「我が名はゼイド。古龍の造りし魔剣」 赤い両手剣を握った痩身の男が、立ち上がりながら言う。金銀で彩られた祭壇には似合わぬ、禍々しい赤い鎧。顔には、張り付いた白い仮面。それこそが、この魔域の主だった。「来い。我を打ち倒した者に、魔剣をくれてやる」 「なら、頂く」 サルロの剣を、黒を孕んだ蒼炎が覆う。少し、揺れていた。ガリヤの詠唱も、少しずつ弱まっている。だとして、戦わない事由にはならない。「蒼炎よ、我が剣に宿れ!」 そうして、燃え上がる炎を携え、彼はゼイドへと走った──。 ◆ ブオーッ、と汽笛が鳴り、曇り空に消えていく。海峡を抜けた小さな蒸気船が、アレウの港へと入ったのだ。「第一層は、そう苦労せずとも突破できるだろう」 甲板に立つ騎士と戦士。その中で、リゼルが最後の確認を行う。「問題は第二層以降だ。魔域は、時に人智を超える空間を作り出すのだからな」 「やってやらあよ」 ガリヤはそう言ってのけたが、腰にある小さな聖典に指を這わせていた。「未帰還の騎士団員は……確か三個小隊。ざっと騎士三人に団員七十人、となりますね」 サルロは冷静に計算する。「ああ。魔物も力を付けただろうからな……ガリヤ、だったな。お前の詠唱で、蒼騎士二人を援護できるか?」 「そりゃあもう」 セキは、メイスを抱くように持って、不安を顔に浮かべる。「もし、その者たちが肉体を乗っ取られたのなら……殺してやるのが、弔いになる。遠慮はするなよ」 ガラガラと回る外輪が、その動きを止める。到着だ。 船着き場は、空が歪んで見えるほどに厳重な結界に覆われていた。小さな小屋があり、船頭はその中にそそくさと入っていく。その向こうには、聖堂を戴く丘がある。しかし、その手前には三メートルはあるだろう、という人型魔物の群れが見える。「魔物を外に放出するようになったか……」 リゼルが剣を抜く。同時に、青白い鎧に身を包み、ヘルムで顔を隠す。サルロも、ガリヤも同じだ
Última atualização : 2026-08-20 Ler mais