちが数人、雪崩れ込んできた。 神野興業を壊滅させたテジュンの私兵とは空気が違う。無表情で、まばたきすらしない。本家直属の、感情の欠落した本物の「処理班」だ。 全員の手には、重鈍な光を放つ自動拳銃が握られ、その銃口はすべてテジュンと私に向けられている。「いい加減、ママゴトは終わりよテジュン。このちっぽけな島国で、現地妻と王様気取り? ……反吐が出るわ(韓国語)」 ミランは嘲笑い、私を指差した。「今すぐその女の頭を撃ち抜きなさい。そうすれば、リュの一件は不問にしてあげる。ソウルへ戻って、本家の犬として生きる権利を与えてあげるわ(韓国語)」 踏み絵だ。 一族の血を引く魔王が、ただの日本の女のためにどこまで狂えるのか。 いや、違う。ミランは最初から、私がここで撃ち殺される無様な姿を見るためだけに、わざわざ海を渡ってきたのだ。他人の尊厳を踏みにじる極上のエンターテインメントとして。 テジュンは無言だった。 漆黒の瞳は、ミランの背
last updateLast Updated : 2026-07-30
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老いた魔女の失墜と、ソウルから這い寄る『最悪の捕食者』

「絶対的な権力を持つはずの魔女は、自分の足元がすでに『裏金』という猛毒で腐り落ちていることに気づいていなかった。そして私は知る。中途半端な偽善が、一番愛する者を最も醜い怪物に変えてしまうという真実を――」◇ 鼓膜を突き破るような発砲音が、高級スイートルームの張り詰めた空気を暴力的に引き裂いた。 硝煙の匂いが、鼻腔の奥をツンと刺す。 私はゆっくりと目を開けた。 私の肉体は、一ミリも欠けていない。 ただ、頬にべっとりと、生温かい汚泥のような液体が張り付いている。 濃厚な鉄と、内臓の匂い。「……あ、が……ッ」 背後で、重い肉塊が崩れ落ちる鈍い音がした。 視線をずらすと、数秒前までソン・ミランの真横で私に銃口を向けていた本家・処理班のリーダーが、眉間にぽっかりと黒い風穴を空け、床に倒れ伏していた。 ピクピクと痙攣する手足。大理石の床に、黒赤色の血の海が急速に広がっていく。「……は……?」 ヒュッ、と喉の奥で間抜けな音を鳴らし、ミランが呆然と立ち尽くす。 彼女が纏っていた数百万円のシルクのアンサンブルと、加齢によるシワを隠すために厚塗りされた顔面には、部下の頭部から弾け飛んだ血と肉片が、呪いの模様のようにこびりついていた。「な……んの真似だ……! 貴様ら、何をしている! 早くテジュンを撃て! 撃ち殺せェッ!! (韓国語)」 ミランは金切り声を上げ、背後に控える十数人の処理班に向かって狂ったように指を振りかざした。 本家直属の、感情の欠落した絶対的な暗殺部隊。彼らが一斉に引き金を引けば、私とテジュンは一瞬で肉片に変わる。 ……だが。 誰一人として、動かなかった。「どうした!? 私の命令が聞こえないのかッ! (韓国語)」 静寂。 ただ、空調の微かな稼働音だけが部屋に響いている
last updateLast Updated : 2026-07-30
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