「魔王を牢獄の底に繋ぎ止め、私はこの街の富を永遠に吸い上げる完璧なシステムの中で、極上の退屈を味わっていた」◇ 私の手元にあるタブレットの画面には、美しいアラビア数字の羅列が、まるで芸術作品のように並んでいた。 福岡のインフラと商業を牛耳る『互栄会』と『中央懇話会』の老害どもから、私が指定した海外のダミーファンドへ振り込まれた今月の「上納金(コンサルタント料)」。 あの料亭の奥座敷で、永遠に外れない首輪を嵌めてやってからというもの、彼らは本当に優秀な集金マシーンとして機能している。会社の利益の六割を搾り取られ、血の小便を流しながらも、私の機嫌を損ねまいと必死に餌を運んでくるのだ。「……ふふっ。本当に、見事な数字だわ」 私は、ペントハウスの巨大な窓から天神の夜景を見下ろし、ベルベットのソファに深く身を沈めた。 高柴市長の突然の勇退表明から始まった権力の空白。東京の強欲なデベロッパー・神谷は特捜部に社会的に殺され、地元の重鎮どもは完全に私の靴を舐める犬となった。 海を越えたソウルの特別医療刑務所にいるカン・テジュンでさえ、今頃は私が送った真っ黒な泥水(ドラッグ)に脳髄を溶かされ、自ら進んで私のモルモットとして飼育箱の中で痙攣しているはずだ。 私は、この福岡という街を完全に制圧した。 私が玉座に座り、私がルールを決める。邪魔者はもう、この世界のどこにも存在しない。 そう確信して、極上のボルドーワインを喉に流し込もうとした、その時だった。『――続いてのニュースです。来月に投開票が迫った福岡市長選挙ですが、本日、九人目となる新たな立候補者が急遽、出馬会見を行いました』 壁一面の巨大なモニターから流れてきた無機質なアナウンサーの声に、私は微かに眉をひそめた。 高柴市長という絶対的なカリスマが消えた後の市長選。これまで名乗りを上げていたのは、名前を売ることだけが目的の泡沫候補や、後ろ盾を失って右往左往している三流の市議会議員ばかりだった。 だが、画面に大写しにされた「九人目の候補者」の姿を見た瞬間。 私の心臓が、得体の知れ
Última actualización : 2026-09-25 Leer más