「私の脳髄を焼き切る強制シャットダウンの果てに待っていたのは、玉座ではなく、真っ白で無機質な絶望の檻だった」◇ ピーッ……ピーッ……。 規則的で無機質な電子音が、鼓膜の奥を等間隔に叩いている。 重い瞼をこじ開けると、視界に飛び込んできたのは、目が痛くなるほどの真っ白な天井だった。 最高級のシルクのシーツも、天神の夜景を見下ろす巨大なガラス窓も、どこにもない。 私の身体を包んでいるのは、漂白剤の匂いがこびりついたペパーミントグリーンの病衣。そして、寝返りを打つことすら許されないほど硬く冷たい、粗末なスチール製のベッドだった。「……あ……」 声を出そうとしたが、喉はカラカラに乾ききり、ひび割れた粘膜が擦れて微かな空気が漏れただけだった。 ゆっくりと首を動かし、周囲を見渡す。 壁一面を覆う無機質な白いクッション材。天井の四隅から私を冷徹に見下ろす、赤外線センサー付きの監視カメラ。 そして、部屋の出口を塞ぐようにそびえ立つ、分厚い鉄格子。 カビと排泄物にまみれた佐賀の地下シェルターとは違う。ここは、徹底的に管理され、私の人間としての尊厳を無菌状態の中で少しずつ剥ぎ取っていくための、完全なる『隔離病室』だ。 中洲の高級料亭で、自分の内側から溢れ出す黒い泥水に溺れ、完全にブラックアウトしたあの日。 私は間違いなく、テソングループの『回収班』によってこの檻へと運ばれたのだ。 自分が絶対的な女王だと信じていたあの現実は、私の脳髄が焼き切れるまで見せられていた都合の良い箱庭に過ぎなかったのか。 左腕の、あの小さな赤いホクロがあった場所には、今も生々しい注射痕が残り、どす黒く変色している。 ガチャリ、と。 重々しい金属音が響き、鉄格子の向こう側の扉が開いた。 現れたのは、仕立ての良い黒スーツを着た二人の男。 見覚えがある。テジュンの直属の私兵たちだ。「……時間
Last Updated : 2026-09-13 Read more