「うん、そうだったね。でも私は、それが当たり前のことだと思ってたけど、他の人たちは違ってたのね」 私はたとえ相手が社長のご子息でも、分け隔てなく接するよう心がけてきた。社長の息子だろうと、新入社員の一人であることに変わりはないから。ご機嫌を取ったり媚びへつらったりするのは違うと思っていたのだ。 「そうなんです。僕はそれが嬉しかった。父が社長だからって、僕まで特別扱いされるのは違うんじゃないかと思ってましたから。仕事も丁寧に教えて下さって、色々と親身になって相談にも乗って下さって、茜さんは僕にとって、憧れの先輩になっていました」 「そうだったの」 「はい。茜さんはチーフに昇格されてからも偉ぶることなく、後輩の僕たちに対して頼りになる先輩のままでいて下さってますよね。自ら率先して動いて、ご自分の仕事にも手を抜くことなく僕たちのフォローもして下さって。僕はご存じのとおり、父から社員や管理職の監査を任されています。最初のうちは茜さんもその対象でしたけど、……いつからか僕は、その対象であるあなたに惹かれていたんです。監査対象に恋をするなんておかしいですよね」 「そんなことないわよ。あなたも一人の人間なんだもん、そういうことだって十分あり得るって。でも、今は私、監査対象から外れてるってことよね? それだけ私のことを高く評価してくれてるって考えていいの?」 「はい、もちろんです。茜さんには、社長に報告すべき問題点は一切ありません。それは僕が保証します」 彼が頷いたところへ、注文していたラーメンや他のメニューが運ばれてきた。 「――さ、熱いうちに食べよう? いただきまーす!」
Terakhir Diperbarui : 2026-08-09 Baca selengkapnya