『TENJIN REVENGE(天神・復讐契約)』〜殺された妻は、韓国の魔王と手を組む〜

『TENJIN REVENGE(天神・復讐契約)』〜殺された妻は、韓国の魔王と手を組む〜

last updateLast Updated : 2026-08-18
By:  okamekiUpdated just now
Language: Japanese
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愛する夫と秘書に裏切られ、父の命と全財産を奪われた挙げ句、海に沈められ殺された「私」(美咲)。だが、絶望の底で目を覚ますと、殺される前の過去へタイムリープしていた。 二度目の人生、私は復讐の悪魔となることを誓う。天神の利権を狙う冷徹な韓国財閥のトップであり、瀕死の「魔王」カン・テジュンを拾い、彼を夫を殺す「凶器」として契約を結ぶ。 圧倒的な暴力と権力を持つ魔王を従え、かつて自分を虐げた者たちを次々と残酷な地獄へ叩き落としていく美咲。だが、復讐の過程で魔王との間に芽生えたのは、互いを縛り合い喰らい尽くす、純度100%の狂気と依存の愛だった。日韓を股にかけた極上の復讐サスペンス。

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Chapter 1

夫に殺された夜、私は悪魔に魂を売った

「愛する夫と部下の裏切り。絶望の海に沈んだ私は、地獄の淵で目を覚ます――」

 バキッ。

 乾いた音が、頭蓋骨に響いた。

 激痛よりも先に、世界が回る。

 私の右足だ。

「……あ、ぐぅ……ッ」

 雨の叩きつけるクルーザーの甲板。

 這いつくばる私の視界に、濡れて光る革靴が映る。

 見上げると、夫・健太が蔑むような目で見下ろしていた。

「汚ねえな。血でルブタンが台無しだ」

 愛していた笑顔はそこになく、あるのは泥を見るような目。

「なんで……健太……」

 ガチャリ。キャビンのドアが開く。

「パパぁ、もう終わりにしてよぉ。胎教に悪いじゃない」

 現れたのは、私達の会社の秘書であり、妹のように可愛がっていた愛理。

 彼女は傘もささず、ふっくらとしたお腹を愛おしそうに撫でている。

「あか……ちゃん……?」

「先輩、気づかなかったんですかぁ? 健太さんの子ですよ。もう5ヶ月」

 愛理はくすくすと笑い、私の顔をヒールの先で踏みつけた。

「先輩が不妊治療で泣いてる間、私たち、この船でずーっと『種付け』してたんですよぉ」

「……あぁぁぁぁぁぁ!!」

 喉が裂けるほどの絶叫。

 それを遮るように、健太が私の髪を掴み上げる。

「うるせえな。……ああそうだ美咲、冥土の土産にいいことを教えてやる」

 健太の口が、私の耳元に近づく。腐った生ゴミのような息。

「先月死んだお前の親父……心不全だったよな?」

 最愛の父。まだ癒えぬ最大の悲しみ。

「あれ、俺が薬をすり替えたんだ」

 心臓が止まる。

「遺産相続の手続き、待つの面倒くさかったからさぁ! ギャハハ!」

「社長ったら、悪い人ぉ〜(笑)」

 こいつらは、人間じゃない。

 涙が蒸発し、腹の底からドス黒いマグマが噴き出す。

「……殺してやる……お前ら……全員……!!」

「あーあ、怖い怖い。じゃあな、俺のATM!」

 二人が私の体を持ち上げる。宙に浮く体。

「バイバイ。来世では幸せになってねぇ!」

 ドボンッ!! 

 冷たい博多湾が、私を飲み込んだ。

 暗い。寒い。苦しい。

 水面の上から、こもった嘲笑が遠のいていく。

 (許さない……絶対に許さない……)

 薄れゆく意識の中で、私は誓った。

 神になど祈らない。

 もし地獄から這い上がれるなら、私は悪魔にだって魂を売る――。

「……おい、起きろよ」

 頬を叩く感触。

 ガバッ、と息を吸い込んで目を開けた。

「かはっ……! はっ、はっ……!」

 溺れた時のように、喉がヒューヒューと鳴る。

 シーツを握りしめる手が、脂汗で滑る。

 目の前に、男の顔があった。

「なんだよ、うなされて。すごい汗だぞ」

 健太だ。

 パジャマ姿で、歯ブラシをくわえながら、不思議そうに私を覗き込んでいる。

「ひっ……!」

 反射的に後ずさりし、ベッドから転がり落ちた。

 全身の震えが止まらない。

 殺される。また海に落とされる。

「おいおい、情緒不安定だな。今日は大事な日だぞ」

 健太が呆れたように言った。

「『事業承継の調印式』だろ? 親父さんも待ってるぞ」

 え……?

 親父さん(父さん)が、待っている?

 父は先月、殺されたはずじゃ……。

 震える手で、枕元のスマホを掴む。

 画面の日付が、青白く光る。

『2025年2月14日』

 父が死ぬ、3ヶ月前。

 私が殺される、1年前。

 そして……健太が会社を乗っ取る、運命の日。

「ほら、立てよ。愛してるよ、美咲」

 健太が手を差し伸べてくる。

 さっき私を蹴り上げ、父を殺したと笑った、その手だ。

 吐き気が喉までせり上がる。

「ウッ……!!」

 私は口元を押さえ、洗面所へ駆け込んだ。

「オエッ……!! ゲホッ……」

 胃液を吐き出し、顔を上げる。

 鏡の中の顔色は土気色だが、傷はない。足も折れていない。

 戻ったのだ。

 あの地獄の始まりの日に。

 ガチャガチャとノブが回される。

「美咲? 大丈夫か?」

 健太の猫撫で声がする。

 私は蛇口を全開にして水を出し、その声をかき消した。

 タオルで乱暴に口を拭う。

 鏡の中の自分と目が合う。

 泣いてはいない。

 私の瞳孔は開き、爬虫類のように冷たく光っていた。

 父さんはまだ生きている。

 そして、ドアの向こうには、これから私を殺す男がいる。

 鏡の中の私が、ニヤリと、口角を歪めた。

「……待っててね。今度は私が、地獄を見せてあげる」

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okameki
okameki
GOOD!テンポが良くて続きが気になってしょうがない!
2026-07-26 03:10:47
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魔王を拾う夜、口づけは血の味がした
「夫を殺す凶器(ナイフ)を手に入れるため、私は今夜、瀕死の猛獣と契約する――」◇「……美咲? おい、聞いてんのか?」 洗面所のドアごしに、健太の苛ついた声。 私は蛇口を閉め、鏡の中の自分に「従順な家畜」の仮面を貼り付けた。「ごめん、健太。貧血みたいで……」 ドアを開け、弱々しく微笑む。「今日の調印式……父さんには申し訳ないけど、休んでいいかな? 天神のビルの権利書、金庫から出しておいたから」 健太の瞳が、一瞬だけ野獣のようにギラついた。 私の実家が持つ天神の雑居ビル。再開発バブルの福岡において、あの土地はダイヤの原石だ。 そのために私と結婚し、父を殺し、私を殺した男。「ああ、もちろん。美咲は大事な体なんだ。寝ててくれよ」 健太は私の額にキスをした。 ナメクジが這ったような、湿った感触。 玄関のドアが閉まった瞬間、私は額を手の甲で乱暴に拭い、洗面所へ戻って吐いた。 (行ってらっしゃい。……その土地が、あなたの墓標になるのよ)◇ 喪服のような黒いワンピースに着替え、雨の博多へ飛び出した。 スマホの検索履歴を叩く。『2025年2月14日 福岡 中洲 韓国人投資家 襲撃』 カン・テジュン。 韓国財閥のトップであり、冷徹な「土地の狩人」。 前世の記憶では、彼もまた天神の再開発を狙って来日するが、今夜、反対勢力のヤクザに襲撃され、再起不能の重傷を負うはずだ。「……韓国語、忘れてないわよね」 前世、健太は私に無理やり韓国語を習得させた。「これからは韓国投資家の時代だ。お前は接待で愛想を振り撒け」と。 夫のために血を吐く思いで覚えたその言葉が、皮肉にも今、夫を殺すための武器になる。◇ 夜の中洲。那珂川沿いの路地裏。 ドブ川の腐臭と、錆びた鉄の臭いが鼻をつく。 バケツをひっくり返したような豪雨が、アスファルトを叩きつけていた。 ゴッ、と鈍い音が響く。肉が潰れる音だ。「……死ねよ、韓国(かんこく)の野良犬が」 数人の男たちが、鉄パイプで一人の男を滅多打ちにしている。 中心にいるのは、カン・テジュンだ。 額からおびただしい鮮血を流し、泥水に膝をついている。 だが、その目は死んでいない。 囲まれているのは彼の方なのに、まるで手負いの虎が獲物を品定めするような、圧倒的な殺気を放っていた。「しつけえ野郎どもだ……(韓国語)」 テジュンが低く唸る。
last updateLast Updated : 2026-07-24
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悪魔との契約、共犯者のキス
「助けたのではない。私は今日、夫を殺すための『凶器』を買ったのだ――」◇ 鉄の味と、雨の匂い。 自販機の裏の狭い隙間で、私はカン・テジュンの唇を塞ぎ続けていた。「……んっ……」 彼の喉が鳴るたび、さらに強く唇を押し付ける。 心臓がうるさい。 これはキスではない。生存のための「蓋」だ。 ザッ、ザッ、ザッ……。 男たちの足音が遠ざかっていく。「……チッ、見失ったか。他を探すぞ!」 気配が消えるまでの数分間が、永遠のように感じられた。 私の頬を、彼の熱い呼気が撫でている。 猛獣のような男。その唇は意外なほど柔らかく、そして死体のように冷たかった。 (助かった……) ゆっくりと唇を離す。 テジュンは再び、深い昏睡に落ちていた。 私は震える足に鞭を打ち、80キロを超える彼の大柄な体を背負い直した。 重い。 まるで、私の背負う「罪」の重さだ。「……絶対に、放さない」 この男は人間ではない。 私の未来を変える、最強の「駒」なのだから。◇ 翌朝。天神の雑居ビル、最上階。 父が所有する、内装工事前のスケルトン物件。 コンクリートむき出しの床に、朝陽が白々しく差し込んでいる。「……う……」 簡易ベッドの上で、テジュンが低く唸った。 私はパイプ椅子に脚を組み、冷めた目で彼を見下ろしていた。 テジュンの瞼が開く。 混濁した瞳が天井を彷徨い、やがて私を捉えた瞬間――鋭い殺気が走った。「……ここは? (韓国語)」「私の父が所有するビルです。天神のど真ん中。誰もここが空き部屋だとは知りません(韓国語)」 私が答えると、彼は上体を起こそうとして、激痛に顔を歪めた。 腹部の包帯を見て、舌打ちをする。「……なぜ、助けた? (韓国語)」「あなたを利用したいから」 私はミネラルウォーターを投げ渡した。 彼はそれを片手で受け止め、一気に飲み干す。 そして、濡れた唇を手の甲で拭いながら、私を睨みつけた。「利用だと? 誰に向かって口を利いている(韓国語)」 ギロリ、と射抜かれる。 怪我をしていても、その覇気は衰えていない。 普通の女なら、この視線だけで失禁しているだろう。「俺はテソングループのカン・テジュンだ。 日本人の女ごときに、首輪をつけられる覚えはない(韓国語)」 (ああ、いい目だ。その傲慢さ、その暴力性。……夫を殺すには十分だわ) 私は立ち上がり
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魔王の躾、喪服(ドレス)を纏う犬
「『すべてを差し出す』と言った私の唇を、魔王は暴力的なまでに蹂躙し、そして笑った――」◇ 廃ビルの埃っぽい空気が、一瞬にして凍りついた。 カン・テジュンは私の手首を捻り上げ、そのままコンクリートの壁へと叩きつけた。 痛みで視界が明滅する。だが、目の前の男の瞳は、それ以上に冷たく、暗い。「口先だけの女は嫌いじゃない。だが、俺は『証拠』しか信じない(韓国語)」 バリッ。 乾いた音が響く。 彼の手が、私のブラウスの胸元を無造作に引き裂いた。 ボタンが弾け飛び、床を転がる音がやけに大きく聞こえる。 悲鳴すら出ない。あまりにも無慈悲で、的確な暴力。 私の肌が露わになるが、彼の瞳に欲情の色は微塵もない。 あるのは、手に入れた武器の『性能』を測るような、冷徹な値踏みだけだ。「……何をするの(韓国語)」「脱皮だ。その貧乏くさい『良妻』の皮を捨てろ。……悪臭がする(韓国語)」 彼はずたずたになった私の服を払うと、自身の仕立ての良いジャケットを脱ぎ、半裸の私に乱暴に被せた。 ジャケットから漂う、高級な煙草と危険な男の匂い。 それが、私の新しい「飼い主」の匂いだった。「ついて来い。奴(やつ)好みの、極上の『餌』に仕立て上げてやる(韓国語)」◇ 中洲の会員制クラブ。その奥にあるVIP専用のメイクルーム。 そこは、私にとっての「解体場」だった。「痛っ……!」 ヘアメイク担当の女が、私の長い黒髪を容赦なく引っ張り上げる。 清楚な内巻きヘアはスプレーで固められ、無造作で挑発的なスタイルへと変貌していく。 鏡の中の私は、みるみるうちに「佐藤美咲」ではなくなっていく。「もっと濃くしろ。その女の顔から『生活感』を消せ(韓国語)」 ソファでふんぞり返るテジュンが、鏡越しに冷たい指示を飛ばす。 私の肌には、血のような真紅のルージュが引かれた。 最後に用意されたのは、背中が腰まで開いた、光沢のあるサテンのドレス。 夫・健太が「派手すぎる」と嫌った色。 今の私には、これが「喪服」であり「戦闘服」だ。「……どうかしら(韓国語)」 着替えを終え、振り返る。 テジュンはゆっくりと立ち上がり、私に近づいた。 その手が、露わになった背中を這う。愛撫ではない。指先が背骨をなぞる感触は、ナイフの峰を当てられているように冷たい。「悪くない。だが、何かが
last updateLast Updated : 2026-07-21
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初恋の贋作、腐った果実の匂い
「目の前の夫は、私を見ても私だと気づかない。その事実は、殴られるよりも深く、静かに私を壊した――」◇「……み、さき……?」 健太の唇が、音のない場所で動いた。 その目は、焦点が定まらずに泳いでいる。死んだはずの魚が生き返ったのを見たような、生理的な混乱。 当然だ。 今の私は、彼が「家政婦」として飼い慣らしていた「佐藤美咲」ではない。 ダイヤの首輪、背中を晒したドレス、そして何より、男を見下すこの「冷めた目」。 私は優雅に小首を傾げ、喉の奥で嘲笑を噛み殺す。「ミサキ? ……どなたのお名前かしら?」 声のトーンを下げ、湿度を含ませる。 健太がハッとして、慌ててグラスをテーブルに戻した。「い、いや! 失礼しました。あまりに……妻に似ていたもので。いや、妻なんかよりずっと、その……洗練されているというか」 妻なんかより。 その言葉が、私の鼓膜をざらりと撫でる。 隣で愛理が、露骨に不機嫌な顔で鼻を鳴らした。「やだぁ社長。あんな『所帯染みたオバサン』と一緒にしたら失礼ですよぉ。あの人、最近なんて加齢臭みたいな匂いするし」 加齢臭。 違うわ。それは、私が毎日手洗いしていた「健太の枕カバー」の匂いよ。 夫の染み付いた体臭を、私が必死に消臭していた苦労も知らず、愛人のあなたはそれを「私の匂い」だと嘲笑うのね。 (……滑稽だわ。その舌、二度と動かないようにしてあげる) 殺意で指先が震える。 けれど、私の身体はテジュンの調教通り、滑らかに動いた。 私はボトルのシャンパンを手に取り、健太のグラスに注ぐ。「光栄ですわ。……はじめまして、ミサと申します」「ミ、ミサさん……。いやぁ、驚いた。世の中には似た人がいるもんだ。でも、中身は大違いだ」 健太はだらしなく頬を緩め、私の手首に触れようと指を伸ばしてきた。 その時、沈黙を守っていた「魔王」が動いた。「座れ(韓国語)」 テジュンが短く命じ、ソファに深く身体を沈める。 その動作だけで、場の空気が鉛のように重くなった。 健太が縮み上がり、背筋を伸ばす。「あ、あなたは……まさか、テソングループのカン・テジュン会長……!?」「俺を知っているか。なら話は早い(韓国語)」 健太がポカンとする。テジュンの言葉が分からないのだ。 テジュンはこの国の言葉を完璧に理解している。だが、格下の人間に
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「夫は愛人の目の前で、私との不倫を熱望した。だがその夜、私を本当の意味で『女』にしたのは、別の男だった――」◇「……それで、いつ会えますか? 今夜、この後でも」 健太は、隣に座る愛人の存在など完全に記憶から消去したかのように、私に身を乗り出した。  その目は、新しい玩具を見つけた子供のように無邪気で、そして底なしに卑しい。「社長! 何言ってるんですか! 明日も早いんでしょう!?」 愛理が必死に健太の腕を引く。そのジェルネイルが、彼のスーツの生地に食い込んでいる。  焦っているのね。  自分が奪った「妻の座」が、今また別の女に脅かされている恐怖。  滑稽だわ。あなたがしがみついているその男は、中身なんて空っぽの「欲望の袋」なのに。「うるさいな! お前は先に帰ってろ、タクシー代やるから!」 健太が愛理の手を振り払う。  愛理の顔が屈辱で歪む。かつて私に向けられていた冷淡さが、今は彼女に向いている。  私はその光景を、極上のデザートのように味わいながら、テーブルの下で健太の膝にそっと手を置いた。「焦らなくていいわ、佐藤社長」 ビクッ、と彼の体が跳ねる。「会長(カレ)の目が厳しいの。……連絡先だけ、交換しましょう?」 私はスマホを取り出し、QRコードを表示させる。  健太は震える手で自分のスマホを操作し、私のコードを読み取った。『ピロン』 軽薄な電子音が、裏切りの契約完了を告げる。  画面に表示された「KENTA」の文字。  かつては「夫」として登録されていたその名前が、今はただの「ターゲット」として私の手の中にある。「必ず、連絡します。……妻には内緒の、特別な案件として」 健太は下卑たウインクを投げかけた。  その時、テジュンが重厚なグラスをテーブルに置いた。 カツン。 硬質な音が、場の空気を裂く。「行くぞ(韓国語)」 テジュンが立ち上がる。
last updateLast Updated : 2026-07-26
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魔王の指先、あるいは「石女(うまずめ)」の解体
「夫は私を『木石』と笑った。だから私は今夜、魔王の手でその体を砕かれ、女という名の『罠』に作り替えられる――」◇ 天井が回る。 肺の中の空気が強制的に排出され、自分がベッドに叩きつけられたのだと理解した。 高級ホテルのシーツは、驚くほど冷たく、死装束のように肌に吸い付く。「……っ」 逃げるという選択肢は、私の脳内から消去された。 覆いかぶさってきたカン・テジュンの瞳孔が、爬虫類のように細く収縮しているのを見たからだ。 この男は、私を抱こうとしているのではない。 壊そうとしているのだ。「さあ、鳴いてみろ。健太が喜ぶような、下品な声で(韓国語)」「……馬鹿に、しないで(韓国語)」 私の唇から漏れた韓国語は、恐怖で震えていた。 テジュンは鼻で笑うと、私の太腿に指を這わせた。 愛撫? 冗談じゃない。 それはまるで、肉屋がこれから捌く肉の質を確かめるような、無機質で暴力的な触診だった。「馬鹿にしているのはお前だ。そんな『木石(モクソ)』のような体で、あの欲深い男を騙せると思ったか? (韓国語)」 ドレスの裾が裂ける音がした。 彼の指が、容赦なく私の「女」の部分を暴く。 痛み。屈辱。そして、体の奥底から湧き上がる、得体の知れない熱。 かつて健太との営みで感じたことのある「義務感」や「諦め」とは違う。 これは、生物としての「生存本能」が悲鳴を上げているのだ。 喉の奥で、声にならない悲鳴が押し潰される。「違う。拒絶じゃない。『もっと』と乞うんだ(韓国語)」 彼の指が、神経の束を直接弾くように乱暴に動く。 私の意思とは無関係に、背骨が弓なりに反り返る。 頭のどこかで、冷めた私がその光景を見下ろしていた。 (ああ、そうか。私は今まで、夫の前で「人間」であろうとしていたのね) 良き妻。良き家政婦。 でも、健太が欲しかったのは、そん
last updateLast Updated : 2026-07-26
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聖なる夜の不貞、動く遺影の撮影会
「夫は私の体を貪りながら、私を殺す計画を愛の言葉のように囁いた。胸元のブローチが、その醜悪な罪を吸い込んでいく――」◇ ホテル・ロイヤル福岡、24階のスイートルーム。 5年前、私たちが「永遠の愛」を誓い、初夜を過ごした部屋だ。 重厚なベルベットのカーテンも、窓から見える博多の夜景もあの日のままだが、空気の匂いだけが決定的に違う。 あの日は希望の香りがした。今は、腐った果実のような欲望と、男の安っぽい整髪料の匂いが充満している。「最高だ……。こんなイイ女、久しぶりだ」 健太が背後から抱きつき、私の首筋に顔を埋める。 濡れた唇が皮膚を這う。ナメクジが這った痕のような、粘着質な湿り気。 鳥肌が立つほどの生理的な嫌悪感を、私は「悦び」の仮面の下に押し殺す。「……焦らないで。シャワーもまだよ?」「待ちきれないんだよ。お前のその、俺を見る目がたまらない」 健太が私を強引にソファへ押し倒す。 私の胸元には、テジュンから渡されたダイヤモンドのブローチが冷たく鎮座している。 この小さな「目」が、今、この男の醜態を全て記録し、別室にいる魔王へと送信しているのだ。 (見てる? テジュン。あなたの演出通り、豚が餌に食いついたわよ) 私は健太のネクタイを指で弄びながら、ゆっくりと、確実に罠を仕掛ける。「ねえ、本当にいいの? 会長との『ビルの売買契約』、奥様のハンコがいるんでしょう? 反対されたらどうするの?」「反対なんかさせるか。……それに、あいつはいなくなる」 健太の手が止まる。 爬虫類のような冷たい光が、彼の瞳の奥でギラリと光った。「……いなくなるって?」「あいつ、最近『貧血気味でフラフラする』って言ってるんだよ。……そんな女が、夜の博多湾で足を滑らせて転落しても、誰も疑わないだろ?」 背筋が凍りついた。
last updateLast Updated : 2026-07-26
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豚の悲鳴、あるいは断罪のファンファーレ
「ドアが開いた瞬間、捕食者を気取っていた夫は、ただの『排泄物』へと転落した。その無様な姿を、私は無感動に解剖する――」◇「……チッ、誰だよ。間が悪いな」 健太は舌打ちをし、ガウンの前をだらしなく開けたままドアへと向かった。  その背中には、まだ私を征服しようとした余韻と、全能感が張り付いている。  私はソファで乱れたドレスを直し、テーブルの上のシャンパンをグラスに注いだ。  喉が渇いた。これから始まるショーには、少しのアルコールが必要だ。 ガチャリ。「おい、ルームサービスなんて頼んで……」 言葉は、濡れた雑巾を床に叩きつけたような、不快な打撃音にかき消された。  健太の体が宙を舞い、部屋の奥へと吹き飛ばされる。  高価なペルシャ絨毯の上を、夫が滑り、ローテーブルに背中から激突した。  グラスの中のシャンパンが、小さく波打つ。「……ぐ、え……っ……」 肺の空気が強制的に絞り出され、健太は床の上で海老のように体を丸めた。  鼻からツー、と赤い線が垂れ、白いカーペットに染みを作っていく。  開かれたドアの向こうから、革靴の冷たい足音が響く。  カツ、カツ、カツ。  死刑執行の足音だ。「……汚い部屋だ。獣の臭いがする(韓国語)」 カン・テジュンが、顔をしかめて入ってきた。  後ろには、無表情な黒服の男たちが二人控えている。  テジュンは私のことなど見向きもせず、床で痙攣する健太を見下ろした。「だ、誰だ……きさま……」 健太が涙目で顔を上げる。  テジュンの顔を確認した瞬間、その表情が恐怖で凍りついた。  本能が理解したのだ。目の前にいるのが、話の通じる人間ではなく、絶対的な「暴力装置」であることを。「か、会長……!? な、なぜここに……」「俺の所有物に手を出して、タダで済むと思ったか? (韓国語)」 テジュンは無造作に革靴を振り上げ、健太の右手を踏み抜いた。  さっきまで私に触れ、ドレ
last updateLast Updated : 2026-07-27
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中洲の夜、肉塊たちの晩餐
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last updateLast Updated : 2026-07-27
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