「――ん……?」 その朝、ベッドの上で目を覚ました私――尾崎茜はいくつもの違和感に気づいた。「ここは一体どこなの……?」 まず、ここは自分が一人暮らしをしている賃貸マンションの部屋ではないということ。明らかに部屋の広さが違うし(私の部屋はもっと狭いのだ)、間取りも違う。そしてベッドの広さも、マットレスの硬さも。私が使っているベッドはシングルサイズだけれど、このベッドは明らかにダブル以上の広さがある。 そして、自分が今服を着ておらず、下着姿であること。下着とはいっても色気の欠片もないダークグレーのスポーツブラとショーツのセットの上からキャミソールを着ているだけなのだけれど。 ……そういえば、ものすごく頭が痛い。これも違和感の一つといえばそうかもしれない。「えっと……、昨夜は何をしてたんだっけ……?」 私は自分の記憶を手繰り寄せる。昨夜は確か、誰かと都内のバーでお酒を飲んでいた。アルコールにそれほど強いわけではない私は、しこたまアルコール度数の高いお酒を飲みまくり、記憶がなくなるまで酔い潰れたのだろう。その後の記憶は一切ない。 では、その「誰か」とは一体誰だったのか。この状況からして同性だったとは考えにくいので、多分男性だろう。それも、一緒に飲みに行くような仲だろうから、おそらくは同じ会社の人間。財布の現金も減っていないし、クレジットカードを取り出した形跡もないので、私は自分の飲み代を支払っていないらしい。ということはその人物の奢りだろうから、この部屋からしても金銭的に余裕のある人物だと思う。「そんな人、ウチの会社にいたかな……?」 私は大手商社の〈冴島物産〉に勤めるOLで、総合職として働くいわゆる〝バリキャリ〟というヤツである。月給はそこそこ高い方なのだけれど、こんなにいいマンション――多分賃貸ではなく購入したものだろう――に住んでいて、金銭的に余裕のある男性なんて数えるほどしか思い浮かばない。 そんな人と、酔い潰れた状態で万が一にも何かあったとしたら……? 私はその男に一生分の弱みを握られたに等しい。私の今後のキャリアにも傷がつくかもしれない!「……どうしよう……」 私はこれがとんでもない事態だと思い、絶望感に襲われた。――とりあえず帰ろう。そして、昨夜のことは悪い夢だった
Last Updated : 2026-07-22 Read more